残酷描写注意!
HELLSHIP 第2話
ここは、とある周りを山に囲まれた盆地の真ん中。ひっそりとした田舎町。
そこに、決して怪しげでもなく、隠されている感じでもないが、誰も寄り付かない建物があった。これこそが裏組織、HELLSHIPの本拠地である。
ここは内陸の県であり、海が無い。故に深海棲艦がどかどかと入って来ることはなく、それに伴い艦娘もいない。
無論、"ただの深海棲艦"なら。
「…ん…ここは…?」
少女は目が覚め、起き出した。しかし、違和感だらけだ。
「あれ…私は…あの時……あれ、思い出せない…」
少女の記憶はあやふやだったが、完全に無くなってはいない。特に、身体にこれといって異常は無い。
だが、そんな筈がない。
「…! そうだ、私、変な深海棲艦に打たれて…」
少女は昨日のことを思い出す。あれは夢か幻だったのだろうか。しかし、だとしたらこの違和感は何なのか。
まず、ここはどこなのか。
「起きたか」
「あ…っ!」
目の前には、昨日の深海棲艦ー少女を射抜いた筈の、あの深海棲艦がいた。
「あの、私ー」
「取り敢えず、鏡を見て」
少女は、ついでに顔を洗おうと思って洗面所へ向かい、鏡を見た。
そして、言葉を失った。
髪は鬼・姫級深海棲艦特有のピンクがかった白。純白の素肌に、髪には不思議な黒い飾りの様なモノが付いていた。
一言で言うと、「深海棲艦化」したということである。
「わ…私…?」
「安心して。貴女は"ただの深海棲艦"じゃない。記憶もしっかりしてるでしょう」
確かに、艦娘だった頃の記憶は鮮明に、とは言えないが覚えている。深海棲艦だからといって、殺意や憎悪といった負の感情が湧く訳でもない。即ち、容姿が変わっただけで今迄通りである。
しかし、まだ疑問は晴れない。
「私…あれからどうなったんですか?」
「簡単に言うと…一度死んで蘇った、ってとこ」
身体には傷一つ無く、痛みも感じない。まるで昨日の事が嘘だったかのようだ。
「これが…深海棲艦化?…なんだか呆気ない…」
「仕方ない。私等は特殊だから」
どうも、やはり"普通の"深海棲艦化というものは、今迄の記憶は忘れ、殺意・憎悪といった負の感情が湧き、戦う為だけに生きる、といった感じになる。要するに、人類の敵として世に知られる深海棲艦そのままの姿だ。
「特殊、だからこそ、認められない」
「…それは、どういう…」
「私等は"艦娘の記憶を持つ深海棲艦"。そんな奴が居たら"普通の"深海棲艦は黙ってないでしょう。元々この組織は、私等の様な居場所の無い者達のための組織だ」
「それで、表では活動しない、と…」
「それに、この影響か分からないが、私等は並外れた能力を持ってる。貴女も分かる筈よ」
確かに、あの時軽巡棲鬼を一発で仕留めたのは驚いた。軽巡棲鬼はその硬さで有名な深海棲艦だが、いとも容易くこれを制した。
しかも空母の深海棲艦というのに、空母の艦娘と同じように弓を使ったりして、明らかに普通とは違っていた。
「だから…"ただの深海棲艦じゃない"、ね…」
「そうだ、貴女は今日から我々HELLSHIPの一員だ。ネームは…"E"でいいか?」
「なっ…"E"って…」
「アメリカの有力空母の頭文字。気に入らないか?因みに私のネームは"Y"だ」
「はぁ…」
「いかにも深海棲艦らしいだろう。まぁたかがネームだ。本当の名前じゃない」
「…では、本当の名前は…」
「そんなモノは無い。向こうが勝手に呼ぶだけだ」
「向こう…とは、人類の事ですか」
「そう。どうも私は『空母棲鬼』とかいう種になるらしいが。もっとも私は、他の空母棲鬼とは全然違うだろうな」
「はい…それと、私は貴女の事を何て呼べばいいでしょう…流石に『Yさん』はマズいというか…何というか」
「ウチのNは、マスターって呼んでるな」
「そう!なら、私もマスターって呼びます!宜しくお願いしますっ!マスター!」
「なっ、何だ…改まって…」
「それで、私はどうすればいいんでしょう…」
「そうだな…今日は疲れてるだろうし、コッチに慣れてもいないだろうからゆっくり休んでおけ。今から朝食を作る」
「はいっ、マスター!」
Yは元気そうな返事を聞いて、キッチンへ向かった。
「ふふっ……カワイイナァ…」
ちょっぴり頬を赤らめて、Yは呟く。
「あの頃の私は…」
視界が、暗くなっていく。
意識が、遠退いていく。
守れなかった。
『先に逝って待ってる』と言ったが、本当はそんな事は望まない。せめて、貴女だけでも生きていて欲しい。
「私は…沈むの…」
「沈んだ先ニは…何ガあるンだろウ…」
「守れナい… 守リタい…」
「私は…まだっ!!!」
強い意志があったからだろうか、『その』後も驚く程記憶がしっかりしていた。
しかし、その記憶は要らなかった。
「艦娘ノ記憶ガアルナンテ、ソンナノ深海棲艦トシテ認メナイワ!」
「何処カヘ…行ッテシマエ!」
「クルナ…」
「カエレッ!」
扱いは散々だった。桁外れな力を持っていることもあったが、やはり艦娘としての記憶があることに対して、深海棲艦は容赦しなかった。
居場所など無い。
どうにもならない。
自分は、この世界に要らない存在。
「何で私…深海棲艦なの…」
身体は深海棲艦。心は艦娘。
決して交わることの無い、相反する2つのモノが混ざる。それが、外部に認められる筈が無かった。
ただ、どうにもならないことをどうにかする為には、行動を起こすしかない。
「…やるしかない」
明け方。とある海沿いの町。
雲一つ無い空から、雨が降ってきた。それも、黒い雨が。
黒い雨は、町の建物を次々と破壊した。
黒い雨は、町の人々を次々と巻き込んだ。
僅か5分で、町が一つ消えた。
「お母さん…お母さああぁぁぁん!!!」
まだ小学生程の子供が、母親の側で泣いている。母親は何も応えない。腹には、ドス黒い『矢』が突き刺さっていた。
「どうした、小僧」
「ひっ…」
薄ピンクの長い髪に、純白の素肌。
黒い服。装甲。赤い眼。
子供は、ほぼ反射的に、目の前の人物が母親を殺した、と悟った。
「お母さんを、返せ!」
「大丈夫…直ぐに、また会えるよ…」
「どういうこと___」
その人物の右腕が、子供の身体を貫いた。間も無く、子供は沈黙して倒れ伏す。
「………」
白髪の女性は何も言わずに、何処かへと消えた。
倒れた子供の額には、一粒の雫が落ちていた。
此処での主人公(Y)はHELLSINGでいうアーカード兼インテグラポジってとこです。
Eはセラスポジ、Nはウォルターポジ。