これはにじファンで投稿させていただいていた改訂版です。
よろしくお願いします。
どんよりとした鉛色の空からは雨が降り続いていた。
太い雨粒は地面を叩き、鈍い音を奏でている。
「雨…かぁ」
そんな景色を窓を介してぼぅっと眺めている紫色の髪色の美少女。
彼女はふと思う。
雨というのはよくないことが起こる前兆のようなものだと。
よく本を読む彼女は小説の中で良くそういうシーンがあった事を思い出した。
(いやな天気だなぁ…)
雨は止むそぶりを感じさせず、寧ろ雨脚が強くなってきている。
今日が日曜日で良かったと心底思っていたその時、
彼女は外の風景に違和感を覚えた。
「なにか景色がゆがんでいるような…?」
彼女の家の敷地の広大な庭の一部が歪んで見えているのだ。
彼女は疑問を浮かべながらそこを見つめていると、変化が訪れる。
「っ!?人が!」
その歪んだ景色…空間から人が出てきたのである。
遠目からでわかるのは黒髪の少年といったところだろうか。
少年はおぼつかない足で何歩かふらふらと歩いた後倒れた。
「い、いけない!!」
彼女はすぐさま部屋の中においてあった折り畳み傘を手に取り、部屋を飛び出した。
魔法少女リリカルなのは 月村家の執事 プロローグ
「っ…」
「あ、目が覚めたんだね!」
激しい頭痛とともに意識が覚醒する。
視界に移るのは紫色の髪をした少女だ。
(どこかで見覚えがあるな…)
少年は思考を巡らせる。
薄れゆく意識の中最後に少年が見たのは、泣きそうな顔をして手に傘を持っているものの、
広げていない少女の姿。
(ああ、俺はこの人に助けられたのか)
少年の寝ているベッドの横の椅子に座っている彼女こそが少年の恩人。
彼は寝ていた体を上半身だけ起こし、彼女の方を向く。
「あ、だめだよ!急に動いちゃ!!」
「問題ない。それよりも言わせてほしい。あなたが助けてくれたんだろ?ありがとう」
少年は頭を下げる。
少女はそれに慌てた。
「そ、そんな!人として当然のことをしただけだよ!!」
(この子は…本当に優しい子なんだな)
わたわたと慌てる少女を見てクスリと微笑が浮かんだ。
それと同時にこの少女は本当に優しい子だと確信した。
「その当然のことをできる人は本当に限られている。君は当然の事を当然にできる。…優しい子なんだな、君は」
「そ、そんな!?あ、ありがとう!」
「どういたしまして」
突然の賛辞に顔を赤くする少女。
同年代の男友達が少ない彼女にとってあまり耐性がないことだ。
「あ、そうだ。あ、あなたの名前は?」
「そういえば忘れていたな…」
彼は彼女の眼を見る。
目と目を合わせるのはコミュニケーションの基本だと思う彼の原理。
突然に目があったので少女は視線を逸らそうとするが
それは失礼ではないかと思い、視線を交差させた。
「俺の名前は黒崎祐樹だ。…君は?」
「私は月村すずかです。よろしくね。黒崎君」
「ああ、よろしく…君?」
お互いに握手を交わしながらふと少年、黒崎祐樹は疑問を感じた。
(俺はもう二十歳だぞ?それなのに君付け…?)
まさかと思い、祐樹は自分の手のひらを見る。
そこには以前のようなごつごつとした手はなく、子供特有の柔らかそうな手のひらがあった。
一瞬思考が停止するが、すぐさま最後の希望に縋ろうとする。
「なぁ、月村…」
「なに?」
「俺って何歳に見える?」
「何歳って…私と同じくらいかな?」
「お、同じくらい…」
最後の希望も粉々に打ち砕かれた祐樹。
どうやら彼は子供の姿に若返ってしまったようだ。
祐樹はガクッと項垂れた。
祐樹が項垂れてから数十分。
すずかの励ましによって何とか持ち直した祐樹は
月村家の客間に連れられてきていた。
「それではこちらにお掛けになってください」
「ああ、どうもありがとうございます」
あの後すずかの部屋に入ってきて客間まで案内してくれた
物腰静かなメイド――ノエル・K・エーアリヒカイトにお礼を言い、
祐樹は席に着いた。
テーブルを挟んで向こう側の席には
すずかの姉である月村忍とすずかが座っており、その傍らに二人のメイドが佇んでいる。
一人は先ほどまで祐樹を案内してきたノエル。
そして、ノエルが短髪なのに対し、長髪なメイドのファリン・K・エーアリヒカイトだ。
(なんかノエルさんに比べてそそっかしいイメージがあるな…)
と心の中で失礼なことを思う祐樹。
まぁ、彼の思う通りなのだが。
「さてと、黒崎君…でよかったかしら?」
「はい、あなたは…?」
「ああ、紹介が遅れて申し訳ないわね。…私は月村忍。そこにいるすずかの姉よ」
威風堂々。そんな言葉が似合うような立ち振る舞いだ。
「俺は黒崎祐樹です。月村さん…だと妹とかぶるので忍さんでいいですか?」
「ええ、かまわないわ。私も祐樹君と呼ばしてもらうわ」
にこっと笑顔で言う忍。
若干見とれてしまいそうになる祐樹だが、殺気がどこからか飛んできたので
平静を保つ。
(この殺気…目の前の4人ではないな…あと一人どこかに隠れているな)
祐樹は冷静にそう考える。
殺気はすぐに収まった。
忍は笑顔を戻し、真剣な表情で祐樹を見つめる。
「さて、単刀直入に聞くわ。あなたはいったい何者なの?」
「何者…ですか」
「ええ、そうよ。あなたを発見したすずかによると、あなたは急に月村家の庭に表れて倒れたらしいわね。だから何者か気になるのよ、一体どうやって、何が目的で侵入したの?」
「お、お姉ちゃん!そんな言い方…」
「すずかは黙ってなさい。これは問わねばならない質問なの。月村家の当主としてね」
あんまりな姉の言い方に抗議の声を挙げようとするが
忍の鋭い視線と言葉によって沈黙させられる。
(…いい気迫だ)
祐樹は目の前の当主としての任を全うしようとする忍に関心を示していた。
当主として家を守ろうとする意志が伝わってくるのだ。
こんなに若いのに見事である。
「月村…いや、すずかと呼ばしてもらうが、君の姉の言うとおりだ。傍から見れば俺は侵入者であり、その問いは的を得ている。そして、忍さん。見事な気迫だ。あなたの当主としてのその心意気を感じますよ」
「へ?あ、ありがと…」
まさか褒められると思っていなかったのか素っ頓狂な声を上げる忍。
その姿に祐樹は微笑を浮かべた。
「さて、俺は何者なのか。その問いに答えましょうか。と言っても、俺にも確証できていないところがありますので、そのところは推測の話ですけどね」
どうでしたか。
プロローグはあまりいじっていませんが前よりかは文のレベルが向上していると思いたいですね。
感想等お待ちしています。
これからよろしくお願いします。