滅びた世界で銃を持つ少女 ー科学と魔法の融合世界ー 作:鈴水
小競り合いが始まった。
仕事の内容は、盗賊団の殲滅。
敵には魔法使いがいて、遠距離からの制圧射撃および小規模な爆撃をしてくる。
銃を持った兵士がそれら火力支援を受けながら前進してくる。
正規軍は何度も衝突を繰り返す内に、疲弊しすぎていた。
そこで登場するのが傭兵の役目となる。
対価の支払いという条件の元、その地方では名のある傭兵団フレイヤに依頼が回ってきた。
正規軍をこれ以上、消耗させたくはない。
そういう時、対価で買える傭兵というのはいつの時代も重宝する。
普通に軍隊を動かすよりも割高となるが、兵士を一から育てる手間、常駐させておく維持費などを考えると格段に安くなる。
傭兵とは、一時の消費でありコストパフォーマンスが格段に高くなる。
だからと言って、正規兵が不要かと言えばそんなことはない。
主権を主張するためには対外に示せる武力が無くてはならないし、国内外に不穏分子も存在する。
ゆえに、傭兵とは勝手の良い商品である。
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出撃前、皆が葬式のように静まり返っている。
無駄口を叩く者など誰一人としていない。
「皆、出撃の時が来た」
フレイが前に立ち演説を開始する。
ここ傭兵団フレイヤでは、出撃の前には必ずこういう演説をする。
隣に居る顔が明日には物言わぬ肉塊になっているかもしれないのだ。
百戦錬磨、一騎当千。
そんな兵士たちでさえ、どんなに強くても死ぬときは死ぬ。
銃や魔法でなくたって、流れてきた矢でさえ当たり所が悪ければ即死する。
こぶしサイズの投石でさえ人を殺せる。
人が剣を持って戦うのは相手を殺しやすいから、相手より早く切れる可能性が上がるからというだけの話。
魔法や銃弾を放つのは、近くにいる白兵より距離を取って的(まと)にする方が有利に戦えるからだ。
皆の瞳はギラギラと輝いている。
あるものは瞳の色が相まって、まるで視線だけで人を殺せるみたいに。
あるものは冷たく、何も写していないかのように。
その中でシュラは、愉悦を湛え狂った笑顔を浮かべている。
ここに集まった者達に、そもそもまともなものなど誰一人いない。
かろうじて、技術スタッフや後方支援担当では血の気の多い者は少ないが、それでも変人が集まり職人気質を持っている。
「抜刀せよ」
自らの短剣や長剣を、技術スタッフなら己の工具でもいい。
これは一種の儀式のようなもの。
皆が目の前に掲げる各人の道具や、それが無い者はこぶしを前に突き出している。
「これより、敵盗賊団の殲滅作戦に入る」
一呼吸置き、まっすぐに前を見据えている。
「敵を殺せ。我らの制服が黒いのは返り血を浴びても平気だからだ。
生きて帰れ。戦いが終わったら戦友と一晩中飲み交わそう。
血に狂え。こんな世で最後まで立ってられるのは狂った奴らだけだ」
フレイは剣を掲げて静かに言う。
「往こう」
誰もこの場で大きな声を上げるなど間抜けな真似はしない。
まだ戦端が切られてはいないとはいえ、大きな声を上げれば気づかれるかもしれない。
それは生命線だ。
長く傭兵として生きるには、敵に気づかれてはならない。
今回は正式な戦争ではなく、表向きはただの小競り合い。
戦場の予定地点からは遠く離れていても、敵側の偵察隊が近くに歩いていれば、気づかれるかもしれない。
フレイという青年は、金髪で白い肌、瞳の色は赤く燃えるような印象を与える。
表情は凛として無表情で、近づき難い雰囲気を身にまとっている。
それでも演説のこの瞬間だけは、皆の闘志に火が着くように、静けさが覚悟の炎をともしていく。
声を上げる勇ましさじゃない、鼓舞するような声援でもない、同じ戦場に立ち、生死の境界を渡り歩く覚悟が団員に伝わってくる。
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静かに統率の取れた動きで、皆が持ち場に着き行動を開始する。