その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
剣バカが新たなるフォームで恐竜グリードことDr,真木を撃破したものの、新たに性欲バカのひょうなんとかが発症しハイドラグーンが姿を現す。しかも神器の力を使い次々とモンスターを生み出すバグスターに俺達仮面ライダーは総力戦を強いられるのであった!」

「なぁ、最近オレの出番無さすぎじゃねえか?吹雪達や川内達ばっかじゃ無くてオレにも見せ場欲しんだけどよ。」

「あ、天龍型のポンコツカワイイ方の。」

「なんだよその呼び名!?そうじゃなくてだな、ホラ、オレの名前天龍じゃん?天の竜でドラゴンじゃん?仮面ライダー天龍なんて出て来ても可笑しくないと思うんだけどな?」

「あからさまに狙ってるね。」

「天龍ちゃ~ん、悠君にお願いしてるって事は、やっと鏡の前で練習してたポーズと決め台詞決まったのかしら~?
部屋に一人の時はいっつも変身!って…。」

「わああああーーッッ!!龍田ァァァアアッ!!」

「久々の出番でもブレれなぁ天龍型…とりあえず最新話どうぞ!」



不快

「………ん…ッ!つぅ…ッ!」

 

喧しい騒音と頭に響く耳障りな鳴き声に堪らず一誠は目を覚ました。

背中と後頭部が固い地面に当たって痛いが為に体を起こすと頭に鈍い痛みが奔り思わずよろけてしまう。辺りを見渡すと先程まで居た廃校舎裏では無く、雑居ビルの路地裏らしき狭い通路に居た。

 

(何でこんな所に?…オレは確か校舎裏で…それで…どうしたんだ?)

 

ハンマーで殴られた痛みが響く頭で思い出そうにも記憶が抜け落ちたかのように思い出せない。そんな中一誠は路地裏から顔を覗かせて表通りの様子を見ていたゼノヴィアを見つけ出し、彼女へ声を掛けた。

 

「なぁ、ゼノヴィア。」

 

「ッ! 兵藤!お前意識が戻ったのか!」

 

「ココ、何処なんだ?なんでか知んねえけどよく覚えていないんだ。さっきからずっと頭が痛ぇし、何か寒気も…風邪引いちまったのかな?」

 

「お前…ッ!、危ない伏せろ!!」

 

「え?いでッ!何す──うわぁッ!?」

 

ゼノヴィアと共に地面に伏せられた一誠。突然の暴挙に文句を言う前に、表通りから爆発が起き炎が路地裏に入って来た。炎の熱が背中から伝わって行く感覚からぼやけていた一誠の思考が一気に目覚めた。

 

「い、一体何が起こってんだ!?」

 

「あ、オイ待て!!」

 

何が起こっているのかを確かめるべく路地裏から飛び出た一誠。ゼノヴィアがすぐ戻ってくるよう何度も叫んだが、目の前に広がる異様な光景を前に一誠の耳にはゼノヴィアの必死な叫びは届いていなかった。

 

「なん、だよ…これ…。」

 

目を疑う光景だった。オフィスビルに囲まれた都会の空を埋め尽くさんとばかりに飛び交うハイドラグーンの大群。その巨体の圧倒的な数、仕切り無しに聞こえる羽音、それらが合わさって絶望的と言える光景。夢だと思いたい光景をこれでもかと今自分が目の当たりにしている現実を直面させられる。

 

そんな絶望の中彼は見つける。塊となって見えるハイドラグーンの群れの中、次々と小さな爆発が起きているのを。目をよく凝らして見ると、その中心部に居る正体が目に見えた。

 

「あれは…!!」

 

 

 

 

「ウラァァアアァアッ!!!」

 

ーGuoooooooon!!!ー

 

ハイドラグーンの群れの中、口から蒼炎を吐き、尾で薙ぎ払うブラッグドラグランザーの背に乗るリュウガサバイブはソードモードのバイザーの振るい向かって来るハイドラグーンを両断していく。

 

 

「セェァアアァアーーーッ!!!」

 

ーKyiiiiiin!ー

 

群れの中を突き進むダークレイダーは真空波の刃で道を作りながら、背に乗ったナイトサバイブの剣閃が通り過ぎるハイドラグーンを斬り捨てていく。

 

 

「ヌァアアァアーーーッハァアッ!!!」

 

地上では鎌モードのガシャコンスパローを手にしたゲンムが向かって来るハイドラグーンを切り裂いていく。途中数に物言われ死に瀕したが、持ち前の不死の能力で何度も立ち上がっている。

 

 

絶望的な数に怖れている様子も見せずに立ち向かっていく仮面ライダー達の勇姿。今まで憎たらしい存在だと思っていた一誠はこの時ばかりはそのような感情など一切無く、童心に返ったかのような目で彼等の戦う姿を目に焼き付けていた。

 

「す…すげぇ。」

 

「兵藤!!何をボサっと突っ立っているんだ!!」

 

呆然と立ち尽くす一誠にゼノヴィアが怒鳴りながら路地裏へ引き連れていこうと腕を掴んだ時だった。二人に目を付けた一匹のハイドラグーンが降下して来て、両手のクローを前に突き出して来た。

 

「ッ!マズイ!!早くこっちへ!!」

 

「下がってろゼノヴィア!!こんな青トンボオレがぶっ潰してやる!!」

 

「無理だ!!私等ではどうやっても奴等を倒せないんだ!!」

 

「そんなのやって見なきゃ分かんねえだろ!!”赤龍帝の籠手”ッ!!」

 

ゼノヴィアの前に出て左腕を突き出す一誠。だが彼の呼び掛けに一切反応は無かった。

 

「ッ!?なんで神器が出て来ねえんだよ!?ドライグ!!おいドライグッ!!!」

 

「兵藤!!」

 

自身の左腕に叫んでも何も返ってこない一誠の前にハイドラグーンのクローが突き出されようとした時、一誠とハイドラグーンの間に入り込んで来る巨体の姿が。

 

「テェエィッ!!」

 

クローが一誠を貫く前にガシャコンキースラッシャーを振るって弾いたエグゼイドはキースラッシャーをガンモードにしハイドラグーンを撃ち抜いた。

 

「フゥ!…何ボサッと突っ立ってんの!!死にたいのかアンタは!?」

 

「すまない!今すぐ連れていかせる!ホラ!!コッチに来るんだ兵藤!!今のお前では何の役にも立たない!!」

 

「な! ふ、ふざけんな!そんなの納得できるかよ!!」

 

「いい加減にしろ!!子供か貴様は!!」

 

「ちょっともうソイツぶん殴ってでもいいから早く下がらせて……ッ!!ゼノヴィア危ない!!」

 

「ッ!」

 

素直に引き下がらない一誠の言い分に叱責をとばすゼノヴィアの背後から迫って来るハイドラグーン。慌てて×エグゼイドだが、エグゼイドの背後からもハイドラグーンが襲い掛かろうとしていた。

 

その瞬間を見てゼノヴィアの口から思わず出てしまった。

 

「ッ───ハルナぁ!後ろぉ!!」

 

「………え?」

 

 

 

 

 

 

<< ガッチョーン! >>

 

「だーーいッ変身ッ!!」

 

<< ガッチャーン!──DOUBLE UP! >>

 

<< オレがお前で! お前がオレで! "We Are!" Mighty MIGHTY BROTHERS "Hey!"──XX! >> 

 

 

「「ハァァアッ!!──」」

 

ダブルアップして分裂をしたエグゼイド達。エグゼイドLがゼノヴィア達に襲い掛かるハイドラグーンに跳び蹴りをかまし、エグゼイドRがキースラッシャーで背後のハイドラグーンを薙ぎ払った。

 

「ふ、二人になったぁ!?」

 

「今の内に早く逃げて!!」

 

ダブルアップしたエグゼイドの姿を見て驚くゼノヴィアだったが、エグゼイドLの指摘にすぐ正気に戻って一誠の腕を掴み路地裏へ避難する。

二人が隠れたのを確認したエグゼイドLはソードモードのガシャコンブレイカーを手にハイドラグーンを撃退して行く。

 

「驚いたな、まさか二人になれるなんて知らなかった「ゼノヴィア…。」…なんだ兵藤。」

 

「…お前さっき、あの仮面ライダーの事ハルナって言ったよな?…」

 

「ッ!!」

 

「…どういう事だよ、なぁ。なんで桜井が仮面ライダーなんだよ!?何でお前がそんな事知ってんだよ!?なぁ!!ゼノヴィア!!!」

 

「………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ハイドラグーンの軍勢を空からひたすら駆逐しているリュウガとナイト。二人は標的である赤いハイドラグーンを目指して空へ駆けるも、その行く先を赤いハイドラグーンから生み出された無数の青いハイドラグーンが壁となっている為に一向に辿り着けていない。

このままでは時期に体力の消耗でじわじわと戦況が傾いてしまう危惧が二人の気を荒立たせていった。

 

「ドラァッ!───クソッ!マジキリがねえ!!つうかマジウザッてぇ!!」

 

「ハッ!──つべこべ言わず手を動かせ!──デェァッ!!」

 

「こんだけウジャウジャ沸いてるの一々片付けてたらッ──ラァッ!!──愚痴の一つ吐きたくなるわ!!」

 

「シッ!──なら一掃できる何かを使え!!──イヤァッ!!──手数が多いんだろう!?」

 

「あぁやってやるよぉ!!大盤振る舞いだ!!」

 

 

<< UNITE VENT >>

 

リュウガはベノスネーカー、メタルゲラス、エビルダイバーを融合させジェノサイダーを召喚、腹部のブラックホールを展開させ蔓延しているハイドラグーンを呑み込ませていく。

 

 

「まだまだ!」

 

<< STRANGE VENT >>

 

<< UNITE VENT >>

 

<<<<<< ADVENT >>>>>>

 

リュウガの快進撃は終わりでは無かった。貴重なストレンジを使いもう一度ユナイトのカードを使い今度はアビソドンを融合させる。その後は残りの契約モンスター、ダークウィング、デストワイルダー、バイオグリーザーを召喚しハイドラグーンを個々撃破させていく。

 

ブレード部を展開したメガロドンが軍勢の壁を突き破り、闇夜の蝙蝠が超音波を発しながら叩き落とし、姿を消したカメレオンの舌が存在に気付いていないハイドラグーンを貫き、白い虎が俊敏な動きで不意を突き叩き落としていく。そして魔竜の底知れぬ黒渦が全てを呑み尽くす勢いで吸い込んでいく。

 

それぞれが強力な力を有すモンスター達の助力があってかなりのハイドラグーンが減っていったが、赤いハイドラグーンの周囲には護衛の様に数多くの青いハイドラグーンが待ち構えている光景を前にリュウガはナイトへ話し掛ける。

 

「オイ、ちょっと風起こせ。」

 

「何だと?」

 

「ヤツを駆除するのに必要な事だ、良いから今だけは言う事聞け。

それともお前が代替え案出すか?そうしてる内にまたぞろぞろと増えていくがな。」

 

「…いいだろう。だが、親玉の首はオレが獲らせて貰う。それが条件だ。」

 

「けッ、好きにしろや。」

 

 

<< BLAST VENT >>

 

条件付きと言う名目で一時リュウガと協力体制を取る事にしたナイトは、リュウガの指示通りダークレイダーの両翼から巻き起こる竜巻を赤いハイドラグーンへ向けて放つ。

壁として青いハイドラグーン達が立ちはだかるなか、リュウガとブラックドラグランザーは突風を起こしているナイトの背後に周る。ナイトは背後に居るリュウガ達を目に、リュウガの思惑を察した。

 

「お前まさか…!」

 

「そういう事!──撃てドラグランザー!!」 

 

ーGuoooooooon!!!ー

 

首を大きく仰け反らせて溜めこんだ炎が轟々しくブラッグドラグランザーの口から吐き出される。

 

蒼炎はダークレイダーの起こす竜巻に触れると、風と炎が合わさって巨大な蒼い炎の渦が生まれた。遠くから見れば全てを呑み込む巨大な蛇とも言えるソレは、壁となっている青いハイドラグーンの軍勢を一匹残らず呑み込んでいき石化したハイドラグーンは地面へ落ちていく。

 

その際赤いハイドラグーンはいち早く広範囲の渦の領域から逃れるが、自身を守ってくれる壁は一匹もおらず、孤立状態に陥っていたのをリュウガ達は見逃さなかった。

 

「今だ行け!!」

 

「ハァアッ!!」

 

ナイトの乗るダークレイダーが瞬時に親玉のハイドラグーンへ向けて飛び立つ。

ナイトの背後から残っているハイドラグーンが追い掛けて来るのをリュウガが阻止するなか、ナイトは徐々に親玉との間合いを詰めていく。

 

[Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!]

 

「させるかぁあ!──セェァッ!!」

 

倍加をし力を蓄えだすハイドラグーンに、間合いを取り風を纏った剣を振り下ろすナイト。剣はガードの為に翳したクローを両断、悲鳴にも似た鳴き声を上げるハイドラグーンを前にナイトはトドメの一撃を刺そうとしていた。

 

「これで!…ッ!?…ガッ!?ングァ…ッ!」

 

「ッ!? 何やってんだアイツ!?」

 

突然剣が手から落ち胸を抑えて苦しみ出すナイト。あまりの苦しさに膝を着いてしまうその隙を目の前のハイドラグーンが見逃さないワケが無かった。

 

ードゴォオッ!!ー

 

「ガッ!…ガハッ!!」

 

その巨体とスピードを活かしナイトに体当たりを見舞わせたハイドラグーン。モロに喰らったナイトはダークレイダーの背から落ち、地面への激突によって変身が解除されてしまった。

 

悶え苦しむ蓮司の元に、絶好の餌と見たハイドラグーン達が襲い掛かって行く。

 

「グッ…!ァ…ガァ……!!」

 

「あぁもう世話が焼ける!!」

 

 

<< FINAL VENT >>

 

絶体絶命の危機に瀕している蓮司を救うべくリュウガは必殺技であるドラゴンファイヤーストームを発動、バイク形態へ変形したブラッグドラグランザーは地上を掛けながらウィリー走行で空中のハイドラグーン達へ火球を浴びせ撃ち落としていく。

蓮司に襲い掛かるハイドラグーン達を撃破したリュウガは蓮司の所でバイクを停める。

 

「オイ!オイ剣バカ!!」

 

「ハァ、ハァ、グッ!…ハァ…!」

 

「一体何が…まさか、さっきのガシャットが…?」

 

蓮司の元に寄り容体を確認するリュウガは、先程蓮司が使用したデュアルガシャットの負担が未だ抜けきっていない所為だと見当をつける。

 

そうしている間に赤いハイドラグーンは20回程の倍加を済ませ、その力を地上に居るライダー達へ向けようと見下ろしていた。

 

[Explosion!]

 

 

「ッ!!──マズイ!みんな逃げろッ!!」

 

 

「「「ッ!!」」」

 

ゲンムが声を荒げて叫ぶも遅かった。

 

理性の無い野生本能の殺意が籠められた最大の一撃が、ライダー達に降り掛かった。

 

 

ードガアァァァンッ!!!ー

 

 

爆撃以上の力が籠められた大々的な爆発はエリア内の地形を変える程の威力を有し、大きく狙いが外れていたが爆発の余波でハイドラグーン諸共ライダー達は変身を解除される程に大きな痛手を負った。

 

赤いハイドラグーンは、変身が解除され気を失っている蓮司とハルナ、怪我を負ったものの健在である悠と神太郎が此方を睨んで来ているのを確認した後、再度倍加を施す。

額から流れる血を拭いながら悠はカードデッキを手に前に踏み出すも、神太郎がそれを手で制した。

 

「ここは一旦退いて整えるべきだ。キミは後ろの二人を連れて行きなさい。」

 

「アンタはどうする気だよ。まさか一人でアレ相手にするとか言う気じゃねぇだろうな。」

 

「そのまさかさ。私が時間を稼ぐ、幸いにもこういった分野では私が適任だからね。」

 

<< DENGEROUS ZONMBIE >>

 

「変身ッ!──」

 

<< BUGGLE UP! >>

<< ──DENGEROUS ZONMBIE! >>

 

神太郎はゲンムゾンビゲーマーへ変身をすると赤いハイドラグーンから生み出された青いハイドラグーンの大群を前に、ガシャコンスパローとプロトのドレミファビートのガシャットを手にする。

 

「行けぇ!キミ達は一人として欠ける事を許されていないのだからな!!」

 

<< DOREMIFA CRITICAL FINISH! >>

 

スパローから放たれた音符状の衝撃波をハイドラグーン目掛け放ち数体を撃破して行く。単身で軍勢へ向かって駆けるゲンムを目に悠は表情を大きく歪ませながら、蓮司を肩に、ハルナを小脇に抱えその場から離れていった。

 

三人が離脱するのを遠目で確認したゲンムはハイドラグーンに囲まれながらも悠々とした態度を崩さなかった。

 

<< ガッシャット! >>

 

「さて、この絶対窮地のこの状況、コレならばレベルxにまで至れるか……根気の勝負だなァ!!」

 

<< JET CRITICAL FINISH! >>

 

 

放たれる無数の小型ミサイルの爆炎に包まれるゲンムを背に悠は二人を抱えながらゼノヴィア達を安否を確認すべく辺りを探していた。

 

二人から大分離れた所で戦っていたとしても先程の大爆発が頭を過るなか、悠の耳に探していた人物の声が聞こえた。

 

「悠!コッチだ早く!!」

 

「ゼノヴィア! 無事だったか?」

 

「あぁ。運良くこの建物に入っていたのが功を奏したよ。」

 

ゼノヴィアに先導されビルの中に入り込む悠。広いロビーを抜けて従業員用の部屋に入り込むと、部屋の隅っこで体育座りをする一誠の体がノイズを発しながら薄っすらと透けていた。

 

担いでいた二人を降ろした悠はゼノヴィアに一誠の容体について聞いた所…。

 

「え……言っちゃったの?」

 

「すまない…しつこく問い詰めて来るものだから、つい…。」

 

申し訳なさそうな表情を浮かべるゼノヴィア。不意にエグゼイドをハルナと呼んでしまった事を一誠に聞かれてしまった事から一誠には今自分が陥っているバグスターウイルスに感染している事とハルナ含める悠達が仮面ライダーで感染者を救うべく戦っている事を止むを得なく説明したとの事。  

 

その直後に目にしたハイドラグーンによって奪われた自身の神器による力と、悠達のやられ様を見て自分はもう助からないと思い込んで、塞ぎがちになっているのだという。 

 

「俺達が頼りないって事かよ。」

 

「…本当にすまない。私が容易に喋った所為で症状を酷くさせてしまった…。」

 

「過ぎた事責めても良くはならないよ。とにもかくも、アレを放って置くのはマズイよなぁ。」

 

バグスターは感染者のストレスを感じさせる事で自身を活性化し最終的に感染者の体を乗っ取って完全体となる怪人。だからこそこうして一誠がストレスで塞ぎ込んでいるこの状況はハイドラグーンを完全体へ近づけているのだ。

 

だから悠はある決断をし、顔を膝に埋める一誠に声を掛ける。

 

「おい兵藤。そうやって落ち込んでストレス抱えてっと、お前の消滅が早まるだけだ。だから少しでも気が晴れる様に俺の事好きに殴っても良いぞ。」

 

「悠!?」

 

「………。」

 

突然の事を言う悠に驚くゼノヴィアと僅かに肩が動いた一誠。二人の反応を余所に悠は口を開く。

 

「お前俺の事嫌いだろ?今までの恨み発散していいから、その湿臭い空気出すの抑えろ。」

 

「…気を紛らす為に、好きな事していいんだよな?」

 

悠の言葉に反応してフラリと立ち上がる一誠に肯定の意を告げる。

 

「だったら…。」

 

持ち上がった一誠の生気の無い目線は悠では無く、その隣にいたゼノヴィアに向けられた。

 

「おっぱいを…生のおっぱいを触らせてくれぇ…!」

 

「「…は?」」

 

同じタイミングで声が漏れる悠とゼノヴィア。一誠の目はゼノヴィアの胸部を突き破る位に凝視しながら震える両手を振るえる両手を前に突き出して来た。

 

「どの道死ぬのなら最後におっぱいに埋もれて死にたい!なぁいいんだろ?そこで寝てる桜井のでもいいから!おっぱいを…おっぱいを揉ませろよぉ!!」

 

「チェストォ!」

 

フラフラと幽鬼の様に後ずさるゼノヴィアに詰め寄る一誠に当て身を喰らわした悠。気を失い倒れる一誠に、ドブを見るかのような冷たい目を向ける。

 

「前言撤回。事が終わるまで寝てろ……悪いゼノヴィア、なんかとばっちり受けさせちゃって。」

 

「い、いや、大丈夫だ。コイツの性癖の質の悪さは転校時に散々聞いたから…ココまでとは思っていなかったが。」

 

「…こう言っちゃ不謹慎だが、コイツの事もうどうでもよくなってもいいじゃね?その方が学校中の女子の為にもなると思って来たわ。」

 

「後半は大いに同意するよ……なぁ、その…。」

 

「?どうした?」

 

「い、いや、その、だな……こ、これは私個人が気になって、バグスターとかそういうのとは全然関係は無いのだが…。」

 

「なんだよ勿体ぶって、良いよ言っちゃても。」

 

「そ、そうか、なら遠慮なく……。

ゆ、悠は、私が兵藤に胸を揉まれるのを、その…し、嫉妬したり、したから手を出したのかと、思ったり、してな…。」

 

「え…。」

 

赤くなっている顔を逸らしながら、目線をチラチラと向けるゼノビィアの様子に悠の心中は次第に意識し出してしまっている。

 

言われれば何故自分はあんな事をしたのか。

一誠の歪んでいるとも言える性欲については前から知っていた。なれば悠を殴らせるより、性欲に身を任せておいた方が今抱えているストレスをゼロの領域にまで発散させた方が合理的な判断と言える筈。当の本人からしたら心傷つく最悪の手段だが、災厄級の怪人をこの世に生み出すのと比べたら土下座も厭わない。幾ら嫌われようと実行するべきであった。

 

なのに自分は咄嗟の行動でそれを良しと認めなかった。これでもし下手にストレスを悪化させてハイドラグーンが完全体となったら最高に最悪だ。

 

どうしてこうなったのか分からない悠は原点に思い返ってみる事にした。当て身を浴びせた時の自分の心情を思い出してみる。そうして浮かび上がって来たのは一誠に対する感情──嫌悪感。

 

次に一誠がゼノヴィアに邪な目線を向けていた時を良く思い出してみる──嫌悪感が殺意に変わった。

 

なら今度は実際に一誠がゼノヴィアの胸を好きに揉んでいる光景をシュミレーションしてみる──下半身のアレをちょん切って殺すビジョンが浮かんだ。

 

(…え?ちょっと待て、俺ってもしかしなくて…え?えぇ?)

 

「悠?…悠!どうした!?」

 

「───へ?」

 

「あ、いや、なんだかもの凄く思い詰めた表情で考え込むから…。」

 

「…あ、ゴメン……って違う違う!!今はこんなんしてる場合じゃねぇ!

桜井と剣バカはダウンで、アホ上司が時間稼いでいるにしても早いトコ打開策を見つけないと…!」

 

先程のバカげた考えを全て消し去って現実へと目を向ける悠。傍でゼノヴィアがはぐらかされた事にムッとしてるなかハイドラグーンへの攻略法を探す。

 

あの軍勢を相手取るには接近戦では無く火力を重視した遠距離戦の方が望ましい。現時点で火力が一番あるのはディケイドとG4-X。

G4-Xではゲームの関係上通用しないから自然的に消去。なればディケイドで行こうかと思ったが、デメリットを考えると早々失敗は出来ないリスクが背負う事になる。

 

だが現状考えられる手はそれしか無い為に意を決して前線へ戻ろうと決めた時だった。意識の無い蓮司の懐から覗かせているデュアルガシャットが目に付いたのは。

 

その時ハッとなって思い出す。デュアルガシャットは一つのガシャットに二つのゲームを有している事、蓮司の変身したダドルファンタジー、タイトルから見てあのゲームは蓮司のタドルクエストをバージョンアップしたものだとしたら…。

 

もしかしたらと思い横になっている蓮司の懐に手を伸ばしデュアルガシャットを取り出す。そしてタドルファンタジーのロゴが描かれているのとは反対側の方へ目をやると、悠の目が僅かに見開いた。

 

(やっぱりか……だったら。)

 

悠は次に隣で寝かされたハルナの下へ近寄る。彼女腰に巻き付いているゲーマドライバーを外し自身の腹部へ。ゼノヴィアはその行動に疑問符を浮かべる。

 

「何をするつもりなんだ?もしかして彩守のガシャットを使うつもりか?」

 

「半分正解。そんでもってコレはコイツのじゃあ無い。」

 

悠の真意が未だ掴めないゼノヴィアに対し、悠はゼノヴィアに見える様にデュアルガシャットを前に突き出す。

 

「このガシャットには二つのゲームが入っている。一つはさっきコイツが使ったタドルファンタジー、コイツのタドルクエストのバージョンアップしたゲームだ。

んで、もう一つが…。」

 

ゼノヴィアに向けていた側面の反対側を向けると、そこにはタドルファンタジーとは違うロゴが描かれていた。

軍帽と軍服を纏ったキャラクターの背面に幾つもの砲塔とターゲットマーカーらしき画が描かれている。

 

「バンバンシュミレーション。タイトルからコイツは俺の使っているバンバンシューティングのバージョンアップ版。つまり、このガシャットは俺のガシャットでもあるって事さ。」

 

「…という事は、そのガシャットを、使うのか?」

 

「あぁ。レベル50なら恐らく火力も相当のもんだろうし、ぶっつけ本番は正直不安だがいつもの事だしどうにか扱え ーポフー ? ゼノヴィア?」

 

突如悠の胸元に顔を埋めるゼノヴィアに今度は悠が疑問符を浮かべる。どう声を掛けるべきか悩んだ末に、ゼノヴィアの方から話し掛けてきた。

 

「…そのガシャット、彩守を見ればどれだけ負担が掛かるか分かった上で使うと言ってるのか?」

 

「まぁな。でもコレが最善の手だ。」

 

「…悠。私はな、キミのその頭、お揃いで嬉しいと言ったが、最初はそんな目で見ていなかったんだ。」

 

「……。」

 

「最初に見た時、ゾワって恐ろしいモノを感じたんだ。どう表現すればいいのか難しいが、そうまるで……キミの命が欠けたような…命の色が失くなった。」

 

「ッ!」

 

悠は不意を突かれた様な目をする。ゼノヴィアの感じ取った予感は当たっている。プロトガシャットの影響で髪の色素を失ったと共に神太郎から告げられた寿命が縮んだ事は黙っていたが、悠はこうも感付かれるとは思いもしなかった為に反応を隠しきれなかった。

 

顔を見上げて悠の顔色を窺ったゼノヴィアは、それだけで全て悟った後に目に涙を浮かべだした。

 

「キミはッ!どうしていつもそうなんだッ!!周りがどう思ってるのかも知らずに無茶ばっかりしてッ、傷ついてッ、死に掛けて…どうしてそこまでするんだ。仮面ライダーだからか?世界を守る為にか?なぁ、悠…。」

 

「……。」

 

吐き出されたゼノヴィアの思いを聞いた悠は、涙を浮かべる彼女の目元に手を伸ばして、涙を掬い取る。

 

「…まぁ言いたい事は分かるよ。自分でも自覚はしてる上でやってるし…はっきし言ってもう病気なのよ、コレ。

少しでも結果を良くする為に、自分が傷つくのはしょうがないってカンジで。」

 

「それで死んでしまったら元も子もないだろ!!」

 

「そりゃ俺だって死ぬのはイヤだよ。でも命懸けで戦う以上はどうしてもリスキーな場面もある。それはゼノヴィアだって分かってる筈だ。」

 

「それは…。」

 

「それにね、人間って何処で何したっていずれは死ぬ生き物なんだよ。今だってまさにそう……あぁそうか、”戦わなければ生き残れない”今俺が直面してるのは正にそれだ。

…だから行かせてくれ。じゃなきゃゼノヴィアを生かして帰してやれない。」

 

「………分かった。なら──ッ。」

 

悠の顔を掴んだゼノヴィアは自分の元に近づけて唇を合わせる。深く、自身の活力を送り込む様に息が続くまで。

 

 

「──ハァ。最近戦う前はラ・フォリアとこうしてると聞いてな、景気付けだ…無傷で帰ってきたらそれこそ胸を揉ませてやる。」

 

「…そりゃあ魅力的なご褒美で。」

 

 

 

 

 

 

 

 

<< CRITICAL DEAD! >>

 

「トゥワァアアアァァーーーーッ!!!」

 

ゲンムが黒いオーラをノコギリ状に縦回転しながらハイドラグーンを次々と撃破して行くも、横合いから放たれたクローにより撃ち落とされてしまう。

 

「グァァッ!!……ゥアァ~~ッ!! ハァ、ハァ…!」

 

何度死んでも蘇るデンジャラスゾンビであるが、変身者の精神力までは元には戻らない。精神面の消耗が次第に体にも現れ、足取りも疎かになって来ている。

 

ゲンムが震える膝を抑えながら立ち上がるなか、そんな事露知らずと言った風にハイドラグーンがゲンムを取り囲む。

 

「ハァ、ハァ…フゥ、筋トレは続けたつもりだが、やはりこればかしはキツ過ぎるか…。」

 

ゲンムを取り囲んでいたハイドラグーン達が一斉に襲い掛かって来る。応戦しようとするも全方位からの急襲にすべて対応出来る訳が無く身構えるゲンムだったが、突如として放たれた黒炎がゲンムに襲い掛かるハイドラグーンを爆散していった。

 

「あれは、まさか!」

 

「そのまさか。ギリギリセーフってか?」

 

背後を振り返るゲンムの目に写ったのは、後ろにドラグブラッガーを従わせながら歩いて来る悠の姿が。ゲンムは悠の腹部に巻かれたゲーマドライバーと手に持っているデュアルガシャットを目に息を呑んだ。

 

「行けお前等。」

 

ーGuooooon!ー

 

悠は自身の契約モンスター達を向かって来るハイドラグーンの軍勢で応戦して行く。モンスター達が時間を稼いでる間に変身しようとする手を、ゲンムが掴んだ。

 

「止せ!確かにバンバンシュミレーションなら勝算は大いにある。だが今のキミの体ではレベル50の反動に耐えられるかどうか…!」

 

「いやもうそういうくだり良いから。」

 

ゲンムの掴む手をパッと離してダイヤルに指を掛ける。

 

「コッチは覚悟とっくに決まってんだよ…戦って、勝って、生き残る覚悟がな。」

 

 

<< BANG BANG SIMULATION >>

 

<< I Ready for BATTLE SHIP!──I Ready for BATTLE SHIP! >>

 

背後に出現したスタート画面から現れた小型の戦艦型ゲーマー[シュミレーションゲーマー]の砲塔から放たれた砲弾がハイドラグーンを焼き尽くす。

頭上にゲーマーを控えさせた悠がガシャットをドライバーに挿し、レバーに手を掛ける。

 

<< デュアルガッシャット!>>

 

「──変身ッ!」

 

 

<< ガッチャーン──DUAL UP! >>

 

悠はスナイプレベル2に変身するなか、頭上のシュミレーションゲーマが分離し、スナイプと合体する。

 

船頭部が二つに割れスナイプの両腕に装着された大口径の主砲[オーバーブラストキャノン]と両肩に装着された計8門の砲撃ユニット[スクランブルガンユニット]。胸部の強固な[バトルシップアーマー]と頭部の軍帽を模した[コマンダーガードキャップ]によって大きく変化したスナイプは正に海上の最強兵器、戦艦となった。

 

 

<< スクランブルだ! 出撃!発進!──BANG BANG SIMULATIO! 発進! >>

 

 

バンバンシュミレーション。戦艦を操り敵軍隊を殲滅シュミレーションゲーム。

 

 

 

「──削除、開始!」

 

野生の軍団を前に、スナイプ・シュミレーションゲーマーレベル50の砲門が一斉に火を吹いた。

 

 

 





次回はエクゼイドかぁ、やっぱレジェンドの登場は心が躍るな!

それとサブライダーのゲイツが主役の絡み方とか見て、やっぱ秋山 連を連想させる、龍騎の回で出演ありそうですかね?
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