救世神話-Storm Saviour   作:風代利紅

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第1話《スポーツ万能のビギナー》

若く、美しい女性は棺の中で花に包まれるように眠る。

 

男はそれを無表情で見つめる。

顔には生気がない。

 

女の眠る棺は蓋が閉められ、墓穴に納められる。

男たちの手により、スコップで土を被せられていく。

 

女は土の中で眠る。

男は尚、見ている。眠る女の墓標を。

 

葬儀が終わった後も男はその場に立ち尽くす。

その墓前には男が一人立っているのみ。

空は晴れとも雨とも言いがたいどんよりした曇り具合。それはまさに男の心を表現したかのような空模様。

 

静寂の時が続いた。

長い、長い静寂。

 

 

やがて男は口を開く。

 

「……取り戻す」

「…君を取り戻す」

「エリザ…」

 

 

 

****

 

 

 

「試合終了!!」

 審判の吹くホイッスルが鳴り響き、サッカーの試合が終わった。

 丁度、ゴールにシュートが決まり、点数が1点加算されたところで審判の一言で試合は終わった。

 試合終了の時点で3-4。草薙荘介の所属するチームが4点を獲得した側であり、つまりは勝者である。

 両チーム向き合い、挨拶を終える。

 芝生のコートの中、試合が終わり緊張の糸が解れた高校生たちが雑談で賑わう。荘介のチームは勝った事を素直に喜び合い、負けたチームは逆にややネガティブな様子を見せていた。

「お兄ちゃんお疲れ様ー」

「おう、サンキュー」

 妹の草薙夕実。兄の付き添いでサッカーの試合を見に来ており、試合を終えた荘介にスポーツドリンクの入ったペットボトルを手渡す。

 荘介は顔の汗をタオルで拭きつつ、ペットボトルのキャップを開けるや否や、勢い良く飲み干す。

 

草薙荘介――

 彼は元々サッカー部ではない。

 スポーツ万能と言う評判を聞きつけ、キャプテンがその日だけサッカー部に協力するように依頼したのだ。

 勿論、タダ働きと言うわけではなく、勝てば試合後の打ち上げを彼に奢ると言う条件でだ。そして、晴れて試合に勝てた事で、この後、打ち上げで焼肉食べ放題に行く事になるだろう。

 今日、荘介らが負かしたチームの相手は、荘介の助っ人ぶりをある程度知っている者もおり、要注意人物として今後、マークしていく事となるだろう。

 

****

 

 焼肉屋に入る。しかし、少し安めの食べ放題。学生はお金をあまり持っていないのでそこは仕方のないところだろう。それでも彼らは十分に楽しめているので問題もない。荘介も勿論参加。

 彼らがそこで歓喜と共に食事をできているのも荘介の活躍によるところは大きいのかもしれない。

「おつかれー!」

 部員達がドリンクバーのジュースを全員が持って来たところで乾杯。肉を焼き始めたり、寿司を食べ始めたりなど、それぞれが食事と雑談を楽しむ中、様々な話が飛び交う。サッカー、学校、恋人のことなど。

 

 その中で、ふと、カードゲーム"デュエルモンスターズ"の話題が出た。

 世界的にも大人気で、プロリーグすら存在するほどの大規模なゲーム。このサッカー部の中でもやや流行っており、合間に部員らがベンチの隅などでやっている様子も散見されるほどだ。

「草薙、お前はデュエルやるの?」

「ん?俺?やったことねぇな」

「マジで?皆やってるのに?」

「いやぁ…妹や兄貴もデッキ持ってるし、興味がねぇわけじゃねぇんだけど、俺、スポーツの方が好きみてぇだしな」

「じゃあ、少しくらい自分のカード無いの?」

「んー…家帰って引き出し漁ればなんか出てくるかもしれないけど、覚えはねぇや」

学校全体で見てもかなり流行っているゲームであり、荘介の通う高校だけでも7割程度はやっているといわれている。

荘介自身が話すとおり、興味がないわけでもなく、荘介自身がマイペースなところがあるからだ。

 荘介は元々、熱しにくく冷めにくいと言う性分であり、一口にスポーツと言っても興味が向くまでそれぞれで時間がかかる方だった。サッカーこそ、最初に興味を持ったスポーツであり、小学校低学年の頃からよくやっていた。野球、バスケ、陸上なども持ち前の運動神経もあり、ソツなくやっていけるが、興味そのものが向くまでは時間がかかった。

 また、何かに所属すると言う事が苦手な面もあり、高校に入って以来、部活に所属した事がない。まさにマイペースそのものと言ってもいいくらいだ。中学生時代は学校側の意向で強制的に部活に入れられていたのだが、スポーツの能力に反し、幽霊部員と言う珍しい立ち位置にいた。

 

****

 

 明くる日、荘介は朝から自室の引き出しを漁っていた。珍しく騒がしい様子に、荘介の兄、條が部屋を覗き込んできた。

「どうした荘介?探し物?」

「兄貴ー、俺の昔触ってたカード知らねぇよな?」

「どうだっけなぁ」

 條は頭を少しかきむした後に、荘介のカード探しを手伝う事にした。

 荘介はべつにいいと断ったが、條は弟がデュエルをし始める事が嬉しかったようで、協力せずにはいられなくなったようであった。

「お兄ちゃん達、何してるのー?」

 條まで部屋中を探し回ることで余計に家の中が騒がしくなった事で気になった夕実も部屋を覗き込み、まるでミイラ取りがミイラになると言わんばかりに彼女まで荘介の手伝いに参加することになった。

 あまり広くない部屋に三人でいる所為で狭くて落ち着かなくて荘介が思わず絶叫したのは別の話である。

 

 出てきたカードの枚数はなんと20枚足らず。デュエルモンスターズはデッキを構築するのに40枚は必要。このままではデッキが組めない。

 荘介は何となくそんな気はしていたが、條と夕実の二人がむしろ、むぅ…と言った苦い表情になっていた。

 カードも、「ジャスティス・ワールド」「サクリファイス・ロータス」「闇の幻影」「剣闘獣ディカエリィ」などと、まとまりも全くなく、ただ単にカードを水増しすればデッキとしてまともに機能するような状態でもなかった。

「なあ荘介」

「ん?」

「俺のいらんカード分けるよ」

「私のカードもあげる!」

 條と夕実がそこそこにカードを持っていた事で、辛うじて荘介は40枚のデッキを組み上げる事が出来た。

 あの後、荘介は條と夕実の持っているカードの中から幾つか選んで持っていった。その中でも荘介はふと、風属性のカードなどが目に留まり、それらを中心にチョイスしてデッキを組んでいった。

 元々興味が多少あったこともあり、荘介はデッキを握ると少しばかり心が躍る実感があった。勝てるかどうかは別問題としてだ。

 兄弟三人、居間に移動し、テーブルに座ってデュエルを始める事になった。一般的にはデュエルディスクと呼ばれるいつでもどこでも、立体映像による派手な演出でより臨場感あるデュエルを楽しめる機械を持っているのが條一人で、それを使ったデュエルは出来ない。よってテーブルの上でデュエルを始めるのだった。

「よーし、荘介、そのデッキがどの程度やれるかテストだな」

「ホント、久々にデュエルするな…楽しみだぜ」

 

デュエル!

 

続く




◆あとがき
始めまして、風代利紅と申します。
こちらで小説を書いてみることにしました。
昔から度々試行錯誤繰り返していますが、思いの外、上手く行かないものですね。

文章も上手く書いていけるかは自信は今一つですが、楽しんでいただけたらと思います。
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