救世神話-Storm Saviour   作:風代利紅

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第16話《風》

 荘介と桜井のデュエルは更に熾烈が増す。

 紫の禍々しい炎が形作る結界の中、桜井は繰り出した。誰も知らないはずの『救世主』である《ストーム・セイバー》を。

 その『救世主』は選らばれた者しか扱えないはず。にも関わらず、桜井はそれを操っている。

 しかし、それは普通の方法で使役しているようには見えないと思える理由があった。

 それもそのはず、今のストーム・セイバーは、全身から紫色の瘴気が止め処なく溢れ出ていたからだ。あれが正常な状態なのかと言われればそんな訳がない。

 明らかに邪悪な何かをして操っているとしか考えられない。

 だが、桜井はただの人間のはず。魔法だなんてオカルトを使えないと思いたいが、デュエル開始前に作り出した紫の炎の結界のことを考えれば一概に否定できない。

 となれば、疑問が二つ生じる。

 一つ目、どこでストーム・セイバーを知ったか。

 二つ目、この魔法のような力はどうやって覚えたか。 

 疑問は尽きないが、まずは目の前に現れた『救世主』という脅威を払拭しなければならないことが、荘介に突きつけられた現実である。

 荘介が生唾を飲み込みと同時に頬を一筋の汗が滴る。

 未知の状況下に置かれていることにより生じる重度の緊張感、それが荘介の精神を次第に追い込んでいく。

 それでも、怯むわけには行かない。それこそ桜井の思う壺だからだ。

「草薙くん……」

 炎の結界の外にいる理沙は、ただ荘介の無事を祈るしかない。そして、それは健一も同じである。

 

「バトルフェイズ」

「来るか……ッ!」

 標的を追い詰めた犯罪者のような悪そうな笑顔を浮かべる桜井。

「ストーム・セイバーで、カステルに攻撃!」

 ストーム・セイバーの攻撃力は2500。カステルより上のため、戦闘破壊は免れない。

 しかし、プレイヤーによる攻撃宣言がなされているにも関わらず、白銀の剣士は一瞬、抗うかのように動きが鈍かった。

 その挙動は荘介だけでなく、理沙や健一にもすぐにわかった。それはまだ、救世主が桜井の邪悪な力に抗っていることの証左であると。

「……チッ、早くしろっ!」

 桜井が舌打ちしながら右の指を鳴らすと闇の瘴気が増す。それにより、未だ抗っていた救世主は支配されて操り人形と成り果ててしまう。

 操り人形と化した救世主は無機質に剣を構えて跳躍、鳥の狩人が撃つ弾丸を軽々とかわしつつ接近。

 そして、一刀両断。

 

草薙荘介 ライフ 4000⇒3500

 

 荘介は更に怒りを覚えた。

 自らの意思に反して戦わされている者に更に戦闘を強要させる行いを。いっそあれに意思がなければそれでいいだろう。しかし救世主には、ストーム・セイバーには明確な意思があることがわかった。

 使い手を選ぶという荒唐無稽な話に現実味を感じた瞬間でもあった。

 いや、使い手だの何だのそんな事は荘介にとってどうでもいい。

 救世主を解放し、桜井をぶっ倒す。それだけでいい。

「桜井……俺はてめぇを絶対に許さねぇ!」

「あぁ? 何でお前が許さないんだ? えぇ?」

「わからねぇのかよ。そいつが苦しんでることをよ。こんな形で剣を振りたくねぇってわかんねぇのかよ」

「知らんがな。俺はお前らを屠れればそれで良いし!」

 荘介のにじみ出るような怒りは、当然の如く桜井には通じない。

「カードを1枚伏せてターンエンド。ほら、次はお前の番だぞ」

 

 荘介は桜井の場に佇むストーム・セイバーを見る。全身から黒い瘴気が溢れ、気高さを感じられない姿には痛々しいものを感じた。

「何とか……できねぇのか? ドロー!」

 地団駄を踏みたくなるような気分のままドローする。

 スタンバイフェイズに何もする事がないため、そのままメインフェイズへ移行。

「俺は《蒼空騎士(ブルーナイツ)ジャメイム》を攻撃表示で召喚!」

 荘介は前のターンに手札に加えたモンスターカード、ジャメイムを召喚する。

 ジャメイムの攻撃力は1800。そのままではストーム・セイバーには及ばないが……。

「ジャメイムの効果発動! 手札の風属性で戦士族か鳥獣族のモンスターカードを好きな枚数見せることで、見せた枚数一枚につき攻撃力を300ポイントアップする!」

 荘介は手札から三枚のカードを見せた。

 《バードマン》、《蒼空騎士(ブルーナイツ)カーヴァイル》、《蒼空騎士(ブルーナイツ)ティルウェス》の三枚を公開。三枚公開により、ジャメイムは攻撃力が900ポイントアップ。

 攻撃力は1800から2700に上昇、これによりストーム・セイバーの攻撃力を上回ることになる。

 

蒼空騎士(ブルーナイツ)ジャメイム ☆4

戦士族/効果 風属性 ATK1800 DEF1000

(1)1ターンに1度だけ発動できる。自分の手札の風属性・鳥獣族または戦士族モンスターを任意の数だけ公開し、その枚数だけこのカードの攻撃力をターン終了時まで300ポイントアップする。

(2)自分の墓地にモンスターカードが存在する場合に発動できる。このカードのレベルはターン終了時まで6になる。

 

「よし、これでストーム・セイバーを……」

「罠カード《ブレイクスルー・スキル》発動!」

「何ッ!!」

 《ブレイクスルー・スキル》、それはモンスターの効果を無効にする通常罠。

 この効果の対象は勿論、ジャメイムである。そしてその効果により、ジャメイムの攻撃力アップは無効となった。

 

ブレイクスルー・スキル 通常罠

(1)相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。

(2)自分ターンに墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手の効果モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

 

「ストーム・セイバーを倒そうってつもりなのはわかってんだよ。やらせねぇぜ?」

「くそっ! 俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ!」

 ストーム・セイバーを倒して救えなかった。その歯がゆい思いを抱きながら、荘介はカードを一枚伏せてターンを桜井に渡す。

 しかし、荘介も別で策はあった。

(俺が伏せたのは《炸裂装甲》。アイツがストーム・セイバーで攻撃してもこのカードを使えば破壊できる!)

 荘介は場に伏せた《炸裂装甲》に一縷の望みを賭けたのだった。

「ドロー」

 桜井は無機質に引いたカード一枚を手札に加えると、元々手札に持っていた内の一枚を右手に取り、デュエルディスクの魔法・罠ゾーンに表側で挿入した。

「《ハーピィの羽根箒》発動。伏せカードを破壊させてもらうぜ」

「何っ!!」

 荘介が戦慄している間にも桜井が発動したカードは、有無を言わさず伏せられた《炸裂装甲》を破壊。

 これで荘介のモンスター、ジャメイムを守るものは何も無い状態となった。

 

ハーピィの羽根箒 通常魔法

(1)相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 

(くそっ、こうなりゃイチかバチかだ……!)

 荘介は手札に握る一枚のカードに視線を向ける。

 その表情からは諦めた様子は全く見られない。

「ストーム・セイバーでジャメイムに攻撃!」

 バトルフェイズへ以降と共に攻撃宣言。

 闇の瘴気に囚われた風の救世主は操り人形のように無機質に剣を構えた。

 地上から僅かに浮遊し、カタパルトから射出されるような勢いで突撃。

 剣を構えながら肉薄する虜囚に対し、救世主と同じ風の戦士は迎撃するように剣を構えて立ち向かう。

「荘介くん!!」

 理沙の叫び声が聞こえた。

 それまで危機的状況で目を細めていた荘介は力強く目を開き、手札から一枚のカードを抜き出して掲げた。

「手札から《蒼空騎士(ブルーナイツ)ティルウェス》を捨てて効果発動!」

 手札からモンスター効果の発動を宣言すると共に、そのカードを墓地へと置く。

 効果が成立したのか、ジャメイムの全身を淡い緑の光が包み込む。それはオーラを纏っているかのようであった。

「手札から捨てることで攻撃を受けている風属性・戦士族の攻撃力を1000ポイントアップする!」

 この効果を受ければ、ジャメイムの攻撃力は1800から1000ポイント上昇で2800となり、ストームセイバーを返り討ちにできる。

「何ッ!? そんな馬鹿な……」

 桜井はうろたえる。

 荘介はあの手この手でストームセイバーを倒す手を講じて仕掛けてくるが、それら全てを振り払った。

 にも関わらず、荘介は尚も喰らい付く。そして、自身の手札にはこれ以上、ストームセイバーを守る術がない。

 

蒼空騎士(ブルーナイツ)ティルウェス ☆1

戦士族/チューナー/効果 風属性 ATK300 DEF100

(1)自分の風属性・戦士族モンスターが戦闘を行うダメージ計算前までにこのカードを手札から墓地へ送って発動できる。

そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップする。

(2)墓地のこのカードを除外して自分フィールド上の「蒼空騎士(ブルーナイツ)」モンスター1体を対象として発動する。ターン終了時までそのモンスターのレベルは6になる。

 

 闇の瘴気に包まれた哀しき剣士を救うかのように、風の戦士……ジャメイムは地上から数センチ浮き上がる。

 浮いた身体を少し前に傾けるようにしながら剣を構える。

 まるで超能力で浮いているかのような状態で剣を構えた戦士は、カタパルトから射出されるように勢いよく前へ真っ直ぐ吶喊。

 お互いに風の力を持つ戦士は刹那のタイミングで勝負を決めようとした。

 

 

 ジェット・エアレイド。

 ――ジャメイムはまるで戦闘機のように前へ突っ込みながらすれ違い様に必殺の斬撃を叩き込む。

 

 

 攻撃力、速度……ともにジャメイムのほうが勝っていた。

 闇に呑まれたストームセイバーは戦闘に敗北すると共に、闇から解放された。

 

(感謝する……)

 荘介には声が聞こえた。

 それは、彼にしか聞こえない。

「ストーム・セイバー……」

 感謝の言葉を聞いた荘介は一瞬、唖然とした。

 だが、荘介はこれで終わらせるわけには行かないと思っていた。

 

 依然、ツファットと称する闇の瘴気そのものはデュエルを行うこの領域全体を覆いつくしており、闇のゲームと呼ばれるそれはまだ終わっていない。

 刻一刻と夏の街を染め上げる夜と共に、その場の闇は一段と深くなっていく。

 しかし、荘介には今のストームセイバーの感謝の言葉と共に大きな闇が一つ払拭されたと確信していた。

「まだだ……! 俺はメインフェイズ2で墓地の《冥帝従騎エイドス》を除外して同じく墓地に存在する《天帝従騎イデア》を特殊召喚! その効果でデッキから三枚目の《エイドス》を特殊召喚!」

 風の救世主は倒された。

 だが、万策が尽きたわけではない桜井は負けじと次のモンスターを繰り出す。

「しつこいな、まだ来るか!」

「草薙ィ! 例えストームセイバーがなくなっても、何が何でもお前を潰すぅ! 俺はエイドスとイデアをリリースして、《怨邪帝ガイウス》をアドバンス召喚!」

 怨邪帝ガイウス、それはエレボスと似た風貌の帝。

 漆黒の甲冑で身を纏っている点は同じであるが、ガイウスはエレボスと比べて濃厚な負念をその場に撒き散らしている。

「《怨邪帝ガイウス》の効果発動。相手のカードを二枚まで除外し、1枚につき1000ポイントのダメージを与える! 俺が除外するのは当然、《ジャメイム》だ!」

 

 業怨葬送掌。

 ――怨邪帝の大きな掌がジャメイムの頭を鷲づかみにするとともに、あふれ出る闇がジャメイムを飲み込む。

 闇に包み込まれたジャメイムはやがて自身を包んだ闇と共に雲散霧消し、その場から消滅した。

 

草薙荘介 ライフ 3500⇒2500

 

「分かってるぞ草薙ィ! お前の戦い方はレベル4のモンスターを主軸にして、強化したりエクシーズ召喚を狙うってことはなぁ! 残念だけど、レベル4のモンスターばっかりじゃ俺の帝デッキの地力には及ばないよなぁ? ヒャーッハッハッハッハ!!」

 荘介の戦い方を把握し、それに対して優位に立ったことを確信する桜井。

 悪辣な笑いがその場に響き渡る。それは理沙と健一を大いに不快にさせた。

「ほら、ターンエンドだ。守備モンスターでもはよ出しとけ」

「…………」

 荘介は突如、無言になった。そして自身のデッキを見つめる。

 神妙な表情で荘介は人知れず一人、考え込む。

(運命とか神とか。俺はそんなもん信じねぇし、興味もねぇ。けど、今ばかりは運命って奴に賭けてみてもバチ当たんねぇよな……)

 荘介の脳裏に、クライヴと出会い、ストーム・セイバーを知ったことが蘇る。

 それはまだ昨日の出来事。

 十分に鮮明なその出来事は、恐らくきっとこの先も忘れることはないだろう。

 荘介はその時、ガラにもなく運命めいたものを感じ取ったからだ。

 自分とストームセイバーが互いに引き合う関係であるのならば、次のドローにも何かが起こるんじゃないか? 荘介はそんな予感すらした。

「…………」

 尚も、デッキを無言で見つめる。

「……四の五の考えてもしゃーねーな。行くぜ、ドロー!」

 運命のドロー。

 引いたカードを見て、荘介は自分の感じたものが偽りでないことを確信した。

 荘介は目をしっかりと開いて引いたカードをその目に焼き付けた。

 

 ――《死者蘇生》。

 それは、デュエル前に理沙から託されたカード。

 

(藍川……君も何かを感じたのか? いや、そんなこたぁいいよな。ただ今は一言だけ言うぜ)

 荘介は後ろを向く。

 闇の瘴気が形成する結界越しに理沙を……その目をしっかりと見ていた。

(く、草薙くん……!?)

 理沙は僅かに顔が紅潮した。

 まさか、このタイミングで愛の告白!? などと考えたが、流石にそれはあり得ないと思いなおした。

「藍川! ……いや、理沙! ありがとな!」

「えっ?」

 理沙は胸がドキッとした。

 今まで苗字で呼ばれていたのが急に名前で呼び出したこともそうだが、このタイミングで感謝の言葉を言ったことがなんだか嬉しかった。

「草……荘介くん! 何で今……」

「ま、見てなって」

 荘介は不敵な笑みを浮かべながら、対峙する桜井のほうへ身体を向けなおした。

「惚気んは勝手だけどさ、遺言はもうちょい悔いの無いようにしとけよ?」

「へっ、悪いけど死ぬ気は全くねぇぜ」

「あぁ?」

 

 

 ――風が吹き始めた。

 

 それは荘介が呼び起こしたのか、自然に起こったものなのかはわからない。

 

 しかし、理沙も健一も確信した。

 荘介は何かをやってみせると。

 

 その荘介は《死者蘇生》のカードを右手に携えながら思いを巡らせる。

 

(ストームセイバー。お前が救世主だと言うなら、俺と引き合う存在だと言うなら、俺に応えてくれ……!)

 

 願いを胸に秘め、確かな意思と共に右腕を振り上げる。

 カードを持つ手は、祈りを捧げるように天へ向けて掲げられた。

 

「俺もお前と同じ想いだ! あの野郎は気に入らねぇし、許さねぇ! だから俺に力を貸してくれ、《ストーム・セイバー》!」

 

 そして、荘介は高らかに宣言した。

 

 ――《死者蘇生》発動!

 

死者蘇生 通常魔法

(1)自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「馬鹿な!? 何でそんなカードを……お前のような素人が!!」

「俺が素人かどうかなんざどうだっていい!」

 荘介の実力など今は何の問題でもない。

 思う事は只一つ。理沙が託したこのカードの力で桜井を倒すこと。

 《死者蘇生》で蘇らせるカード、それはもはや考えるまでも無かった。荘介にとって、選択肢はたった一つしかない。

 

 風はやがて強風となり、嵐となる。

 闇すら振り払い、遍く光を齎す道しるべとなる。

 

 風の救世主は荘介の強い思いに応えて在るべき姿を見せた。

 闇に呪われることなく白銀に輝く鎧。風を思わせる鋭いフォルム。

 そして、救世主であることを象徴するかのような金色の柄の宝剣。

 

 風の救世主、ストーム・セイバー。

 真実の姿を今、ここに現す。

 

「綺麗……」

 理沙の口から思わず零れた一言。

 そう、その輝きは神々しさすら感じさせ、見るものを感動させる。それほどにまで美しい。

 尚且つ、勇ましさも強く印象付けられる。

 これが救世主。

 強さ、美しさ、勇ましさ……様々な好意的な印象を与える光輝の化身。

 その存在感は、ツファットの力が放出する闇の瘴気を忘れさせるほどに圧倒的。

 

 先ほどまで自身を蝕んでいた闇から解放された風の救世主は、圧倒的な威圧感を桜井に植え付ける。

 それは呪縛から解き放たれて真の力を行使するからこそ持ちうる気迫。

 桜井はその威圧感にただただ怯むしかなかった。

 

「こっ、これは……!」

 荘介はストーム・セイバーのカードを見て驚いた。

 カードにはモンスター効果のテキストが記されていた。

 クライヴに見せてもらったときには名前と絵しか分からない状態であったそのカードは、荘介という正当な主を見つけてカードとして在るべき姿を遂に見せたのだ。

 荘介はそのカードテキストに一通り目を通してやるべきことを見出した。

 

「ストーム・セイバーの効果発動! 俺のライフを2000払うことで、このカードの攻撃力をこのターンの間、倍にする!」

 

草薙荘介 ライフ 2500⇒500

 

ストーム・セイバー ☆7

戦士族/効果 風属性 ATK2500 DEF2100

このカードはレベルまたはランク6以上のモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる。

「ストーム・セイバー」の(1)と(2)の効果は1ターンに1度、どちらかのみ発動できる。

(1)このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、続けてもう1度だけモンスターに攻撃する事ができる。

(2)2000ライフポイントを払って発動する。このターン、このカードの元々の攻撃力は倍になる。

 

 荘介は少しうめき声を出した。

 まるで気力を吸い取られるかのように強烈な疲労感が襲う。

 だが、そんな事は気にしなかった。

 荘介は今、桜井を倒すことだけに意識を集中させている。

 

 ストーム・セイバーが天に向かって剣をかざすと切っ先から魔方陣が出現。

 淡い光を放ちながら魔法陣は下へ降りてストーム・セイバーを通過していく。

 魔方陣が通り過ぎていくところから次第に、ストーム・セイバーの姿は蒼い炎で燃える不死鳥へと変えていく。

 

「なんだあれは……!!」

 桜井は戦慄する。

 倍の攻撃力、蒼き不死鳥。今にも止めの一撃を叩き込もうとせんばかりの勢いをいやでも感じさせられた。

 

「バトルだ! ストーム・セイバーで……怨邪帝ガイウスに攻撃!!」

 蒼き不死鳥は天高く飛翔し、空中で一回転した後に、荘介の横を素通り。地面すれすれの高度にいながら超高速で暗黒の帝へと突撃していく。

「喰らえ! オーバーカミング……バスタァァァァァ!!!!」

「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 蒼き不死鳥は、暗黒の帝が反撃の体勢をとるよりも遥かに速く、その黒い体躯を突き破った。

 5000もの攻撃力を誇る一撃が攻撃力2800のモンスターを打ち破ったことにより2200もの大ダメージを桜井に与えるのだった。

 

桜井一臣 ライフ2000⇒0

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 その蒼き業火は暗黒の帝のみならず、その使い手すらも覆う。桜井を纏う闇の力すら振り払おうとして。

 

 ひとしきり炎が燃え盛った後、次第に収まっていく。

 そして蒼き不死鳥もやがて白銀の戦士へとその姿を戻していくのだった。

 

 そのデュエルの勝者は荘介。

 勝者たる荘介はこのデュエルの中で伝説の救世主の力を手にした。

 そして、伝説の復活を告げる。

 

 

 ――救世神話の復活を。

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