その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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最近のカズミンが段々音也と化している。
それとやっぱり乗っ取られたフェーズ3、白髪はエボルト憑依の影響だったんすね。


決死

 

 

時は遡りガレージ地下ラボ内でのやり取り。

 

「──さて、念のためにこれまでの経緯を分かりやすく説明しよう。」

 

何故か自慢げに胸を張っている神太郎は、作業台の上に二つのマグカップ、角砂糖入りの瓶、コーヒーの入ったポットを置いた。

 

「いいかい? この角砂糖がバグスターウイルスとしよう。そして白いマグカップが今回の感染者の夏音ちゃんだとする。」

 

手に持った角砂糖一粒を白いカップに入れ、中の様子を見せる。

 

「中に入った角砂糖は感染者のストレスによって増加。やがてピークに達した時に出来るのが、バグスターだ。」

 

白いカップに角砂糖を何個も入れ、やがて一杯になると角砂糖をもう一つの黒いカップに移した。

 

「コレが本来バグスターウイルスに感染した際に見られるパターンだ。だが今回は違う。

夏音ちゃん、白いカップには既に中身が入っていた。それが模造天使だ。」

 

神太郎は白いカップにコーヒーを入れる。どうやらこのコーヒーが模造天使の力だと言いたいみたいだ。

白いカップに角砂糖が入れられる。角砂糖はコーヒーに溶かされ、みるみる内に形が無くなる。

 

「本来ならバグスターを倒せばウイルスと夏音ちゃんとの繋がり絶たれた筈だが、模造天使の力がそれを邪魔した。キミと戦っていく内にウイルスと一体化した模造天使の力に一種の意志が芽生えたんだ。

アレは正に天使とバグスターの融合した新たなる個体。

それに加えて厄介なのが…。」

 

神太郎は台の上にドン!と音が出る位の強さでビールジョッキを取り出し、そこにコーヒーを目一杯淹れていく。

 

「ヤツは他の天使たちの器官、恐らく核に当たる部位を喰らって力を増した。強化したあの光のバリアーを破るにはそれこそ破壊者の力が必要だが……時間のデメリットでまだ使えないよね。別のライダーに変身しても相手はバグスターだからガシャット以外の攻撃は効かない。

さて、こっからが話の本題だ。奴のバリアーを破るとっておきの秘策を……。」

 

 

 

 

 

 

 

『kyaaaaaaaa----!!』

 

 

奇声を発しながら事情に居るスナイプとゲンムに、天使の力を宿した光球を撃ち続けるアーク。

 

二人は足を止めるヒマも無く、光球を避け続ける。地下の構造を支える柱の陰に隠れ、目を合わせた。

 

 

「手筈通り私が行く! キミは援護を!」

 

「あぁッ!」

 

 

ゲンムの指示に頷いたスナイプは柱に隠れながらマグナムでドラム缶を撃ちまくり、中のエナジーアイテムを剥き出しにする。

 

そして目当てのアイテムを見つけると、スナイプはエナジーアイテムが弾く様に器用に撃ち、自身とゲンムの元あでアイテムを運び取り込ませた。

 

 

 

「ナイスだ!」

 

<< 透明化! >>

 

 

「ちゃんとやれよ!」

 

<< 分身! >>

 

 

ゲンムの姿が透明になって消えたと同時に、十体まで分身したスナイプ達が柱からバラバラに出て来て、四方八方からマグナムでアークへひたすら弾丸を放った。

 

弾丸は天使の光によって防がれるが四方から絶え間なく撃たれる事に苛立って来たのか、アークは周囲をバラバラに動いて撃ってくるスナイプへ光弾を放つ。

 

 

瞬く間に一人また一人と光球によって消えていくスナイプ。やがてスナイプの姿が一人だけになってしまい、アークは未だ地を駆けるスナイプへ光球を放とうとした。

 

そんなアークの背後、透明化のエナジーアイテムで姿を晦ましていたゲンムが時間切れで姿を見せた時にはガシャットをブレイカーへ装填している所だった。

 

 

 

 

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

 

『!?』

 

 

<< MIGHTY CRITICAL FINISH! >>

 

 

「ハァアアーーーーーッ!!」

 

 

ハンマーモードのブレイカーによる必殺技をアークへと繰り出すゲンム。

 

ゲンムの振り下ろした一撃は光のバリアーによって防がれるが、アークを包んでる光がブレイカーから流れる紫の電流によって光が弱まっていった。

 

 

 

『ッ!?』

 

 

「フハハハハハハッ!! どうやら効いてるようだなぁ!!」

 

「みたいだな!」

 

 

 

<< ズ・キューン! >>

 

 

地上から見ていたスナイプはマグナムをライフルモードへ切り替えるとスコープを覗き、ただ一点に狙いを定め体を固定し、引き金を引く。

 

 

「ッ!」

 

 

アークへと放った弾丸は寸分違わぬ精密射撃でバリアーの一点のみに連続で当てるワンホールショットが炸裂する。

 

放った弾丸が五発を超えると、強固に守られていたバリアーに穴が開き、弾丸がアークの体へと直撃した。

 

 

『gya!?』

 

 

「ッ! 通った!」

 

「ブァッハハハハハハァッ! 私の頭脳に狂いは無ぁああいッ!!」

 

 

 

 

 

 

「───レベル0?」

 

「そうだ。 これがアークを攻略する最大の鍵だ。」

 

ドヤ顔で顔の横に持って来た黒いガシャット。マイティアクションXのガシャットを悠に見せ付ける神太郎。

 

「このガシャットは私が一番最初に作ったα版のガシャットでね。これにはバグスターウイルスを抑制する機能が搭載されているんだ。」

 

「抑制?…ウイルスの活動を低下させるってか?」

 

「そうだ! アークのあの光はバグスターウイルスと同化。これで言うと、砂糖を入れて甘くなったコーヒーにもそれが能力が効くと考えられる。」

 

 

神太郎はコーヒーの入ったジョッキを手に取り、喉を鳴らしながら中のコーヒーを三分の二ほど飲みつくした。 

 

「ぷはぁ! ご覧の通り、レベル0の力でウイルスと同化した天使の力を弱体化させれば、我々の通常攻撃も問題無く通る……が、そう簡単な話では無い。さっきも言ったがヤツの天使の力は強大だ。

レベル0の力で弱体化させるのには、必殺技レベルの一撃でなければ通用しない。」

 

 

「それが言ってた、地道な作業、か……でもこれさえクリアすれば。」

 

「あぁ……我々の勝利は、間違いなしだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『gyaaaaaaaa!!!』

 

 

 

「ぐぅッ!」

 

アークはゲンムの首元を掴み、柱へと叩き付ける。体から発せられる光がゲンムの体を焼き付けていく。

 

 

『guuuuu…!』

 

「グッ…フハハハ、私が驚異だと感じて真っ先に狙ったか! 間違ってはいない…だがな!」

 

 

 

<< ガッシューン! >>

 

 

『ッ!?』

 

ゲンムはブレイカーからガシャットを抜き、あろうことかソレを投げ捨てた。…否。

 

 

「キミの敵はもう一人いる事を忘れているぞォ!?」

 

 

 

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

 

ゲンムに言われ振り返ったアークの視線の先には、スナイプがゲンムが投げたガシャットをマグナムに装填し狙いを此方に向けていたのだ。

 

 

「──BAN!」

 

 

<< MIGHTY CRITICAL FINISH! >>

 

 

放たれた必殺の弾丸はアークへと直撃。弾丸が光の壁に再度触れた事により、自身が蓄え強化した力が弱まっていく感覚がアークの体に電流として伝えられていく。

 

 

 

 

 

『ッ!!gaaa…!』

 

 

「今だぁッ!」

 

 

 

 

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

 

「ムンッ!──トォゥワァッ!!」

 

 

<< SHAKARIKI CRITICAL STREIKE! >>

 

 

アークの拘束から抜け出し、ゲンムはアークへ回し蹴りのライダーキックを叩き込む。

 

ゲンムの蹴りはアークのバリアーを突破し、アークへダメージを与えた。

 

 

ゲンムの蹴りを喰らって再び上空へ舞い上がるアークを目に、スナイプはゲンムにガシャットを返し隣に並んだ。

 

 

「見たか? 必殺技レベルの攻撃ならあのバリアーを突き破れるまで弱体化出来た。後一発当てれば…。」

 

 

「簡単にぶちのめせるってな…何だよ、楽勝じゃねえか…。」

 

 

「フハハハハハハッ!! これもそれも、私のガシャットと作戦を考案したこの頭脳が織り成せる御業!……とはまだ言えないな…来たぞ。一番の厄介者が。」

 

 

「……あぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイオイ。なんだか楽しそうじゃないか? ボクも混ぜてよ、カイン♪」

 

 

 

「アベル…!」

 

「そのバグスターは稀に無い貴重なヤツなんだ。そう易々倒される訳にはいかないんだな♪」

 

突如として姿を現したアベル。癇に障る様なヘラヘラとした笑みを目にしたスナイプは思わず脳天に一発入れようとしたが隣のゲンムが宥める様に肩に手を置く。

 

 

「プランBだ。作戦通りアベルの相手は私がしよう。キミはアークを。」 

 

「…ホントに一人でやる気か? デスクワーク派の人間が。」

 

「私は神だ! それに秘策は当然あるさ。リスキーな秘策だがな。」

 

「………分かった。気を付けろよ。」

 

「あぁ。」

 

ゲンムはベルトに挿さったマイティアクションXのガシャットをスナイプへ、スナイプは所持しているレジェンドライダーのガシャットをゲンムに渡し、それぞれを役割を果たす為に別れた。

 

 

 

 

「お。何だ何だ?お前一人か?カイン。」

 

「不服か?」

 

「いいや全然♪ 一人で来たからにはそれなりの手があるんだろう?」

 

「あぁあるとも。 コレをな。」

 

 

<< DOKIDOKI MAKAIJOU KIVA >>

 

 

「ッ、またそれか…。」

 

「──変身ッ!」

 

 

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

 

<< Va,Va,Va,Va,VAMPIRE!──MAKAIJOU KIVA! >>

 

 

スナイプから渡されたガシャット。13魔族の一つ、ファンガイアの頂点に立つ者にしか纏われない鎧。

 

心の音楽を奏で戦う戦士、仮面ライダーキバの姿となった。

 

 

この間の戦闘を思い返してか一瞬顔が強張るアベル。だがその顔はすぐ何時もの笑みを浮かべる。

 

 

「…いいじゃないか。 相手こそ違うが、リベンジには丁度イイ。」

 

 

<< PERFECT PUZZLE >>

<< DUAL UP! >>

 

 

「──変身♪」

 

 

<< ───PERFECT PUZZLE! >>

 

 

レジェンドライダーに対する闘争心を宿しながらアベルはパラドクスへ変身。キバとなったゲンムは左手を前に出し右手を顔の横に着けるという独特の構え方をしていた。

 

 

「さぁ、遊ぼうぜ!」

 

「来いィィッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『kyaaaaaaaa----ッ!!!』

 

「チッ! また形振り構わずの滅多打ちかよ!!」

 

 

アークと対峙しているスナイプはアークから放たれる光球の弾幕を前に悪態を吐きながら躱し続けていた。

 

アーク自身も、自身の弱体化に焦りを感じての猛攻だった。次にあの攻撃を喰らったら間違いなく自身は破滅に追いやられると。

 

次第に感じだしてる焦燥感に蝕まれながらアークは攻める手を休めない。

 

 

一撃一撃が確実に仕留めるだけの殺意を籠められた光球。それがスナイプの行く手を着実に狭めていき、着弾の爆発が彼を包んだ。

 

 

声を上げるヒマも無く、巻き上がる炎に包まれるスナイプ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

 

<< モシ・モシ・ファイズ!───MOSHI MOSHI FAIZ! >>

 

 

赤い炎の壁を、それよりも紅い閃光が掻き消した。

 

アークを照らす閃光。光が止んだ先に居たのは、夢の守り人。紅い救世主と呼ばれた戦士、ファイズの姿をしたスナイプだった。

 

 

 

「あんまり時間を掛ける気は無い。手っ取り早く、コイツで行く!」

 

 

スナイプは左手にガシャコンマグナム。右手にはファイズの武器、ファイズエッジを手にアークへと駆ける。

 

スナイプは迫る光球をファイズエッジで切り裂きながら突き進み、ライフルモードのマグナムをアークへ撃ち込みながら間合いに入った。

 

間合いに入ると同時にスナイプはゲンムから託されたガシャットをマグナムへ挿す。

 

 

 

 

 

<< ガッシャット──キメワザ! >>

 

 

「デェァアッ!!」

 

『ッ!!』

 

 

 

振り下ろしたエッジをアークは光を纏った腕を交差して防ぐ、その間を狙いエネルギーの溜まった銃口を腹部へと突きつけた。

 

 

『ッ!?』

 

 

「コレで丸裸だ。」

 

 

<< MIGHTY CRITICAL FINISH! >>

 

 

『ッ!? gya! gyuaaaaaaaaaaa-----!!!』

 

 

 

ゼロ距離で放たれた弾丸は、バリアーを破ってアークの体内へ。まるで毒でもがき苦しむアークを纏っていた光は霧散して消えていった。

 

 

『guaaaaaaa----!!!』

 

「ハッ!、引き摺り下ろしてやったぜ、天使さんよォ!!」

 

 

 

<< バ・キューン! >>

 

 

ハンドガンモードにし、連射で弾丸を放つスナイプ。弾はバリアーを失ったアークに直撃し、アークへ確実にダメージを与えていた。

 

アークへ弾丸を浴びせながら接近し、ファイズエッジを豪快に振り下ろし、斬り付ける。

 

 

 

『gugya!?』

 

 

「そろそろ夏音から離れて貰うぞ、この白ガラス!!」

 

 

 

今までの恨みを吐き出すかの如く叩き込まれる、斬撃、銃撃、蹴りは荒くなりながらも、戦況はスナイプが有利に進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トゥウーーーッワァアアアッ!!!」

 

 

「ホっと! おォっと危ない!」

 

 

一方のゲンム対パラドクスの戦いでは、手にガルルセイバーを持つゲンムの型の無い無茶苦茶な剣戟をパラドクスは容易に躱していく。

 

 

横薙ぎに振るわれたセイバーを蹴りで弾き、パラドクスは傍にあったエナジーアイテムを取り込む。

 

 

 

<< 伸縮化! >>

 

 

「セァアアアーーッ!! 何ッ!?」

 

「ハハハ、それッ!」

 

「グハァッ!!」

 

 

振り下ろしたセイバーはパラドクスの脳天から縦に切り裂く筈が、伸縮化によって柔らかくなったパラドクスの体に、ぐにゅ!っとめり込み、硬直するゲンムの胸部に掌底を見舞わす。

 

 

 

「このッ、喰らえ!」

 

「ハハッ、甘いなぁ♪」

 

 

<< 高速化! >> 

 

吹き飛ばされたゲンムは、セイバーを捨て拳銃のバッシャーマグナムから高圧の水流弾を発砲する。パラドクスは高速化のアイテムを取り込んで向かって来た水弾を回避。一瞬でゲンムに近づき、拳を二撃、回し蹴りでゲンムを蹴り飛ばした。

 

 

 

「ガハッ!」

 

 

「ふぅ…オイオイ、全然つまらないなぁ。この間の彼の方がもっと骨があったよ?」

 

「ハァハァ……それは悪かったなぁ!」

 

「…ハァ、やれやれ。」

 

 

 

<< マッスル化! 鋼鉄化! >>

 

 

 

「ハァッ!」

 

「グッッ ハァアアーーーッ!!」

 

ゲンムは再度パラドクスへと肉薄して行くが、攻撃力を上げたパラドクスはゲンムの一撃を難無く弾き、強力なカウンターを喰らわせた。

 

かなりのダメージを負いゲンムのライダーゲージが3分の1まで下げられる。もし必殺技を受けたらゲージが0になる位にまで。

 

 

 

「グッ、まだ、まだァ…!」

 

「ハァ。止めとけよ。幾らお前がレジェンドの力を使おうと、レベルも素の実力もボクの方が上だ。今お前がやってる事は、自殺行為だ。」

 

「……フフフ…あァ、確かにそうだなぁ。私は今、確実に死に近づいている!」

 

「? 何を言って………ッ!」

 

 

ゲンムの言葉の真意が分からず首を傾げるパラドクス。その時不意に、別の場所に目がいく。

 

 

 

 

これが、勝負の分かれ目となる瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ga………aa…!』

 

「お前のその虫面も、そろそろ見納めにしたいね!」

 

 

<< ガッシャット──キメワザ! >>

 

 

「──ハッ!」

 

『ッ!!!』

 

 

 

 

 

 

「そうはさせないよ!」

 

<< 分身! マッスル化! >>

 

 

<< KIME・WAZA!──DUAL GASHAT! >>

 

 

 

 

 

「ッ! させるかッ!」

 

<< ガッシャット──キメワザ! >>

 

 

 

アークへトドメを刺そうとスナイプはアークへ紅いポインターを放ち、動きを止める。

 

パラドクスはスナイプを止めるべく、もう一体の分身を作って必殺技へ。ゲンムはそれを阻止すべくパラドクスへ駆ける。

 

 

 

 

 

「デェァアアーーーッ!!!」

 

 

<< MOSHI MOSHI CRITICAL STREIKE! >>

 

 

 

 

 

 

「ハァァアッ!!!」

 

 

<< PERFECT CRITICAL COMBO! >>

 

 

 

 

 

「トゥワアァーーーッ!!」

 

 

<< DOKIDOKI MAKAIJOU CRITICAL STREIKE! >>

 

 

 

 

アーク目掛け跳び、捕えてるポインターへ向けてキックするスナイプ。そのスナイプ目掛けパラドクスが跳び蹴りを、分身したもう一体が、拳にエネルギーを溜めたゲンムと対峙する。

 

 

 

 

 

そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ハァッ!!」 

 

「ガッ!? グアァアアァアッ!!」

 

 

 

<< ガッシューン! >>

 

 

 

あと少しと言った所で、スナイプは横から来たパラドクスへの妨害を喰らい、不発に終わり変身が強制解除されてしまい、ガシャットが悠の手元から離れてしまう。

 

 

 

「フゥ! 危ない危ない。間に合って良かったよ♪」

 

「クッ、ソがぁ…!」

 

 

 

悠の手元から離れ、地面に落ちたガシャットを拾い上げるパラドクス。

 

変身用のガシャットが無い為に、悠は戦う手段を失くしてしまった。

 

 

 

 

 

一方のゲンムは。

 

 

 

 

 

「───フン。」

 

 

「ぁ…ああ……。」

 

 

 

ゲンムの突き出した拳を寸で躱し、腹部へカウンターを入れたパラドクス。ゲンムの方が分身した方の為、パラドクスは拳を突き出したまま消える。

 

 

 

 

そして、呆然と立ち尽くすゲンムの胸部。この一撃を喰らってしまった為に、ゲンムのライダーゲージが、0となった。

 

  

 

<< ALL CLEAR! >>

 

 

 

  

 

「ッ……マジ、かよ…!」

 

「あ~ぁ。カインのヤツ、終わっちゃった。残念。」

 

 

 

 

 

 

悠はゲンムの避けられない死に驚愕し、パラドクスは軽いノリでゲンムの死を残念がる。

 

だが、当の本人は二人の予想とは全くの行動に出る。

 

 

 

 

 

 

 

「……フ…フハハハ!………バァーッファッハッハッハ! この時を、待ァっていたぞオォォオオオーーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

「ッ!? 何だ、カインのヤツ…!?」

 

 

ライダーゲージが0。それはゲームオーバーとなって消滅する事。即ち死だ。それなのにゲンムは何故か待ちわびていたかのように高々と笑う。

 

そうして取り出したのは、白く絵柄の無いガシャットが挿し込まれたバグバイザー。ゲンムはバグバイザーの銃口部を自身に向けた。

 

 

 

 

 

「今こそ! 死のデータを採取する時! フンッ!…ゥ、ヌゥァアアアァアーーーーーーッ!!!」

 

 

 

「何だ?何をするつもりだ!?カイン!!」

 

 

バグバイザーを自身の胸部へ押し付けたゲンムの体から、禍々しく不気味な紫の粒子がバグバイザーへ吸収されていく。

 

そしてそれは挿さっているガシャットへ送り込まれる。

 

 

 

粒子が収まり、暫くするとゲンムの変身が解除され神太郎の姿に。神太郎はバグバイザーに挿さったガシャットを抜き取ると、白一色のガシャットにゲームのタイトルと思わしき画が浮かんできた。

 

 

 

「どういう事だ!?ゲージは確かに0になった筈、なのに、何でまだ生きているんだ!?」

 

 

 

「……ヌゥフフッ!……フッハッハッハッハッハッ!!! やったぞ! 完成したぞ!! 私の最高傑作のガシャットォォォオーーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

高らかに笑いながら突き上げた手の中にあるガシャット。マスクを被ったボロボロの容姿の男が描かれたソレからは先程神太郎から吸い取った紫の粒子が僅かに溢れていた。

 

 

 

 

 

神太郎の提案したプランBは自分がアークを倒すまでパラドクスを引き付けるという役割だと聞いていた為に、目の前の光景にパラドクス動揺混乱を隠せない悠。

 

 

そんな二人と唖然と見るアークを前に、神太郎は狂気染みた笑みを向けながら此方に目をやった。

 

 

 

「ハァアアア~~~……アベルゥ。貴様のお蔭で私は念願の死のデータを取る事が出来たァ。

今こそ思い知るがいい!! 貴様の作ったクズみたいなゲームよりも、神の才能によって出来たこの最高傑作のガシャットの力をなァ!!」

 

 

 

そう言いながら取り出したのベルトのバックルの様なモノを腹部に当てると、ベルトとなって神太郎の腹部に巻き付く。

 

巻き付いたベルト、[バグスターバックル]へバグバイザーを持っていくと、バグバイザーと合わさると[バグルドライバー]へと変わった。

 

 

 

 

 

<< ガッチョーン! >>

 

 

「へェァア~~~…!」

 

 

そして手にしたガシャットの起動スイッチが、押された。

 

 

 

 

<< DANGEROUS ZOMBIE >>

 

 

 

けたたましいギター音と共に神太郎の背後に現れたスタート画面。

 

神太郎は不敵な笑みを浮かべながら、ガシャットを体の横で裏返しに構え、ドライバーの挿し込み口へ。

 

 

 

「──変身ッ!」

 

 

<< ガッシャット!───BUGGLE UP! >>

 

 

<< DANGER!DANGER! "GENOCIDE!" DEATH THE CRISIS!───DANGEROUS ZOMBIE! >>

 

 

 

 

 

バグルドライバーへ挿し、挿し込み口のスイッチを入れると、黒いモヤとゲートが神太郎の前に現れ一瞬姿が見えなくなる。

 

するとゲートを突き破りながら姿を現したのはゲンム。だが以前のゲンムとは形状が大分様変わりしていた。

 

 

紫を帯びた黒いアーマーが骨の様な白い外骨格のアーマーに包まれ、背中には脊髄と思われる装甲も付いている。

頭部の頭髪は黒髪に白髪が混じり、赤と水色のオッドアイ。口元にマスクなどが装着され、従来のガシャットを用いたライダーの姿とは大きく変化した形態となっていた。

 

 

これこそが神太郎が文字通り、命を燃やし尽くして完成させた11本目のガシャットによるゲンムの強化形態。

 

黒い霧を霧散しながら独特の存在感を放つちながら、その名を口にし出した。

 

 

 

「私は……仮面ライダーゲンム・レベルX!」

 

 

 

仮面ライダーゲンム ゾンビゲーマーレベルX

 

 

「レベル、X?」 

 

「…ハッ、なんだ。大掛かりに見せといてレベル10? 50にちっとも届いてないじゃないか!」

 

『ッ!!』

 

 

ゾンビゲーマーとなったゲンムを前に、パラドクスはゲンムのレベルを鼻で笑った後、パズルピース型のエネルギー弾を放つ。釣られてアークもゲンムから放たれる不気味な威圧感を前に光球を放った。

 

 

向かって来る攻撃を前にゲンムは…。

 

 

 

 

 

ードガァァアンッ!!ー

 

 

「ァァアァアーーーーーッ!!!」

 

 

 

「ッ! 何で避けない!?」

 

回避行動も防御姿勢を取る事無くパラドクスとアークの攻撃を受けて吹き飛ぶゲンムの姿に悠は声を上げるも、ゲンムは死んだかのように倒れ、動かない。

 

 

「…フン、とんだ見かけ倒しだったな………ッ!?」

 

倒れ伏せるゲンムを見て嘲笑うパラドクス。だが次の光景を見てその態度が一変する。

 

 

倒れてるゲンムの体から流れ出す黒いモヤがゲンムを包み込むと、ゲンムはゆっくりとした動作で足元から起き上がってきた。最終的には何事も無かったかのように立っていた。

 

 

「ァ………ァァア~~~ッ、バァ!!」

 

 

 

「な!? なんだよ、それは…?」 

 

「フフフッ! ブァァアッハッハッハッハァーーーッ!!! これがァ、デンジャラスゾンビの能力ゥ!!

今の私のライダーゲージはゼロォオッ! 不死身のゾンビとなった私を倒せる者は、もういないのだァアアアァアーーーッ!!! ハァーーーッハハハハ!!ブァァッハッハッハッハァ!!」

 

 

 

「不死身のゾンビ?…ありかよそんなの…。」

 

「カインめ! なんてイカれたガシャットを作ったんだ!」

 

 

「へェァァ~~…今度は此方の番だァ…!」

 

ゲンムはバグルドライバーのAボタンとBボタンを同時に押すと待機音が鳴り、Aボタンを力強く押した。

 

 

<< CRITICAL END! >>

 

 

「トゥゥワッ!!」

 

 

大きく跳んだゲンム。右足にドス黒いエネルギーが宿り、足を突き出してキックの体制へ

 

狙いは憎きパラドクスでは無く、アークの方へ。

 

 

「ッ! しまった!!」

 

 

「ヴェアァアーーーッ!!ハァッ!!」

 

『ッ!!』

 

 

ゲンムの必殺技は、突然の事に硬直したアークへと決まった。

 

レベル0による弱体化と強化されたゲンムの必殺技によって相当なダメージを負い、瀕死にまで追いやられたアーク。その体が崩壊し始めていた。

 

 

「フッハッハッハッハ!! 私が本来の目的を忘れたと思ったか!?バカめがァッ!!」

 

「よしッ! アレなら完全に…!」

 

 

 

「くそッ…!」

 

消滅しだすアークを目に、悠はアークの消滅を確信しパラドクスはしてやられた事に悪態を吐く。だが、自身が今手にしてるモノに目がいくと、仮面の下でうっすらと笑みを浮かべた。

 

 

 

<< BANG BANG SHOOTING >>

 

「モノは試し、かな?」

 

 

「ッ! 何をする気だ!?」

 

「こうするの、さ!」

 

パラドクスは悠から奪ったバンバンシューティングのガシャットを起動させると、それをアークへ向かって投げた。

 

ガシャットはアークへ触れると、水面に沈むかのようにガシャットを取り込む、するとアークの体の消滅を収まりある変化が起きた。

 

 

 

アークの両腕からマシンガンが生え、背中にはキャノン砲らしき銃身も背負っていた。アークはバンバンシューティングの力を取り込んだ事により消滅を防いだほか、強化されたようであった。 

 

「へぇ。こんな風になるんだ。思ったよりブサイクだけど。」

 

 

 

「貴ッッッ様ァァァアアアァアーーーッ!!私のガシャットを汚す事をッ、断じてゆ゛る゛ざん゛ッ!!!」

 

「…ちょっと待て。アークがガシャットを取り込んで強化したって事は…!」

 

 

 

悠の中で描かれた最悪のシナリオは的を得ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガレージ地下ラボ、特別医療室。

 

 

「ッ!! ァアッ!!ゥゥウ…!!」

 

「夏音ッ!どうしたんだ!?」

 

「か、夏音ちゃんの体が!!」

 

 

アークがガシャットを取り込んで強化した頃、病室に居る夏音に異変が起きていた。

 

容体が急変し、体に奔るノイズと共に体が透けだした。今にも消滅しそうな勢いで夏音の体がウイルスによってどんどん苦しめられている。

 

白衣を着た明石がモニターを操作してその原因を探る。すると驚愕の顔に染まった。

 

 

 

「嘘…どうして!? こんな事が…。」

 

「明石さん?」

 

「…彼女の体にもう一種のウイルスの反応が…しかもこれ、悠さんの持つガシャットのゲームよ…。」

 

「え!?それってつまり…。」

 

「…この子は今、二つのゲーム病に掛かってる。多分その所為で余計に苦しんでるのよ。

…このままいくと、消滅するのは時間の問題に…。」

 

「そんな…!」

 

「悠…急いでください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?……あぁそういう事!

キミの思ってる通りだよ。今頃彼女は二つのゲーム病に侵されている。あぁでも、その一つが大好きなキミの持つゲームのウイルスだったら、少し喜んでたりして♪」

 

 

「ッッッ!!! ざっけんなこのクソ野郎!!」

 

「おのれぇぇええええぇぇーーーーーッッ!!! ソイツは私が削除してやるゥゥゥウッ!!!」

 

「おぉっとそうはいかないよぉ!!」

 

ゲンムがアークへと向かって行くのをパラドクスが妨害を仕掛ける。

 

 

「放せぇぇえええええーーーーーッ!!!」

 

「まぁそう言うなよ!新しい力、時間を掛けてゆっくり教えてくれ!」

 

「ヌ゛ァアアァアアアァアッ!!!」

 

 

 

ゲンムを引き連れてアークから遠ざけるパラドクス。アークは離れて戦うゲンムとパラドクスから、ガシャットを失い変身出来ない悠へ目をやる。

 

アークは背中に背負っているキャノン砲を悠へと向け、発砲した。

 

 

「ッ!うわッ!!」

 

放ったキャノンの着弾の衝撃で吹き飛ばされる。

 

倒れる悠へ両手の銃口を向けながらゆっくりと近づくアーク。そんな光景を組み合ってるゲンムとパラドクスは遠くから見ていた。

 

 

 

「あ~、そういえば彼のガシャットボクが持ってたや。これはちょっとどころかかなりピンチっぽいね。」

 

「私のガシャットォォオッ返せぇぇえええええーーーーッ!!!!!」

 

 

 

振り解いてパラドクスへと猛攻撃を仕掛けるゲンム。だが型がメチャクチャで大振りな為に容易く受け流されてしまう。

 

悠は痛みが走る体を近くの柱を使って立ち上がらせた。銃口を向けるアーク前にしても悠の心はまだ諦めていなかった。むしろ湧き上がる怒りに体の痛みすら感じるヒマなど無かった。

 

 

 

「……やっぱ使う羽目になっちまったか…。」

 

悠は禁断の力を手に着けようと、懐に手を入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───以上が作戦の全容だ。何か質問は?」

 

「無い。が、Bプランの方が些か不安なんだが、お前の。」 

 

「なぁに任せたまえ! 私にはとっておきの秘策が…おっと、ちょっと失礼。

…蓮司君?何かあったのか?」

 

神太郎が作戦の全容を悠に伝え終わった所に、神太郎の携帯が鳴り響く。相手は修学旅行に行ってる蓮司のようだ。

 

悠に背を向けて蓮司の話しを電話越しに聞く神太郎。悠は手持ち無沙汰になってしまいドライバーのメンテナンスでも手掛けようかと思って作業台を移ろうとした際にそれを見つけた。

 

 

黒く小さなケースボックス。神太郎を見て此方に目がいって無い事を確認しそのケースを開ける。

 

中には端に一つ分のスペースが空けた黒いガシャット。プロトガシャットが9個収まっていた。

悠はその内の一つ、バンバンシューティングのプロトを抜き取り、素早く懐に入れる。

 

 

 

「…あぁ。分かった。気を付けるんだよ……ふぅ。予期はしてたけどまさかあっちでも…ん?どうしたんだい?」

 

「いやなんでも…それよりもドライバーのメンテを行いたい。」

 

「そうだね。これから大一番の勝負だし、準備は万全にしとこうか!」

 

「…そうだな。」

 

神太郎に悟られない様に誤魔化す悠。上着越しにプロトガシャットに触れながらこれからの先行きを危惧する。

 

 

 

(出来れば使うのは避けたいが、それこそ万が一に、な…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠が懐から取り出して来たプロトガシャットを見て、ゲンムは仮面の下で目を見開いた。

 

「プロトガシャット!? 止せ!!それを使えばキミの体は…!!」

 

「へぇ、面白そうじゃないか! プロトガシャットの力を見れるいい機会だ!」

 

「黙れぇ!!良いからガシャットを返せぇぇッ!!」 

 

どうにかしてパラドクスから悠のガシャットを取り返そうとするゲンム。だがそうしている内に悠はプロトガシャットを起動させようとしていた。

 

 

「止せええ!!散々言った筈だ!!プロトガシャットは強力な力を有してるが故に、安全性に欠けていると!!使えば反動でどうなるか分からない上に、そのダメージを負った体で使えば、最悪死ぬぞ!?」 

 

「いいじゃないかカイン! 正に命懸けの決闘だ!舞台の終盤的に良いシーンが見れる!!」

 

「貴様はいい加減その口を閉じろオォォッ!!」

 

 

 

 

「…分かってるよ。自分がどれだけ馬鹿な事してるか…でもな…。」

 

 

<< BANG BANG SHOOTING >>

 

 

「それでも俺は…オレはアイツを助けてやりてえんだよ…今度こそ、絶対!」

 

 

 

「悠くん…!」 

 

「ハハハッ!イイねぇ…!」

 

 

 

「──変身ッ!」

 

 

 

<< ガッシャット! >>

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

 

 

<< ───BANG BANG SHOOTING! >>

 

 

神太郎の制止を振り切り、決死の覚悟を持って変身したモノクロカラーのスナイプ、プロトスナイプとなった悠。

 

正規版のガシャットより強力である反面、その代償は直ぐに現れた。

 

 

 

「……グッ、グァァアアッ…!!」

 

プロトガシャットから流れる電流がプロトスナイプに襲いかかる。声に出す程の激痛をプロトスナイプは耐えた。

 

 

 

<< ガシャコンマグナム! >>

 

 

 

「グッ…ァァア゛ア゛アアーーーーッ!!!」

 

 

『ッ!!』

 

絶叫と共に始まったプロトスナイプとアークの激しい銃撃戦。マグナムの連射に対し二丁のマシンガンを発砲するアークの方が物量的に有利だった。

 

息を荒げ、柱の影に隠れるプロトスナイプ。隠れても尚発砲を続けるアークを前にプロトスナイプは取って置いた隠し札を全て使う決意をする。

 

 

 

「使わせてもらうぞ…秋!」

 

 

<< GIRI GIRI CHANBARA >>

 

<< ガシャコンスパロー! >>

 

 

「フゥ!……オォアァアアアーーーーッ!!」

 

 

 

プロトガシャットと同時に拝借した秋のガシャットから出て来たスパローとマグナムを手に柱から飛び出た。

 

アークの放つ銃弾と、プロトスナイプの弾丸と矢が弾きあう。一歩も引けを取らない銃撃戦となった戦況を変えようとしたのか、アークは背中のキャノン砲を発砲した。

 

 

「ッ!」

 

プロトスナイプの目前で爆発したちまち白煙が立ち昇る。

 

マシンガンに比べ爆発の衝撃による面攻撃は現状で効果的だ。実際アークにそこまでの知能が無くとも変身しただけで苦しんでるプロトスナイプに最も効果ある攻撃だと思っての行動であった。

 

だが。体はボロボロでも心までは折れていないという考えはアークに無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

<< BAKUSOU CRITICAL STREIKE! >>

 

 

『ッ!!』

 

 

白煙を掻き消す程の勢いで出て来たプロトスナイプはバイク、頭部の瞳が無いバイクとしてのレーザーを呼び出しトップスピードでアークへ突っ込んでいく。

 

向かって来るプロトスナイプへマシンガンを放とうとしたアークだが、銃口を向けるよりも既にプロトスナイプは間合いに入った。

 

 

「オゥラァ!!」

 

猛スピードのバイクと衝突し吹き飛んでくアーク。プロトスナイプは座席シートに足を置き、踏み台として跳んだ。

 

 

 

 

 

<< ス・パーン! >> 

 

「ウオォォッリャァア!!」

 

『gugyaaa!!!』

 

宙に舞うアークを鎌モードとなったスパロー刃がアークを切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゥゥウッ! ハァ!ハァ!…ァアッ!!」

 

「夏音ちゃん!しっかり!!」

 

「夏音!大丈夫だ、私が付いてる!だから頑張るんだ…!!」

 

時間が経つにつれて容体が悪化して行く夏音。彼女を手を、病室に居る皆が掴み励ます。

 

「夏音、悠はアナタを助ける為に命を懸けて戦っています。だからアナタも諦めないで!」

 

「ハァ!ハァ!………お…兄、さん…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< GIRIGIRI CRITICAL FINISH! >>

 

「ラァア゛ーーーッ!!!」

 

接近戦を持ち掛けたプロトスナイプは、鎌モードのスパローによる必殺技でアークの片腕の銃身を斬った。

 

『ッーーーー!!!』

 

声に出せ無い位に痛むのか、切り落とされた腕を抑え悶えるアーク。

 

再度切り掛かろうと足を踏み出すプロトスナイプだが、プロトガシャットの反動がまたしても襲い掛かった。

 

 

「ッ!! ガァアッ!!、ゥアッ……グッ!!」

 

余りの反動に膝を着いてしまうプロトスナイプ。手からスパローすらも落としそうになるが、寸での所で握る力を入れた。

 

 

 

<< ズ・ドーン! >>

 

 

「ッ……ヌァアアッ!!!」

 

 

『gyaaa----ッ!!』

 

 

 

痛みに蝕まれながらも弓モードへと変えたスパローの矢とマグナムの銃弾を見舞わす。

 

容赦なく放たれる銃弾と矢をその身で受けるアーク。アークも長く続いた戦闘でかなり消耗しており、お互いにこれ以上の戦闘は出来ない。

 

 

 

故に決着の時が着こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< マッスル化! マッスル化! >>

 

 

「ハァッ!!」

 

「ブァアアァアーーーッ!?」

 

エナジーアイテムを取り込み、圧倒的なパワーでゲンムを蹴り飛ばすパラドクス。遠目でアークの惨状を見てプロトスナイプとアークの間に入り込もうとしていた。

 

 

「フゥ!…向こうの雲行きが怪しくなってきたな。アレを倒される訳には…ッ!!」

 

「バァアッ!!」

 

完全に目を反らしていた所為で背後に居たゲンムに気付かず掴まれたパラドクス。

 

その際に、ゲンムのドライバーから待機音が鳴っているのをが耳に入って来た。

 

 

「カインッ、お前まさか…!」

 

「そのまさかだァァアッ!!」

 

 

<< CRITICAL DEAD! >>

 

 

ドライバーのBボタンを押すと、二人の足元に黒い水たまりの様なモノから複数の黒いゾンビ達の幻影がパラドクスを掴むと、カウントダウンの如く赤く点滅しだした。

 

 

「このッ!くッ…!!」

 

「フハハハハハハハッ!! 吹き飛べぇぇえええッ!!!」

 

 

パラドクスを掴んでたゾンビたちは、黒から赤になると一斉に爆発した。

 

 

「うわああぁッ!!!」

 

「ァァア~~~ッ……ヴェハハハッ!取り返したぞォ!!」

 

 

変身が解除され転げ回るアベルと、不死身の能力により未だ健在のゲンムの手に悠のガシャットが握られていた。

 

「クッ!……まぁいい。この勝負はお前に譲ってやるよカイン。

そろそろ向こうの様子も気になるし、今日は退散かな?」

 

「何ッ!?それはどういう意味だ!?」

 

「それは内緒♪ じゃーね!」

 

「待てッ!」

 

ゲンムの静止を聞かずアベルはその場から消え去っていった。

 

追うにも追い掛ける手段が無い為に内心悪態を吐くゲンムだが、プロトガシャットを使って変身しているプロトスナイプの事をすぐ思い出すと、膝を着いているプロトスナイプへ奪い返したガシャットを投げ渡した。

 

 

「今優先すべきはこっちか! 悠君ッ!コレを受け取れぇぇええええッ!!!」

 

「ッ…うるせえよ。でもよくやった…!」

 

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

 

受け取ったジェットコンバットのガシャットをマグナムへ、スパローにはギリギリチャンバラのガシャットをもう一度挿し込み、二つの武器をアークへと向けた。

 

 

<< GIRI GIRI/JET CRITICAL FINISH! >>

 

「ッ──ッァアッ!!」

 

 

スパローから無数の矢と、マグナムから無数の小型ミサイルがアークへと一斉に向かって放たれた。

 

アークは向かって来る矢とミサイルを撃ち落とそうとマシンガンを放つが、圧倒的な物量差に押し負けてしまい、矢が刺さり、爆発の衝撃を受け、大ダメージを負った。

 

 

 

『ッッッーーーー!!!』

 

 

 

「ハァッハァッハァッ!……ンァアッ!!」

 

マグナムとスパローを捨てアークへ駆けだす。最後の一撃を叩き込む為に。

 

 

<< ガッシャット!──キメワザ! >>

 

 

「ウォォオォァアアアーーーーーッ!!」

 

 

<< BANG BANG CRITICAL STREIKE! >>

 

 

 

『ッ!!』 

 

「ドオォラァッ!!」

 

アークへ肉薄し、放たれたライダーキック。

 

突き出された右足は、アークの胴体へ見事に決まっていた。

 

 

 

『ッッ!…gi! guaa…!!』

 

 

「二度とその気色悪いツラ見せんな!」

 

蹴られた個所を抑えるアークへ、ダメ押しと言わんばかりの回し蹴りを顔面へ叩き入れると、アークは糸が切れた様に腕をダランと落とし、そのまま仰向けに倒れてった。

 

そして静かにその体が朽ち、最後には塵となって消えた。残ったのは取り込まれたバンバンシューティングのガシャットだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………?」

 

「夏音!!お、お前、起きて…!」

 

「…体が楽に、なったです…。」 

 

「あ、明石さん!!」 

 

「…ウイルスの反応が、無くなった……もう、大丈夫です!!」

 

「や…やったーーーーッ!」

 

「ぽーーーいッ!!」 

 

「よ…よかったぁ!よかったよぉ…!!」

 

夏音の完治に、病室内に歓喜の声が広がる。

 

ラ・フォリアですらも明石からの吉報に張り詰めた緊張が解け腰を落とし、今の心情を体現するかのように安堵の涙を流していた。

 

「ラ・フォリアさん!大丈夫ですか!?」

 

「え、えぇ…思わず、腰が…。」

 

「あぁ夏音! 良かった!本当に、良かった!!」

 

「お父さん、苦しいです………あの。」

 

「どうした?」

 

「…お兄さんは、何処にいるですか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ハァ…ハァ…。」

 

<< ガッチョーン──ガッシューン >>

 

ゲームエリアが解け元の山岳地帯に戻ったプロトスナイプは、苦しそうに肩で息をしながら変身を解いた。

 

 

「悠君!おい大丈夫か悠君!!」

 

ゲンムの変身を解き、悠の元へ駆けよる神太郎。安否を確認する為に近づくにつれ見えてしまった。

 

悠の足元に、血の溜まりが広がっているのを。

 

 

 

「ガフッ!……ぁ…。」

 

「悠君!!」

 

 

倒れる悠を抱き止める神太郎。

 

悠の口からは多量の血が吐かれ、肌の色も死人の様に青白くなっていた。

 

 

「馬鹿な事を!! プロトガシャットを使うなんて無茶を通り越してもうバカだ!!」

 

「ぁ……なぁ…アイツは…夏音は、ちゃんと…。」 

 

「あぁ治った! アークは完全に消えた!夏音ちゃんはもう大丈夫…キミが救ったんだ!!」

 

「…ハハ…そっかぁ……今度…は、ちゃん…と……守れ…。」

 

「それ以上喋るな!!とにかく一刻も早く処置を…!」

 

「……ああ……ホント………良か……った……──。」

 

「…おい、オイ死ぬな!! この後お祝いするんだろう!?だからまだ死ぬな!!」

 

 

 

 

 

 

(…うるせぇなぁ。分かってるよ…少し余韻に浸らせろよ…。)

 

 

瞼を閉じる悠。視界は光の無い黒一色の世界になるが、その世界が白く染まった。

 

 

そしてその世界で見つけたのは、かつて救えなかった家族たちが居た。

 

 

「………。」

 

 

夢か、それとも死の瀬戸際にいる為かは分からないが、不思議と心に動揺は無かった。

 

 

離れた位置に立っている恩師は、兄弟達は、そして彼女は、悠に笑顔を向けていた。過去の事など一切気にしている様子も無く。

 

(あぁ、やっとオレは…。)

 

それに釣られてか、悠も憑き物が晴れたかのような笑みが自然と浮かんだ。

 

 

 

 

 






次回は蓮司とハルナの修学旅行編です。それが終わったらエピローグみたいな感じで進めます。

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