仮面ライダー【レイヴン】   作:ODEN

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第3話「蒼剣」

前回までの仮面ライダーレイヴンは...

 

「【レイヴン!ヒッサツ!マキシムストライク!】」

 

「っ...せぇえぇい!!」

 

「察しが良くて助かるわ。簡単に言えばそうなるかな」

 

「やりますよ、【レイヴン】。それが今の俺に出来るというのなら」

 

「さあ、第二ラウンドだ...」

 

...

...

 

一通り基地の中を案内された後、俺は広間に通された。

広間は二段構造となっており、上段には司令官が座るかのような椅子とミニパソコンにオペレーターが2人ほど、下段には円形のテーブルを中心に人員が配置されており、天井から吊られたモニターや至る所に存在する通信機器も相まって、如何にも秘密基地らしい雰囲気を醸し出していた。

その中で一際目を引くのが円形のテーブルから天井に伸びる一本の丸く太い柱で、内部には半透明の液体らしき物が入っている。

「今からここが、神居君の拠点になるわ。そして彼らが_」

真澄さんが後ろを振り向く事で気付いたのか、数人の隊員達が俺の前に躍り出る。

「よろしくね〜」

「ほう、君があのトロイドを...」

「変身した感覚、どうでした!?」

...みな、それぞれ個性的な面子のようだ。

「紹介するわ。まずはうちの技術担当である製作チーム」

目の前に現れた三人組は白衣を纏っていた。...いや、特徴はそれだけじゃない。

「...なんか、ちっこくないっすか」

三人組の一人は年端もいかない子どものようで、薄茶の髪が特徴的。

着ている白衣もサイズが合わずダボダボだ。

「失礼な!僕は泉 三平。レイヴンの力の源である【マキシムスロット】を担当しているんだ」

マキシムスロット?

現れた疑問を引き継ぐように、真澄さんが口を開く。

「あー、マキシムスロットについてはあとで話すわ。...兎に角、三平君はうちのれっきとした技術者よ」

「は、はぁ...」

俺が溜息に似た返事をする中で、一人満足するように鼻を鳴らす三平。

「次は私ね。...泉 ニ華。主にレイヴドライバーの調整をしているの。よろしくね、新人くん」

口を開いた女性は桜色の髪を持っていた。

背は俺と比べ少し低いくらいだが、活発そうなその言動は見る者に明るいイメージを与えさせる。

「そして最後に....新型武装などの開発を行うのが私、泉 一郎。」

俺より頭一つ背が高い青髪の青年が俺の前に出て、掛けたメガネをクイっと上げる。

そこまで自己紹介が済んだところで、真澄さんが再び口を開いた。

「次ね。主に情報通達を仕事とするオペレーター」

紺色の渋いスーツをピシッと着こなした若者が俺の前に立つ。

「...おっ、俺っ、鷹宮 正義って言います!...よっ、よろしくお願いしますっ!!」

そう言って、垂直に綺麗なお辞儀をした。

「正義君は若いのに誰よりも仕事の効率が良くてね。うちの隊員にピッタリと思った訳」

「...それで、真澄さんの立ち位置は?」

こんな個性が強いメンバーが集まっているのだ、真澄さんもそれなりな役職の筈_

「ああ、言ってなかったっけ。それじゃあ改めて...私は清隆 真澄。一介のレジスタンス隊員であると共に、ここ中心街支部【アース】の作戦司令官を担当しているわ」

...案の定、相当な位置にいた。

 

...

 

「それじゃ、まだ慣れてないと思うから基地内をレッツ探検、って事で」

結局マキシムスロットとかいう物についての説明は後回しにされ、自由行動という形で俺はほっぽり出された。

...なんというか、真澄さんはマイペースな奴だ。

とりあえず先ほどの作戦行動室を後にして、基地内を巡ってみる。

食堂に仮眠室、研究室や医務室など、様々な施設が揃っているようだった。

「...っと、ここは...」

どうやらかなり奥まで来てしまったようだ。

あまり普段使われていないのか、通路は薄暗く気味が悪い。

「ん、あんな所に明かりが...」

視線の先に、青白い明かりが見えた。

 

「...おお...」

光の元に辿り着くなり、目の前の景色に圧倒された。

開けた場所に、その場を囲うように大水槽が設置されていた。

様々な海洋生物。今や絶滅種となった動物まで、優雅に活き活きと泳いでいる。

「...凄いな」

図鑑という書物からでしか見る事の出来なかった生物達を見て、俺は感嘆の息を漏らす。

「...誰?」

そんな時、側から声が聞こえた。

「っと....?」

声のした方を向くと、自分より少し背が低い少女が、不思議な表情で俺を見上げていた。

ゆったりとした服に、長い黒髪ストレート。どこかぼうっとした瞳は、俺じゃなく別の場所を見てるようにも思える。

それよりも驚いたのはその存在感の薄さだ。声を掛けられるまで、彼女に気付く事が出来なかった。

「え....ああ。俺は神居 圭介...今日からここに配属する者だ」

「...そう」

少女は俺の名前を認めると、さながら何もなかったかのように水槽に目を戻す。

_しばらく、沈黙が流れた。

流石にこのまま黙ったままも気まずかったので、水槽内をながめていた少女の隣に移動する。

「...魚、好きなのか?」

「...ええ」

水槽から目は離さなかったが、俺の問いには答えてくれた。

「...ここは、落ち着く」

「...それは同感だな」

そしてまた、二人して黙ってしまう。

もともと無口な性格なのだろうか。

「...えっと、その、君は...」

「...名前?...朝比奈 明。...明で、いい」

聞く前に名乗られてしまった。

「そうか、明か...ここで明はどんな仕事をしているんだ?」

会話が途切れないように、どんな役割を持っているか聞いてみる。

「...探知」

「...というと?」

その瞬間、彼女の声のトーンが低く聞こえた気がした。

 

「...トロイドの発生時間...例えば、今とか」

 

...

 

「説明出来なくてゴメンね...はいこれ、さっき言ってた【マキシムスロット】よ」

真澄さんから細長い物体を手渡される。

さながら乾電池のような形状をしていて、手のひらに収まる程だ。

「活用法は実践中に通信機を使って説明するわ....あと」

一歩後ろに下がると、真澄さんは側にあった布を取り払う。

そこには、銀と水色が主体となった、流線形のバイクが佇んでいた。

「これは?」

「レイヴン専用バイク...【マシンレイヴンラリアン】よ。これを呼び出せるスロットもベルトのホルダーにしまってあるわ」

それを聞き、俺は手元のベルト_レイヴドライバーに目を向ける。

電飾に照らされ輝きを放つそれは、俺が【レイヴン】_【仮面ライダー】なのだと何よりも実感させた。

 

...

 

圭介がマシンレイヴラリアンに跨り現場に向かった後、レジスタンスの作戦行動室に隊員達が集まった。

その中には司令官である真澄は勿論、研究チームである泉三兄弟、そして明の姿もあった。

「...今回のトロイド...普通のレイヴンじゃ....倒せない」

モニターを見て、明が呟く。

「その為に今回のがあるんだよ。急造だったから調整はしてないけどさ」

隣にいた三平が、背伸びをしてモニターを見据える。

「...それじゃあ始めようかしら。作戦、開始《オペレーション・スタート》!!」

真澄の号令と共に、隊員達は一瞬にして仕事モードに突入した。

 

...

 

現場まではさほど、時間は掛からなかった。

それ程このマシンが高性能なのだろう。納得しつつ、ヘルメットをハンドルに引っ掛けた。

幸いバイクの免許を持っていた事に安堵しながら、俺は目の前で構える怪物を睨み付ける。

「あいつが今回の...」

目の前の怪物_真澄さん等が【トロイド】と呼んでいたそれは、「牛」...簡単に言えば、そんなイメージを持っていた。

生物的なツノや耳の他に、機械的な銀色の部分やネジも見える。

どうやら、トロイドは個体によって姿が異なるようだ。

「...まあ、ずっと同じ蜘蛛男...というのも、味気ないよな...」

すっくと立ち、即興で考えたポーズを取る。

右腕が左腕の上に来るように両腕を交差させ、ゆっくりと解くように離れさせる。

左腕は握り拳を作り空に突き出しながら、右腕はレイヴドライバー側部のレバーへと添えた。

そして左腕もレバーの元へ持って来ると、勢いのままにレバーを下ろす。

「...変身!」

...決まった、とかどうとかはこの際気にしない。

こういうのはその場のノリが大事なのだ。

「【レイヴン!スタート!】」

レイヴドライバーから光と電子音声が溢れ、超高性能3Dインジェクターが強化装甲を生成。

俺の周りを舞う白銀の鎧は、即座に身体のあちこちに重ねられていく。

光が収まると、そこには白銀の超人、【レイヴン】が立っていた。

 

「ふぉぉ、かっこいいい!!」

作戦行動室では、オペレーターの正義が手を大きく振り上げて興奮していた。

「ノリノリじゃない、神居君...」

苦笑しながらも、真澄は圭介にレイヴドライバーを託して良かった、と思うのだった。

 

走り出した先にトロイドを見据え、飛び上がりつつ右ストレート。

案の定躱されたが、想定内。

即座に身体を捻って裏拳をお見舞いした。

「っち...」

しかし、トロイドには届かない。

その硬い装甲が、俺の拳を阻んでいたからだ。

トロイドは俺の拳を掴み、勢いのまま投げ上げる。

宙空に放り投げられたが、体勢を立て直し着地する事が出来た。

「...っ、まだまだ!」

再び走り寄り、今度は蹴り上げ。

トロイドの腹を思い切り捕らえたが、やはり攻撃は通らなかった。

「...だぁっ、なんでこんなに硬いんだよっ...」

一人愚痴る隙を突いたか否か、今度はトロイドから迫ってきた。

視界が銀に染まり、次の瞬間弾き飛ばされる。

地面に叩きつけられ、二、三回バウンドした。

「っぐ....ぅ...!?」

強化装甲の恩恵でさほどのダメージはない。

しかし、叩きつけられた際の衝撃は相当な物だった。

「やっぱり苦戦してるかしら、神居君」

起き上がろうとした時、ベルト内部の通信機から真澄さんの声が聞こえた。

「そりゃあ苦戦しますよ、あんなに硬いのが相手じゃあ...」

尚もトロイドは迫る。

俺はバックステップで後退し、なんとかトロイドと距離を空けた。

「...出撃前に渡さなかった?マキシムスロット」

「...ああ、アレを使うんですね」

ベルト背部のホルダーから一本の乾電池...じゃなかった、マキシムスロットを取り出す。

透明の幕の下に、青が見える。

「ベルト左側のスロットローダーを開いて、既に入ってるスタートスロットの代わりに今持ってるセイバースロットを装填しなさい。あとはシステムに任せれば大丈夫よ」

左腰を見ると、成る程、確かにホルダー内に銀のマキシムスロットが入っている。

そういえば、以前蜘蛛のトロイドと戦った時は無意識にホルダーを開いていた...いやそうなるのも不思議なんだけど。

「さて、どんな姿に変わるか...」

ホルダーから銀のマキシムスロット_スタートスロットを引き出し、代わりに青のセイバースロットをトロイドに向かい投げつける。

それと同時に走り出し、真っ直ぐに跳び上がった。

「........ここッ!」

そして、トロイドとすれ違う瞬間_スロットをキャッチ。

振り向きざまに、ホルダーを開き青いセイバースロットを装填した。

「【レイヴン!セイバー!】」

ベルトから蒼い閃光が迸り、俺とトロイドを包み込む。

銀の装甲の上に、セイバースロットをトリガーとして生成された蒼い装甲が重ねられていく。

「....よし」

光を裂いて現れたのは、先程まで立っていた銀のレイヴンではなかった。

「高強度の敵に対し、実体剣に熱を帯びせ溶断する_。レイヴン、セイバーフォルム!」

銀色のスタートフォルムと違い、鋭利になった肩装甲に、黒が強い主張を放つスーツ。

「顔」に当たる部分には蒼く半透明の二枚の強化マスクが取り付けられ、内部からはスタートフォルムのツインアイが光を放つ。

そして、何よりも目を引くのは_右手に握る長剣。

頭部強化マスクと同じクリア素材で作られた薄緑の刃が、この形態が剣に重きを置いた接近戦仕様なのだと実感させた。

「成る程....これなら!」

トロイドに跳び寄り、思うがままに縦に一閃。

その瞬間、「捉えた」という確信と共に、トロイドの装甲が裂かれる音がした。

「やった!」

通信機を介して、誰かの声が聞こえる。

それは俺も同じで、勢いを付けたまま第二撃。今度はサイドからの横薙ぎだ。

先程よりは掠めた程度に近かったが、ダメージが通ったのを確かに感じる。

本能的な危険を察したのか、トロイドが後退する。

それが瞬間に出来た最大の隙であり好機だと、レイヴンの戦いを見る作戦行動室の隊員達、はたまた剣を振るう俺もそう確信した。

後部ホルダーから一本のマキシムスロットを引き出し、セイバーフォルム特有の長剣_【ブルーセイバー】に装填する。

「【レイヴン!ヒッサツ!マキシムスラッシュ!】」

レイヴドライバー、ブルーセイバー両方から電子音声が響き、ブルーセイバーの刀身から蒼き光が迸る。

「ッ....せぇのぉッッ!!」

トロイドに身体もろとも突っ込み、腹部を捉え斬り込む。

刀身を真っ直ぐにトロイドから抜いたその瞬間、背後に立つ牛の怪物は爆散した。

 

...

 

「.....お疲れ様」

明から冷えた麦茶を手渡された。

キンキンに冷えた麦茶は戦闘で火照った身体を冷ましてくれる。

「...ってか、何でトロイドが来るとかわかったんだ?索敵センサー?...とかを持ってるようには見えなかったが」

それを聞くと、明はそっぽを向き淡々と言葉を紡ぐ。

「.....そういう、体質」

「体質....か」

特異な奴もいるんだなあ...と一人納得し、先程の戦いを記録した映像のスイッチを入れる。

「........あ」

そこには、トロイドに対しキレッキレの変身ポーズを決める俺の姿が映っていた。

「............」

思えばこの戦闘、記録されていたんだった。

俺は一人頭を抱え、すぐにそのシーンをスキップ。

近くで同じモニターを見ていた明は、一瞬目を丸くすると

「.......ふふっ」

と、小さく笑ったように見えた。

「ちょ、笑うな!」

一息に、麦茶を飲み干した。

 

...

 

次回、仮面ライダーレイヴンは...

 

「...家、追い出された...」

 

「.........フリーターだから?」

 

「うるせえ」

 

「.........そんな事より、何か、今までとは違うのが.....」

 

「はぁ?.....ってあいつは....!?」

 

「「お手並み拝見と行こうか、レイヴンッ!!」」

 

次回「暴怪」

レイヴン、装着(スタート)!

 

 

 

 


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