その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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今週の一言…。


ゴルフ、許すまじ。


戦士

 

 

 

灰原宅・地下ガレージ地下

 

悠が凪沙とのデートで出掛けてる一方、ラボ内で待機中の秋達は…。

 

「…ハァ。悠兄さん。今頃どうしてっかなぁ~?」

 

「それをアンタが気にしてどうするのよ。」

 

「だって~。ベタ惚れの女の子と最後のデートとか…あぁいうのとか…。」

 

 

 

「………ハァ。」

 

 

秋が目を向けた先には、離れた所でデスクに肘着いて珍しく思い詰めた様子のラ・フォリアだった。

 

秋から凪沙との今後の関係を聞いて以来ずっとあの調子であり、重い空気が漂うこの状況は秋にとって居た堪れなかった。

 

「ハァ~ア。…なーんか恋って色々複雑なモンなんだねぇ。もっとこう、パッと明るく華やかなモンだと思ったけど…。」

 

「それはマンガでの恋でしょうよ。

逆よ逆。恋は複雑じゃなくて、複雑だから恋なのよ。人の好意や嫌悪、それって単純に思えてそうじゃないの。ちょっとの事で好きから嫌いになったって、可笑しくない位にね。」

 

「ほぉ~~。めっずらしく深い事言うねぇ………でもそういう割には姉ちゃん恋とかそういうのまっっったく無関係だったよな。どっちかというと二次元に恋してたっつうカンジ?」

 

「う、うっさいわ!!そう易々イイ男なんて出会えるわけないでしょう!!!」

 

「え~?出会わなかったじゃなくて、探さなかったの間違いじゃないの~?」

 

「何ですってぇ~!?」

 

「………ハァ。」

 

桜井姉弟の喧騒にも目もくれないラ・フォリアの心情は正に複雑だった。

本当にこれで良いのか?そう問うにも肝心の人物が居らず只々時間が過ぎて行くこの間が彼女にとって憂鬱な時だった。

 

 

 

 

ラボ内に警報の音が鳴るまで。

 

 

「ッ!出やがった!!」

 

「ベルトさん場所は何処!?」

 

<今特定してる!……ッ!コレは…。>

 

「何々?一体どんなヤツが出たのさ!?融合進化態か!?」

 

<いや、反応は只のロイミュードだ。だが現れた場所は二つ。それも、それぞれ方角は東と西、レーダーが探知出きるギリギリのところでた。>

 

「マジか…てことは必然的に二手に分かれるしかねえ、ってか。」

 

<そういう事になる……。秋、キミはライドブースターで東の方を頼む。私は西だ。>

 

「オッケイ。と言う訳で姉ちゃん、ラ・フォリアちゃん。行って来るぜ!」

 

「気を付けなさいよ。」

 

「ご武運を。」

 

「任せとけって──Let‘s!変身!」

 

<< MACH! >>

 

マッハへ変身した秋はラボにあるライドブースターに乗り、開いた正面ゲートから発進。クリムもオート状態のダークドライブになり、ネクストライドロンに乗って発進した。

 

残されたハルナとラ・フォリアは閉まり始めたゲートを見て無事を祈るなか、立て続けにラボ内に警告音が鳴り響いた。

 

「また!?今度は一体何処よ…え?」

 

「どうかしましたか?」

 

「ちょっと…これ不味いわよ…。」

 

動揺を隠しきれないハルナにラ・フォリアは何だと思い端末の画面を覗き込むとそこに写しだされた表示には、”SORCERER”・”GOLDDRIVE”という敵仮面ライダーと”YUU”と表示された位置データだった。

 

「これは…もしかして悠が、敵の仮面ライダーと!?確か今凪沙と一緒に居る筈ですよ!?」

 

「えぇ。もしそうだとしたら…。」

 

悠の性格を考えて、凪沙が近くに居る以上変身出来ないし、したとしても大規模な余波で凪沙を傷つけてしまう可能性が大いにある為に悠は戦えない。おまけに秋とクリムは今先程街の外れギリギリの場所に向かってる為に救援は間に合わない。正に絶体絶命だ。

 

 

「…こうなったら、私が行くしか…!」

 

「ハルナ…私も連れてってください。」

 

「ラ・フォリアさん!?何言ってるの!?そんなのダメに決まってるでしょ!!」

 

「…イヤな予感がするんです。途轍もなくイヤな……決して無理な事はしません。約束します。だからお願いします。」

 

「…ハァ。後で灰原君に怒られるわね…分かったわ。ただし、絶対私の傍から絶対離れないでね。」

 

「ありがとうございます。ハルナ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今現在。戦地と成り代わった公園の一角は混乱の只中であった。

 

「ぐぅぅッ…はな、しやがれッ…!」

 

「先輩!!」

 

古城を抑え付け、首元に噛み付き古城の魔力を吸い上げて行くデビルファントム。

 

その勢いは増していき、古城の抵抗も段々と弱くなり意識が朦朧とし始めた時だった。風を切る音が聞こえた直後、抑え付けていたデビルが横へ吹き飛ばされた。

 

弱々しく息が上がる古城の頭上には鋼鉄の鞭、テイルウィッパーが遠くに居るチェイサーの元へ。吹き飛ばされたデビルはチェイサーに向かい吠え飛び掛かろうとするが、直前に体の向きを変え主であるソーサラーの元に跳んだ。

 

ソーサラーの前で犬のお座りの様な体制のデビルは口を大きく広げソーサラーの眼前にあるモノを出す。悪魔より赤く、それこそ鮮血の様な塊。古城から吸い取った魔力を手にソーサラーはまじまじと観察しだす。

 

「フム……これは初めて見るタイプですねぇ。

不安定ですが純潔の悪魔より質の高い……けれど魔族の魔力にも何処か似ている……これは是非とも持ち帰って隈なく調べる必要有りですね。」

 

「おやおや、研究者魂に火が着いたか。それよりもどうするの?コレ。

彼の挨拶と、例の黒ローブがもしかしたら来るかもしれないという理由で来たワケだけど。」

 

「この様子だと来る気配は全く無いと見ていいでしょう。念の為気配察知の魔法を辺りに仕掛けましたが反応はゼロでしたし…。それよりも私はコレを早く調べたくて堪らない。ドクターはドクターでお好きに動いて構いませんよ。」

 

「そう?ならそうさせて貰うけど…。」

 

「そうはさせるか!」

 

ソーサラーが持つ魔力の正体。それに目を付けられる前にせめてあの魔力だけでも。そこからのチェイサー行動は速かった。

 

<< TUNE CHASER SPIDER/COBRA/BAT >>

 

 

「トリプル・チューン──ッ!」

 

「おっと。そうは──」

 

「いえ。別れの挨拶にここは私が。」

 

<< YES! VANISH STRIKE! UNDERSTAND? >>

 

 

 

ファングスパイディー・テイルウィッパー・ウィングスナイパーに背中のE-サーキュラーから送られるエネルギーを最大にして放つチェイサーの必殺技。

 

翳した手に幾つもの魔方陣が重なり、巨大な魔力の塊を爆弾として放つソーサラーの最高火力の魔法。

 

 

それが今──。

 

 

「ハァッ!!」

 

「フッ!!」

 

 

 

 

二つの技が合わさった瞬間、眩い閃光と嵐の如き爆風は公園内に広がった。

 

 

 

 

 

「うおッ!?」

 

「ッ!凪沙ちゃん伏せてッ!!」

 

「キャアァァアッ!!」

 

 

 

古城達が目を瞑り自然と足に力が入り飛ばされないよう身を伏せた。

 

「──グァッ!!」

 

やがて閃光が収まり出すと、古城の傍に人影が転がる。変身が強制解除された悠が合わさった必殺技の衝撃に耐えきれずに身を投げ出されたのだった。

 

 

そして対するソーサラーは依然、古城の魔力を持ったまま平然と立っていたままだった。

ソーサラーの放ったバニッシュストライクがチェイサーのトリプルチューンを上回っていたのだ。それ故にチェイサーの技を押していたのもあってソーサラーは爆風による衝撃をチェイサーに比べて喰らって無かった。

 

 

「さて、挨拶は済みましたので私はこれにて。

ドクター。多少の事は目を瞑りますが、くれぐれもやり過ぎの無いよう。」

 

<< TREPORT NOW! >>

 

「了解。ごゆっくりどうぞ。」

 

古城の魔力を持ちテレポートでその場から消え去っていったソーサラー。残されたゴルドドライブは何をするかと辺りを見渡す。そして目に付いたのは…。

 

「…フフ。偶には悪の組織らしい事でもしてみようかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてソーサラーが去った後に残された悠。爆風の衝撃で吹き飛ばされたがそこまで深いダメージも無かったので難無く起き上がれた。

辺りを見渡すとソーサラーとゴルドドライブの姿が見えない。あの一瞬の内に撤退したのだと察すると隠す気も無く盛大に舌打ちをする。

 

ソーサラーが持ち去った古城の魔力。第四真祖の吸血鬼の力。

そこらの人外とは違い吸血鬼の最高ランクと言える真祖の魔力を持ってかれた事。そしてそれを持つ所有者を知られた事。

これがこの戦争に置いてどれだけの影響を及ぼすか危惧する悠だが、所有者の事でハッと気付くと近くに倒れた古城を見る。

 

直ぐ近くでは、まだ魔力を奪われた後遺症か上手く力が入らず立ち上がれない古城が居た。

 

「…オイ。大丈夫か暁…ッ。」

 

差し伸べた手が途中で止まった。

 

蹲ってる古城の目が悠に向けられる。その眼には明らかな動揺、未だ状況を理解出来ぬといった無言の視線が向けられていた。

 

先程まで友と信じていた人間が姿を変えた。それも以前脅迫紛いの言葉を叩きつけて来た存在に。

 

それが今自分に対し手を差し伸ばそうとしたが躊躇い、どうすれば良いか分からないと言った顔で立ち尽くしてる。古城の口から今のは何だったのか?その言葉が口から上手く出せないでいた。

 

「……なぁ、灰原…。」

 

「ッ…。」

 

「……お前は…。」

 

古城が恐る恐ると言った形で口を出そうとするその姿勢に悠の表情が固くなる。

 

だがその空気は此方に向かって飛んで来る人影によって無理矢理壊された。

 

「ッ!?──グッ!!」

 

「ッ!姫柊!!」

 

「す、すみません。先輩…。」

 

悠が咄嗟に気付いて身を挺して受け止めた人物は雪菜だった。雪菜は此方に向かって声を掛けて来る古城に向かって謝った後に意識を失い気絶した。

悠は雪菜の言葉の意味に顔色を変えてある場所へ目を向けた。彼女が飛ばされたであろう場所に最悪の光景を目に。

 

 

 

気を失った凪沙を肩で担いでいるゴルドドライブの姿を。

 

 

 

「番堂ォ…テメェ…!」

 

「フフフ。キミのその形相初めて見たよ。オォ怖い怖い。」

 

「凪沙!!テメエ、凪沙をどうするつもりだ!!!」

 

「さァ?どうしようかなァ?実験に使うのも良いし、デビルのエサにくれてやるのも一種の考えかな?」

 

「ふ…ふっざけんなァァアアアァアッッ!!!」

 

「その子を離せぇえぇぇえぇッッ!!!」

 

「オイオイ。らしくないよ、そんな熱くなっちゃってさァ!!」

 

ゴルドドライブに向かって駆けだして行く悠と先程までの状態が嘘の様に動き出す古城にゴルドドライブはエネルギー球体を造り出し悠に向けて放った。

 

球体は悠達の手前で着弾し爆発。吹き飛ばされた悠と古城は服に焦げ目が付き、負傷を負った。

 

「フフフ。お姫様を取り返したくば追って来なよ?ボクの気紛れで何時どうなっちゃうか判らないからさ。フフフ。」

 

「マ…て…。」

 

「凪沙ッ……凪沙ァアァアッ!!!」

 

声を荒げ叫ぶ古城だが当のゴルドドライブは凪沙を担いだ状態で、大きく跳躍しその場から立ち去った。

 

そしてその直後公園内を駆け回る集団。ラ・フォリアを連れたハルナ達救援部隊が、跳躍して公園内から立ち去るゴルドドライブを目にする。

 

「ッ!今のって…!」

 

「アレは…!悠!!」

 

残ったのは荒れた土地と手を伸ばしゴルドドライブが去った後を見る古城と声に出ない怒りを地面に叩き付ける悠の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーガッ!ー

 

「ッ…!」

 

「灰原…どういう事か納得のいく説明をしろォッ!!」

 

襟首を掴み上げ近くの木に叩き付けた古城は悠に怒りの形相で問い詰めて来た。

最早先程までの躊躇いなど一切無く感情的になって悠に迫る古城に、一息吐いて口を開く。

 

「……今さっき見たのが真実だ。嘘偽り無い、俺の正体。」

 

懐から取り出したカードデッキを古城に見せ付ける。

デッキに描かれてる黒龍のエンブレム。それがリュウガのベルトに嵌められた物と同一である事に目を見開いた古城の腕を払う。

 

少し離れた先ではベンチで横になってる雪菜を治療するハルナと此方を心配そうに見るラ・フォリアの姿。二人の間に何とも言えない空気が張り詰めてるのが遠くからでも分かり、下手に間には居る事が出来ずにいた。

 

「……お前が……お前がなんで仮面ライダーなのか、仮面ライダーは大道克己じゃなかったのか、どうして今まで隠してたのか、少なくとも今はんな事どうだっていい!!…アイツは!あの野郎はどうして凪沙を連れて行った!?なんで凪沙が…ッ!!」

 

「…十中八九此方を誘い出す為、としか考え付かねぇな。

…でも確かな事は二つ。ヤツはこの街から出る様な真似はしない事と此方が出向くまではお前の妹には手を出して来ない。あくまでアイツの狙いは、俺だし。」

 

「でもさっき凪沙を実験に使うとかエサだとか言っていたぞ!それにその考えが確かっつう確証なんざ何処にも…。」

 

「アレはこっちを躍起にさせる為の挑発。まんまと俺も乗せられたけど冷静になって考えたよ。

アイツ等は結果より過程に拘ってる面がある。まるでゲームみたいに楽しんでな。現に連中は三大勢力を何時でも潰せるからダメ押しとかそんな考え一切無い。だから…。」

 

「人質の凪沙は何時でも殺せるから、すぐには殺さない?」

 

「あぁ。でも急いだ方が良いのも確か。連中のやる事は意味わかんな過ぎて何やらかすか知れないしな。」

 

「だったr直ぐにでも探しに行くだろ!!…こう言う時は浅葱に…ッ!」

 

古城が取り出した携帯を即座に悠は取り挙げた。

 

「何やってんだ返せよ!!こうしてる間にも凪沙が…。」

 

「頭使えよ!!……捜索ならやってる。ヤツがこの街に居るのは確かだ。今虱潰しに捜させてる。」

 

「だからって悠長に待っていられねえよ!!浅葱の力を借りれば「頭使えって言ってんだろうがッ!」ッ!?」

 

「…アイツがどう役に立つか知らないが、アイツもこの騒動に巻き込むってコト、忘れてねえか?あぁ?

下手に巻き込んで目ぇ付けられるマネをアイツがしたらそれこそ二の舞だぞ!?──自分の都合で死んでも可笑しくないヤバい事に他人巻き込んでじゃねぇ。言い方変えれば、お前が藍葉を殺すような事になんだよ!!」

 

「ッ!…お、オレは……オレはそんなつもり…。」

 

「あと、当然の如く言わせて貰うけど、お前を連れてく気は一切無い。俺一人で行く。」

 

「ッ!?冗談じゃねえぞッ!?どうしてお前一人で行くんだよ!?オレも行くぞ!!」

 

「バカ。足手纏いになるからに決まってるだろ。ずぶの素人連れて被害被るとか、マジ洒落になんねえし。」

 

「オレだって戦える!!こっちだってそれなりの場数踏んでんだ、それに妹助けねえで兄貴名乗っていられるかよ!!」

 

「…だからこそダメだってつってるだろうが……いいからここで待ってろ。余計な事一切すんなよ…。」

 

「オイ灰原ッ!」

 

ゴルドドライブを捜そうとその場を後に歩き始める悠の前に古城が立ちはだかる。

 

一触即発の空気が流れるなか、雪菜の治療を終えたハルナが止めに入ろうとするが悠のアイコンタクトが”邪魔をするな”と言ってきているので静観する事にした。

 

「………やっぱ言っても聞くワケねえか…。」

 

「…オレが大人しく言う事聞くと思うか?」

 

「…思えねぇなぁ。」

 

向かい合い、ただ黙って互いを睨み合う二人。

 

 

 

ーパシィ!ー

 

 

「…へぇ。ちょっとは成長したってか…。」

 

「へッ…。」

 

乾いた肉の音に悠は感心の声を漏らし、古城はしてやったりといった顔になる。

 

下を見ると古城の鳩尾目掛け突き出された悠の拳を古城が二本の腕でしっかりとガードし掴んでた。

 

「何度もそう易々腹パン喰らわねえよ。さぁどうする?このまま…?」

 

下を見ていた所為か頭上から被さる影の正体に顔を上げたのがこの時の古城の失敗だった。

 

「フンッッ!!!」

 

「んごォッ!?」

 

丁度顔を上げた先に悠のヘッドバッドが眉間に決まり意識がブラックアウト。気を失った古城。

そのまま膝から崩れ倒れた古城に言葉を投げ掛ける。

 

「言ったろ、頭使えってなぁ…………あ~、イッテェ。コブ出来ちまったよコレ…。」

 

倒れた古城を後に額を擦りながらハルナ達の元まで歩む悠。

歩む先にはハルナとラ・フォリアが駆け足で悠の元まで来た。

 

「ちょっと灰原君!コレって一体どうゆう事よ!?」

 

「聞き耳立ててただろ?そのまんま。正体バレた挙句、凪沙ちゃん連れ去られたよ。」

 

「そんな…やっぱりあの仮面ライダーが担いでいたのは…。古城達はどうするんです?」

 

「このまま放って置いて。起きたら起きたで絶対関わって来るだろうし…。それだけは絶対避けなきゃなんねぇ。」

 

「…それは凪沙の為ですか?それとも古城?」

 

「…さぁ?どっちだろうな。

それより桜井。秋とクリムは?」

 

「二人は今ロイミュードと交戦中よ。そこまで強くないけど数が多すぎてまだ時間が掛かるらしいわ。おまけに出た場所が東方面と西方面。これ、敵の罠だったのね。」

 

「イヤな所突いてきやがって…援軍は期待出来そうに無いか。それに引き替え人質救出…結構厳しいねぇ。」

 

「「……。」」

 

沈黙の空気を破るかの様に悠の携帯が鳴り響く。

画面に写しだされたのは位置図マップには赤いマーカーが記されており、場所は工場地帯であった。

 

「ソーラーが見つけ出した。南の工場地帯か…こっからならそう遠くはねえな。」

 

「待ってよ。本当に一人で行くつもりなの!?せめて秋達が来るまで待って作戦を立てた方が良いわ!」

 

「人質がいる以上時間は掛けらんねえし、下手な事してバレたらそれこそアウト。素直に一人で行くしかねえよ。」

 

「悠…。」

 

相手は此方の戦闘データを基に分析しながら翻弄してくる強敵ゴルドドライブ。それを相手に人質に取られた凪沙の救出。悠にとっては守りながらの戦闘は兎も角、人質の救出という任務は今までした事が無い。

最早最悪としか言い得ない位の状況であった。

 

それ真意をハルナとラ・フォリアは僅かな表情で読み取ったのか暗い面持ちになる。

もしかしたらどちらかが命を落とし、最悪の場合は二人共々に…。

 

「……ハァ--。」

 

悠の決意は既に決まっていた。上を向いて大きく息を吐いた悠は、内心決意表明した悠は暗い面持ちのラ・フォリアの肩に手を乗せる。

 

「?どうかしまし…ッ。」

 

「なぁッ!?」

 

肩に乗せられた手になんだと言った顔で悠を見ると気付けば眼前に目を閉じた悠の顔が。唇に柔かい感触が伝わってる事からキスされてるのだと気付き、傍で見てたハルナは顔を赤くし口をパクパクと開けたり閉じたり繰り返してた。

 

長く味わう様に時間を掛けた後、悠は唇を離した。

 

「悠。…今のって…。」

 

「景気付け。今日運最悪だから貰っとく。

…ちゃんと帰って来るさ。今までもそうだったろ?」

 

「…そうでしたね。……でもあんな形のキスはちょっとマイナスですよ。」

 

「オマエなぁ…ちゃんと俺からキスするっていうリクエストに応えたつもりだけど?」

 

「する側になってもムードってモノを見極めてくれなきゃダメですよ。女の子はそういうのを大事にしてるんですから…。」

 

「複雑だねえ女心…一生欠けても分からなそう…。」

 

「フフ……それなら、帰って来た時にキスしてください。凪沙もちゃんと助けて。」

 

「…あぁ。」

 

それだけ告げて悠はその場を後に駆けて行った。その背中を見てラ・フォリアは笑顔から悲痛な顔になって見つめることしか出来なかった。

 

「…………バカ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公園内から出た悠はロックビークルを開錠し、アクセルを回して工場地帯を目指す。

 

(…悪いな。あんな形でしかアンタのご要望に応えられなかったよ。)

 

 

 

 

 

ー今度キスするときはアナタからしてくださいよー

 

ー俺がその気になったらね。天地ひっくり返ってもあり得ないだろうけどー

 

 

 

 

 

 

(──助けるさ。こんな野郎の命一つで済むなら…!)

 

 

決死の覚悟を意に悠はアクセルを限界まで吹かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ん。」

 

「あ、起きましたか。先輩。」

 

「姫柊?……ッ!灰原!ッ…。」

 

目が覚めた古城を迎えたのは、此方を覗き込む雪菜の顔と頭に来る鈍痛だった。

 

頭を抑えながらゆっくり上体を起こす古城の背中を支える雪菜。辺りを見渡すと近くにはラ・フォリアとハルナがおりこの鈍痛を与えた張本人はこの場に居なかった。

 

「灰原は…行ったのか。」

 

「えぇ。凪沙を助けに一人で…。」

 

「クソッ!!…アイツ何考えてあんな事…。」

 

「…分かりません?悠がどうしてアナタをそこまで止めたのか、その理由が。」

 

「ラ・フォリア、王女?」

 

「…ハルナ。」

 

「え?ここで私に振る!?……う~~~ん…まぁ全容を話さなければ言ってもいいんじゃない?」

 

「あのぉ…話を聞くかぎりラ・フォリア王女は、灰原先輩が仮面ライダーって知ってたんですか?」

 

「えぇ。仮にも一緒に暮らしてる身ですもの、知ってて当然じゃないですか。」

 

「正気ですか!?

仮面ライダーは今最も危険な存在として扱われてる要注意人物ですよ!?ましてやラ・フォリア王女あろうお方がそれを分かって一緒に居るなんて…!?」

 

「…そうですね。確かに彼はそういう風に見えても可笑しくない位の事をしたでしょうね。」

 

「だったらどうして…!」

 

「丁度良いから纏めて話しますよ。私が彼と出会った本当の出来事と、彼がやろうとしてる事、そして…今悠が何をやろうとしているのか…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方悠はゴルドドライブが潜伏してるであろう工場があちこちに立ち並ぶ一帯の中に入り込んでいた。

 

携帯とブレイクガンナーを手にバーニングソーラーが送って来た位置データの元まで慎重に行き、記された一つの工場に辿り着いた。

 

(…やけに静かすぎるな。罠?…でも行くしかねぇか…。)

 

物陰に隠れながら様子を窺うも敵の気配は全く無し。あまりの静けさに罠の可能性を疑うも踏み込む決意を決めた悠は銃を構えながら工場内に入って行った。

 

工場内は広く鋼材等の資材がそこらじゅうに積まれており、この中から人一人探すのは骨が折れると思った時先の道に僅かに光る小さなモノに目が行った。

 

「?……ッ!」

 

光るモノの正体に気付いた悠は駆け出す。しゃがんで拾い上げるとボロボロの状態になるまで破損したバーニングソーラーが今にも機能停止しそうな状態に限らず光を点滅していた。

 

それはそう、自身の身では無く悠に対して危険信号を放つように。

 

 

 

「ここに来る途中偶然そのオモチャを見つけてねぇ。ソレが出してる信号を解析してキミをココに呼んだってワケだよ。」

 

「…つくづく今日は癇に障る事してくれてんなぁ、あ゛ァッ!?」

 

最早隠す気も無いと言わんばかりの怒りの形相を背後に立つ人物に向けてぶつける悠。

腕を組みながら余裕の態度を崩さないゴルドドライブこと番堂は、クスクスと笑い向けられてる怒気を軽く受け流す。

 

「おーコワいコワい。とてもお姫さまを救いに来た王子様とは思えない顔だよ?」

 

「………フゥーーー。」

 

事実を指摘され一度大きく息を整えて冷静になる悠。今この場で優先すべきは感情的になる事でなく、凪沙の身の確保と救出。その為に今は怒りを抑え冷静に動かなければならない。

 

「…で?その肝心のお姫さまはドコよ?」

 

「あぁそれなら…ホラ、あそこ。」

 

ゴルドドライブが指差す所へ目をやると、天井から鎖で縛られ吊るされた状態で気を失ってる凪沙がそこに居た。

その光景に悠はまた怒りが込み上げて来そうになるがグッと堪えて気を落ち着かせる。

 

「人質ならもっと丁重に扱えよ、特に、嫁入り前の女はさぁ。」

 

「お生憎様、ボクは色気より研究の方に首ったけの男でね。女性に扱いに関してはこの頭脳に入っていないんだ。」

 

「ハッ、カビ臭そうな部屋に籠ってるイメージが簡単に思い浮かべるよ。……兎も角、ご覧の通り来てやったぞ。もういいだろ。早く放せよ。」

 

「せっかちだなぁ、折角彼女を特等席に運んだんだ。下ろすのはまだ早い。」

 

「野郎と機械のダンスなんざ、三流舞台もイイとこだぜ…。」

 

懐に手を入れようとする悠に対し、ゴルドドライブがそれを制した。

 

「おっと待った。どうせ変身するならあのジャンクパーツの寄せ集めで頼むよ。」

 

「テメェのリクエストなんざ聞きたくもねぇんだが?」

 

「おや?そんな口聞いても良いのかなぁ~?…彼女、どうなっても知らないよ?」

 

「……チッ!」

 

<< BREAK UP >>

 

凪沙を盾に取られてる以上迂闊な行動が出来ない。その事実に内心悪態を吐きながら要望通りに魔進チェイサーへ変わり、ゴルドドライブは組んでいた腕を解いた。

 

「さてそれじゃあ始めようか。あぁそうそう、抵抗はしても構わないよ?流石に一方的にイジめるのはボクの趣味じゃないから。」

 

「よく言うよ……この顔文字野郎…ッ!?」

 

構えだし足を踏み込むチェイサーの眼前に、かなり離れた筈の位置に居たゴルドドライブの拳がチェイサーの胸に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──とまぁ、こんな所です。」

 

ラ・フォリアから今までの悠達に起きた出来事やこれから起きるであろう争いに対する考えを話せる範囲で古城達に話した。

 

当の古城と雪菜は突然の事に理解が半ば追いついてないのか困惑した様子が浮かべられ、第一声を放したのは古城だった。

 

「えっと………取り敢えずさっきの話しを簡潔に纏めると……灰原はオレ達の為に?…」

 

「えぇ。すっごく回りくどくて捻くれていはいますけどね。」

 

「あの時…オレに対してあぁ言ったのは、巻き込まない為だぁ?……あの野郎!なんつー紛らわしい事してんだ!?」

 

「そういうやり方しか思い浮かばないのが彼のダメな所なんですよねぇ。ホント困った人…。」

 

「……あの。」

 

ここで事の事情を聞きに徹してた雪菜が挟んで来る。

 

「先程の話を聞いてラ・フォリア王女が灰原先輩に助けられたのを切っ掛けに今に至ると言うのは分かりました……でもどうしてそこまで信用出来るんです?」

 

「姫柊?」

 

「…私は正直言って灰原先輩の事をまだ信用してません。確かに怪物と戦って被害を減らしたり、先輩を遠ざけようとした理由も納得いきます…。でもそれだけで心から信頼できる人という結論にはまだ至れません!だって…。

BABELが世間に知れ渡る前にあの人は…犯罪者だとは言え、数多くの異能者を殺しているんですよ!?」

 

(ッ…転生者の事ね。)

 

「それに王女だって肝心の素性を知らないじゃないですか。一度助けて貰っただけで、どうしてそこまで…。」

 

「そうですねぇ…。」

 

雪菜の指摘にハルナは一瞬転生者の事を口から出掛けたが流石にそこまで言える筈がない。自分達が一度死に、もう一度生を与えられた存在は一番のタブーなのだ。

 

ラ・フォリアは雪菜の指摘に手を当てて考える素振りをしながら次第に悠に対する思いを打ち明ける。

 

「確かに言われればそうですねぇ。あの人の事は知ってるつもりでそうでないし、考える事ややってる事は決して良い行いとは言えないし、時折何考えてるか分からないし、こちらの気持ちには気付いてる筈なのに見て見ぬフリをするわで大変苦労してますけど…。」

 

ラ・フォリアから聞かされる愚痴を聞かされた三人はどういったりアクションを取れば良いのかと反応に困るなか、”でも”と口にしたラ・フォリアの言葉には確かな確信が含まれていた。

 

「悠は自分の都合だけで戦う人ではありません。それを私は何度も見てます。だから…彼を信じられる。例え間違ったやり方だとしても心までは極悪人じゃありません、って。

なんだかんだで文句を言いつつ、私や夏音を助けて気に欠けてくれてるんです。……凪沙の事も。」

 

「ッ!そうだ凪沙だ!!灰原のヤツ何処に行ったんだ!?知ってたら教えてくれ!頼む!!」

 

「先輩!凪沙ちゃんを助けに行く気持ちは分かりますけど、さっきのラ・フォリア王女の言ってた事忘れたんですか!?

BABELは第四真祖としての先輩に目を付けられる危険があるって!」

 

「十分判ってるよ。でもさっき結構力持っていかれたから、多分もう手遅れだと思う。ならもうバレる心配なんざしなくていい。…それに。」

 

「先輩?」

 

「……灰原のヤロウをぶん殴る。そんでもって……今度はちゃんと話しあう。」

 

「…はぁッ!?先輩!?ちょ、先輩まで何言ってるんですか!?」

 

「アイツの思い通りってのが気に喰わねえ。文句言うだけ言って、事の事情全部聞いてやる。それに、どのみちもう足踏み込んじまったしな。BABELやら仮面ライダーやらの事情によ。」

 

「…本気、と見ていいんですね?古城。」

 

「あぁ。本気だ。……オレもアイツを信じてみようと思う。突っぱねられるかもしれねえけど、灰原がダチである事に変わりはねぇ!!」

 

「…良かった。」

 

「?…今何か言ったか?」

 

「いいえ……もし悠の元に行くのなら急いだ方がイイですよ。彼、凪沙を助ける為に自分の命を犠牲にする気満々ですから。」

 

「はぁ!?…ったく!アイツは…!」

 

「ちょ、先輩!!何処に行けばいいのか知ってるんですか!?」

 

「あ……。」

 

「…ねぇラ・フォリアさん。本当にいいの話しちゃっても?

灰原君絶対納得しないわよコレ。」

 

「ここまで来たらもうなる様になれですよ。…古城!悠は南の工場地帯に居るそうですよー!

…さて、私達も行きましょうか。」

 

「はぁ~………取り敢えずこれから大変になるってワケね。色々と…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ガフッ!」

 

「ハハハハッ、どうした?もうギブアップかい?」

 

口の中で血の味を噛み締めながら倒れそうになる体を後ろに積まれてる鉄骨を支えに倒れないよう僅かな力で立つ。

最早耳障りに聞こえる笑い声を聞き流しながらゴルドドライブの背後に見える凪沙に目をやる。

 

(どうにかして隙を…。)

 

「クスクス…態々サーチしなくても簡単に読み取れちゃうよ。余程後ろのお姫さまが気になるようだねぇ?」

 

「サーチ?」

 

「あぁ、バージョンアップしたのさ。ベルトには前より高度なデータ解析と情報量。今使っているボディは、前にジャッジが勝手に持ち出した改良型ロイミュードの完成版。

そしてこれまでのキミや、相方のデータを基礎に組み込んだ戦闘プログラムを元に今のボクは進化した!

今のボクは例えドライブだろうと、ディケイドとかいうライダーだろうと、最早敵では無い!!ボクは…ボクの科学は、究極の進化を遂げたァ!!」

 

「ッ!」

 

高らかに笑うゴルドドライブを前にチェイサーの目が見開く。

ダークドライブは兎も角何時ディケイドの事まで?その疑問の謎はジャッジと言うワードからすぐに解けた。

 

あの時オーディンから奪われたカードで姿を見せたアビス・ガイ・ベルデ。それの中身がロイミュードである事に今更ながら気付いた悠は短期決戦で決めるとは言えディケイドの力を曝した事に考えが甘かったと自責する。

 

だがここで新たな疑問が生まれた。体力回復の時間も兼ねてチェイサーはそれを口にする。

 

「だったら、態々俺の変身するヤツをご指名しなくともいいんじゃねぇか?

しかも強化する前にボコボコしてくれたコイツでさ。」

 

「あァそうだよ。キミが今どのライダーに変身したってボクのゴルドドライブを前では全て攻略できる。

ボクがジャンクパーツを選んだのは、ボクが科学者だからさ。」

 

「…言ってる意味が全然わかんねーんですけど?」

 

「そのままの意味だよ。ボクは科学者。前に出て好戦的にやり合うタイプでは無い。どちらかといえばインドア系でね。データで全ての攻略法を備えてるとは言え、なるべく楽に手短に済ませたいのが理想なんだ。」

 

「だから既にやり合ってるコイツか…肝が小せぇのか慎重過ぎるのやらか…。」

 

「クスクス。小心者だと言う自覚はあるよ。キングにも散々言われてたしね…。

でも、ボクは小心者で構わないと思ってる。だってその方が生き残れるしね、バカ正直に突っ込んで死に曝すより後ろで様子見て上手く立ち回った方が利口的じゃないか。

キングは好戦的な性格が災いして、あんな姿になってキミに倒された。ジャッジもあんな高飛車に振る舞って自分が一番だと思ってるからキミに一度倒された。

……でもボクは違う。あの時は感情的になったの敗因だが、万が一を考えキミに倒された後の対策も取った!そして集めたデータで究極の進化を遂げた!

これもボクが小心者であるから故に出来た事だ!戦争では勇敢な死を選ぶのが居るがボクは違う!!小心者だ臆病と言われてもボクはこの世に存在し続ける。そして、ボクは科学の真理に至るのさ!!!」

 

「…眠くなりそうな長演説どうも。」

 

「いやいや、冥土の土産と思ってくれれば。

それともう一つ。キミをその姿にさせたのはある演出を見せる為でもあってねぇ。───おや、噂をすれば丁度良いタイミングに。」

 

「ん……ッ!?え、ちょ、何コレ!?」

 

「やぁ、お目覚めかな?お姫さま。」

 

「ッ…!」

 

目を覚ました凪沙は工場内で鎖に吊られてると言う突然の事に慌てふためくがゴルドドライブが声を掛けるとその表情は一変して、怯え、畏怖の感情が目に見えていた。

 

そして、その先に居る魔進チェイサーに対しても。

 

「アハハハ。ご覧よ、キミがそんなになってまで助けようとしてる子があんな目をしてるよ。余程怖かったんだろうねぇ、キミの事が。」

 

「………。」

 

「ショックかい?そうだろうねぇ。さっきまであんな楽しそうに笑ってた子が今じゃ化け物を見る目で見て拒絶する。

キミがどんな反応するか興味が在ったけど、思ってたよりリアクションが薄くてちょっとガッカリだよ。」

 

「…テメェの性格が最悪って事が今改めて分かったよ。」

 

チェイサーはもたれてる鉄骨に手を掛ける。

 

「いやァそれほどでも。…さて、観客も起きたしこれからお姫さまに特と御覧に入れようじゃないか。

キミが、怪物が壊されていく様をね。」

 

ゴルドドライブが背中を向けた瞬間、チェイサーは動いた。

 

 

 

「──ヌゥオウㇻァ!!!」

 

ーゴオォ!!ー

 

なんと建設用に置かれていた鉄骨を片手で持ち上げ、喉が裂ける程の雄叫びと共にそれをゴルドドライブ向けて投げた。

 

鉄骨の軌道は速度が落ちる事なく真っ直ぐゴルドドライブに向かうが、ゴルドドライブは最初から分かってた様に鼻で笑うと背中を向けたまま片手で鉄骨を弾いた。

 

(この後に射撃して確率が25.6%。接近して懐に入り込む確率が70.9%。──単調な。)

 

ゴルドドライブはチェイサーの次の動きを予測し振り返ると此方に向かって駆けてくる姿を目に嘲笑う。

 

だがここでゴルドドライブの予想を超えるモノが目に写る。チェイサーは左腕を引き、手に掴んでいる赤い筒状物体に。

 

(消火器?──まさかコイツ!?)

 

「ウラァ!!」

 

消火器を手に持ったまま殴りつけて来るチェイサーの行動に一瞬意表を突かれながらも受け止めたゴルドドライブだが、チェイサーは受け止められた消火器をガンナーで撃ち、中の消火剤をぶちまけた。

 

「うわッ!…このッ!!」

 

間近で消火剤を浴びた事でゴルドドライブの金のボディが消火剤により真っ白に、赤い複眼も白一色に染まり視界が悪くなる。

そしてそれはチェイサーも同様に黒と紫のボディが白くなったが、チェイサーは変身を解除。

 

外装のお蔭で視界が悪くならずに済んだ悠はブレイクガンナーでゴルドドライブの顔面にフックを入れて倒し、凪沙の元まで走った。

 

「ゆー、くん…。」

 

「ジッとしてろ!」

 

凪沙を吊るしてる鎖を狙い撃って落ちて来る凪沙を受け止める。

 

「だいじょ「い、イヤッ!」ッ!」

 

巻き付いてた鎖を解いて無事を確認しようとした悠だが、凪沙が悠を突き飛ばした。

 

その行動に一瞬目を見開いたが凪沙の顔を見てすぐ理解した。最初に彼女と会った時と同じ顔を自分に向けているのだ。

以前の様な人懐っこい笑顔では無く、彼女が忌み嫌ってる人外を前にした顔に。

 

「このッ……こんな下らない子供だましでェ!!」

 

「ッ!──。」

 

「ヒッ!」

 

目元に着いた消火剤を拭い取ったゴルドドライブが悠達に向けてエネルギー弾を放った。

 

悠は怯えてる凪沙を庇ってエネルギー弾の爆発に吹き飛ばされる。

抱えてる凪沙は無事だが、悠の背中は爆炎によって焼け爛れた背中が見える様になっていた。

 

悠は背中の痛みに堪えながら、胸に抱えてる凪沙に声を掛ける。

 

「逃げて…。」

 

「え?…。」

 

「逃げろ……早く!!!」

 

「ッ……ッ!!」

 

声を荒げて逃げる様に叫ぶ悠に凪沙は一目散に走り去って行く。走り去る凪沙の背中を見て悠は取り出した携帯を操作してメールを送信した。

 

(…後はアイツ等に任せるか。)

 

事前に工場の外で待機するように指示した艦娘達の働きに賭ける事にした悠は傷ついた体を起こして立ち上がった。

 

顔を上げた先には此方に歩み寄って来るゴルドドライブが。

 

「全く、ボクもまだまだだね。また感情的になって自分を見失いかけてしまった…。

にしてもキミも物好きな事だ。あんなに拒絶されて尚そんな深手を負ってまで助けるなんて……理解し難いよ。」

 

「………知るかよそんなもん…好かれようが嫌われようが。こっちはやりたい事やってるだけ、自己中な男だからな。

──あぁそうだ…。」

 

悠の脳裏に先程の凪沙と古城の顔が思い浮かぶ。

 

明確な怒りを向ける古城と畏怖の感情を露わにした凪沙の顔が。

 

それでも──。

 

 

 

「死なせるより、生きて嫌ってくれた方がずっとマシなんだよ。所詮俺もお前等と同じ、悪いヤツだしな。」

 

「──ふぅ。些か理解出来ないね。」

 

「出来ねえだろうなァ、顔文字ベルト野郎には…。」

 

「……そう。変わった遺言だ事で。」

 

翳した手にエネルギーを溜めてゆっくり歩み寄るゴルドドライブ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゃああああンなろォォオオオッ!!!」

 

「ッ!」

 

「は…?」

 

ゴルドドライブに向かって耳に障る程の大声量で殴りかかって来る人物。

 

ハルナが変身したラルクがゴルドドライブに特攻気味に仕掛けに行くが、半歩下がって躱され前蹴りを喰らわせられ悠の元まで飛ばされた。

 

「イッッ!たぁ~~~…!」

 

「何やってんだよ、お前は…!何で来た!?」

 

「説明と説教は後!!…それよりも今は…!」

 

「悠さーーーん!!」

 

腰を抑えながら悠の前に立つラルクを余所に工場内に明石がケースを抱えながら向かって来た。

 

「明石!?何でお前まで来てんの!?」

 

「詳しい説明は後で!それよりもコレ、使ってください!!」

 

「え?何コレ?」

 

「やれやれ、いきなり出て来たかと思えば…無視しないでくれるかな!!」

 

「させるかぁァア!!!」

 

業を煮やしたのか悠達に向かって行くゴルドドライブにラルクが向かって応戦する。その間に悠は明石から受け取ったケースを開けて中身を見ると、中には秋の持つマッハドライバー炎とライドチェイサーの形をしたシグナルバイクがあった。

 

「コレって…。」

 

「ハイ!量産型の合間に造った悠さん専用のです!コレを使えば…!」

 

「成程ね……確かに今のヤツに有効か。」

 

ケースから取り出したマッハドライバーを装着しパネルを上げる事で待機音が鳴り響くなか、手にしたシグナルバイク[シグナルチェイサー]を装填しパネルを倒した。

 

<< Signal Bike! RIDER! >>

 

 

「───変身ッ!」

 

 

<< CHASER! >>

 

 

悠の姿が一瞬魔進チェイサーの姿へと変わるが、紫の発光と共に装甲が弾け飛びその全貌を明かした。

 

重装甲だった外見からスマートなフォルムにシルバーをベースにした紫と黒のボディ。チェイサーの意匠を残した様に左肩に髑髏のエンブレムが描かれ、背中にはタイヤ型のコネクター[ホイーラーダイナミクス]が取り付けられている。

 

 

 

「……チェイサーのライダー盤か。」

 

「えぇ。その名も──仮面ライダーチェイサー!」

 

「まんまだな…。」

 

 

「ッ!アレは…!」

 

「うわァッ!!」

 

 

ゴルドドライブはチェイサーの新たな姿を見ながら、ラルクを一蹴しチェイサーと対峙する。

 

 

「また新しいライダーか…。だがころころ姿が変わった所で、ボクの前では全てが無駄だ。」

 

「じゃあ試してみろよ…。」

 

<< CHASER! >>

 

「俺を……止められるかッ!」

 

死神の仮面を棄てた戦士が、動き出す。






早く一週間過ぎてくんないかなぁ。

ハイパー無敵。どう出るか楽しみです。
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