救世神話-Storm Saviour   作:風代利紅

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色々試行錯誤しています。
融合、シンクロ、エクシーズの口上を書き方を。
そして、作品そのものの執筆の仕方も。


第9話《デュエルローカルイベント》

 ――土曜日。

 この日は駅前で、デュエルローカルイベントが開催される。

 デュエルローカルイベントとは、ご当地アイドルの一人、藍川理沙も出演する、麗須市のデュエルモンスターズに関わるイベントだ。

 既に荘介の知る限りのイベント内容では、未だ世間では未公開であるペンデュラムカードの公開と、非公認大会の二種は確定している。そして、理沙が出るということはトークショー、もしくは歌やダンスはやるのかもしれない。

 荘介は普段、この手のイベントには興味を示さない。

 そもそも、一匹狼気質なこともあり、荘介が人を誘うということはまずありえない。それは本人も重々自覚しており、今日も一人で行ってみようと考えていた。

 だから、荘介は一人で理沙の顔を見に行くつもりで参加する……。

 

 

 

 

 

 はずだった。

「夕実ィ!? 健一ィ!? 青山ァ!? そして店長ォ!?」

 妹やクラスメートだけじゃない。

 デュエルを通じて知り合った青山座苦やエタドリの店長、他にも直接会話をしたことは無くとも、エタドリの店内で見たことあるような面子もそのイベントの参加者の中より見かけることとなった。

 それはもう、駅前の人がごった返す中の出来事。それでも、知り合いと言うものが無意識に放つオーラは馬鹿にならないもので、これだけの人ごみの中でも、手に取るように把握することができることもある。

「なーんか、変だと思ったんだよ、お兄ちゃん」

「へ?」

「休みの日なんて、結構遅くまで寝てるくせに今日は普段、学校行く時よりも早起きしたもん」

 夕実には既に見抜かれていた。

「っつーか、荘介。お前、こう言うイベント興味なさそーなイメージあるのに、なんだって、こんなとこに来たんだ?」

 健一からも怪しいと勘ぐられる。

「まさか、お前が理沙ちゃんに興味ある……わけねーよな」

 ドキッ!! まるで見透かしていたかのような青山の発言で荘介の心臓が大きく脈打つ。

「藍川理沙ちゃん、凄いんですよ。あの歳でアイドルやってるだけじゃなくて、デュエルだって強いんですから」

 吉川店長のまるで愛娘を見るかのような評価。

「そ、そーでっか……はは、ははは……」

 乾いた愛想笑いで何とかこの場を切り抜けようとする。

 彼らは荘介が理沙と知り合っているなどと、まだ知る由も無い。

 そして、荘介は皆に背を向けてほっと胸を撫で下ろす。

(あぶねぇ、あぶねぇ……)

 

「皆さーん、こんにちはー!!」

 マイクから聞いたことのある声が聞こえた。理沙の声だった。

 その場の誰もがステージに上がった理沙に注目する。勿論、荘介も。

「お、いたいた」

「今日は、デュエルローカルイベントに参加してくれて、ありがとう! 私がMCの藍川理沙です、よろしくねー!」

 理沙が簡単な挨拶をすると、会場内から拍手が一斉に響き渡る。この前、出会った時には見られなかった理沙の一面に荘介も驚き、つられる様に拍手する。

 大勢の人が拍手する中、理沙は誰かを探すように全体を見回す。

 そして、目的の人物、荘介を見つけた。

(草薙君、約束どおり来てくれんだ。ありがとね)

 荘介は遠くからでも、理沙が僅かの間だが、こちらと目が合ったのがわかった。それに気づいて荘介も笑顔になる。

(藍川、これがお前の仕事か。すげぇよ)

 遠くでも互いに目を合わせて存在を確認した後に、理沙は自分の仕事に気持ちをすぐに戻した。

「今日のイベント内容は、まずは、新カードの公表でーす! それが何かはそのときのお楽しみ!」

 

「うおおおおおっ!!」「早く見てぇー!」「今見せてくれー!」

 参加者の多くはデュエリストの端くれ。新しいカードともなれば、気になって仕方が無くなる。

 荘介はと言うと、実は知っているから別に楽しみでもなんでもなかった。理沙が見たかったのが一番理由だからだ。

「その後は非公認デュエル大会を行います! 優勝者には、ちょっとしたプレゼントがあるよ!」

 プレゼントと聞いて一斉に湧き上がる会場。

 あまりに元気が良すぎて、荘介はびっくりした。びっくりして逆に冷めてしまった。

「あー、何かやな予感がする……」

 

****

 

 最初に行われた新カードの発表は案の定、理沙の使ったペンデュラムだった。

 ペンデュラムモンスター、モンスターカードと魔法カードの枠が一つになったような新たなカードは、会場を大いに盛り上げた。

「お兄ちゃん、ペンデュラムだって!」

「ほえー、新しいタイプのカードだな……」

 夕実、健一、青山も他の参加者と一緒になって、驚き、どのようなカードが今後出てくるのか、イメージを頭で膨らませていた。

 荘介はと言うと、公開されたカードが既に見たことのある《ダンシング・セイレーン》であるため、特別驚く事はなかった。既に知ってるものに驚く者はいない。

「草薙、お前、新しいカード出てんのに、何で驚かねぇんだ?」

 真顔の荘介に、青山が問い詰める。

「い、いや!? ソンナ事ネーゾ、HAHAHA……」

 既に戦ったことがある……、だなんて口が裂けても言えない。再び乾いた笑いでその場をやり過ごすしかなかった。

(怪しい……)

 明らかにいつもと違う挙動に、青山もいよいよ荘介を疑い始める。

「それでは! これからは、皆さんお待ちかねのデュエル大会です!」

「「「うおおおおおおおおっ!!」」」

(うるせぇ……)

 さっきまで、何だ何だと話していた連中が、スイッチが切り替わったかのように喧しい。基本的に静かな場所を好む荘介はちょっとうんざりしてきた。目はまるで漫画のように渦を巻いているかのようだ。

(けど、これだけの相手がいれば、経験値稼げそうだよな……)

 荘介はすぐに気持ちをデュエルに切り替えた。ゲンナリとしていた表情も一転し、強気な気持ちが前面に押し出すようにニカッとした笑顔になる。

 目の前の連中、全員がライバルだと思うと、それまで苦手意識を持っていた人ごみすらもかえって気持ちが高揚するほどだった。

 

 ルールの説明が行われる。

 まず、参加資格がある者はデュエルディスクを持参した者のみ。そして、デュエルディスクに、今大会専用のアプリケーションをダウンロードする。

 大会方式はバトルロイヤル方式を取っており、手近な相手に手当たり次第にデュエルを挑み、敗者から順に脱落していくようになっている。

 勝者の管理はアプリケーションで自動管理を行っており、ステージの裏でスタッフがネットワークでそれを監視している。

 また、アプリケーションには敗北者はエリア内ではデュエルができなくなる機能がついている。ただし、アプリケーション自体をアンインストールすればデュエルは再度できるようになるため、今後、デュエルができなくなる心配はない。

 注意事項として、大会中にアプリケーションを削除することは棄権をすることに等しいので参加者は大会中はアプリケーションを消してはならない。

 逆に言えば、棄権するなら、スタッフに申し出ず、アプリケーションを削除すれば良いだけとなっている。

 

 デュエルディスクを持っていない者や、参加しない者は一旦、ステージから離れる。単なる野次馬で見ていた者もいたため、相当数の参加者がステージから離れていったが、それでも参加者自体も相当数いた。

 荘介、夕実、健一、青山、店長、その他大勢……。

 彼らは一斉にデュエルディスクより、アプリケーションをダウンロードし、大会用にディスクを最適化した。

 

 準備が整った者から目の前にいるデュエリストに勝負を挑んでいく。

 この大会、最初の一回戦目は挑まれた対戦は拒否できない。否応無く、受けて立つデュエリスト達は一斉にデュエルディスクを展開し、五枚の手札を左手に持つ。

 

「皆さーん、準備はできましたかー!?」

「おう」

「OKです!」

「オーケー」

「いいぜ」

「私もいいですよ」

 ほぼ一斉に準備OKの様子。

 理沙は会場内の参加者が全員デュエルの準備ができたことを確認した。

 

「では、皆さん、一斉に宣言しましょう! せーの……」

 

 

 ――デュエル!!

 

 

 デュエル大会の幕開けだ。

 

****

 

「俺は、《バードマン》でダイレクトアタック!!」

「うわぁぁー……」

 

荘介の対戦相手 ライフ 1500⇒0

 

 荘介の主力モンスター、《バードマン》による、鉤爪の一撃が勝負を決める。

 このデュエル、荘介の勝ちだ。

 

「《フレアスマッシュ・ドラゴン》の攻撃!」

「ぎゃあぁー!!」

 

健一の対戦相手 ライフ 800⇒0

 

 灼熱のドラゴンによる必殺の一撃。

 健一も自慢のシンクロ召喚を駆使し、勝利していた。

 

「《水精鱗-メガロアビス》で二回攻撃ィ!」

「強えぇ~……!」

 

 上級水精鱗による脅威の二回攻撃が容赦の無い攻めを実現。

 青山座苦、選考会プレイヤーの名は伊達ではない。当然勝利。

 

「よっ、おめーらどうだ?」

「俺は勝ったぞ」

「俺もだ」

 荘介、健一、青山の三人はそれぞれ勝利の報告をする。

 そこへ、吉川店長がとぼとぼと残念そうに歩いてくる。

「いやぁ~、私は負けちゃいましたよ~」

「おいおい……」

 吉川店長の残念な報告に三人はつい苦笑いを浮かべる。

 ともあれ、荘介の身内で五人中四人は勝敗が判明した。四人は一旦、夕実の戦況を確認する。

 

 夕実の対戦相手は内気そうな少年。

 少年の場には、伏せカードが一枚。対する夕実の場には《フレシアの蟲惑魔》が存在している。

「お前の妹、結構良いカード使ってるな」

「蟲惑魔なぁ……。あいつの戦い方めっちゃ強かだぜ。俺だって手も足も出なくなるときがよくあるしよ」

 実の兄による強敵認定をされている夕実。そんな夕実を相手に見知らぬデュエリストはどのような戦い方をするのか、見ものだった。

 

「僕のターン、ドロー! 僕は手札から魔法カード《闇の量産工場》を発動。この効果で僕は墓地の《E・HERO クレイマン》と《E・HERO スパークマン》を手札に戻します」

「エレメンタルヒーロー……? そういや、ショップのショーケースでそんなカードを見たことがあるような……」

 荘介も少しだけだが、その存在は知っていた。

 E・HEROと言えば、融合召喚を得意としているシリーズのモンスター。そして、その事は多くのデュエリストにとって、常識に等しいほど認知されている。

 

 

闇の量産工場 通常魔法

(1)自分の墓地の通常モンスター2体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

E・HERO クレイマン ☆4

戦士族 地属性 ATK800 DEF2000

粘土でできた頑丈な体を持つE・HERO。

体をはって、仲間のE・HEROを守り抜く。

 

E・HERO スパークマン ☆4

戦士族 光属性 ATK1600 DEF1400

様々な武器を使いこなす、光の戦士のE・HERO。

聖なる輝きスパークフラッシュが悪の退路を断つ。

 

 

「てことは、あいつ、融合するのか?」

「そうじゃないかな。世辞にも高性能とは言えない通常モンスター二枚を手札に抱えたってことは……」

 荘介が問い、青山が返答と共に相手のデュエルを分析する。

「そして僕は手札の魔法カード《ダーク・フュージョン》を発動します!」

 夕実の対戦相手が発動したのは通常の《融合》とは異なる魔法カードだった。

「おい、青山!」

「たまげたなぁ。E・HERO(エレメンタルヒーロー)じゃなくて、E-HERO(イービルヒーロー)を使うのか」

「イービルヒーローって?」

「ああ、《ダーク・フュージョン》って奴を使わないと融合召喚できないヒーローでな。他のHEROと違うところは、全部悪魔族だってことだよ。それと、同じ素材で出せるE・HEROの融合体よりも高性能な奴が多い。条件が厳しめだからな」

「へぇ……」

 E・HEROは知っていても、E-HEROは知らなかった荘介は青山の説明を聞いてとても感心した。

「僕は手札の《クレイマン》と、《スパークマン》で融合します!」

 夕実に提示した二枚のHEROを墓地へと置くと、その頭上で土の戦士と電撃の戦士がまるで水溶液のように一つに交じり合う。

 

 ――破壊の意思を体言せし、土の巨人よ。偽善に満ち溢れた世界に今こそ制裁を!

 

 ――融合召喚!

 

 レベル6、《E-HERO ライトニング・ゴーレム》!!

 

 

E-HERO ライトニング・ゴーレム ☆6

悪魔族/融合/効果 光属性 ATK2400 DEF1500

「E・HERO スパークマン」+「E・HERO クレイマン」

このカードは、「ダーク・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1)1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを破壊する。

 

ダーク・フュージョン 通常魔法

(1)手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、悪魔族のその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン相手のカードの効果の対象にならない。

 

 

 雷のような切り裂く刃がごとき意匠で飾られた土人形。それはまるでクレイマンが激しい怒りで破壊衝動に駆り立てられているようにも感じられた。

「特殊召喚時に、《フレシアの蟲惑魔》の効果を発動します! オーバーレイ・ユニットを一つ使って、デッキの落とし穴カードを墓地へ送ります! これで《フレシアの蟲惑魔》はその落とし穴の効果を使えます!」

 夕実も隙を逃さなかった。特殊召喚完了と同時に一度優先権を放棄したタイミングでの効果発動。

「私は、《奈落の落とし穴》を墓地へ送ってその効果で《E-HERO ライトニング・ゴーレム》を除外します。《ダーク・フュージョン》で呼び出された融合モンスターはカード効果の対象にできないけど、《奈落の落とし穴》は対象を取らずに破壊できます」

 流石に夕実は荘介よりこのゲームをやっていただけのことはあるようだ。E-HEROの特性もある程度把握しており、それに応じた対処を今、こうしてやってのけようとしている。

「リバースカードオープン、《ブレイクスルー・スキル》! 《フレシアの蟲惑魔》の効果は無効にさせてもらいます」

 えっ、と夕実は驚く。

「あれ、フレシアって罠カード効かないんじゃなかったか?」

「馬鹿だなぁ、荘介は……」

「あぁ?」

「《フレシアの蟲惑魔》に罠カードが効かないのはあれがオーバーレイユニットを持っている時だけ。よく見てみな」

 気づけば、エクシーズモンスター特有の周囲を漂う衛星が見当たらなかった。そう、夕実は《フレシアの蟲惑魔》をエクシーズ召喚して以来、これで二度目の効果発動であった。

 オーバーレイユニットを失ったところに罠カードを使われ、対抗手段が無いのならば潔く認めるしかない。

 

 

フレシアの蟲惑魔 ☆4

昆虫族/エクシーズ/効果 地属性 ATK300 DEF2500

レベル4モンスター×2

(1)X素材を持ったこのカードは罠カードの効果を受けない。

(2)このカードがモンスターゾーンに存在する限り、「フレシアの蟲惑魔」以外の自分フィールドの「蟲惑魔」モンスターは戦闘・効果で破壊されず、相手の効果の対象にならない。

(3)1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、発動条件を満たしている「ホール」通常罠カードまたは「落とし穴」通常罠カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。この効果は、その罠カード発動時の効果と同じになる。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

奈落の落とし穴 通常罠

(1)相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時に発動できる。その攻撃力1500以上のモンスターを破壊し除外する。

 

ブレイクスルー・スキル 通常罠

(1)相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。

(2)自分ターンに墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手の効果モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

 

 そして、この駆け引きの結果として、夕実のライトニングゴーレム破壊は失敗に終わることとなる。

 夕実はつい、苦い表情を浮かべた。

「そして、《E-HERO ライトニング・ゴーレム》の効果発動です! モンスター一体を破壊します!」

 《フレシアの蟲惑魔》に非情な雷撃が襲い掛かる。

 花の上で眠る可愛らしい妖精は儚い悲鳴を上げて無残にも爆散。

 夕実は蒼ざめた表情で歪む。その眼に映る爆発と煙の向こうには影でうっすらと黒みがかった憤怒の土人形が。

 凄まじい威圧感が夕実を萎縮させる。

「行きます! ライトニングゴーレムでダイレクトアタック、ヘル・ライトニング!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

草薙夕実 ライフ 1800⇒0

 

 駆け引きを制した勢いで、がら空きの本陣突破による必殺の一撃。

 お互いに全力を尽くした良いデュエルだったが、夕実は残念ながら敗北してしまった。

「お兄ちゃん、負けちゃったよぉ~……」

「残念だったな。相手も中々手強かったしな」

 妹が負けたことを残念に思いながらも、相手を高く評価する。

 自分ではできない攻略法で妹に勝てたのだから興味深かったからだ。

 荘介は視線を夕実を倒した相手のほうへ向ける。

「おっす、次は俺とやらないか?」

 歩み寄り、勝負を挑む荘介。

「今の話、少し聞こえたんですけど……。お兄さんなんですか?」

「おう、けど、安心しな。仇討ちとかそんなんじゃなくて、お前が強そうだからやってみたいんだ」

「僕が強いだなんて! でも、負けられませんよ?」

「よっしゃ、そうこなくっちゃ!」

 荘介の勝負にノリ良く受ける少年。

 お互いにデュエルディスクを構えて、五枚のカードを引き、デュエルの準備が整う。

「そうだ、お互い名乗っておこうぜ。俺は草薙荘介!」

「僕は白鳥春樹です。よろしくお願いします!」

 二人のデュエルが始まる。

 それを眺める夕実、健一、青山。

「俺、あの白鳥って少年に100円」

「青山さん、俺もっす」

 二人は何とケンカを見ているかのように小銭を賭け始めた。

「えー、それじゃ賭けになんねーじゃん」

「けど、俺も荘介に賭けたくないっすよ」

「何で?」

「青山さんこそ、何で?」

 

 …………。

 しばしの沈黙。

 

「「荘介が生意気だから」」

 考えは完全に一致していた。

 やはり、荘介の態度はそういう風に見えているようだ。同級生の健一からすればそこまででもないが、青山は大学生。高校生がタメ口聞いてくるだけでも恐れ多いのに、荘介は彼を呼び捨てにまでしている。

 尤も、最初の出会い方を加味すれば致し方ないことではあるが……。

「賭けの話は兎も角、お前とも最近ちゃんとデュエルしてなかったよな」

「そうっすね、良い機会だし、やりましょう!」

「ヘヘ、後悔させてやる」

 健一と青山もまた、デュエルディスクを構えて初手の五枚を左手に持つ。

 こちらでもデュエルが始まった。

 

 一方で、負けて脱落した夕実は荘介と白鳥のデュエルを眺めることにした。

 夕実もまた、白鳥が気になっていた。

「白鳥、君……?」

 名前を知り、顔を見て、違和感に気づいた。

 初めて会ったような気がしない。

 昔、小学校の頃に、同姓同名のクラスメートが居たような気がするのだ。けれども、夕実はそこまではっきりと覚えているわけではなかった。

 夕実は過去のことを考えながら、二人のデュエルを見守ることとした。

 

 夕実の後ろからも、彼らのデュエルを見ている別の参加者が一人いた。

 しかし、それはまるで標的を監視するかのようでもあった。

「白鳥、結構目立ってやがるな……」

 その中でも、男は荘介と対峙する白鳥に注目していた。

 しかし、それは荘介のような明るさは感じられない。

「白鳥の癖に女相手にもませた駆け引きしてるのはマジで気に入らん」

 男は白鳥を疎ましく感じている。その目には侮蔑とも憎悪ともとれる、暗く邪な気を宿らせて。

 右の親指で、右手の他の指の関節を指圧してポキポキと音を鳴らせる。

「どれ、一つわからせてやるよ。ククク……」

 男は口元を不気味に歪ませて、この大衆に囲まれた大会の中、暗躍を始める。




 活動報告のほうで、少し話しましたけど、私が今回、E-HEROを登場させるつもりで話を書いていたら、アークファイブの方でユーリに立ち向かう五人が同じようにGX時代のカードを乱発して度肝を抜かれました。
 あれは率直なところ、神回認定しました。
 そして全部スターヴヴェノムのかませ犬になってしまうのはご愛嬌。
 後、今回、理沙の出番が自分で考えていたよりも控えめになってしまいました。今はアイドルは仕事中で荘介も凸れないし仕方ないですね。それにそろそろ話を動かしたくなってきたのもありますから、その役割を担う人物をどこかで出さなきゃ。
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