その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ。
プロトガシャットの後遺症で意識不明だった俺であったがどうにか復活!
髪が白くなっちゃったとか、夏音が一緒に住む事になったとか、川内達がパワーアップとか色々あったが、どうにかこうにかめでたしなカンジになったとさ。」

「あらすじ雑!いい加減すぎるでしょ!!
まぁそれはさておき灰原君、アナタ前回早霜ちゃんと一晩過ごしたとか聞いたけど朝まで何してたのよ?いやらしい事してたんじゃないでしょうね?」

「そんな訳無いでしょ、俺が前仕事で行った世界の昔話を酒の肴に話してたんです!
近未来とかファンタジーとか、はたまた江戸時代なんかにも行ったハナシ。」

「へぇー、他には?」

「他はそうだなぁ。
通り過ぎた女子高生に、「見ない顔ね、アンタこの世界の人間じゃないわね!」とか言われて変な部活動に連れていかれたり、行く先向かう先殺人事件に巻き込まれてその度にメガネかけた子供に睨まれたりとか、可笑しな世界に行ったなー、って。」

「ちょっと待ってすっごい心当たりある、その話もう少し詳しく。」

「おう良いぞ、最新話の後でな。」


愛想

 

 

悠が目覚め夏音が灰原家へと住み着く様になって二日。この日悠は修学旅行から初めて学園に登校をする。

 

やはりと言うべきか家から学園へと向かう際、悠に向けられる視線はかなり集めてしまっていた。修学旅行前は模範的な黒髪短髪であった悠が少し見ない間に白髪のメッシュを入れた短いポニーテールへと変貌する光景は注目の的であった。

 

 

ちなみに事情を知らないクラスメート達からの第一声は…。

 

 

「よぉーおっひさ…なんだその頭!?失恋でもしたか!?」

 

「灰原…それ、もしかしてアレ?俗に言う中二病…。」

 

「………。」

 

あらぬ誤解二つと無言の睨み一つに大した反応を見せずにいた悠だが、その辺は古城とゼノヴィアのフォローもあってイメチェンという事で落ち着いた。

 

そんな軽い一騒ぎもあった学園生活は何事も無く放課後まで迎えた。

 

 

 

 

 

「悠。もしよかったら一緒に帰らないか?」

 

「いいけど、一子の事はイイの?」

 

「あぁ、今日は走り込みに集中すると言って授業が終わったと同時に駆けだしてったよ。」

 

「相変わらずアグレッシブで、じゃあ行こっか。」

 

「あぁ。」

 

ゼノヴィアと共に教室へ出て帰路へ着く悠。

 

「今日一日大変だったな。」

 

「あぁ迷惑かけちゃってゴメン。やっぱ目立っちまうもんだなコレ。」

 

「私は似合ってると思うぞ?それに時間が経てば自然と収まりがつくさ。」

 

「そりゃあ早くそうなって欲しいもんだ……。」

 

「? どうした悠…あ。」

 

突然悠の目つきが僅かに険しくなったのを見逃さなかったゼノヴィアであったが彼等の進行方向に居る人物を目に直ぐ目付きが変わった原因が分かった。

 

廊下の真ん中で腕を組み、後ろに供として自身の眷属を控えさせた嫌いな悪魔、リアス・グレモリーが悠達を微笑みながら見つめていた。

 

「こんにちわ灰原君。ゼノヴィアの方は久しぶりね。」

 

「えぇこんにちわ。んでさようなら。」

 

「あらつれないわね。こうして用あって来たのだから少しは相手をして欲しいのだけども?」

 

「此方にもこの後用があるので。そう言った事は事前にアポを取って置いておくのがお決まりですよ?ではこれで…。」

 

「オイ!態々部長が来てやってんだから少しは聞く耳持てよ!」

 

「止めなさいイッセー、こんな所で騒いだら恥よ?」

 

 

「だったら廊下のど真ん中に立って待ち構えんなよボケ共が(ボソッ)」

 

「オイ悠。気持ちは分かるが抑えろ。口が悪くなってる(ボソボソ)」

 

次第に嫌悪感を隠せなくなってきている悠をどうにか鎮めようとするゼノヴィア。だがリアスはそんな悠の感情に追い打ちを決め込むかのような発言をして来た。

 

「ねぇ灰原君。アナタ悪魔に興味無いかしら?今日はアナタをスカウトに来たのよ。」

 

「……あ゛ぁ゛?」

 

(あ…これはマズイ。)

 

火に油。もとい火にニトログリセリンをぶち込んだリアスにゼノヴィアはもう手が付けられないと悟った瞬間だった。

 

「アナタの活躍は色々見せて貰ったわ、若獅子トーナメントベスト4、スティールソルジャーとしてバケモノ達を倒した賞賛。

神器も魔力も持っていない人の身でありながらこれ程の結果を出した貴方の事を認めているのよ私。」

 

「そりゃどうも。嬉しくもなんともないですけど。」

 

「ッ…そ、そう。でもね私思ったの、この子はまだ伸び代がある。それも悪魔になればどれ程素晴らしいモノになるかって。」

 

「なんか悪徳セールスみたいな勧誘っすね。」

 

「…アナタさっきから随分辛辣ね。もしかして悪魔が嫌いなのかしら?」

 

「えぇ嫌いです。ロクな思い出が無くて。という訳で今度こそさいなら。」

 

「テメェ!さっきから聞いてりゃ好き勝手言いやがって!!

部長!!やっぱりロクでも無いヤツを仲間にするなんて間反対ですよ!こんなイタいイメチェンするようなヤツが仲間になったら良くない事おきますって!」

 

「何だと?…兵藤。それは幾らなんでも言い過ぎではないか?」

 

「そんなヤツを庇う事は無いぜゼノヴィア!

…そうだ!部長!灰原じゃなくていっそゼノヴィアを仲間にしましょうよ!ゼノヴィアは強いし、一度一緒に戦った仲ですからその方がイイですって!!」

 

「待ちなさいイッセー!ゼノヴィアについてはもう…。」

 

「私もお断りするよ。以前も誘われたが私は人間として生きたいのでな。」

 

「はいそういう事でこのハナシ終わり。んじゃ俺達これから放課後デート有るんで、今度こそさよなら。」

 

「デートォ!? テメエ何羨ま…じゃない!

気を付けろゼノヴィア!ずる賢い灰原の事だ。ゼノヴィアを良い様に言い包めて、手を出すつもりだぞ!!」

 

「ッ! このッ、悠に恥をかかされたからと言ってこれ以上は…!」

 

「止めなよ。」

 

悠に一方的な敵意を持つ一誠は根も葉もない言い掛かりを放つのを我慢できなかったゼノヴィアだったが、悠は手で制して彼女を止める。

 

「悠! どうして止める!?」

 

「ゼノヴィアが手を出して損をする事なんて一つも無いって事だよ。それに、あそこのヒョロ男くんの言う通りロクでも無いヤツっていう自覚はあるし。」

 

「ハッ!何だよオレが言うまでもないってか!」

 

「そうだねぇ……数々の女子更衣室の覗き、教室内では堂々とエロ本・AVを持ち出し、学園内の女子とその保護者から何度も停学、退学を学園を訴えられるお墨付きのキミに言われる位だからなぁ。そりゃあロクでも無いだろうよ。」

 

「……。」

 

喧騒な空気がシンと静まった。そんな空気の中、悠の口はまだ止まる様子は無かった。

 

「あぁそういえば修学旅行でも女湯を覗こうとしてたんだって?いやココで教師やってるウチの親戚が酒に酔った弾みで愚痴ってたよ、”いつもの三人組が非常時にも拘らず女子の裸を除くぞー!とかふざけた事叫んでた!”って。」

 

「なッ、ち、違う!修学旅行に行って無いからってそんなウソ…!」

 

「嘘じゃないわよ!!」

 

悠の放った証言に明らかに動揺する一誠は否定するが、野次馬として一部始終を見ていた女子生徒が一誠の否定する発言に業を煮やして間に入って来た。

 

「アンタいつもの二人と覗こうとしていたのアタシ達知ってるんだからね!島で怪物が出て皆不安な気持ちだったって言うのに、アンタ等は!!」

 

「そうよ!先生達がこれ以上騒ぎを大きくしない様に黙っておいてくれって頭下げていたから了承していただけで、私達は許してないんだからね!!」

 

「大体アンタなんかが灰原君を悪く言う権利なんてないわよ!!アンタと比べて百倍イイ男よ!!」

 

「最初はビックリしちゃったけど、白メッシュもよくよく見ればカッコいいし!」

 

 

 

「…アレ?なんで機嫌悪くなってるの?」

 

「別に…相変わらず人気者なんだな、キミは。」

 

 

満場一致で周りを味方に付けた悠。

女子からの非難を浴びてたじろく一誠に、リアスはワナワナと肩を震わせて追及する。

 

「…ねぇイッセー。私言ったわよね?旅行先でバカな真似はしないでねって。お土産話にも私に覗きは一切してないって言ったのに…。

ねぇどうしてなの?私はアナタを愛してるって言ってるのに、どうしてアナタは私を裏切るマネをするの?」

 

「ち、違うんです部長!オレも部長の事大好きです!この気持ちに嘘偽りは有りません!!

でもオレは男としてのロマンを求めてたくさんのおっぱいを見たいんです!!」

 

真っ直ぐにリアスと向き合って真剣みを帯びた目で語る一誠であったが、周りから向けられる視線は更に冷たいモノとなっていた。

 

「…流石に今の返しは無いだろう。」

 

「要は赤髪悪魔に捧げる愛なんぞより、自分の性欲が上だって事だろ…いやないわー。」

 

「うるせぇ!!おっぱいを求める事に何の罪があんだよ!!」

 

 

「…なによソレ……結局アナタは私より他の女の胸しか頭に無いって事じゃない!!」

 

糸が切れた様にリアスは絶叫した。目じりに涙を浮かべながら叫ぶリアスに一誠は肩をすくめ、リアスの顔に怒りの色が見えだしていく。

 

「アナタはいつもいつもいつも!、私があんなにアプローチしているって言うのに目を放せば、いつも覗き行為をして!!私がどれだけ言っても悪びれた様子も見せないで!!」

 

「ぶ、部長…!?」

 

 

「…ッ!オイ悠、アレ!!」

 

「ッ! マジかよ…。」

 

次々と口から一誠の不満を吐き出していくリアス。徐々にヒートアップしているのに比例するかのように、リアスの体にある異様な光景が浮かんできているのにリアスは気付いていない。

 

 

体中にオレンジのノイズ、バグスターウィルスの発症が出ている事に。

 

 

「悠!これは、マズイぞ…。」

 

「…やっべえ、イラッときてバカやらかしちまった。」

 

 

「アナタなんか…アナタなんかァアアアァアッ!!!!」

 

「ぶ、部長ーーーッ!!」

 

 

「ァァァアアアァアーーーッ!!」

 

 

ノイズが大きくなり肉塊となってリアスを包み込む。

リアスの姿が変貌した事に周囲はパニックとなって我先にとその場から逃げ出していくなか、悠はこれから来る敵に焦燥感を抱いて待ち構えていた。

だがここから先の光景は悠の想像を遥かに超えていた。

 

リアスを包んでいた肉塊が、リアスから剥がれ落ちていくかのように離れ、肉塊だけで人の形を取っていったのだ。

 

「ッ!? 何だよありゃあ!?」

 

「部長!しっかりしてください!!部長ーーッ!!!」

 

 

肉塊が剥がれたリアスを抱える一誠の傍らで、肉塊がその変貌の最終形態を見せて来た。

 

 

黒に近い紫の体。羽の様なマントを下げ何より特徴的なのは、胸部にトリケラトプス、両肩にプテラノドン、頭部がティラノサウルス。

太古の昔に存在し今は滅び去った種族、恐竜をモチーフにした無の欲望の怪人。恐竜グリードの誕生だった。

 

 

『ハァアア~~~……フム。』

 

「な…何だよお前!?ぶ、部長に何しやがった!?」

 

 

『……ッ!!』

 

 

「ッ!危ねぇ!!」

 

「うわッ!?」

 

 

『ンンッ……ハァアッ!!』

 

 

「うわああああッ!?!?!?」

 

 

恐竜グリードから紫の波動は周囲に波紋状に広がって放たれた。紫の波動で校舎内の窓ガラスが割れ飛び散ってく中、悠はゼノヴィアを押し倒して覆い被り、一誠は紫の波動に巻き込まれ近くの教室に吹き飛ばされていった。

 

 

「…ハァ。ゼノヴィア、怪我は?」

 

「あぁ。大丈夫だ…ッ! 悠!」

 

ゼノヴィアが指を差した方では、恐竜グリードが窓から飛んで行こうとする直前だった。

 

「Dr,真木!一体何を企んでやがる!?」

 

『…フム。キミの事を存じませんが、その名前を知っているという事は、キミは私を良くご存知のようで。』

 

「言葉が…最初から分離してると言い、一体何がどうなってる?」

 

『ソレにつきましては私からは何とも…ただ私はこれから完全な体を得る為に彼女の大事なモノを終わらせなければいけないので、これで…。』

 

「ッ!オイ待て!!!」

 

恐竜グリード、真木は窓からマントを羽のように広げ飛んでいった。

 

「あの方角は…旧校舎!」

 

「ヤツの狙いはグレモリー眷属か!」

 

窓から飛んでった真木の狙いに気付いた悠達は現場へと駆けていった。

 

 

「……ゥウ、ぶ、部長ぉ…!」

 

 

 

 

 

二人は校舎から出て新校舎から離れた旧校舎へ続く道を走っていた。二人共常人と比べかなりの速度で走っており、旧校舎に着くまで時間は3分とも掛からない。だからこそ目的地に着いた着いた時思わず唖然としてしまった。

 

旧校舎が立っていた場所が異常なまでに冷たい冷気を漂わせた更地となって所々氷の欠片が散らばっている。Dr,真木が旧校舎を凍らせて粉々にしたのだ。

それよりも目を見張るのが離れた所で聞こえてくる音と光。戦闘音がまだ近くでしている。

 

「…ゼノヴィア、お前取り敢えずこっから離れとけ。」

 

「イヤだ。と言いたい所だが、私では足手纏いなのだろうな。」

 

「そうでもないよ。今の俺も似たようなもんだし。」

 

「それはどういう…ッ!!」

 

「ッ!!」

 

悠の口にした言葉の意味を聞こうとしたが、それは此方に向かって飛んできた物体三つを頭を下げて避けた為に中断される。

物体は生えてあった木にぶつかって止まり、悠達は振り返ってそれを見た。

 

飛んで来たのはグレモリー眷属である朱乃、子猫、祐斗だった。酷く傷だらけだが、何よりも酷かったのが夥しい位の凍傷。つい先程まで旧校舎を壊したDr,真木と戦っていたのだろう。

 

こんな短時間でここまでの被害を出したDr,真木に苦い顔をする悠、そんな彼の元に近づいて来る足音が二つ。

 

「灰原君!!、ゼノヴィア!!」

 

「桜井!…と剣バカか。」

 

「フン。」

 

「ハイハイ顔合わせただけでいがみ合わない…バグスターが出たって聞いたわ。何処?」

 

「向こうだ。感染者は赤髪悪魔で、奴の狙いはグレモリー眷属。もう既に三人やられてる。

おまけに今回の発症は今までのとはどこか違う。最初から感染者と分離しているし、言葉も片言じゃなくてハッキリ喋ってるし。」

 

「何?…ウイルスの突然変異か?」

 

「ッ…酷い。私三人の怪我を治療してから追いつくわ。それまで彩守君、一人で頼める?」

 

「言われるまでも無い。むしろオレ一人で十分だ。」

 

「む?ちょっと待ってくれ。彩守一人とはどういう事だ?ここに悠もいるじゃあないか。」

 

「あれ、言って無かったの。」

 

「言おうとしたが遮られてね…。」

 

 

 

 

時は朝まで遡る。

 

 

 

 

「───ねぇ。」

 

「ダメです!」

 

「えぇ。暫くは没収です♪」

 

「…え~~?」

 

学園へ登校しようとする悠の前に、持っていこうとしたゲーマドライバーとガシャットをラ・フォリアと夏音に取り上げられていた。

 

「お義父様が言ってましたよね?体の方は治ったけれど、ガシャットの使用はもう暫く控える様にって…なのにどうして持って行こうとするんですか?」

 

「そりゃもしもバグスターが出た場合…。」

 

「ハルナと蓮司、それとお義父様の三人で対処すると言ってましたよね?とにかく、コレは置いてってもらいます♪」

 

「お兄さん…めっ!でした。」

 

「…えぇ~~~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──と、言う訳でして。」

 

「ちょっと待て。だったらキミは何をしようとしていたんだ?二人が来なかったらまた無茶な真似をする気満々だというのか?えぇ?」

 

「ちょ、顔近い、ちょっと落ち着こう?ね?…ってあれ、剣バカのヤツ何処行った?」

 

「もう行ったわよ。」

 

三人を治療しながらハルナは蓮司が走っていった方角を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、恐竜グリードことDr,真木は逃げ惑う残りのグレモリー眷属、アーシアとギャスパーを追い詰めていた。

 

『あまり時間を掛けさせないで下さい。』

 

「ひィィィっ!!!」

 

「い、イッセーさん…!」

 

『ご心配無く。痛み無く終わらせますので…。』

 

翳した手に集まる赤いエネルギー。二人はそのエネルギーに目を見開いて驚く。なぜならその色は、自分達の主が扱う魔力と同じ紅だったから。

 

『では、御機嫌よう…。』

 

逃げ場の無い二人にDr、真木が掌を向けた時だった。

 

 

「───ハァアッ!!」

 

『ムッ!?』

 

Dr,真木の横から変身を済ませたブレイブレベル5が、ドラゴンブレードを振るって来る。Dr,真木はブレードを翳した腕で受け止め。

 

 

『邪魔者ですか…!』

 

「か、仮面ライダー!!」

 

「早くこの場から逃げろ!!」

 

「は、ハイ!!」

 

ブレイブに言われ腰が抜けているギャスパーを引き連れて走って行ったアーシア。Dr,真木は受け止めたブレードを弾き、ブレイブと距離を取る。

 

『余計な真似を。』

 

「貴様の思い通りにはさせん…いざ参る!」

 

ブレードを構えDr,真木の元へ駆けるブレイブ。

 

Dr,真木は片手を突出し掌から冷気を噴出、対するブレイブはドラゴンファングから火炎放射を吐き出す。冷気と炎が合わさり白煙が爆発的に周囲へ広がる。視界が白煙で潰れてもブレイブはDr,真木から狙いを外していなかった。

 

「セェァアッ!!」

 

掛け声と共に突出したブレード。だがいち早く気付いたDr,真木はコレを手で弾く、だがそれはブレイブの想定内。

 

「ハァッ!」

 

『グァッ!?』

 

左のドラゴンガンの銃身に電磁キャノンを籠めた状態でDr,真木に殴った。銃身で殴ったと同時に発射された電磁キャノンは流石にダメージを喰らう。

 

「…ふむ。不要な装備だと思ってたがこれならオレでも十分扱える。やっとこのガシャットの扱い方をモノに出来た。」

 

『…一筋縄ではいきませんか。』

 

「桜井が来る前に、斬らせて貰う!」

 

『それでしたら此方も…。』

 

ブレイブは再度Dr,真木へ向かって特攻を仕掛ける。向かって来るブレイブにDr,真木はただ待ち構えているだけ。

無防備に立つDr,真木にブレイブはブレード上段に振り下ろした。

 

 

「ッ!!───なん、だと!?」

 

間合いも完璧に詰めて振り下ろしたブレードから伝わる手応えは、一切無かった。唖然と声を漏らすブレイブが右腕を眼前に持って行くとその答えが一目瞭然で分かる。

 

Dr,真木に振り下ろしたドラゴンブレードの刀身が半ばから消失しているのだ。折れたでも切られたでも無く、綺麗に消えたのだ。

 

Dr,真木の体の表面に薄っすらと紅いオーラの様なモノが纏われていた。

 

『コツを掴んだ新しい力で、相手をしましょう。』

 

「ッ!!───うわァッ!!」

 

突き出した拳に本能的危機を抱いたブレイブは左のドラゴンガンでそれをガード。吹き飛ばされるブレイブ、左腕を見るとガードで受けたドラゴンガンの銃身がブレード同様跡形無く消えていた。

 

そんな中遅れて悠とゼノヴィアが追い付いた。悠はブレイブの両腕のブレードとガンの有り様を見て、恐竜グリードの持つ能力では無いと見た。

 

「感染者の、赤髪の能力か!」

 

『その通り。この力私と思った以上に相性がよろしいみたいで、今ではご覧の通りちょっとした応用も使えます。』

 

「”滅びの魔力”を鎧の様に纏っての鉄壁の防御。おまけに触れたら消滅する為攻撃を兼ねている。

リアス・グレモリーは”滅びの魔力”を放つだけだったが…。」

 

「流石Dr,真木。どこぞの脳筋悪魔とは、頭の造りが違う…。」

 

『それはどうも。──フンッ!』

 

「ッ、グアァアーーッ!!」

 

<< ガッシューン! >>

 

Dr,真木は紫の波動と”滅びの魔力”を同時に放ち、ブレイブの変身を強制解除させた。

 

地面を転げ回る蓮司を一蹴し、悠達の目を付ける。

 

『キミ達ももし邪魔をするというのなら、彼と同じように痛い目に遭っていただく事になりますが。』

 

「チッ、どうすっかなぁこれ…。」

 

「悠…。」

 

 

「うおおおおぉぉーーーーッ!!!」

 

『ム?』

 

現状手の打ち用が無い悠。そんな中木々の茂みから真っ直ぐDr,真木へ向かって行く赤い影。禁手で鎧を身に纏った一誠がDr,真木へ殴り掛かった。

 

「兵藤!?アイツ何をやってるんだ!?」

 

「あぁもう!次から次へと面倒な事ばっか起きやがって!!」

 

「灰原くーんッ!!こっちに兵藤のバカ来て…遅かった!」

 

「どうして殴ってでも止めなかったんだよ。」

 

「傷ついた三人を見たら真っ先に禁手して飛び出してったのよ!しょうがないじゃない!!」

 

 

[Boost!Boost!Boost!Boost!]

 

「喰らえぇぇええッ!!」

 

『…ハァ。』

 

倍加して威力を上げた拳をDr,真木に叩き込む一誠。だがバグスターにダメージを与えるにはガシャットを用いたライダー、或いはゲームの題材となったライダーの力以外は無効になる為、当たったと同時に”MISS!”という文字が出て来ただけに終わる。

 

「ッ!? こんのぉぉぉおッ!!」

 

ダメージが入って無いと知りながらも一誠は何度も拳をDr,真木に振るう。それでも結果は一向に変わらず”MISS!”文字しか出て来ない。

 

「テメエよくも皆をぉ!!部長をぉ!!!」

 

『ハァ…貴方に時間を費やしてるヒマは無いのですがね…。』

 

 

「…?どういう事だ。アイツ今。」

 

「悠も気付いたか?ヤツの狙いはグレモリー眷属なら、兵藤もその中に入る筈なのに。」

 

「………もしかして。」

 

 

 

『簡単な事ですよ。私の宿主。もとい彼女は彼の事を大事に思っていなのですよ。』

 

「…え?」

 

Dr,真木の放った言葉に一誠の拳が止まる。疑問に感じている悠達に対して簡単に説明をしたつもりであったが、一誠にとって無慈悲に突きつけられた衝撃発言であった。

 

「ぶ、部長が、オレの、事……う、ウソだ!!そんな事誰が信じるかよ!!」

 

『本当に嘘だとお思いですか?私が出て来る前の彼女のやりとりと様子を見たら、キミに愛想を尽かすのは何ら可笑しくは無いと。

仮にも繋がっている身なので分かります。彼女は貴方を愛していた。だが貴方は彼女の愛を疎かにした上、散々裏切る言動も止めようとしない。

現に校舎で貴方が気を失っているのにそうして生きている事が、何よりの証拠です。』

 

「うるせぇぇぇッ!!そんな事ッ、そんな事あってたまっかよぉぉッ!!」

 

[相棒!!落ち着け!!]

 

『…聞き分けの無い。』

 

Dr,真木の言葉を否定したいが一心に再度殴り掛かって行く一誠。そんな一誠に大層呆れながら手に紫のオーラを集める。

 

 

一方で離れた位置に居る悠達三人の元に、助っ人?が訪れた。

 

「おーーい!皆待たせたねーッ!」

 

「「神太郎さん!?/お義父様!?」」

 

「遅ぇんだよ!」

 

この場の空気に合わない爽やかな笑みを浮かべ手を振って走って来た神太郎だった。

 

「まぁまぁ落ち着きたまえ、遅れたのはちゃんと理由があっての事だ。…ようやく最終調整が終わったのさ!」

 

「ッ!ソイツは…!」

 

「新しいガシャット!?しかもデュアルガシャット!!」

 

「そうだ!!コレが今までの造ったガシャットの中の集大成!!ガシャットギアデュアルβ!!レベルは勿論50!!

いいかいこれは…!!」

 

「説明はイイから早く渡せや!!」

 

神太郎が新たに開発したデュアルガシャットを半狂乱状態で説明させると明らかに時間がかかるので早く渡すのを要求する悠。

そんなやり取りが行われてるなか、Dr,真木が未だ聞く耳を持たない一誠に一撃見舞わす所だった。

 

『目障りです…失せなさい!』

 

「ガッ!ガアァァァアァアーーッ!!!」

 

Dr,真木の一撃を喰らい鎧が粉々に砕け散る一誠。吹き飛んでいく方角は運悪くも未だデュアルガシャットを手にしてる神太郎の方へ。

 

「全く最近の若者ときたら、人の話を聞かず勢いでなぁなぁと、ぼォォオオオーーーッ!?!?!?」

 

「「…え……えぇぇええーーーッ!?!?」」

 

「お義父様ぁ----ッ!?」

 

 

吹っ飛んできた一誠に巻き込まれ諸共吹き飛んでいってしまった神太郎。

木にぶつかって目に見える範囲に止まったが、頭を打った所為か気を失っている。

 

「…って!ガシャットォ!!」

 

「無い!!ぶつかった弾みで手放したんだ!!」

 

「探せ!!現状じゃあアレが唯一の鍵だ!!」

 

 

 

「…それなら、ココにあるぞ。」

 

「「「ッ!!」」」

 

無くなったデュアルガシャットを探していた悠達であったが、神太郎が手放したガシャットは運良く蓮司の所に落ちていた。

 

傷ついた体を起こし、ワインレッドのデュアルガシャットを手にDr,真木へ対峙する。

 

『またキミですか…トドメを刺さず見逃してあげたと言うものの…。』

 

「頼んだ覚えは、無い。」

 

顔の横に持って来たデュアルガシャットのダイヤルに指を掛ける。

 

 

<< TADDLE FANTASY >>

 

<< Let's Going King of Fantasy!──Let's Going King of Fantasy!─>>

 

蓮司はダイヤルに半分に描かれた二つのゲームタイトルの内、禍々しい魔王がロゴが描かれた方へ回すと、召喚されたのは黒いオーラを巻きながら蓮司の周りを旋回する黒いマントを付けた[ファンタジーゲーマ]が蓮司の頭上に止まり、赤い目を光らせると黒い波動をDr,真木へ放った。

 

『ッ!──グゥッ!!』

 

黒い波動はDr,真木を怯ませる威力を有していた。ファンタジーゲーマが作った隙に蓮司がガシャットをドライバーへと挿し込む。

 

 

<< デュアルガッシャト! >>

 

「──変身ッ!」

 

 

<< ガッチャーン──DUAL UP! >>

 

 

ドライバーのレバーを開くと、蓮司はブレイブレベル2の姿へとなると、頭上に控えていたファンタジーゲーマの形状が変わりながらブレイブに合わさると、鎧となってその全貌を明らかにする。

 

竜の角とも見える頭部の角[グランダークネスホーン]と胸部に備え付けられた鎧[ダークロードキュイラス]に背中の黒いマント[ウォーウェアマント]によって様変わったブレイブの姿は、一言で表すなら”魔王”。

 

 

<< 辿る!・巡る!・R・P・G!──TADDLE FANTASY! >>

 

 

タドルファンタジー。それは主人公である魔王が勇者を倒し世界を征服するダークサイドのロールプレイングゲーム。

 

欲望の怪人、全ての終わりを司る恐竜グリードにブレイブ・ファンタジーゲーマーレベル50が迎え撃つ。

 

 

「──参る。」

 

 

 






カズミィィィンッ!!そしてメガネぇぇぇッ!!

そんでヒゲェ!お前も消えるのかよォォ!!

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