後、ルビ機能あったんですね、やっと気づきました。
麗須市駅前で開催されたデュエルローカルイベント。
その中で行われたデュエル大会は大いに盛り上がっていた。
右を見れば融合、左を見ればシンクロ、真ん中を見ればエクシーズ。デッキも多彩であれば、召喚方法も多彩で、個性豊かなモンスターが攻撃を飛び交わせている。
「《レッド・ワイバーン》で青山さんにダイレクトアタック!」
「くっ……!」
青山座苦 ライフ 2700⇒300
健一がシンクロ召喚した《レッド・ワイバーン》が座苦を急襲。その特殊能力により、座苦のモンスターを破壊し、がら空きの場に灼熱のブレスを吹き付けた。
ライフは大幅に削られ、皮一枚で繋がっているような状態に追い込まれた座苦。しかし、ライフはまだ0にはなっていない。健一は座苦に止めをさせなかった事を悔やみながら終了宣言をする。
「だぁ~から、お前はまだまだなんだよな、健一」
「くっそー、反論できねぇ……」
「俺のターン、ドロー! 俺は手札の《海皇の重装兵》と、《水霊神ムーラングレイス》を捨てて、《
座苦が呼び出したのは、
しかし、座苦の戦術はただ、メガロアビスを呼び出すだけではない。
「メガロアビスの効果発動のために墓地へ送った《海皇の重装兵》の効果発動! お前の《レッド・ワイバーン》を破壊するぜ」
「あっ!!」
《
次は、健一の場が、がら空きの状態となった。
海皇の重装兵 ☆2
海竜族/効果 水属性 ATK0 DEF1600
(1)このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分のメインフェイズ時に1度だけ、自分は通常召喚に加えてレベル4以下の海竜族モンスター1体を召喚できる。
(2)このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する。
海竜族/効果 水属性 ATK2400 DEF1900
(1)自分のメインフェイズ時、手札からこのカード以外の水属性モンスター2体を墓地へ捨てて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
(2)このカードの(1)の効果で特殊召喚に成功した時に発動する。デッキから「アビス」と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える事ができる。
(3)1ターンに1度、自分のメインフェイズ1に、このカード以外の自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する水属性モンスター1体をリリースして発動する。このターンこのカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
「悪いね、健一くん!!」
にこやかな笑顔と共に、わざとらしい『くん』付けで煽る座苦。
ぐぬぬと言わんばかりに歯を食いしばる健一。
彼らは日ごろからこんな調子でデュエルをしているようだ。それが真剣勝負の場でも。
「《
赤き鱗の海竜が持つ大刀、それは健一に向かって多きく振り下ろされていく。
「リリースする水属性モンスターは無いけど、十分だよね!」
メガロアビスの猛撃とは裏腹の、てへぺろと言った様子の座苦の茶目っ気ある笑顔が健一の神経を逆撫でする。
「青山さん覚えとけぇぇぇぇぇぇぇ!!」
浅井健一 ライフ 2000⇒0
迫真に迫るような絶叫をあげる。それはまさに断末魔。
身内同士の戦いは既に一歩も二歩も先を行く青山座苦が制する。
「これで、俺の大会でのお前に対して20勝突破だな!」
「青山さん、マジ勘弁っすわ~……」
健一対座苦の対戦記録は現状、健一が負け越しているようである。座苦の強さと容赦の無さがここにも表れている。
「この調子で、優勝いただくぜ~」
座苦は意気揚々と、他のプレイヤーに勝負を仕掛けていく。
****
荘介は劣勢に陥っていた。
白鳥のほうが一枚も二枚も上手で、明確な実力差を覆すのは難しいのか。
荘介の場にはカードが一枚も残っていない。対する白鳥の場には、既に、《
悪魔族/融合/効果 炎属性 ATK3500 DEF2100
「E-HERO マリシャス・エッジ」+レベル6以上の悪魔族モンスター
このカードは、「ダーク・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できる。
(1)このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手ターンのバトルフェイズ中に相手フィールド上に存在するモンスターは全て表側攻撃表示になり、相手プレイヤーは全てのモンスターでこのカードを攻撃しなければならない。
「攻撃力3500って、マジかよ……」
引きつったような変な微笑がこぼれる荘介。
ただ攻撃力が高いだけなら兎も角、下手な戦い方をすると強制的に攻撃させられてしまう。
ただし、マリシャスデビルの効果には穴がある。
それは、対戦相手はバトルフェイズを行わず、エンドフェイズへ移行すれば良いと言うこと。そうすることで、バトルフェイズを回避するため、自滅を防ぐことができる。
実はしかし、荘介にはそんな事をしなくても攻略法があった。
(よし、《召喚僧サモン・プリースト》と魔法カードは揃ってるな!)
荘介の手札には《召喚僧サモンプリースト》がある。これは手札の魔法カードを捨てればデッキからレベル4のモンスターを何でも特殊召喚できるという優秀なモンスターカード。
このカードは風属性ではなく、闇属性。それでも、デッキに採用しているのは、このカードを活用すれば、レベル4のモンスターを2体並べ、手軽にエクシーズ召喚を行うことができるからだ。
(こいつの効果でレベル4のモンスターを2体にすれば……)
荘介はエクストラデッキのカードを見る。
(《鳥銃士カステル》! こいつのモンスター効果でマリシャスデビルを戻せば……行ける!!)
召喚僧サモンプリースト ☆4
魔法使い族/効果 闇属性 ATK800 DEF1600
(1)このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動する。このカードを守備表示にする。
(2)このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードはリリースできない。
(3)1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。
鳥銃士カステル ☆4
鳥獣族/エクシーズ/効果 風属性 ATK2000 DEF1500
レベル4モンスター×2
「鳥銃士カステル」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを裏側守備表示にする。
(2):このカードのX素材を2つ取り除き、このカード以外のフィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主のデッキに戻す。
荘介の試合を人ごみの中から覗き込むように見ている者がいた。
理沙だった。
ただし、イベントの合間にこっそり抜けるために、華やかな衣装から初夏にも関わらず、薄暗い灰色のコートとマスク、サングラス、青のニット帽を着用しているため、誰にも正体はわからない。それはさながら、不審者の様でもあるのだが。
(草薙君、頑張って!)
表沙汰にはできないが、理沙は荘介のガールフレンド。今、この場では荘介を全力で応援したいのだった。
「よーし、行くぜ! 俺は手札から《召喚僧サモンプリースト》を召喚! 効果で守備表示に。そして、効果発動、手札の魔法カードを捨てて、俺はデッキから《バードマン》を守備表示で特殊召喚する!」
あっという間にレベル4のモンスターを2体並べる荘介。このまま手はず通りに《鳥銃士カステル》をエクシーズ召喚するところだが……。
「僕は永続罠《
「何ィッ!!?」
《虚無空間》、それは場に存在しているだけで全ての特殊召喚を封じ込めてしまう。ただし、デメリットもあり、自身の場かデッキからカードが墓地へ置かれるとこのカードも墓地へ行ってしまう。
これにより、荘介は《
「くっ、やるな! けど、俺は守備表示モンスター2体を並べてある。このままバトルフェイズは飛ばしてエンドフェイズまで……」
「まだです、僕は永続罠《魔道士の決闘》を発動します!」
「そ、それは……!」
会場がざわめく。
《魔道士の決闘》とは、これが存在している限り、お互いにバトルフェイズとメインフェイズ2を可能な限り、必ず行わなければならなくなる。つまり、荘介はバトルフェイズを避けることはできない。
バトルフェイズに移行せざるを得ない荘介はバトルフェイズへいくことを宣言。
すると、次は《
ただし、《バードマン》は《召喚僧サモンプリースト》の効果により、攻撃できない。
「それでは、サモンプリーストとマリシャス・デビルで戦闘します!」
紫のローブに身を包む老いた僧侶は黒き刃の悪魔に呪術をかけようとする。しかし、攻撃面は脆弱な僧侶の呪術は大悪魔に通じる事無く、その大きな爪に引き裂かれて無残にも散る。
「くっそぉぉぉぉぉ!!」
草薙荘介 ライフ 1900⇒0
なんと、妹に続いて兄も敗北してしまった。
虚無空間 永続罠
(1)このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、お互いにモンスターを特殊召喚できない。
(2)デッキまたはフィールドから自分の墓地へカードが送られた場合に発動する。このカードを破壊する。
魔道士の決闘 永続罠
(1)お互いのプレイヤーは可能な限り、バトルフェイズとメインフェイズ2を行わなければならない。
(あぁ~、草薙君負けちゃった……)
まるで自分のことのように悲しくなった理沙。それだけ荘介を応援していたのだろう。
「いやぁ、参ったぜ。やっぱり強いな、お前」
知らないカードを見ることができたことと、強い相手とのデュエルに充足感を味わった荘介にとって、負けはしたものの、とても楽しいデュエルだったようだ。
「今度やる時は、負けないぜ」
「それなら僕は、次も負けませんよ!」
荘介と白鳥は勝負の後に、さわやかな握手でデュエルを締めくくった。
周りからも拍手が聞こえてくる。どうやら、二人のデュエルは見ている側も心地の良い、良いデュエルだったようだ。
夕実もつられて拍手していた。
(草薙君、ホントにデュエル楽しんでるなぁ。このイベント誘って良かった!)
理沙も気づけば笑顔になっていた。
負けたことは残念だったが、晴れやかな笑顔で握手している姿は理沙にとっても非常に心地の良いものだったようだ。
本当はこのまま、荘介に会いに行きたい。けど、今は仕事の途中だと、涙を呑んで陰ながら荘介を見守ることとした。
サングラス、ニット帽、マスクの下で理沙の表情は目まぐるしく変わっているが、それを知る者は誰もいない。
拍手が収まった頃に、夕実が二人のもとに駆け寄る。
「白鳥君、やっぱり小学校のとき、同じクラスだった白鳥君だよね!?」
「そういえば、草薙さんの妹って事は……草薙さん?」
「おいおい、どっちも草薙だって。んじゃ、俺のことは名前で呼んでくれよ」
「はい、荘介さん」
白鳥が少々戸惑っていた。まさか、昔の知り合いだと言う人物が話しかけてくるなんて思いもよらなかったのだから。
「ところで、夕実、こいつが同じクラスだったって?」
「うん。さっきデュエルしたときからなんだか、初めて会った気がしないなぁっておもって、お兄ちゃんと白鳥君がデュエルしてる間、ずっと昔のこと思い出してたの」
「そうなのか」
白鳥の表情が曇った。
「あれ、白鳥?」
「お兄ちゃん、実はね……」
白鳥は昔のことを思い出したくなかった。その理由を夕実は知っている……。
****
一方、座苦は大会を順調に勝ち進んでいった。
彼が作り上げた《海皇》と、《水精鱗》を合わせたデッキは、自らの手に合っているようで、シンクロやエクシーズも巧みに使いこなして、多くのデュエリストを薙ぎ払っていった。
「いやぁー、青山さんデュエルうまいっすわーwww」
「はいはいわろすわろす」
ネットで見られるような煽りとスルーを意思表示するような冷ややかなツッコミはもはやお家芸のレベルに達している。
見渡せば、随分とソリッドビジョンの数も減っていた。
二組、いや、あって三組か。相当な数の参加者がいたようだが、気づけばかなりの数が脱落している。
見渡せば、荘介と白鳥のデュエルも終わっている。しかし、既に終わった後で、どちらが勝ったかはわからない。
「どっち勝ったかな?」
「青山さん、夕実ちゃんとこいきます?」
「お前は荘介より妹に会いたいだけだろ」
「バレた」
「バレバレやねんて。戻ろか」
座苦と健一は二人のどちらが勝ったかを確認しに戻る。ついでに、勝った方と戦うつもりだろう。
二人は一歩踏み出した。
「あ、すいませーん」
二人に話しかける者がいた。
「ん?」
座苦は珍しく、呼びかける声に答えて後ろを振り向く。
普段なら、不機嫌さを露にし、悪態をつく所だが。連戦連勝で機嫌が良いためだろう。
「さっきからデュエルを見ていました。お強いですね」
「おいおい、俺を誰だと思ってんの!? 選考会プレイヤーの座苦だよ? チリンチリーン」
「なんすか、チリンチリーンって」
まるで自転車のベルの擬音を再現するような発言に呆れる健一。相手も反応に困るんじゃないのかと言いたげだった。
「よろしければ、僕ともデュエルしませんか?」
話しかけた少年は、座苦にデュエルを申し込んだ。
「いいぞー、今の俺は連戦連勝で機嫌が良いんだ! 俺に勝ってみなー?」
このデュエル一つにしても、やはり座苦は普段だと、悪態をついて突っぱねるところだが、機嫌が良いからか、勝負を喜んで受けることにした。
「青山さん、俺、先に行ってますよー?」
「行ってろ行ってろ」
健一は既に眼中になかった座苦。彼を荘介達のもとへ先に行かせた。
「では、行かせてもらいますよ」
少年と座苦はお互いにデュエルディスクを起動し、五枚の手札を持つ。
(頭悪そーな奴だな。やっぱあの白鳥と一緒にいただけの事はあるわ)
僅かな間とは言え、白鳥の傍にいた座苦を知人と認識してしまっている。もっとも、座苦から見ても白鳥は好印象だったらしく、今後、デュエル仲間になる事は考えられるが……。
(ま、いーや。まずはこいつを餌に……)
少年は何かを目論んでいた。座苦を使っておびき寄せるかのように……。
「俺が先行で行くぞ?」
「どうぞ!」
座苦が先行を取ることに了承し、二人のデュエルが始まった。
「俺のターン、ドロー!」
****
白鳥春樹は小学校時代、いじめられていた。
内気で特に強く物を言わない彼の性格を付けねらった悪いクラスメートが度々嫌がらせをしたという。
所謂、声のでかい連中だったようで、他のクラスメートも止めることができなかったようだ。そして、それは夕実も例外じゃなかった。
「ごめんなさい、白鳥君。あの時、私も何も言えなかったから」
「いや、いいんだ。草薙さんが悪いことは何も無いんだから」
「そうだぜ、夕実。普通は止めることはできねーと思う」
「お兄ちゃんが言うと……」
夕実はジト目で荘介を見る。
荘介は運動もできる、それだけに自分に自信があり、何かあればすぐに突っかかって行く。白鳥が月なら荘介は太陽と言えるぐらい性格に違いがある。
とは言え、荘介は今のデュエルで白鳥の悪い印象を持つことは無く、寧ろデュエルが強い事に一目置いているほどだが。
「けどさ、それはもう昔のことだろ? やな事なんか忘れて今はデュエル楽しもうぜ」
「そう、ですね。……すいません、暗い空気にしちゃって」
「気にすんな。夕実のせいだ」
「お兄ちゃん……いや、ごめんね」
事実、夕実が昔の話をしなければ、荘介と白鳥はデュエルを通じたライバルとして、爽やかな関係を築けただろう。夕実はそのことを考えると、いつものように兄に悪態をつくことはできなかった。
「夕実、お前もあんま気にすんなよ。昔のことなんか忘れて、お前らは今、仲良くなったって良いんだしよ」
「「えっ、それは……」」
白鳥と夕実はお互いの顔を見合って困惑した。
お互い、ほんの僅かに顔が紅潮している。
「いや、何もそういうことじゃなかったんだけど……」
「あ、いや、誤解してごめんなさい、お、お兄さん!」
「周りが誤解するわ!!」
なんだか荘介まで恥ずかしくなってきた。
過去のことはどうあれ、草薙兄妹と、白鳥は良好な関係を築けそうだと、全員で確信した。
「おーい、荘介、夕実ちゃーん」
「おう、健一か」
そこへ健一が戻ってくる。
「荘介と白鳥君、どっち勝ったの?」
「白鳥」
「でかした、白鳥君!」
健一は白鳥と握手をした。白鳥はそのノリにちょっとついていけていない。
「おい、てめー」
今にも健一に殴りかかりそうな荘介。
健一のでかしたは、明らかに荘介の負けを喜んでいるのは間違いない。
「そういうおめーはどうなんだよ」
「実は俺も青山さんに……」
「へっ、人のこと言えねーじゃん」
「ぐぬぬ……」
「いやぁ、青山君はやっぱり強いですねー」
突然、吉川店長が姿を現す。
まるで忍者のように姿を消し、そして姿を現した。
「うおお、店長どこ行ってたんだ!?」
「お腹すいたので、コンビニで買い食いしてたんですよー」
「ああ、そういやもう昼一時か。デュエルしてたら時間経つのはえーな」
「お腹空きましたね」
「折角、白鳥とも知り合えたし、後でメシ行くか?」
「僕も混ざっていいんですか?」
「良いに決まってんじゃん。妹の同級生だし、今日からお前は俺のライバルだ!」
ライバル。
白鳥にとってこの言葉で何かが救われたような気がした。
デュエル自体は今まで小さい頃からやってはいたものの、内気な性格が災いし、共に競い合える良い相手がいなかった。
いざ、同級生とデュエルをしても、ライバルといえるような相手は現れなかった。
何故なら、性格とは裏腹に白鳥は天才的な実力を発揮し、誰も白鳥にデュエルで勝てなかったからだ。それが益々疎ましく思われ、いつしかいじめの標的となっていた。
「ところで、そろそろ、残りのデュエリストの数も大分減ってきたんじゃないか?」
「青山さん、まだ残ってたぞ」
「あの、青山さんってまさか……」
「青山座苦。選考会プレイヤーだってよ」
「やっぱり、どこかで見たことある人だと思ったんですよ、僕」
青山座苦、白鳥も聞き及んでいた。
やはり、その道のプレイヤーからは知れ渡っているようだ。時折、態度が悪いのは玉に瑕だが、大会でここまで勝ち残れる実力は本物といえる。
「そろそろお前と青山がぶつかるのかもな」
「選考会経験者かぁ。僕、勝てるかな?」
「俺が勝てたんだからヘーキヘーキ」
白鳥を鼓舞する一方で、軽く青山を馬鹿にする荘介。
「え、荘介さん、選考会プレイヤーに勝ったことあるんですか?」
「おう、何かな」
「青山さん、それ聞いたら怒るぞ……」
健一は苦笑いしている。
「知らん人に声かけられてたけど、そろそろ青山さんのデュエル終わるんじゃないかな」
「行ってみるか」
荘介達一行は、間もなくデュエルが終わるであろう、座苦のもとへ行こうとした。
この調子だと、恐らく最後の一人をかけた戦いは白鳥春樹対青山座苦と言う構図になるだろう。
「おいお前、イカサマしやがったな!!!」
座苦の怒鳴り声が聞こえてきた。
その声が、周囲を一瞬の静寂で満たす。
座苦と見知らぬ少年のデュエル、それは座苦の敗北で終わっていた。
「イカサマぁ? 選考会プレイヤーともあろうお方が負けた腹いせにイチャモンっすかー?」
周囲のギャラリーもざわつき始めた。
「イカサマってマジ?」
「言いがかりじゃね?」
「そんな風に見えなかったけど」
イカサマを信じるものと、言いがかりと思うものが口々に噂している。誰がどちらの味方と言う訳でもなく、ただ単に目の前のトラブルを楽しんでいるだけ。
中には、携帯で二人のトラブルを撮影する者もいる。
(ああ、あわわ……)
変装してデュエルの様子を見ていた理沙もこのトラブルに戸惑う。
折角、自分がMCを務めるイベントでこんな残念なトラブルが起きるなんて思いもよらなかった。
(そんなぁ……、皆が楽しめるはずのイベントでケンカが起こるなんて思ってなかったよ……)
右に左に首を振ってあたふたする。まるで不審者のようだった。
理沙は二人のケンカの仲裁にここから入るわけには行かないし、自分でそんなことができるとも思えなかった。
(うーん……)
腕を組み、少し考えた。腕を組む姿が合わない少女だからか、その姿には違和感と言うよりもわざとらしさが感じられる。
(…………。そうだ!)
「すいませーん、通してくださーい」」
何かを思いついた理沙は人ごみを掻き分けながら、そそくさとその場を抜け、舞台裏へと戻っていく。
「あぁ? てめぇ、調子こいて……」
頭に血が上った座苦はずんずんと足音を立てそうな勢いで少年に近づいていく。
胸倉を掴もうと右腕を伸ばす。
「やめてぇ! 暴力はんたーい!」
「待て待て青山!!」
座苦が今にも殴りかかろうとする光景に顔を少し蒼くしながら荘介が駆け寄る。
胸倉へと伸びそうだった腕を、寸でのところで何とか抑えることが出来た。もしも殴っていようものなら、大問題になるところだった。
荘介に止められて頭がしんと冷える座苦。
「イカサマってどう言うことすか?」
健一が尋ねる。
「俺見たんだよ。こいつ、袖の中のカードを手札に加えるのを」
苛立ちながら、少年を指差しながら糾弾する座苦。
「えーっ!?」
荘介も唖然とした。
こんな公衆の面前の中でそんな汚い真似を平気でやる人間がいたことに驚いて。
「だぁ~から、そいつの言いがかりだっつーの! ……って、あれ?」
少年は白鳥の顔を見た。今、気づいたような態度を取るが、あえてそういう風に装ったに過ぎない。いわば、わざとだ。
少年に顔を覗き込まれた白鳥はビクッとなり、一歩後ずさりする。
それは、白鳥にとって顔に覚えのある人間。忘れられない奴、忌々しい過去を掘り起こす元凶。
「き、君は……」
「久しぶりだねー、白鳥クン!」
挑発するように右手を振って白鳥を威嚇する桜井。
白鳥と同世代であるにも関わらず、根っこまで金に染めた髪が態度と相まって不良ぶりをこれでもかと主張してきた。
「おい、白鳥、夕実、こいつって」
「うん、昔、白鳥君に嫌がらせをしていたヤツの一人だよ、お兄ちゃん。名前は、桜井一臣」
今までで文字数一番多いんじゃないでしょうか。前回より増えているのでびっくりです。
本当はもう少し後の展開まで書いてから投稿しようと思っていましたが、感覚的に既に相当書いてると思ったので、キリのいいところで締めました。
全然関係ないですけど、一人暮らし始めてから自宅であんまりお菓子食べてないです。今度スーパーいったらアイス買おうかな。一日か二日に一本くらいは食べたいです。
因みに近所のスーパーいったらオイスターソース売ってないと言われました。びっくりです。(二度目)
仕事帰りに別のスーパーで買えましたけど。