キョンの非日常   作:囲村すき

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十三話 十二月のストーブとどうでもいいような体育のサッカー

 

 

 

 残暑長引きすぎだ、と文句を言っているのが雲の上の誰かに聞こえたのか、十二月に入ると急に冷え込んだ。迷惑極まりない話である。

 

 特に朝の部屋の冷え込みようと言ったらない。カーペットもほぼ意味をなさない。ぜひ床暖房に改築すべきだとまあ俺も散々愚痴っていたしな、これぐらいのことは見逃しておいてやらなくてもなくなくなくないだろう。

 

 何の話なのか分からないって?ヒントは布団とベッドの交代制だ。まだ分からない?第二ヒントはキョン子だ。・・・・分かるか?

 

 第三ヒントは、キョン子が俺のベッドに潜り込んでいる、ということだ。

 

 

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 目を開けたキョン子が、とろんとした目のまま、俺をいきなりベッドの下へと蹴り落とした。

 

 「ってえなっ!ってか寒い!」

 

 「夜這いとか・・・ないと思うな・・・仮にも自分(・・)にさ・・・・」

 

 「夜這・・・ってお前が潜り込んできたんだっっっっ!ってやばい寒い」

 

 昨日は俺がベッドの日だったはずだ。猫かお前は全く。そしてその軽蔑するような目を今すぐやめろ。被害者は俺だ。

 

 「あれ・・・?そうだっけ・・・眠い・・・睡眠薬・・だ・・」

 

 まだ夢を見ているのかお前は?誰が睡眠薬だ。俺はお前のお蔭ですっかり目が覚めたぜ。・・・・・・・・・こいつ二度寝しやがった。もう知らん。

 

 俺はキョン子を絶対(・・)に起こさないようにそろりそろりと支度を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・ふーん、じゃあキョン子さんは今頃大慌てかもね」

 

 学校の下駄箱で会った国木田にこのことを話すと、国木田はのんびりと言った。

 

 「ああ。最終目覚まし兵器の妹も今日は歩行会とかなんとかで早く出たからな、あいつを起こすものはもういないのさ」

 

 「でもキョン」

 

 「なんだ」

 

 「キョン子さんってキョンの部屋で生活してるの?」

 

 ・・・・・・・しまった。

 

 「そんなわけがないだろう何を言っているんだ国木田よそんな戯言をほざくなんて国木田らしくないぞさては頭が風邪でも引いたのか」

 

 息継ぎせずに言いきった。

 

 「ああ、実はそうなんだ、このところのどの調子が悪くて。頭はまだ痛くないんだけどね」

 

 「・・・あ、そうなのか。まあ季節の変わり目だしな」

 

 うまい具合に話題を変えることができて俺はほっとした。しかし・・・うっかりとしていた。どうやら俺の中では非日常がいつの間にか日常を侵食しつつあるようだ。

 

 チャイムが鳴ったのでざわざわとしていた周りも席に着き、俺はのろのろと数学の教科書とノートを取り出した。

 

 

 

 

 

 ちなみに、キョン子は一限目の途中で現れた。俺を睨みつけながら。

 

 

 

 

 

 

 教室に暖房があれば俺ももっと意欲的に学習に取り組めるだろうななどと到底実現できなさそうな妄想をしていると、いつの間にか四限目であった。

 

 四限目は体育で、しかも男子は外でサッカーだった。

 

 「この時期にサッカーなんて、カリキュラムに深刻な問題があると思うね」

 

 隣でのんびりと構えて、味方のフォワードたちの攻撃を眺めている谷口に俺はぼやいた。

 

 「ふふ、そうだな・・・ぐふふふ」

 

 「なんだその気味の悪い含み笑いは。そんなにサッカーが好きだったのか」

 

 谷口はあからさまに上機嫌だった。顔が常ににやけている。どうしたものか気持ち悪い。

 

 「いやあ、よくぞ聞いてくれたなキョンよ!」

 

 別に聞いちゃないがね。

 

 「文化祭の時の俺の宣誓を覚えているか、キョンよ」

 

 あ?ああ、クリスマスまでに絶対に彼女を見つける・・なんて言ってたな。

 

 「そうっ!俺はあの時の目標を見事達成したのであった!」

 

 嘘だ。

 

 「はっはー!嘘じゃないんだなこれが!いやー、俺はもーお前側の人間じゃなくなっちまった!置いてって悪いなーキョンっ!いやーほんとすまねえー!」

 

 「・・・・相手は誰だ」

 

 「光陽園学院のお嬢さんだぜっ!清楚系だ、いいだろ?」

 

 光陽園学院っていったらあの駅前の女子高か。

 

 「さあて、クリスマスはどっこに行こうかなぁ~」

 

 浮かれて頭がぴよぴよになっている谷口の顔面に、ちょうど相手が放った超絶アーリークロスが直撃、

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・すれば良かったのに。

 

 まあ、そううまくはいかないもんだ。な。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、まあ放課後。

 

 「クリスマスを目いっぱい楽しむのよ!」

 

 というハルヒの号令で俺や古泉は部室をクリスマスバージョンに飾り付けていた。朝比奈さんはちなみにサンタになっている。このサンタ衣装、ハルヒのクリスマスプレゼントらしいが、なかなかどうして奴も良いものを持ってくる。とほめたくなるほど、朝比奈サンタはよく似合っていた。・・・何でも似合うんだな、朝比奈さんは。

 

 「今年はうっかりしてたけど、来年は釈迦とマホメットの誕生日も祝ってやらなくちゃね。キリストだけじゃ不公平だわ」

 

 我らが団長は団長席に座ってそんなことをほざく。

 

 キョン子はストーブの前で猫はこたつで丸くなるの図を人間なりに忠実に再現していた・・・ウソだろ、寝てやがる。

 

 「やっぱ鍋かなぁ・・ね、何がいい?」

 

 「何の話かさっぱりだ」

 

 「クリスマスパーティーのご馳走に決まってるじゃない」

 

 まあなんでもいいが。鍋でも別にいいんじゃないか。闇鍋とかは禁止でな。

 

 古泉が振り返る。

 

 「では、僕がどこかの店に予約しておきましょうか?」

 

 ハルヒは首を横に振った。

 

 「ううん、もちろんここでやるわよ、あたしが作るんだからっ!」

 

 火気厳禁だろ、ここは。

 

 「ばれなきゃ大丈夫。こういうのは、隠れながらやるのが楽しいんだから」

 

 万一見つかっても鍋を食わせりゃおとなしくなるに違いないとハルヒは力説した。こいつが言うんだから本当にそうなりそうな気がするぜ。

 

 てなわけで、今年のクリスマスはSOS団でハルヒの手製鍋を喰らうことになった。別に谷口のことはうらやましくない。

 

 

 

 

 

 

 

 「具材は何がいいかしらね・・今のうちに考えておかないと」

 

 「おや、雨が降ってきそうですね」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・そう」

 

 「あの~・・・お茶入れましょうか・・・?サンタさんですが」

 

 「眠い・・・寒い。。。キョン、炬燵出そう」

 

 

 

 

  まあこんな具合で、俺は俺らしいクリスマスを迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 

 

 

 




消失編です!乞うご期待!
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