救世神話-Storm Saviour   作:風代利紅

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文章が回を追うごとに1000字ずつ増えていってます。
1話をもっとしっかりやってもよかったですね。


第3話《荘介の実戦》

 青山座苦相手に啖呵を切った荘介のデュエルの火蓋が切って落とされた雑居ビルの屋上。まだ時間としては午前も11時を回ったばかりであり、昼に差し掛かって間もない頃だった。

 

 浅井健一は雑居ビルの階段を上がり、屋上に出られるドアを開ける。

開けたドアの間から健一はベリーショートで尖らせた髪型の頭を出し、盛り上がり具合を観察した。

 

 健一はデュエリストの端くれで、時々来るこの店のレクリエーションは既に知っている。しかし、今デュエルしているのが誰かは人だかりのせいでその時点では把握できなかった。

「ういっす」

「ん?浅井君?」

「おお、西田さん。誰がやってんの?」

「お前んとこの高校生。随分と短気で喧嘩っ早いな」

「と言うと?」

「あの青山座苦にデュエル挑んだ」

「えっ?」

 人混みを掻き分ける。

 健一は思わず、同じ高校の何物なのか気になってしょうがなかった。たまにこのエタドリに足を運んでは同じ高校の誰が居るのかを確認してはいるが、よもや青山座苦にケンカを売るような人間が居るとは思えなかったからだ。

 しかし、その疑問はそこに立つ男の姿を見て納得すると同時に驚きもした。

「あーっ!草薙!!」

「うん?…あ」

 荘介と健一はクラスメートでもある。

 健一は荘介がデュエルモンスターズをまったくやっていないことは知っている。クラスの何人かがその話で盛り上がっても、興味ねぇの一言でそれ以上は話に混ざりようがなかったからだ。

 それになんと言っても荘介はスポーツに明け暮れて、色々な運動部の助っ人として引っ張りだこになっている事もわかっている。

 だが、その荘介がそこに立っている。

 あまりに予想外な事態に健一は唖然とする他なかった。

 

 デュエルは丁度始まったところだった。

 ライフポイントはお互いに4000から。手札は5枚持っており、先攻は荘介からとなっている。

 現在のデュエルディスクにはデッキの自動シャッフル機能、先攻・後攻の自動選択機能など、デュエル開始に行う動作の殆どが自動化されており、ストレスフリーでスムーズなゲームが行えるように改良がなされている。

「俺の先攻か。先攻の最初のターンはカードのドローと攻撃ができないんだったな。じゃあ、俺はこいつを召喚だ。《バードマン》!!」

 荘介がデュエルディスクにカードを一枚叩き付けると、ディスクはそれを認証したことを示し、一瞬白く光る。

 荘介の目の前に出現する赤い翼、赤いかぎ爪を持つ男が姿を現す。その髪型は鶏冠を形容させる。

 

バードマン ☆4 鳥獣族 風属性 ATK1800 DEF600

マッハ5で飛行する鳥人。その眼光は鷹より鋭い。

 

「かっちょいい……って、感心してる場合じゃねぇ。カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 デュエルディスクの初使用。今まで間近でそのデュエルの光景を見たことがないため、思わず感動する。しかし、デュエルの最中だと思い出し、意識をそちらへ向ける。

 そして手札を一枚、裏向きでデュエルディスクのモンスターゾーンとは別で挿入すると共に、カードをそのまま拡大したようにバードマンの後ろに伏せカードが出現。

同時にターンエンドの宣言をした事で、手番は青山に移り、ドローフェイズのドローを行う。

「俺は手札から《フォトン・スラッシャー》を特殊召喚!」

 光の剣を振るう、光の戦士が出現。

 荘介とバードマンを威嚇するかのように軽々と片刃の大剣を振り回し、その切っ先を向ける。

 

フォトン・スラッシャー ☆4 戦士族/効果 光属性 ATK2100 DEF0

このカードは通常召喚できない。自分フィールドにモンスターが存在しない場合に特殊召喚できる。

(1):自分フィールドにこのカード以外のモンスターが存在する場合、このカードは攻撃できない。

 

「攻撃力2100……」

「そんなチンケなモンスターとは一味違うぜ。フォトン・スラッシャーでバードマンに攻撃!!」

 光の戦士は片刃の大剣を両手で握り、赤い翼の鳥人目掛けて突撃していく。攻撃力で言えば前者の方が素で上回っている。

「させるかよ!速攻魔法《突進》!」

 デュエルディスクには伏せたカードの下に隠れるようにスイッチがある。デュエルディスクは正しい発動タイミングでこれを押すことで伏せたカードが発動できるように作られている。タイミングに関しては組み込まれているプログラムが認証してくれるので問題は無い。

 荘介が相手の攻撃に合わせて発動した伏せカード。そのまま拡大した立体映像のそのカードが立ち上がるように表返り、周囲の目に分かるようにその全容が明らかとなる。

 猪突猛進。そんな表現が良く似合うそのカードの効力はモンスター1体の攻撃力をそのターンのみ、700ポイント上げると言うもの。荘介は勿論、その効果をバードマンに付与する。

1800+700=2500。攻撃力で勝った赤い翼の鳥人は飛翔し、空中で一度ターンを描く。急降下。地面のほぼ手前で垂直に向きを変えて、光の戦士へと低空飛行で真正面から仕掛けていく。

 両手の鉤爪の一閃。光の戦士の斬撃よりも速く、そして鋭い一撃が決まった。

 戦闘に敗れたモンスターは光の粒子となって消え行く。

 

青山座苦 ライフ4000⇒3600

 

 互いのモンスターの攻撃力の差分は400。それだけの値が青山のライフから減る。

 モンスター同士の戦いを制したと思われたが、返り討ちに遭い、少しばかり苛立つ。その苛立ちを若干引き摺りつつもメインフェイズ2に以降。

「モンスターを裏守備でセット。ターンエンド」

 先ほどの戦闘で返り討ちに遭ったことでムッとしているのが荘介にも伝わってきた。荘介も伝染するように少しばかり嫌な気分になる。

 何だこいつ。とことん感じ悪いな。荘介は心の中で青山に悪態を突く。

 しかし、勝負自体は今のところ、荘介に流れが乗ってきているという確信があり、荘介が勢いづいている事には変わりない。

 

 ドロー。

 2ターン目にして荘介はようやくデッキからカードを引く事が許された。引いたカードを手札に混ぜ込み、別のカードを1枚、手札から選び取る。 

「《霞の谷のファルコン》を召喚!」

 赤い翼の鳥人の左側に新たなモンスターの姿が現す。

 光と共に姿を現すそれは、バードマンとは異なり、人間の背中に翼が生えたタイプの鳥人だった。

 右手に剣、左手にガーダーを装備している。名はファルコン。このゲーム上では、霞の谷(ミスト・バレー)と言う土地の住民だという設定である。

 

霞の谷のファルコン ☆4 鳥獣族/効果 ATK2000 DEF1200

このカードは、このカード以外の自分フィールド上のカード1枚を手札に戻さなければ攻撃宣言できない。

 

 生意気そうな性格が垣間見える不敵な笑みは青山に真っ直ぐ向けられる。その笑顔は少し苛立つ青山の神経を逆撫でするには十分なものだった。

 バトルフェイズ。

 ファルコンはフィールド上の他のカードを戻さなければ攻撃できない。そこで攻撃回数を保つために荘介はバードマンでまずは仕掛ける。

 攻撃宣言と同時に赤い翼の鳥人は飛翔。急降下と同時に裏守備表示のモンスター、即ちフィールドで横向きに伏せられているカードを引き裂こうと肉薄する。

 そこに裏守備表示のそれは表向きとなり、同時にそれの正体が明らかとなる。

墓守の偵察者――

 攻撃力は1200、守備力は2000。守備表示であるため、その2000と言う高めの数値が適用される。高い守備力を持つ守備表示モンスターに誤って攻撃しても通常、戦闘で破壊されることは無い。ただし、守備力から攻撃力の値を引いた分のダメージを反射ダメージとして攻撃側のライフに与える事となる。

 

草薙荘介 ライフ4000⇒3800

 

 黒いターバンの男が出現すると同時に薄い膜の様なバリアが一瞬展開。それは赤い翼の鳥人の一撃を跳ね返す。

 戦闘で破壊することを失敗したのと同時に、荘介は偵察者の守備力がファルコンの攻撃力と同じため、攻撃しても意味が無い事を悟った。

 そしてそれだけではない。

 墓守の偵察者は自身が表向きになる事で攻撃力1500以下の墓守モンスターを1体、デッキから呼び出すことが出来る。

 

墓守の偵察者 ☆4 魔法使い族/リバース/効果 ATK1200 DEF2000

(1)このカードがリバースした時、自分のデッキから攻撃力1500以下の「墓守」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 青山はデッキの中から1枚のカードを抜き出し、それを表側守備表示でデュエルディスクに置く。

 出現したのは2体目の墓守の偵察者。勿論、こちらも守備力は2000。ファルコンで手出しする事は不可能だった。

「ターンエンド……!」

 こめかみから汗が一筋滴る。終了宣言をする荘介は少し焦り気味だった。

 さしもの素人である荘介と言えど、モンスターが並べば何かが起こると予感せざるを得なかった。

 

 そしてそういう悪い予感と言うものは往々にして当たる。

 

「ククク……」

 手番が回り、デッキの一番上のカードを引く青山。

 しかし、その表情は所謂悪い顔と言うものであり、明らかに何かを企んでいる事は容易に想像がついた。荘介の表情は少し強張る。

「草薙荘介って言ったっけ?モンスターを2体並べさせるとどうなるか、教えてあげるよ!俺は2体の偵察者をリリース……」

 横に並んだ二人のターバンの男は青白い御霊となり、空中に舞い上がる。

 周囲のギャラリーも上昇していくそれに視線が行く。

 二つの御霊は空中で一つに交わり、激しい閃光を放つ。

 荘介、そして周囲のギャラリーも全員、その光を前に、思わず顔を腕で覆い、目を閉じる。

 目を開ければ三つ首の竜がいた。

 首の一つ一つがそれぞれに異なる挙動をし、唾液を漏らし、息を吐く。

 その鋭い眼光はすぐさま、バードマンやファルコンと言ったしもべをも無視し、主である荘介へと向けられる。むき出しの殺気は獲物を捉えた肉食動物そのものである。

「アドバンス召喚!マルチヘデッド・ドラゴン!!」

マルチヘデッド・ドラゴン――

 それはリリース、即ち喰らった生贄の数に比例し、力を増す上級のドラゴン。三つ首の魔竜の攻撃力は現在、3000を誇る。

 三つ首の魔竜は両足をしっかりと地につけ、激しい雄叫びを上げた。

 

 

続く




◆あとがき
3話目でやっとデュエルです。
本腰入れて小説書くの何年ぶりなのかって話なので、ようやくカンを取り戻した感じですね。魔○機神Fの初回版ブックレットの小説少し目を通した甲斐があった気がする。
もう少し回を重ねたらキャラ紹介とかしていきたいですね。
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