滅びた世界で銃を持つ少女 ー科学と魔法の融合世界ー 作:鈴水
血と硝煙の匂いがする
科学と魔法の融合世界。
世界は一度滅んで、再生した。
ある時、魔法という技術が発見された。
それらを取り込もうと、大国間とそれに追従するいくつかの小国家群が壮絶な世界戦争を繰り広げた。
戦禍は激しくいくつもの都市が、大規模魔法か科学兵器で焼き払われた。
1年、それらが滅び文明レベルの下がったちぐはぐな世界が誕生した。
いくつかの国は残り、大国と呼ばれた無数の国家が焼け野原となった。
この物語は、そんな世界で生きる少女の物語である。
--少女の過去--
少女が銃を片手に戦場を歩いている。
血と火薬のにおい。
戦場にいると嫌でも鼻につくそれらの香りを、気にした表情もせずにただ歩き続けている。
時に影から狙う狙撃兵の視線が痛く突き刺さる。
少女には、視線を感じ取れるという能力があった。
それは生物が本来持っているものだが、少女のそれは桁が違った。
1キロ先から狙う狙撃兵が、引き金を引く瞬間を感じとれる。
ふと少女は銃を取り出すと躊躇いなく発砲したかと思うと、廃ビルの窓から血が垂れる
視線にも強弱があって、殺そうと殺気立つ時はなんとなく分かる。
情欲にまみれた視線を寄こされることもあるが、少女にとっては気にかけるほどの興味もない。
幼い頃にその力を自覚した少女だったが、幼いながらに「特別な力」というものは誰にも口外してはならないと知っていた。
それでも、目ざとい人間というのはどこにでもいて、些細なきっかけで簡単にばれてしまう。
最初は海外に旅行へ行ったのが始まりだった。
何か自分への視線に気づいて、そちらへ振り向いていたりを繰り返していた。
おそらく、それがまずかったのだと思う。
最初に、某大国の諜報機関エージェントと名乗る人間が、少女の家にやってきた。
周りから見た少女は、普通の日本人で、小柄なハイスクールの女学生。
それが、何を間違ったらそんな危ない人達が自分を尋ねてくるのだと思った。
そもそも、自分にそれらが名乗った時点で、普通じゃないことが丸分かりである。
アニメや映画じゃないんだから、普通にそれらが名乗ることなど、本来あってはならないものだ。
両親は、何か思いつめた表情をしている。
最近、両親の経済状況は思わしく無かったというのを少女は知っている。
父がリストラの憂き目に会い、会社も退職金が支払われる前に倒産し雲隠れしていた。
その話をする度に喧嘩になって、母か父のどちらかが泣いているのを何度か見た。
別に殴りあいになっている様子はなくて、ただ言い合いだけが夜の寝静まった頃に聞こえてくる。
少女には妹と弟が居た。
ある日、少女だけが学校を休むように親から言われていた。
サボれること事態には異論が無かった少女には、とりあえず学校を休んだ。
最初は何だろうと思ったが、怪しい人達に自分が売られるのだとなんとなく分かった。
最後に目もあわせずに「ごめんなさい」と繰り返す両親の姿だけが印象に残っていたが、それほど悲しみはなかった。
少女は自分が他者の視線を感じ、そこに乗る意思を多少でも読み取れるようになってから、世の中を冷めた目で見ていた。
最初は小学校の担任の先生に対してだったし、次に親戚や近所を巡回する警察官のお兄さんであったりもした。
世の中には悪意が満ちていて、誰かの視線というのは幼かった少女に寒気をもたらすには十分なものがあった。
それからは諜報訓練という個性を消す為の指導を受け、銃器や戦闘訓練といった殺人を伴う後ろ暗い世界に入らされた。
一年もかからずに、少女は戦闘部隊の一員となっていた。
戦場を歩いている少女には、人を配置した狙撃など効きはしない。
敵にとっては恐ろしい戦闘マシーンのようであるし、攻撃のタイミングを視線で読める少女は防弾装備など何も持たなくても避けられる。
極力身軽な装備に身を包み、颯爽と攻撃を避け続ける。
痛い程に感じる殺気と視線が、悪意とは違う、生きたいという強い渇望の眼差しに思えて、戦場を歩く瞬間というのは心地よいものがある。
敵を殺せ、われ等が生き残るためには引き金を引け。
時には自らの家族を想って、泣きながら引き金を引く兵士もいる。
それらの攻撃が少女の目の前を素通りし、逆に目が合った瞬間の恐怖の眼差しが、少女にとっては何よりも痛快だった。
そうして少女は引き金を引く。
膝から崩れ落ち、手には家族の写真を握り締めて血の涙を浮かべているモノ。
人は頭を撃たれても、十数秒はまどろむ意識があると聞いたことがある。
流れる血の涙は、ただ頭の傷から垂れている真っ赤な水滴なのか、それとも本当に流している涙なのかは、少女には興味の無いことだった。
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少女は自らが捨てられた日に、本名を捨てた。
それでも名乗る名くらいは必要になる。
だからこう名乗った。
修羅を生き、血と肉の道を築くことしかできぬ、非天を掲げた神の如く。
『阿修羅』に肖り「シュラ(sura)」と名乗ることにした。
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少女が諜報員になってから1年で、世界大戦に巻き込まれた。
運が良いのか悪いのか、最終的には生き残り、背後にいた国はもろともに崩れさり跡形も残らなかった。
最後に所属していたのは、スパイとして潜り込んだ傭兵組織。
魔法と科学の同居する世界では、時に銃器より魔法が強く、銃器より魔法が強いを繰り返す。
その中で生まれたスタイルが、両方の部隊員を抱える傭兵組織。
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科学と魔法の融合世界。
世界は一度滅んで、再生した。
もう一度言う。
ある時、魔法という技術が発見された。
科学と魔法の両方の力を行使した世界レベルの戦争が行われた。
そして、1年でそれらが滅び文明レベルの下がった、ちぐはぐな世界。
少女が生きるのは、そんな歪で物騒な世界。