仮面ライダー【レイヴン】   作:ODEN

1 / 3
第1話「変身」

第1話「変身-①」

 

_誰だって、忘れれない出来事がある。

それが自身にとって苦となるような物であれば、尚更だ。

 

「圭介っ....逃げろ.....!」

 

辺りは暗い。

いや、赤黒いと言った方が正しいだろうか。

俺は一心不乱に、真っ赤な火に包まれた瓦礫の中を駆け抜けていた。

 

身体中が、痛い。

 

当時まだ小さかった俺は、ただただ逃げる事しか出来なかった。

そんな中、瓦礫の...いや、死体の山の上に佇む人影が一つ。

人...いや、怪物だろうか。

人とは形容しがたいそれは、足元に転がった、首と思われる物体を蹴飛ばした。

「........っ!」

俺は、その怪物を睨みつける。

街を、友を、家族を....滅茶苦茶にした、それを。

「うああああああっ!」

無謀だと解っていた。

馬鹿げた事だと解っていた。

だけど...俺は走った。

目の前にある光景が許せなかった。

もしくは、家族の後を追いたかったのかもしれない。

怪物は、生存者である俺を煩わしく思ったのか、その鋭い爪を振り上げる。

 

「ちくしょう.....!」

 

その時だ。

俺に迫ろうとしていたその怪物は、瓦礫の山から吹っ飛ぶ。

「っ⁉︎」

燃え上がる火の中、俺が見たそれは、銀色に包まれた人影。

虫の様な触角、風になびくマフラー。

そして、暗闇の中、薄青く輝くツインアイ。

銀色の人影は俺の姿を認めると、吹っ飛んだ怪物に向かい走って行く。

流れるように、銀色の人影は怪物に対して蹴りを加える。

よろめく怪物。

好機とみた人影は、乾電池のような細い物体を取り出すと、その腰に巻くベルトのパーツに細い物体を装填する。

 

【レイヴン!ヒッサツ!マキシムストライク!】

 

銀色の人影は高く飛び上がると、風に乗り勢い良く怪物に蹴りをお見舞いした。

怪物はその蹴りに耐え切れず、爆散。

その場に降り立った人影は、俺の方に向かって歩いてくる。

 

それが、俺と【レイヴン】の出会いだ。

 

...

 

機械音_正確に言えば、歯車の音が静かに響いていた。

辺りは薄暗い。

少し広いその空間には、至る所に妙な光を帯びた機械...と、どろりとした液体が入った半透明の筒。

妖しく光るその中には、得体の知れない「何か」が不気味に脈打っていた。

「全く...久しぶりの【作戦】なのに、君のトロイドを出すのかい?」

青装束を身に纏った男_眼鏡を掛け、知的なイメージを感じさせるその男は、柱を背もたれに立っていた赤装束の男に言う。

「ああ?いいだろ別に...実質、俺のトロイドが一番扱いやすいしな」

赤装束の男---目つきが悪く、如何にも乱暴そうなその男は柱から離れると、バツが悪そうに青装束の男を睨みつけた。

「...あー、そうだねぇ...馬鹿だし」

「今なんつった!?」

赤装束の男が青装束の胸倉を掴み上げる。

それを宥めるかのように、緑装束の男が機械の影から踊り出る。

「心配する必要は無いですよ。障害さえ無ければ今回の【作戦】が成功する確率は...80%」

「だろ?アンサー」

赤装束の男は青装束の男を下ろすと、納得したかの様に一人で頷く。

「しかし問題は....やはり」

「ああ、解ってるよ...」

かつて自身達が作り出し、唯一の脅威となった存在_

「【レイヴン】」

 

ガチャリ。

機械音が響く。

 

ドクン。

「何か」が脈打つ。

 

「始まるぞ...偉大なる大脳の計画が...!」

 

...

 

「全く....状況は?」

「はい、隊員達が現在交戦中の様ですが...やはり普通の人間とトロイドでは無理があるかと...」

 

それなりに広い部屋の中、電子音と情報通達の声が響く。

円形のテーブル、彼方此方に置かれた電子機器、中央にあるモニターと、その光景はまるでSF映画に出てくる秘密基地のようだ。

「...適合者の方は?」

少し濃い紫色の髪をした、スラリとした出で立ちの女性が、オペレーターに聞く。

「えーと、その...カツ丼食べてます」

「はあ...私が行く」

そう言うと、紫髪の女性はその部屋を出て行った。

 

「いい加減教えろよ...ここはどこだってんだ!?」

面接官のような、ピシッとしたスーツの男と向かい合うように座り、テーブルを挟んでカツ丼を頬張る男が一人。

「...ご馳走様!!」

彼は納得行かなそうに立ち上がると、丼を置いて部屋を出て行こうとする。

「...ちょっと待ちなさい」

それを、丁度部屋にやって来た紫髪の女性が引き止めた。

「あ?...何処に行こうが俺の自由だろ。こっちは仕事が無くなってだな...」

「仕事?...あるのに...」

そう言うと、紫髪の女性は一つのアタッシュケースを取り出す。

ロックを外し蓋を開けると、そこには_

銀色のベルトが収められていた。

 

_遡る事、一時間程前。

 

「...やっちまった」

交差点の前で途方に暮れる。

空を見上げ項垂れている男---神居 圭介は、この度自身の勤めていた会社をクビにされ、路頭に迷うフリーターとなっていた。

「...はあ」

きっかけは些細な物だった。何が悪かったのか.....いや、思い出したくもないな。

「.........」

信号が青に変わっているにも関わらず、圭介は歩き出せないでいた。

両親も祖父母も親戚も亡くし、苦労の末やっと手に入れた職だ。ショックは相当な物だった。

「...何もない、か」

不意に、自身にとって未だに忘れられない出来事が脳裏に現れる。

 

赤黒い瓦礫の中を駆け抜け、自らの無力さを思い知った、あの時。

 

何もかもを失い、生きる価値を見出せなかった、あの時。

 

だが、その「あの時」に現れたあの銀色の影が、彼に僅かな希望を与えていた。

 

「...もう一度...会えるかな」

信号が一周回り、また青になる。

ここで止まってても仕方ない。まずは出来ることを考えなくちゃ。

 

そう、踏み出そうとした時だ。

 

突然、目の前に車が現れた。

いや、現れたのでは無く、飛んできたの方が正しいだろうか。

「っ!?」

幸い、身体を捻って飛び出していたおかげで車には当たらずに済む。

放り出された車は、無残にも地面に叩きつけられ鉄の塊と化した。

「........!?」

圭介は咄嗟に車が飛んできた方向を見据え、唖然とする。

そこには、とても人間とは形容し難い、蜘蛛のような怪物がいた。

直感でそう捉えただけで実際そうとは限らないが、所々蜘蛛のようなイメージがある。

「.......っ!」

何故か、その怪物が圭介には妙に懐かしく思えた。

「まさか...!」

目まぐるしく、脳裏の景色が変わる。

次の瞬間、圭介は駆け出していた。

怪物とは正反対の方向に。

 

「駄目だっ...駄目だっ...駄目だっ...」

 

そんな時だ。

急に現れた一台の黒い車が、圭介を呼び止めたのは。

 

---そして、現在。

 

「....こいつが、俺の物に...」

手に持ったベルトを眺め、少し小さな溜息を吐く。

しかし、今の圭介に出来る事は、もう既に決まっていた。

「...ああ、もういいさ。やってやる...!」

説明は大体された。

後は、自分の身体が着いてこれるか。

こうなったら一か八かだ。

あの時のあいつに...俺が。

「今度は俺が...【仮面ライダー】だ」

目の前の---トロイドと呼ばれた怪物を睨みつけ、ベルトを腰に巻く。

 

「...【変身】」

 

次の瞬間、圭介の身体は銀色の光に包まれていた。

 

「【レイヴン!スタート!】」

 

光を裂いて現れていく、「あの時」の銀色の影。

虫のような触角、風になびくマフラー、そして、薄青く光るツインアイ。

 

「さて、お仕事開始だ...!」

 

弾けるように、走り出した。

 

 

次回、仮面ライダーレイヴン_

 

「俺が、レイヴン...」

 

「そ。ああ、私の名前は真澄...清隆 真澄よ」

 

「やっぱり現れたか、レイヴン...」

 

「奴らは【ブレイン】...そして、その対抗組織がこの【反脳世界連合】ってわけ」

 

次回「組織」

 

レイヴン、装着〈スタート〉!

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。