救世神話-Storm Saviour   作:風代利紅

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第2話《エタニティ・ドリーム》

カードショップ"エタニティ・ドリーム"

 荘介は夕実に案内されてその店に来ていた。

 小さなビルのやや古びた外観に反し、内装は随分と綺麗だった。店の営業自体は数年経過しているのだが、つい最近内装をリフォームしたのである。

 今日は土曜日と言う事で、平日よりも断然賑わっている。子供も大人も幅広い層のプレイヤーが活発に出入りしており、カードをプレイするスペースのテーブルもほぼ満席状態である。

 荘介と夕実は午前中の比較的、席を確保しやすい頃合に入店しており、二人が向き合ってゲームをする事が出来る程度には場所を既に確保していた。

 荘介はと言うと、カードゲームの店に入るのが初めてで、その中の様子もまた、全く未知のものに見えていた。

半ば挙動不審気味に右に左、前に後ろ、手前に奥、店中と言う店中を兎にも角にも見渡していた。

 店内の設備、商品、店員に他の客まで隅々。

「慣れねぇ……」

 妹の夕実はシングルカードの位置などを確認しに、荘介に荷物を任せて席を外しているところだ。何しろ二人で別の場所に移動となると、荷物を置いておく訳にも行かず、席の利用も放棄するので別の人に席を取られて自分達の場所がなくなってしまうからだ。

 絶えずキョロキョロしている内に夕実が戻ってきた。

「お兄ちゃんごめんね、少し時間かかっちゃった」

「おう、んで、俺はどうすりゃいい?」

「とりあえずね、店員さんに聞いてみようよ」

「俺待ってた意味なくね!?」

 

昨日の條とのデュエル――

 結果から言うと、荘介の惨敗である。

 当然と言えば当然だろう。荘介のデッキはその場で組み上げた、言わば寄せ集めに過ぎない代物。條も熟練者に比べると腕は落ちるものの、ネットで情報を集めつつ、明確な戦略プランの元構成されたデッキ。それに條の方がデュエルの経験もあるわけで、腕前、デッキの性能共に敵うはずが無い。

 荘介はそれから、まずは兄に勝つことを目的として、手の空いていた妹の協力のもと、しっかりとしたデッキの構築をするところから始める事にした。

 

 荘介はシングルカードを色々と買いこんで夕実の待つテーブルに戻った。

ニッっと笑みを浮かべており、兄に勝つ最強デッキを組むと意気込んでいるのがよくわかる。

「お兄ちゃん、デッキはどういうタイプにするの?」

「タイプ?」

「うん。下級モンスター中心で攻めるとか、上級モンスターの召喚を狙うとか」

「んー、今んとこはなるべく軽いモンスターで素早く攻めるタイプのデッキかな。んで、それっぽいカード色々買ってきたんだぜ」

 テーブルに広げられている荘介のカードを見ると、風属性でレベル4以下のモンスターや、それに合わせた魔法や罠カードが見られた。

 勿論、デッキの方向性に合ったカードを素人の荘介一人で見つけるのは困難なため、店員に尋ねて、アドバイスも貰った上での選択だ。

 広げたカードの中から種類別に1枚、1枚ピックアップしていき、採用するカードを手元に集めていった。

 

「よっしゃ、できたぜ」

 しばらくした後に一通り40枚のデッキが組みあがった。

 途中、夕実のアドバイスを受けながら、あれこれと悩んだところはあるものの、その前の條にこっぴどくやられた時のデッキと比べると完成度は兎も角、戦略の方向性は大分しっかりとしたようだ。

 荘介と夕実はテーブルのほかの余ったカードをケースにしまった後に、二人向き合って、デッキをテーブルに置く。

「夕実、早速相手してくれよ」

「うん、お兄ちゃんのデッキまずは試さないとね!」

 夕実も他のプレイヤーと比べるとあまり強い方ではないのだが、それでも今のところ、荘介の身の回りでデュエルを出来る数少ない相手。そんな相手がちゃんと居るだけでも荘介はデュエルの入門がしやすい環境であるといえよう。

 互いのデッキをシャッフルし、デッキの上から5枚を引いて手札にする。

「じゃんけんで先攻後攻決めるね」

「おう、ジャーンケーン……」

 

 デュエルを始めようとするや否や、急に店内がざわつき始めた。

 二人はざわつく方を見ると、やや小太りな少年が入ってきたのが見えた。有名人か?どこの界隈にもある種のカリスマ的存在がいるものだから、そう言う類の人かと思ってスルーしようとした。

 小太りな少年は荘介と夕実が座っている方に近づいてきた。

「君ら、そこどいてくれん?」

 突然やってきたかと思えば突然の退去勧告。

 店員が頼んでくるのならばいざ知らず、何処の誰とも知らない馬の骨に突然横柄な物言いをされて荘介と夕実は当然気分を悪くした。

 もっと言うと、やんちゃ盛りで活発な荘介の事だ。喧嘩っ早いとまでは行かずとも、そんな風に言われて黙って引き下がる訳がない。

「ふざけんな!ここは俺達が座ってこれからデュエルしようとしてたとこだ!空いてる席行けよ、空いてる席!」

 荘介がいきり立って反論すると、場が瞬く間に凍りついた。

 

「あいつ、青山さんに逆らった……」

「TP様に歯向かう……」

「怖いもの知らず……」

 口々にひそひそ話をする他の店員。

 店員はと言うと、今は割り込む事無く、まずは様子を見ているようだ。もしもこれが殴りあいに発展する等と言った事になるのであれば、両者とも今後入店禁止の措置を出すのかもしれない。

「悪いけど、ここは俺の特等席なんだよな」

「馬鹿かてめぇは!んな事どこにも書いてねーよ!!」

「馬鹿は君だよ!……君はどうも、素人みたいだね。この俺、青山座苦に逆らうなんてさ!」

「ほざけ、量産型!!」

「ぬ…言うに事欠いて量産型…この選考会プレイヤーの俺を……」

「へっ、悔しかったら……そうだな、デュエルしようぜ!テメェが勝ったら俺らは帰るぜ。負けたら大人しく隅っこで遊んでろ!」

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!?」

 段々とヒートアップしていく荘介に夕実が戦慄する。

 夕実も選考会の事は條からも少し聞いており、そこの参加者のレベルも多少は把握している。

 初心者の荘介がいきなり上級者にデュエルを挑むと言うのは命知らずにも程がある。しかし、先程まで荘介を恐れ多い奴と見ていた周囲の反応も変化し、喧嘩を見たがる野次馬のような様子に様変わりして行っていた。荘介も青山座苦もすっかり、デュエルをする気満々の様子だった。

 もう夕実一人に止めることは出来ない。

 

「これだけ盛り上がってきたのならば、も~っとデュエルを盛り上げなきゃね!」

 突然姿を現した一人の店員。

 彼こそが、このエタドリの店長、吉川司である。

 変わり者だともっぱらの評判で、リアルファイトは当然お断りだが、デュエルとなれば、その場を提供する事に協力を惜しまない。

 司の右手にはデュエルディスクが握られていた。

 

デュエルディスク――

 この世界において、デュエルモンスターズでデュエルをする上で重要なアイテムの一つ。海馬コーポレーションと呼ばれる企業の開発したツールで、これを使用すると、カードの効果やモンスターの姿などが立体映像となって出現し、デュエルの臨場感を飛躍的に増大する。

 ストリートデュエル必携のアイテムといえよう。

 

 しかしながら、荘介はまだカードしか持っておらず、妹も兄もこれを所持していない。そうなると購入する必要があるのだが、如何せん高価なものであり、数万円はする。

 そんな代物を司は荘介に手渡した。

 

「君、名前は?」

「草薙荘介。荘介って呼んでくれ」

「じゃあ荘介君。今はこれを貸してあげるよ。この青山君も持っているからね。皆が盛り上がるデュエルをするのならば、こう言う物を使わないと!」

「え?ちょっと待てよ!カードゲームつったら、テーブルでするもんじゃねーのか!?」

「君、ホントに初心者なんだね!」

「ほっとけ……」

「ささ、良いから良いから、屋上に移動だ」

「えええおいおいおいおい」

 半ば強制連行気味に屋上に連れて行かれる荘介。それについていく青山に追いかけていく夕実や他の客。

 

****

 

 エタドリの入っている小さな雑居ビルの屋上。

そこはすっかりギャラリーで埋め尽くされており、大会の会場さながらの盛り上がりを見せていた。

 独壇場に上がったかのように強気な姿勢を見せる青山。それに対して、青山に対するチャレンジャーにも関らず状況が飲み込めず置いてけぼり感が出ている荘介。

「うー……なんで俺の初デュエルがこんな舞台のド真ん中みてぇなことになってんだ……」

「この俺にケンカ売ったんだ。覚悟しろよー!」

「ちっ……こうなった以上、やってやるしかねぇよな。オーケー、やってやるぜ!!」

 お互い、左腕に装着したディスクを翼の様に変形させ、展開。

 セットされたデッキは自動でシャッフルされ、デュエルディスクに搭載された機能で自動的に先攻・後攻が決定された。

 カードを5枚引き、手札にして、準備は完了。

 

 両者向き合い、周囲も沈黙する。

 

「…………」

「…………」

 

デュエル!

 その掛け声と共に周囲から大歓声が響き渡り、雑居ビルの屋上は凄まじい喧騒に包まれた。

 初心者の命知らずな挑戦が始まる。

 

 

 

続く




◆あとがき
うぎゃぁ~、1話と終わり方が類似してしまったぁぁ~…
でも、続きの展開は当然違うんだから差別化は出来てるよね…?

今回登場したカードショップ、エタニティ・ドリーム。名前の由来、判る人は判りますよね。(笑)
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