新訳・ファイアーエムブレム新暗黒竜と光の剣F 作:朝比奈たいら
※2016年7月1日より公開開始
これはFE新暗黒竜のメインストーリーを小説化したものです。
世界設定はファイアーエムブレムアカネイア・クロニクルを参考に、
キャラクターの性格はゲームの他漫画版や小説版などを参考に
独自解釈、及び改変しています。
(原作にない性格、能力、要素、キャラクターも含みます)
また、暗黒竜編の時点でマルスの仲間にオリキャラのマイユニットが存在します。
(クリスも二部の新紋章編より登場)
なお、更新は不定期かつかなりの遅筆となり、
死ぬまでに新紋章ラストまで書ききれたらいいなと思っております
以上を踏まえた上でどうぞ。
その昔、アカネイア大陸はマムクートと呼ばれる竜人族の王メディウスが支配していた。
メディウスが率いるドルーア帝国軍は、マムクートを用いて大陸各国を侵略。
非力な人類は強大なドラゴンの前に圧倒され、
大陸最大の王国、アカネイア聖王国軍も暗黒竜メディウスの前に壊滅。
首都アカネイア・パレスは陥落しアカネイア聖王国は滅亡した。
アカネイア王家唯一の生き残りであるアルテミス王女は、
辺境の開拓都市であるアリティアへ逃れる。
カルタス伯爵率いるアカネイア解放軍は抵抗を続けていたが、
メディウスの前に敗北を重ね続けた。
竜人族による人類支配を阻止する事、アカネイア国を再興する事は不可能であるかに思えた。
その時、奇跡は起こった。
アルテミス王女は逃亡先であるアリティアの地で、アンリという青年と恋に落ちる。
アンリは賢者ガトーから神剣ファルシオンの在り処を聞き、
人外の魔境をたった一人で踏破してそれを手に入れた。
解放軍も潰えアルテミス王女がメディウスに身を差し出した時、
アンリはファルシオンを手に帰還しメディウスと七日七晩の死闘を繰り広げる。
激戦の末メディウスは倒れ、アカネイア大陸は英雄アンリの手によって救われたのである。
その後、ドルーア帝国は滅びアカネイアは再建された。
アルテミス王女とアンリは相思相愛であったが、
周囲の貴族達は平民のアンリを快く思ってはいなかった。
アルテミス王女は解放軍の長、カルタス伯爵と望まぬ結婚を強いられ、
アンリはアリティア王国を建国しそれぞれ別の道を歩んだ。
それから100年の後、時を経て死んだはずのメディウスが復活する。
メディウスは再びドルーア帝国を興し、
隣国であるグルニア国およびマケドニア国と連合を組んでアカネイアへ再度侵攻する。
アカネイアは防戦するも、メディウス率いる軍勢の圧倒的な力、
そしてグルニアの名将カミュの攻撃により再び首都パレスは陥落し滅亡した。
100年前の英雄アンリの血を引くアリティア国王コーネリアスは、
過去にメディウスを討伐せしめた神剣ファルシオンを持ち出撃する。
しかし同盟国グラの裏切りによりアリティア軍は敗北。
コーネリアスはメディウスと手を組んだ大司祭ガーネフの暗黒魔法により命を落とした。
アリティア国はドルーア連合の侵攻により、アカネイア国と運命を同じくする。
だが、アリティアの王子マルスは姉エリスの助けにより王都を脱出。
宮廷騎士団と共に辺境の島国タリスへと落ち延びていった。
――世界とは広大な物だ。
大海に浮ぶ大陸の一つや二つ、
広大な世界からして見ればちっぽけな物である。
だから、その世界にとって小さな大陸の内にある
たった一人の人物が世界を滅亡させんとした事でさえ、後の歴史書にはこう語り継がれる。
『世界の危機。それは数多く存在する。
このアカネイア大陸で起こった暗黒戦争も、その一に過ぎない』
たった一つの戦争。
書物の無機質な文字がそう告げている。
アカネイア大陸。
いくつもの国が存在し、その一つ一つに歴史と英雄が存在する。
ある歴史書にはこう刻まれていた。
英雄の一『マルス』と。
「絶対帰ってきてみせる。この国に……わが祖国アリティアに!」
船上で、煙が昇る城を遠目に見ながらアリティアの王子マルスはそう口にする。
老齢の騎士隊長ジェイガンは、本来マルス王子と同じく
悔しさに浸らねばならぬと分かっていても
安堵の気持ちが湧き上がるのを止められなかった。
後に、『アリティア国はドルーア国とそれに従属するグルニア国の侵略、
及び同盟国グラの裏切りにより滅亡した』と歴史書に刻まれた時代に、彼らは居た。
本ではたった一行二行で書かれる事実に、
幾人もの意思が交錯したのかは計り知れる物ではない。
この戦いで、アリティア国はコーネリアス王と軍団のほぼ全体を失う事になった。
王子マルスにしても、姉のエリスが時間稼ぎの為城に残ったままであり、
さらには宮廷騎士フレイが追撃軍を引き付ける囮となった。
グラの本隊とグルニアの精鋭部隊、黒騎士団の手にかかればおそらく命は無いだろう。
マルスにとって、姉の安否が知れない状態。
さらには騎士団の中核であるフレイを囮という形で犠牲としてしまった事は
涙を流すに十分な理由であった。
だが、マルスは涙を見せない。
悔しさを噛み締めつつも、アリティアの奪還とドルーアの打倒を誓った。
その言葉を聞いたジェイガンは、マルスが有言実行を果たすと確信していた。
彼は弱冠十四歳の子供であり、肉親と仲間を失えば大人でも錯乱する事が許される。
マルスはそうしなかった。
既に彼は一介の不幸な少年ではなく、一国の王子として行動を始めていたのであった。
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第一章【アリティアの呼応】
東の島国タリス。
アリティアから脱出したマルスとわずかな騎士達は、タリス国によって保護された。
島の東にある砦を与えられ、彼らはひたすら軍備を整えて反撃の機会をうかがっている。
それまでに、アリティア王都陥落から二年の歳月がかかっていた。
それでもこの二年間、彼らは平穏無事に過ごしていた。
マルスも敵国への復讐心や祖国への想いを忘れた事は無いが、
その大きな感情を心の深くへ静めるだけの平和な暮らしがタリスにはあった。
それに最も貢献したのが、タリスの王女シーダである。
この二年間、祖国滅びたりとはいえ王子であるマルスはシーダと身分的な隔たりは無く、
一般的な若者らしい友人として付き合う事が出来た。
もっとも、お互い本当に友人として見合っていたのかは疑問に残る事ではある。
そうではあるが、どんな意味にせよ彼女がマルスの心の拠り所になっていたのは事実だった。
「こうして見ると、王子王女としてよりもただの恋人同士にしか見えないんだけどねぇ……」
そう漏らすのは、アリティア軍
――正確には、アリティアは滅亡しているので残党軍、
またはマルス個人による私兵と呼ぶべき物なのだが――
に傭兵として雇われたラゼルだ。
彼は一風変わった人物である。
それは一見何を考えているのか分からない性格もさることながら、
傭兵としての戦闘能力もだ。
彼は普段剣を使う剣士であるが、僅かながら魔法も扱える。
(本人曰く、風魔法以外は得意ではなく威力が格段に落ちるらしい)
弱々しい体つきの為、重装備のアーマーナイトは得意ではないが
ペガサスやドラゴンには乗れると自称している。
事実、タリス産のペガサスには乱暴な乗り方ながらも素人よりは上手く操って見せた。
また弓も扱えない訳では無く、軍略にもそれなりの知識を持っている。
特別秀でている能力は無いが、基本的には万能な人物だ。
とはいえアリティアやタリスの出身ではなく、
「海を越えたはるか遠くの国から来た」と自称しているし、
マルス達王族に対しても不遜な態度を改める事なく接する。
この様な変わった人物を雇用するに当たって、一部からは反発が出たものの
人手が足りないアリティア軍にとって器用貧乏であっても応用の利く人材は惜しかった。
結果、採用に至ったのである。
ただ彼は空気を読まないバカ正直であり、
先程の台詞もマルスとシーダ、それと一部の騎士達の前で放った言葉である。
マルスとシーダは赤面して互いに目を逸らすだけであったが、
騎士達からは後でこってりと罵声を浴びた。
表向きは王子と王女に対する不敬な台詞だと。
本心は「今まで上手くやって来たんだから、余計な手を入れるんじゃない」と。
ともあれ、その他様々な事柄を経て予想以上に目立ってしまったラゼルは、
今や正式なアリティア宮廷騎士とほぼ同等の重鎮として扱われる様になっていた。
そんな時である。
タリス本城に居たシーダが、ペガサスに乗って東の砦までやって来たのは。
「モロドフ卿。これやっぱり……」
ラゼルが珍しく神妙な顔で詰め寄る。
シーダがペガサスで単騎、砦に遊びにやってくるのはよくある事である。
だが今回は事情が違った。
なんと、タリス城が海賊に攻められ大勢の人が殺されたと言うのである。
元々タリスはまともな騎士団もない小国であるが、
それでも国としての警備組織や傭兵部隊は存在していた。
シーダの情報から察するに城自体が陥落したわけでは無いらしいが、
たかが海賊にこれだけの損害を受けるとは思えない。
それに海賊が略奪をするならば、城ではなく城から離れた東の村から攻めるべきだ。
つい先程、砦の屋上に居た弓兵ゴードンが
砦から南の村に火の手が上がっているのを見たと言うが、
略奪をするだけならば火を放つ事はないだろう。
町を燃やしてしまえば復興が困難になり、再度の略奪が困難になるからだ。
自称軍師見習いでもあるラゼルと、本物の軍師であるモロドフ伯爵もそこに気付いていた。
「うむ。このガルダの海賊団、おそらくドルーアに通じる者であろう」
モロドフがそう言うと、ラゼルは会議室の地図から目を離し装備の点検を始めた。
ファイアーの魔道書を袋に入れ、鉄の剣の刃を眺める。
「王子がここに居るのを知った上での挑発か、それともタリスごと滅ぼすつもりか……
ま、それは無いか」
ハードレザーを着込みながら、楽観的に述べた。
だが、それを遮る声が部屋へ入って来る。
「そうでもないよ。
海賊は戦力も多く広範囲に展開している。
城はオグマ達の傭兵部隊が食い止めているらしいけど、
騎士団の無いタリスは町まで手が回らない。
実質、滅ぼすも同然だ」
凛とした表情で、マルス王子が言った。
ラゼルは普段滅多にしない敬礼を取って、それをマルスへの質問とする。
すなわち、出撃するかしないかと。
これだけの海賊と戦闘になれば、敵国にもその情報が渡ってしまうだろう。
ガルダの海賊がドルーア派ならばなおさらである。
既にこの状況はドルーアとの戦争であり、タリスを隠れ蓑とした上で見殺しにするか、
もしくは雌伏の時を絶ち蜂起するかの二択しかない。
ただし、この二年間で集めた兵力は少ない物ではなかったが、
国一つ二つを相手にするには足りるに程遠い物である。
アリティアに同じくドルーアに滅ぼされたアカネイア王国や、
その王女が逃れたとされるオレルアン王国との合流ができるのならば
話は違うのかも知れないが。
数ヶ月前にオレルアンへ亡命中のアカネイア王女ニーナが
反ドルーア派の決起を促す檄文を飛ばしてはいたが、
現在その両国軍との連絡が取れない今この場で軍を挙げる事は自殺行為に等しかった。
「今、カインとアベルが南の村へ向かっている。
じいとラゼルにも、準備を急いでもらいたい」
その言葉を聞くや否やラゼルは右手で敬礼し、その手をマルスへ向けて振った。
当然だと言わんばかりの顔である。
反対にモロドフは驚きの表情を取った。
自分を差し置いて兵を動かした事のみならず、この状況で戦闘を行う事に対してだ。
マルスはモロドフの表情を数秒間見つめてから冷静な、
それでいてハッキリとした口調で言った。
「もう何も出来ずに人が殺されるのを見てるだけなんて出来ない。
そうでなくても、ここで動かない理由は無いよ」
モロドフは曲がっていた背筋を伸ばす。
その目つきはただの老人ではなく、己の職分を真っ当せんとする軍師の物だった。
「アベル、カイン両名、ただ今帰還致しました」
報告をする騎士アベルは常に冷静な人物であり、
緑色の鎧と髪に返り血を浴びながらも何事も無かったかの様な顔をしていた。
一方、その隣で悔しそうに俯いている赤い鎧と髪の騎士カインは
アベルと親友かつライバルであった。
二人は宮廷騎士団(テンプルナイツ)所属の騎士であり、
壊滅した本国の騎士団の生き残りである。
マルスと共にタリスへ脱出してからは、この二人が騎馬隊の主力となっていた。
カインはアベルとは反対に感情的で、この戦闘の結果がそのまま顔に表れていた。
「生存者は?」
予想はついていながらも、マルスは堪らなくなって聞く。
「捕らえられていた女子供が僅かながら。その他はほぼ全員……」
「皆殺しでした……クッ!」
アベルの言葉にカインが付け加える。
よほど酷い状況だったのだろう。
カインは拳を握り締め、それを振り払った。
王子の前と言う場でなかったら机や壁を叩き壊していたかも知れない。
「そうか……いや、助かった人がいたなら、良くやってくれた。掛けてくれ」
椅子へ腰掛ける両騎士。
二人に、女弓兵のノルンがタオルを渡した。
「血が付いてます」
返り血も拭かずに急いできたのだろう。
両騎士の鎧の所々に変色しかけている血がこびり付いていた。
カインはタオルを受け取った後も暗い顔のまま俯いていたが、
アベルは涼しい顔をして肌についた返り血を拭い、剣の血糊を紙で拭き取っていた。
単なる羊毛でなく、専用の拭い紙を使うくらいには気を使っている。
王子との会議を前にして剣の手入れをするのは無礼であったが、
貴重な武器を粗末にするべきではないとマルスが許可していた。
「では、揃ったところで状況を説明しよう」
ラゼルが会議室を見渡す。
その場には、アリティア騎士団の面々が
緊張した面持ちで机を囲んでいた。
「現在、タリス城は敵の攻撃に晒されてる。
オグマ隊長らの傭兵部隊がいるんでタリス王は無事らしいが、
海賊が数の暴力に出てくればそれも長くは持たんだろう。
また、城下町も南の村同様な状態かと思われる。
まず、自分達がやるべき事は――」
そこまで言って、地図を指す。
タリス島の全体図に、敵を示す赤い色のコインが十数個置かれていた。
北西のタリス城に三つのコインが置かれ、その他は西を中心にバラバラに点在している。
「敵は城の東にある山……ここだね。
それを北の海、南の街道に別れてこちらへ向かって来てる。
だが足並みは揃っておらず戦力の逐次投入になるのか、または途中で合流するのか。
どちらにせよ敵のミスは、こちらが打って出れば各個撃破が可能だという事。
南西の村もまだ生き残ってるって噂なので、
こちらから戦線を押し上げて行くのが有効かと思われ。
理想としては、島の中心から上……この砦を海からの敵が来る前に押さえられれば、
そこから迎撃しやすくなるだろう」
「砦の上からなら、僕みたいな弓兵が役に立ちますよ!」
緑髪をした童顔の弓兵、ゴードンが得意げに言う。
「ああ。敵はタリス城の制圧もまだなのにこちらへ向かってきてる。
こちらが速攻をかけられれば、向こうの負担も減るだろう。
ただ、回復魔法を使える者が我が軍に居ない以上、
負傷兵が出た場合は砦に放置される事になるが……どうする?」
魔法の杖を媒体とした回復魔法を使える僧侶やシスターは、
今のアリティア軍には存在しなかった。
魔法は使おうと思えば誰にでも扱える物であるが、
回復の杖は高価な物である。
何よりも、魔力の低い者が扱っても大した効果は発揮されないのだ。
ラゼルは魔法について多少の心得があるが、風魔法以外は得意ではない。
一応モロドフ伯も多少杖を扱えるが、彼も本職の僧侶ではなかった。
ラゼルが決断を求めると、それまで神妙に話を聴いていたマルスは間を置かずに答える。
「どの道、時間は無い。その戦法で行くべきだ」
いつも仲間を思いやるマルスを見てきた騎士団員達は少しばかり驚いた。
彼の温厚な性格なら、部下の一人一人に納得を求めてから
できるだけ誰も傷つけない方法を選ぶと思っていたからだ。
だが、マルスは人が良いからこそ
一般人を殺して回るような海賊のやり方を心の底から嫌っていた。
彼にとっての優先順位では、例え強行策で部下の反感を買う事があっても
民の命を守る事が先決だと考えたのである。
この場に居る皆がマルスの感情に気付くのにさほど時間を要さなかった。
「これ以上時間の余裕は無い!
直ちに、我がアリティア軍はガルダの海賊に対し速攻をかける。
皆、出撃準備にかかってくれ!」
全員が短く敬礼をした後、慌しく動き始めた。
この時誰もが思ったのは、マルスはこの二年で。
もしくは二年前の脱出劇から王子としての才覚を開花させたのではないか、と。
「しかしよう、大丈夫なのか?」
北東の村へ向かう途中の街道で、海賊達はぞろぞろと不恰好な行進を続けていた。
「アリティアの残党ったって、一応軍人だろ。そんな奴らにこれだけで勝てんのか?」
「馬鹿、だからこれだけデカイ海賊団の半分も出張って来たんだろ。
聞きゃあ、騎士は何百人もいねえって話じゃねえか。
噂にゃアリティアの元お偉いさんが隠れてるってだけだ」
お頭も雇い主も気張りすぎてんだよ、と海賊の一人は言った。
そういう物なのかと、最初に質問した海賊は納得しかけた。
そんな彼らの希望的観測が吹き飛ばされたのは、
遠くから鎧の鳴る音と大勢の馬の走る音が聞こえた時であった。
「おいおめぇら! 奴らがきやがったぞ!」
海賊が臨戦態勢に入る。
しばらくして、道の彼方にジェイガン率いる騎馬隊が現れた。
嘘だろう、と海賊の一人が呆然と声を上げる。
その数はざっと見て、騎兵だけでも数百は居た。
騎士は何百人も居ない、などというのが嘘っぱちだとすぐに分かる。
海賊にとって運の悪かった事は、
彼らが歩いているその場周辺が森ではなく草原であった事だろう。
森ならば騎馬は行動力を大きく制限される。
だが縦横無尽に駆け抜けられるこの地形で、海賊は逃げ場を失っていた。
統率の取れていない海賊は、街道で待ち構える者と道を外れて散開する者に分かれる。
まず、騎馬隊は道で固まっている賊に対して手槍を投げつけた。
柄の細く短い、投擲に向く小槍である。
それが賊の顔、胴体、手足に次々と突き刺さった。
たちまち混乱状態に陥る敵に対し、騎馬隊は一斉に突撃する。
先鋒を取ったのはジェイガンとカインで、文字通り敵を蹴散らして行く。
それを補うかのようにアベルは部下に散開を命じて残りの敵を掃討して行った。
遅れてドーガの重騎士隊やゴードン、ノルンの弓隊がその場を通った時、
彼らは思わず気分の悪さを覚える。
道の傍らには、ただひたすら海賊の屍が並ぶのみだったからだ。
正直、もし敵が略奪を行った海賊でなかったならば
アリティア軍の進撃は一方的な虐殺にも見えた。
それほど順調な快進撃を彼らは続けていた。
騎馬隊は城へ向かうまでの敵をことごとく薙ぎ倒して行ったし、
予定通りに拠点とする事が出来た中央北の砦でもドーガ率いる重騎士隊が防衛線を張り、
上からゴードンやノルン達弓兵が船でやってくる海賊達に矢を浴びせ続けた。
小船でやって来る海賊に対し弓矢を放つ弓隊。
ゴードンが船上の敵に対して矢を射掛けるが、その矢は1メートルほど逸れて海へ沈む。
弓だけでなく顔をも引き締めて任務に当たろうとする。
隣を見やれば、ノルンも三回に一回程度しか矢が命中せず
少し不安そうな顔をしながら射撃を続けていた。
騎馬隊や重騎士隊の精鋭と違い、ゴードンの弓隊はそれほど練度は高くなかった。
そもそも、ゴードンやノルン自体が新兵と義勇兵である。
マルスのアリティア脱出の際、敵に捕らわれていた所を救出された新兵がゴードンであり、
同時期にドーガと共に脱出用の船を用意した義勇兵がノルンだった。
彼らの実戦経験はその時の一度きりであり、
アリティアの重鎮である『テンプルナイツ』に所属しているとはいえ
実質他の一兵卒と実力は大差無かった。
その代わり、ゴードンは持ち前の明るく素直な
――周りからは子供っぽいと言われている――性格が
周囲を和ませる役割を持ち周りから好かれているし、
ノルンも義勇兵らしく士気は高く非戦闘時は献身的に雑用をこなしてくれるので
二人の存在は騎士団と言うガチガチに凝り固まった空気を和ませる事で
とてもありがたい存在であった。
ただし、騎士道と規則を重んじるジェイガンに
純粋な少年であるゴードンは度々雷を落とされていたが。
そのゴードンと一番仲が良いのは重騎士ドーガである。
比較的寡黙で体格の良い彼とゴードンは反対に位置する性格に見える。
だが、ドーガの周りをちょろちょろと犬の様にくっついて回るゴードンに
ドーガは癒されていた。
ドーガはあまり裏表の無い性格であり、
普段の寡黙な態度とゴードンに対する態度は第三者には同じに見える。
だがドーガは、ゴードンとの時間はいつも以上に自然体で居れる自分に気が付いていた。
だからこの戦闘でも、チラチラと砦の上を見やりながら
内部に敵を侵入させまいとして上陸して来た海賊を全力で薙ぎ払っていたのである。
本来武器には相性があり、
剣は斧に強く、斧は槍に強く、槍は剣に強いという『三すくみ』が存在している。
海賊達は斧を中心に武装しており、
斧は重量はあれど刃の部分で槍を受け止めたり槍の柄を叩き折ったりしやすい。
大重量により高威力な武器でもあり、
斧の質と使い手によってはアーマーナイトの鎧をも叩き割る事ができる。
相手がアーマーナイトなら重量による機動力の低下もある程度許容範囲であり
槍を装備した重騎士ドーガは数々のハンデを負っていたが、
ゴードンをまるで弟か愛犬の様に想っている彼は海賊達の斧を全力で受け止め、
槍の一振りで3、4人をまとめて吹き飛ばした。
こうなると、三すくみ等と言う理屈のレベルじゃあない。
「でぃやああぁぁぁ!!」
ただでさえ体格の良いドーガは、
自分の身体よりもさらに大きなアーマーをガコンガコンと鳴らしながら
押し寄せる大量の海賊を盾で思い切り殴り、ぶっ飛ばした。
その光景を見たゴードンは砦上から
「やったあああ!」と歓喜の声を挙げ、海賊達には多大な動揺が走った。
もしこの時、海賊らがドーガを迂回して砦内の弓隊を攻撃せんとしなければ、
文字通り鬼の様なドーガを見ることは無かったのだが……
城攻めをしている以外の海賊が駆逐された頃、
騎馬隊とマルス本隊は南西にある村まで到達し、隊を整えていた。
騒がしく補給と整列を行っていたが、そんな彼らを咎める村人はもちろんいない。
ありがとうだとか頑張ってくださいだとかの声援を送る者がほとんどだった。
そして出発しようという時になって、一人の若い娘がさりげなくマルスに近寄って来た。
「あの、マルス様ですよね?」
マルスが返事をすると、
まるで憧れの白馬の王子様を見つけた様な態度で村娘は目を輝かせた。
ちなみにマルスは戦闘時は主に徒歩であり、移動時に使う馬も通常の栗毛である。
「あっ、あのあの! 私みたいのがこんな事言うのも失礼ですけど、
御国を取り戻されるの、頑張ってくださいっ!
これ、きずぐすりなんですがぜひ使ってください!
とある僧侶の名前を取った、『リフ』っていう名前の薬なんです。
後、タリスの為に戦ってくれてありがとうございます!」
マルスは村娘の好意をありがたく受取る。
『リフ』をポケットにしまい、笑顔のまま手を振って村を後にした。
「マルス! 騎馬隊だけでやるのか?」
村の門を出始めた時、ラゼルが馬に乗ってやって来た。
通常の馬ではなく、白い毛と羽が生えたペガサスである。
彼はそれに乗り、ドーガ達が確保した砦との連絡役をしていた。
あちら側はあらかた片付いたらしく、ドーガの活躍談を土産に戻って来たようだ。
海賊を鷲掴みにして海へ投げ飛ばすドーガを見て士気を上げるゴードンに、
「お前好かれてるなぁ。ちょっと危ないくらい」
との台詞を残すのも忘れてはいなかった。
もう少し時間があったなら、
ノルンと二人でドーガとゴードンの関係について話に花を咲かせていただろう。
それも、薔薇の花を。
ラゼルとマルスは個人的な友人としても良好な関係であり、
マルスは王子を呼び捨てにするという不敬をまるで気付いていないかのように答えた。
「ああ。ドーガ達を待ちたいけど、城が制圧される事があったら取り返しが付かない。
相手を足止めするだけでもいいんだ」
「なら、うってつけの奴がいるんだが……」
ラゼルはそう言って親指を立て、後ろを示す。
そこには槍を持ってペガサスに乗り、
胸と肩のみを覆うブレストアーマーで武装したシーダ王女の姿があった。
「シーダ!? ……だめだ! 君は……いけない!」
シーダの姿を見てすぐに悟ったのだろう。
事態を理解するや否や、焦った様子で押し留めようとする。
かたやシーダは、すでに決意を持った顔のままマルスの横までくると、
まるで騎士と見間違わんばかりのハッキリした口調で言い放った。
「マルス様、私はタリスの王女です。
人の上に立つ者は民を守る義務がある。
そうでなくとも、私はタリスを守る為に出来る事をしたい。
そして、マルス様! あなたが行く道も、私は一緒に歩みたいんです!
それが困難な道であっても、
この世界に希望を与える人は居なくてはならないと思うから……」
この場が戦場でなければ、この台詞はプロポーズとも取れただろう。
だが、今世界は暗黒竜メディウスとその配下にある国により
争いが絶えない物になってしまった。
シーダは、今必要な物は悪を討つ力だと気付いていた。
だからこそ国を率いる王族が行うべき事は悪に媚びへつらう政治家の役ではなく、
先頭に立って悪に立ち向かう指導者として生きる事だとの答えを出した。
ここで王女自らがペガサスに乗り、
一兵卒の如く槍を振るう事は一般的な王族としての役割では無い。
だがタリスは小国であり、ドルーアらに立ち向かうだけの戦力は皆無と言っていい。
シーダがタリスの傭兵隊を率いて一国家に立ち向かう事は無謀に等しい物だった。
とはいえ、いくら弱小国家でも王族は王族である。
もしもアリティアのマルス王子と行動を共にするというのであれば、
それは大陸で十にも満たない国家の中で一つの国が反ドルーア派を掲げると同義であった。
そうなれば各地の反ドルーア派の決起を促すと同時に、
ドルーアに従属を強いられている国の支持を得る事ができるはずである。
それを実現するには、タリス王族によるアリティアへの協力という事実が不可欠であった。
またシーダが王族でなかったとしても、
彼女個人の意思として祖国や罪の無い人々が蹂躙されるのは許せない事であり、
マルスという人物に引かれて助けになりたいという想い
――後にラゼルがそれを『自己満足的な欲望』と評している――
を持ってしまった以上、何もせずにはいられなかったのである。
シーダの言葉を聞いたマルスは、さすがに彼女の意思全てを読み取る事はできなかった。
ただしマルスはシーダの表情が、二年前アリティア城が襲撃され船でタリスまで脱出した際、
遠目にアリティア城を見ながら祖国奪還を誓った自分と重なって見えた。
シーダの想いの強さを理解するには、それは十分な事であった。
「……分かった。でも、くれぐれも無茶はしてはいけない。
君はタリスにとって必要な人なんだから」
「はい!」
シーダは自分の言葉を認められた嬉しさの表情と、
それに伴う責任を改めて認識した真剣さが入り混じった表情で答える。
タリスにとってじゃなくて「僕にとって必要」と言えばよかったのに。だとか、
シーダ姫は今の返事で余計な事まで言わなかったな。それなりに賢さはあるのか。
だとかをラゼルは思ったが、さすがにこの状況では空気を読んだ。
「マルス。まず俺が先行して弓兵の有無を見て排除する。
それからシーダの馬にタリス王を乗せて退避させる。
余裕があれば、俺は手槍でかく乱でもしよう」
ラゼルが作戦を述べ、二人は城の東にある山へ迂回しつつ城の裏へと回った。
直ちにマルス本隊も正面からの攻撃を行なう。
先程と同じように騎馬隊が手槍を持って、
城下町で城攻めと略奪を行う海賊へ投擲を開始した。
「これでオグマ殿の傭兵隊との挟撃になるでしょう。
後はラゼルとシーダ王女が王を救出してくれれば……」
軍師モロドフが、勝利をほぼ確信した口調で言う。
だがマルスは首を軽く横に振った。
「僕も行く」
「王子! なりません!」
引き止めようとするモロドフを振り切ってマルスは城下町へ突入する。
シーダが助けを求めてやって来てから数時間。
既に空は暗くなり、町に上がる火の手が濃紺の空を暁色に染め上げていた。
「全軍、タリスを奪還するぞ!」
全軍の指揮官が前線に立つ事は軍の士気を上げる意味で良く使われる手段であるが、
大抵その場合は鼓舞をするだけして退く指揮官がほとんどである。
先陣を切る振りをしてこっそり後方に下がっても、大軍の中では気付かれないからだ。
その点、マルス王子の人の良さを知っているアリティア騎士は
彼が本心から民を想い、一歩も退かぬ姿勢を見せている事を理解していた。
だから騎士達はマルス王子と民の両方を全力で守る必要があったのである。
とはいえマルスもアリティアの城で剣術を習っていたし、脱出の際に実戦も経験した。
タリスに来てからも傭兵隊長オグマからより実践的な剣闘術を教わっていたので、
戦闘能力は騎士並に高く足手まといにはならなかった。
この事から一気に士気を爆発させたアリティア軍は、怒濤の勢いで城下町を駆け抜けた。
「やめて! 降ろしてぇー!」
海賊が10歳位の少年をさらおうと肩に担いで走っていたが、
対向方面から来たカインが頭上で槍を振り回しながら突進して来る。
海賊は応戦しようとしたが、左肩に暴れる子供を乗せたまま騎士と戦うのは
あまりにも無謀が過ぎるものであった。
「はあぁぁぁぁッ!!」
カインはそのまま槍を下から突き上げ、海賊を上へと吹き飛ばす。
海賊が担いでいた少年もろともである。
悲鳴を上げて宙を舞う少年を、アベルが見事に受け止めた。
「ハッ! この猪突猛進ヤロウが!」
戦場特有の高揚感からか、それとも好敵手カインとの連携が成功したからだろうか。
普段感情を表に出す事が少ないアベルが、いくらか嬉しそうに笑いながら
カインの背中へ声を投げかけた。
一方マルスは、逃げ惑う町娘の腕を掴んだ海賊を馬上からの一閃で斬り倒すと
そのまま娘には脇目も振らずに城へと突入して行った。
瞬く間に城下町を奪還したアリティア軍は鬨の声を挙げると掃討戦に入り、
戦線に追いついたモロドフが近くの騎士にマルスの居場所を尋ねる。
「マルス様は何処におわす!?」
「ハッ、最前線と思われます。城内に先行したとの情報が!」
「適当に5、6名を捕まえて援護に向かわせい!」
その騎士は敬礼を取ると、直ちに行動に移る。
初陣が多い実戦でも意外と何とかなるものだなと、モロドフは思う。
この二年間実戦らしい戦闘が無かった為正直心配であったが、
予想以上の戦果にモロドフは感心していた。
そのまま数秒間突っ立っていたが、ハッと我に返ると状況の把握と
苦手という訳ではないが軍師ゆえほとんど使う事が無かった回復魔法ライブの杖を持って
味方の騎士や民にかけて回った。
「お父様っ!」
「シーダ、前に出るな!」
城の上空から三名ほどの海賊に連れられたタリス王を見つけたシーダは、
ラゼルの静止を振り切って降下攻撃を仕掛けた。
一人は倒したものの、弓を持った海賊がシーダへ矢を放ち、その矢はシーダの肩に当たった。
幸い鎧のおかげで刺さりはしなかったが、
ペガサス上でバランスを崩したシーダは海賊の目の前に落ちる。
「クッ!」
ラゼルが敵弓兵に手槍を投げつけようとして、手槍が尽きていた事に気付く。
こんな事もあろうかと用意していたファイアーの魔導書を使いペガサス上から炎を放つが、
炎魔法は得意でない為に威力の低い火が敵弓兵の近くで爆ぜるのみであった。
下に降りて剣で戦うか馬上から強襲するかを一瞬迷ったが、
左からマルスが階段を駆け上がってくるのを見てペガサスに乗ったまま突撃を仕掛けた。
弓兵がラゼルに狙いをつけるが、撃たれる寸前でペガサスから飛び降りる。
狙いを付け直される前に、下からやって来たマルスが弓兵を斬りつけようとした。
だがその弓兵はマルスの攻撃を一太刀、二太刀とかわすと背中を向けて逃げ出す。
その後ろからラゼルがファイアーを放ち、火球が弓兵の右肩に当たる。
弓兵は一瞬怯んだ素振りを見せたが、軽く振り向いてラゼルを睨みつけると
数メートルはある城壁を飛び降りて行った。
「シーダ!」
マルスが叫ぶ。
シーダはタリス王の代わりに海賊に捕まり、連れ去られようとしていた。
もし海賊の目的が反ドルーア派の殲滅なら、シーダ王女もただの人質ではすまないだろう。
「タリス王を頼む!」
マルスはそう言うと、シーダを追いかけて行く。
ラゼルが倒れているタリス王を助け起こそうとしたその時、
一本の矢がラゼルの右足に突き刺さった。
「うあっ……くっ!?」
左を見やると、先程の弓兵が向かいの城壁からこちらを狙っていた。
追撃を受けるかと思いきや、弓兵はその一発を放ったっきりで
今度こそ本当に退散していった。
ここでラゼルが疑問に思ったのは、あの位置からならタリス王を狙う事もできた事である。
敵がドルーアならばそうするだろう。
だが、奴はラゼル自体を狙った。
さっき当てたファイアーの報復なのだろうか。
何にせよ、あの弓兵はただの傭兵のたぐいかも知れない。
雇い主が劣勢になった段階で見限ったと言う訳ならば納得できる。
忠誠心は無さそうだが、プライドと腕前はかなりのものだ。
扱いさえ間違わねばこれ以上無い戦力となるであろう。
ああいうのが仲間についてくれたらなぁと、
ラゼルは右足を押さえながら心の中で肩を落とした。
今からペガサスで追えば追いつけるかも知れない。
だが今は、タリス王を安全な場所へ送るのが先決であった。
「タリス王。怪我は?」
もう六十代であり、白髪と白髭のタリス王はラゼルに抱き起こされる。
その目には、涙が溢れていた。
「ラゼル君だったかな。君こそ早く治療した方が良い。
私も……クソッ、俺も情けねぇわ! 昔、タリス統一の時!
槍一本で国を築き上げたこの俺が、たかが一海賊ごときにこんなザマだ!」
斬りつけられ、血を流す足を力強く殴るタリス王。
彼とて若い頃は島のあらゆる部族を束ねようとし、
それを実現させてタリス国を築き上げた立派な戦士だったのである。
今でも決して弱くは無いが、数人の敵に囲まれてこんな負傷を負ってしまった。
「タリス王。あなたにしか出来ない事はまだあります。今までも、これからも……」
ラゼルの言葉でさらに嗚咽する王。
泣きながらも、目つきには闘志が宿っている。
彼は今まで国王としての気高さを背負い、立派な姿を娘のシーダに見せてきたつもりだ。
だが今までシーダに見せる事をしなかったこの目こそ、本当に立派な姿なのではなかろうか。
「タリス王! あなたは今まで王族らしく振舞ってきた。
シーダ姫も、そんなあなたを好きであった。
でも、誇るべき所はそこじゃないでしょう!
今、この戦場で! その感情こそ周りに伝えるべき物ですよ!
これからタリスにも……変化は訪れるでしょう。
だからこそ、人の上に立つのに必要なのは冷静たる気品と、
今のあなたの様な大きい感情じゃないですか!」
ラゼルは言った。
今言わなければならないと思ったからだ。
本来なら彼がでしゃばるような話ではない。
だが彼は、誰かがタリス王の背中を軽く押すだけで、
この国は今以上にずば抜けて良くなると確信していた。
「だまらっしゃい!」
不意にタリス王が一喝する。
マルス王子にすらタメ口をきくラゼルも、初めて受ける王の威厳に絶句した。
「そんな物、とうに解っておるわ! ほら、治療しに行くぞ。馬ぁ回せ!」
後にタリス国は、辺境の小国と呼ばれていたこの時代から飛躍的な発展を遂げる事になる。
タリス王が希代の名君主と呼ばれるには、さほど時間を要さなかった。
その頃、マルスはシーダを担いだ海賊に追いつく。
頭目と思われるその海賊はマルスに振り向き、シーダの首へと斧を当てた。
「こいつの命が惜しけりゃあ、剣を捨てな!」
「ダメ、マルス様! こんな奴やっつけちゃって!」
自らを人質とされているのにも関わらずシーダが強気に叫ぶ。
もちろん、マルスにそんな事が出来る訳が無い。
大人しく持っていたレイピアを海賊の前に投げ捨てる。
「マルス様!」
「あぁん? マルスぅ?
ハッ、こりゃいいや。まさか本当に王子様がこんなトコに居るたぁなぁ。
おめぇの首持って帰れば――でぇっ!?」
海賊が余計な事まで喋ろうとした時、シーダが全力で海賊の腕に歯を立てた。
すかさずマルスが海賊に体当たりをかける。
城壁の渡り通路から落ちた二人はかたや水道管にぶら下がり、
かたや管を点検する為の通用口へ叩き付けられる。
水道管へぶら下がったマルスは、それほど力の無い腕を全力で強張らせながらよじ登る。
海賊も管をつたってマルスを叩き落そうと斧を振るった。
「これを!」
シーダがマルスのレイピアを投げ渡す。
管の上で一騎討ちとなったマルスは海賊の斧を数回受け流したが、
その度に細身のレイピアが大きくしなる。
武器の軽さで優位に立とうとしたマルスだが、
海賊が斧を空振り水道管に勢いよく当ててしまった。
とたんに水が噴き出し、管がグラつく。
マルスが王子とは思えないまるで盗賊の様な身のこなしで通路まで飛び退くと、
水道管はガキンと音を発して折れていった。
海賊も一緒に落ちて行ったのだろうと安心して下を覗き込むマルスだったが、
間一髪で壁にぶら下がっていた海賊がよじ登ってくると同時にマルスの顔面を殴り飛ばした。
吹っ飛んだマルスにシーダが駆け寄る。
「ちっ、そのガキぁバラバラにしてやる。どけ!」
「嫌です!」
「ならば二人仲良くあの世へ行くんだな」
シーダが倒れたマルスを庇うようにして抱きしめる。
海賊が二人に止めを刺そうとした時、その背後からスッと首筋に大振りの剣が当てられた。
「嬢ちゃん、遅くなった」
端正ながらどこか野性的な印象を与える顔立ちの男。
その左頬に大きく付けられた斜め十字の傷が更に見る者を引き付けるその人物こそ、
タリス傭兵隊長であり、大陸で1、2を争う剣の使い手と噂される元剣闘士オグマである。
「オ、オグマだと!? ウチの奴らはどうした!?」
オグマは冷静に低い声で。
だがシーダ王女に暴力を働いた事に対しての怒りをわずかに表しながら答える。
「無駄な事はしないで欲しいんだがな。
今更お前らなんぞの血でこの城を汚したくない」
襲撃を受けてから数時間。
彼はひたすら賊を斬り倒し続けていた。
オグマ自身は最初、少数で海賊船の迎撃に向かっていたので
タリス王が捕らわれるという事態になった。
それを言えばオグマは戦術家としての能力には乏しいのかも知れない。
とは言え、彼一人が斬り倒した賊は百をゆうに超えていた。
見れば、オグマの剣は血に濡れていたが、
彼自身は元からの古傷である頬の傷以外はかすり傷一つ負っていない。
「クソッ!」
海賊が振り向かずに逃げようとするが、その道を三人の斧戦士が塞いだ。
「どこへ行こうってんだ?」
三人の内、二人は茶髪で一人が青髪である。
三人は似たような髪形であり、茶髪の二人は双子の様にそっくりな顔であった。
どうやらリーダー格らしい青髪の青年が門に足をかけて立ち塞がる。
海賊はこの時点で半ばヤケになった。
この三人はオグマ直属の部下であり、腕の良い斧戦士だとの情報を受けていたからだ。
どう足掻こうと、この時点で命は無いに等しかった。
「うおおぉぉぉ!!」
斧を構え、オグマに向けて吶喊する海賊。
オグマも剣を腰だめに構え走り出す。
二つの刃が交差し、一拍の間髪も入れずに海賊は倒れこみ城下へと落下して行った。
マルスとシーダが安堵の溜息を吐く。
炎が包む城下から聞こえる怒号と悲鳴は、いつの間にか歓声へと変わっていた。
――ゴードンは、町の復興を手伝っていた。
ドーガの重騎士隊とゴードンの弓隊が城下町へ着く頃には、戦闘は終わっていた。
とすれば、やる事は一つである。
いくつかの仕事を終えドーガの元へ行こうとした時、町の外れに人影が見えた。
弓兵らしく目の良いゴードンには、
その人が纏っていた服は町人の服ではなくアリティアの物でもない鎧に見えた。
確認の為に弓を構え、後を追っていたが見失う。
気のせいだと思い戻ろうかとした時、彼の鎧に矢が当たって落ちた。
「っ!?」
とっさの事に身動きが取れず固まるゴードン。
その隙にもう一発矢が撃ち込まれる。
矢はまたもや鎧に命中した。
衝撃はほとんどなく、鎧を貫徹せずにこつんと当たっただけだ。
「アリティアの弓使いもこの程度か」
声がした方を見やると、美しい金髪を持つ美形の男が木陰から弓を構えていた。
狙いが自分に付けられているのを知ったゴードンはとっさに弓を構える。
「お前は今のを見てもやるつもりか?」
その言葉の意味、相手の行動言動を必死に解読する。
もし先程の矢が狙って鎧に当てた物だとしたら、
この弓兵はかなりの使い手であり自分は二回も死んでいる事になる。
だがゴードンは弓を下ろさない。
というより、この状況で動く事が怖かった。
一歩でも動けば眉間を撃ち抜かれそうな気がしたからだ。
敵の弓兵には、ゴードンのそれが精一杯の勇気とプライドだと誤解されたのだろう。
彼はスッと弓を下ろした。
「ふん、度胸だけは一人前だな。
おい、お前。今回タリスに出張って来た海賊は半分だ。
残りはガルダに居るだろうよ」
そう台詞を残すと、背中を向けて歩き出す。
金髪の男は後ろ向きに手を振りながら最後にこう付け加えた。
「魔法を使うペガサス乗りの男に言っておけ。
近い内に右肩を撃ち抜いてやるってな!」
男の右肩は、後ろの部分が焼け焦げていた。
海賊の駆逐は完了し、戦闘は終わった。
城に放たれた火を鎮火し、
町がある程度静けさを取り戻した後にアリティア軍はタリス城で休息を取っていた。
空も、もう普段の暗闇を取り戻している。
アリティアの圧勝に終わった今回の戦いであるが、タリス住民には多大な被害が出た。
それを考えると素直に喜ぶ事は出来ず、
騎士団の面々は高揚感を押さえて静かに身体を休める。
そんな中、タリス城の一室では
マルスとシーダ、タリス王と傭兵団。
テンプルナイツ団員が揃って今後の事を話し合っていた。
「これで、あなた方がタリスに居る事がドルーアにばれただろう。
こちらとしても民意という物もある。
この戦闘で家族や友人を失った者も多い」
負傷し、ベッドに横になったままのタリス王の言葉に、マルスは何も申し訳できなかった。
マルス達がタリスを巻き込んだ事は事実だったからだ。
「オレルアンに居るニーナ姫がまだ健在かは分からんが、
出来るだけ早くタリスを発ち、そちらへ向かう事を勧める。
だが――」
厳格な面持ちから一転、いたずらを思いついた少年の様な顔をするタリス王。
「タリスは反ドルーアだ。いずれ来たる侵略や併合などはご免だからな。
貴公らが代わりに打って出てくれるなら協力せねばならんなぁ……
オグマ! 何人か率いて、行ってくれるな」
腕組みをして壁に寄りかかっていたオグマは軽く笑う。
「命令なら、しかたねぇな。
サジ、マジ、バーツ! おめぇら付いて来い」
おうよ! と三人の戦士が吼える。
「しかしタリス王!
亡命を受け入れてくれただけで十分過ぎるほどです。
これ以上協力してもらう義理はタリスにはありません。
今回の件でも――」
マルスが断ろうとすると、タリス王は声を荒げて言った。
「義理? 義理が無いだと?
それはタリスにとって失礼な言葉ではないか!
マルス王子。貴公を受け入れた時からこうなる事は覚悟していた。
私だけではない。国民もだ!
その時点で、君には責任がある。
タリスと共に、侵略者と戦わねばならないという責任が!」
タリス王の言葉にマルスはハッとする。
自分が発した言葉の無責任さを初めて知ったのだ。
亡命時は14歳だったマルスも、その時点でタリス全体からの期待を受ける事。
少年にはあまりにも大きすぎる責任を、既に背負わなければいけない立場であった。
「マルス王子。貴公は……仲間を集め、認めよ。
悪に立ち向かい、人々を守る為の、同じ道を行く仲間を。
私達タリスがその先駆けとなろう」
マルスは跪き、レイピアを構えて敬礼をする。
「失礼致しました。志、必ずや成し遂げてお見せします」
テンプルナイツもマルスにならい、敬礼をする。
何人かは視界の端に、ただ一人俯いているシーダを見つける。
カインが何か言いたげにしているのを、アベルが目で諌めた。
「ん? おじいさん、誰です?」
ゴードンは城内の広間で休息を取っているアリティア騎士の中に、
見慣れないハゲ頭の僧侶を見つけた。
僧侶は足を撃ち抜かれたラゼルをライブの杖で治療している。
「わたしは、そうりょリフ。
たたかいはできませんが、ちりょうのつえがつかえます」
僧侶の言葉に、部下の様子を見に来ていたマルスが不思議な顔をする。
「リフ? 村でとある女性から貰ったきずぐすりもそんな名前だったのですが……」
「ああ、それは私の孫娘です。
そのきずぐすりは私が作ったんですよ。
名前を付けたのは孫娘ですがね」
ラゼルの治療を終え、薬草を煎じた茶をズズズと飲む僧侶リフ。
「アリティアの方に協力したく準備をしていたのですが、思ったより行軍が速くてですね。
置いていかれるのではないかと思いました」
「いやぁ、杖ってすごいですねぇ。
身体の自然治癒を早めているだけだと分かっちゃいますが、実際受けてみると便利です」
ラゼルが元気そうに言う。
幸い、タリス王と共に傷は浅かったのでモロドフとリフの治療により傷は塞がった。
後は一日二日寝るだけで完治するようだ。
「私もこんな年ではありますが、
普段から健康には気を使っておりますのでなんとか付いて行ける体力はあるつもりです。
……ああ、いや、今回は少し準備に手間取りましたがね。
もしよろしければ、癒し手として同行させて頂きたいのですが」
マルスはリフの申し出を受けるか少し悩んだが、
先程のタリス王の言葉もあり受け入れる事にした。
(それにしても、モロドフ伯やリフじいさんも悪くないが
女のシスターも居て欲しいなぁ……)
失礼だとは思いつつも、少なくない騎士達がそう思っていた。
次の日の朝、マルス達は荷物をまとめて船に乗り込む。
行き先はガルダの港だ。
ゴードンが聞いた話では昨日の戦闘で倒した海賊が全体の半分だった事が分かり、
残党によるタリスへの報復が考えられた。
オレルアンへの道中で、敵の本拠地自体を壊滅させようという訳である。
本拠点を潰してしまえば、
例え数名が逃げたとしてもオグマが残したタリス傭兵団で守りきれるであろう。
ゴードンは金髪の弓兵に関しても隠さずに話したが、恐らく傭兵の類だろうと仮定された。
ただ、復讐を決定したような言動は仕事人としての傭兵らしくは無く、
たかが低威力のファイアーを肩に喰らったぐらいで
わざわざまた会いに来ようとする執念にラゼルは少し困った顔をした。
出航の際には意外な事に、タリスの民が大勢見送りに来た。
昨日の今日で大きな怨みを抱かれているかと思いきや、
タリスの人達はアリティアに対し憎悪の念は抱いてはいなかった。
その分は、加害者である海賊やドルーアに向けられている様子だ。
数隻の大型船は港を出てガルダへ向かう。
その船に、シーダは乗っていなかった。
「シーダ、見送りはしなくてよかったのか」
タリス王が、シーダの部屋の屋根裏に入る。
そこはシーダのペガサスの小屋になっており、彼女はペガサスの羽を手入れしていた。
「いいの。これ以上マルス様に雑念を与えちゃマズイでしょ?
これからはタリスの事なんかよりもっと大きな事が――」
努めて明るく振舞うシーダ。
その言葉を切るかのように、王は娘の肩に手をやった。
「シーダ。マルス王子の手前ではああ言ったが、
王子がタリスにやって来た時国民の反応は否定的だった。
それを自ら必死に説得して回ったのは誰だったかな」
そして王は、昨日した様な子供っぽい無邪気な笑みを顔全面に押し出すと
シーダの背中をバシリと叩いた。
「俺は分かってる。
理由がある! 気持ちがある! 行ってこい、俺の娘だろう」
シーダは思わず泣きそうになって父親の胸に顔を埋める。
王はシーダを抱きしめながら、脚の傷ではなく胸が痛むのを感じた。
それからわずか数分後には、
シーダの部屋には漢泣きに泣くタリス王の姿一つが佇むのみであった。
マルス達本隊が乗る船では、サジとマジ、オグマが酔いに酔っていた。
テンプルナイツは別段何ともないが、
島国に住んでいるはずの三人は何故か胃液しか出なくなるまで吐いていた。
「海の国が、なにゆえ吐くよぉ!」
本来なら馬車に乗るだけでも酔う体質のラゼルは
テンションを大幅に上げながら船の甲板を走って行ったり来たりしていた。
彼は何故か、船や自分が操る馬に乗った時は酔わずに気分が弾けるのである。
「うえぇい……海が近くったって、船酔いしねぇ訳じゃねぇだろうが……」
「おれぁ木こりだぜ……海なんざほとんど出ねえよ……
大丈夫かぁ、マジぃぃぃ」
オグマとサジが船の縁にしがみ付きながら、海賊よりも苦戦するものと戦っていた。
既に顔面蒼白になって仰向けに倒れているマジは、か細い声で何かを呟いている。
それにバーツが耳を近づけた。
「バーツぅ、あんたぁ何で平気なんだよう」
「ああ。何でなんだろうな」
あっけらかんとした青髪の戦士バーツ。
タリス傭兵隊の中で、彼は唯一平然としていた。
「ところでマルス。シーダは連れてこなくてよかったの?」
ラゼルがマルスの近くまでやって来る。
そしてとうとう適当な踊りを踊りだした。
それほど船が好きらしい。
「シーダはタリスの王女だよ。
タリスではともかく、アリティアの戦いに巻き込む訳にはいかない」
昨日のタリス王の言葉を踏まえた上で、マルスはそう言った。
第一、タリスが名目上だけでも協力するならば傭兵隊長であるオグマ一人で十分である。
王族であるシーダを同行させ、あまつさえ戦闘に参加させるなどもってのほかである。
マルスは、そう考えていたのだが。
「でも、シーダ言ったろ? 『一緒に歩みたい』って。
王族としてだけでなく、人間としての意思があったはずだよ」
マルスはそれに薄々感づいていた。
だからこそ、あえて別れの挨拶にも行かずに発った。
個人的な意識で彼女を傷付ける様な事にはしたくなかったと、
少なくともマルスはそう思っていた。
表情を曇らせたマルスを見て、ラゼルはニッと笑う。
そして親指を立てて船の左舷後方を指した。
「お前はそうじゃないかも知れんが、相手もそうだとは限らないだろう?」
騎士団の面々が何やら歓声を挙げている。
同じ空を見やれば、そこには羽と足をバタつかせるシーダのペガサスの姿があった。
「……シーダ!?」
例え王族という立場であっても、例え個人的な立場であっても、
彼女はマルスに付いて来たであろう。
マルスには人を惹きつける力があった。
彼がこれからも発揮してゆくだろうその力を、
無意識ながら最初に行使した相手がシーダ姫であった。
「マルスさまー!」
シーダが馬上から叫ぶと、
今まで船酔いを起こしていた三人も飛び起きて彼女に向かい手を振った。
騎士団員も、次々と甲板に集まってくる。
マルスも船の縁まで駆けつけると、シーダは右手で大きく手を振りながら再び叫ぶ。
「私もー! 私も一緒に行きまーす!」
マルスは、シーダを同行させる事への責任感を心の底で鈍痛として感じながらも、
それ以上に彼女の気持ちを喜んだ。
本人としても、何故この様な気持ちになるのかは漠然としか理解できなかったが、
彼は胸を張って手を振り返したのであった。
「ところでオグマ」
皆がシーダの登場に湧き立っているところへ、ラゼルがオグマにこっそり話しかける。
心なしか、テンションの高さとはまた違った笑みを浮かべていた。
「あんた、シーダ姫に剣を捧げたよね。昔、命を救われた時に」
傭兵オグマは、元はノルダという奴隷産業が盛んな町で
奴隷剣闘士として見世物の殺し合いをさせられていた。
とある日に仲間の奴隷を連れて脱獄を試みたのだが、
仲間は何とか逃がしたもののオグマ本人は捕らえられてしまい、
厳しい拷問の末処刑される事となった。
そこへ通りかかったのが当時はまだ幼い子供だったシーダである。
彼女はオグマを必死で庇い、タリス王に懇願して
オグマを奴隷という身分から解放したのである。
それからというもの、オグマはシーダに命を捧げ彼女の剣となる事を誓ったのだ。
「昔の話だ」
思い出をシーダ以外の他人と共有したくないのか、短く返すオグマ。
そんなオグマに、ラゼルがとある言葉をささやく。
彼の笑みは、さらにいやらしいものになっていた。
「良いの? 皆シーダ姫の腋を見てるみたいなんですが」
「なにぃ!?」
シーダは大きく手を振っていた。
それ故、綺麗な腋が剥き出しになっていたのだ。
騎士団員や傭兵隊も、いくらかそれを意識して見ている様子であった。
王族で美少女の腋など、そうそう見れるものではない。
「おい貴様ら! 着艦の場所を空けろ!
とっとと道開けるんだよ!
サジ、マジ、おめぇら船酔い治ったんなら薪でも割ってろこのアホンダラ!」
今にも剣を振るいそうな剣幕のオグマに、騎士団員は渋々と従う。
サジとマジはそれを聞くや否やまた船酔い状態に逆戻りする。
そんな様子を見て腹を抱えて笑うラゼル。
シーダが船に着艦すると、ペガサスから降りてマルスの傍らへ向かう。
マルスの表情は、他に取るべき表情が無いかのような微笑であった。
(これからの戦い、僕はシーダを守りきれるのだろうか。
いや、自分にはやらなくてはいけないことがある。
英雄アンリの末裔として、この戦争を終わらせなくてはならない!
そして、彼女を――)
後に暗黒戦争と呼ばれるこの戦い。
王子マルス率いるアリティア軍は、二年の歳月を経て復活したのであった。