「前回のあらすじ!
どうにかハイドラグーンを撃破した俺達は束の間の平穏を味わっていた矢先、なんと暁と遠山とで体が入れ替わっていた!!
一体どうなんのこれイヤマジで!?」
「何をしてる暁 古城。こんな事で一人声を荒げおって。」
「あ、おチビ先生。あ、ヤベ。」
「ほう、ちゃん付けの次はおチビとな…この無礼者が!」
「おっと危なッ!」
「避けただと?ならば!」
「おォォッ!?ちょっと鎖はやり過ぎでしょ!!」
「コレも見極めて避けるだと!?貴様、暁 古城では無いな!!何者だ!!」
「ソレは最新話で説明しますから!!取りあえずコレ止めて!!あと後ろのなんか強そうな鎧騎士も止めて!!!」
「「「中身が入れ替わってるーーーーーッ!?!?!?」」」
学園の一角で響き渡る三人の叫び声。夢の様な出来事に只々困惑を隠しきれない悠(キンジ)、古城(悠)、キンジ(古城)の三人。
唖然としながら互いの顔を見合わせて暫くして悠の体に入った悠(キンジ)とキンジ(古城)が声を上げた。
「どうなってんだよコレ!?中身変わるとかマンガやアニメだけじゃねえのかよ!?」
「と、取りあえず落ち着こう!!まずはどうしてこうなっちまったか原因を探って、それから…!!」
「……いや、十中八九コレだろ。」
慌てふためく悠(キンジ)とキンジ(古城)とは対象に古城(悠)は地面に落ちているボールを拾い、隅から隅まで観ていく。
「原因はさっきのガスとしてコイツは…パッと見てガスを入れる為の容器だな。
今の所コイツが大本の手がかりか…。」
「大本っつうと?」
「俺等がこうなっちまった諸悪の根源だよ。
少なくとも俺達の誰かを陥れようとかそういう類の奴じゃあねえ。俺なら中身入れ替わるガスじゃ無くて毒ガス仕込むから。」
「だからその発想がエゲツねぇての!……でも確かにそうだよな。毒ガスなんかより中身が入れ替わるガスっつうモン仕込む事態が特殊過ぎる…。」
「それじゃあ何でこんなモンがこんな所にあんだよ?」
「それは流石に知らんよ…でも一つだけハッキリと分かってるのが…。」
「何だ?」
「こんなふざけたモン作ったクソ野郎にそれ相応の礼をしなきゃいけねぇって事だよクソッタレがぁ…!!」
「オイ!オレの顔がトンでもねぇ顔になってるから止めろ!止めてください!!」
「確かに自分自身をこうして見るのってなんか凄い違和感だよなぁ…。」
青筋立てて目が殺意に塗れた古城(悠)を見てキンジ(古城)が思わず止めに入る光景に悠(キンジ)が胸の内を呟く。
「とにもかくにもこれからホントどうすんだよ?」
「そうだなぁ………大人に相談するか?」
「………で?今度はどういった趣向の冗談だ?」
「まぁ如何にも信じられない話ですけどねぇ、今回はほんのジョークも何も無いガチでして。」
三人が向かった先は古城(悠)とキンジ(古城)の担任である那月の部屋だった。彼女は古城(悠)が仮面ライダーと知っているのに加え功魔官という顔を持っている為に適任と考えて自分達に起こった悲劇を話したのだが、突発的過ぎる所為か疑いの眼を向けられている。
「そうは言っても些かお前等の言ってる内容がどうも信憑性がな…。」
「じゃあどうしたら信じてくれるんです?」
「頼むよ那月ちゃん!オレ達を信じてくれって!!」
「教師をちゃん付けで呼ぶなバカ者ッ!」
「イデッ!」
「オレの体!?」
「ん?…。」
キンジ(古城)が那月をちゃん付けで呼んだ事に那月はいつもの癖で手にした扇子をキンジ(古城)の額に投げ当てた。
その時、キンジ(古城)の当たった時の反応が普段古城にしている時とタブって見えた。
「フム………フンッ!」
「うぉ危ねッ!」
那月は不意を突いて古城(悠)に扇子を投げ飛ばす。これに古城(悠)は反射的に首を動かしただけで躱し他のを見て、那月は少し間を空けた後、ハァと溜め息を吐いて口を開いた。
「にわかに信じられんが……中身が入れ替わってると言うのは嘘では無いらしいな。」
「ッ! 信じてくれるのか那月ちゃん! イタッ!!」
「ちゃん付けで呼ぶなと言っても聞かないバカのお蔭でな。全く。」
「良かったなぁ暁、普段の行いが功を奏して。」
「オイそれオレの体だってこと忘れんなよな!? でこ真っ赤っかになってんぞオイ!?」
「えぇいうるさい!で?お前達は私に何を頼みに来たんだ?」
「さっすが先生、話が早くて助かる。」
どうにか信じてくれた那月に古城(悠)は入れ替わるに至った経緯を話した。唯一の証拠品であるボールを那月に渡し、那月はそのボールを見て椅子から立ち上がった。
「話は大体分かった。コイツを造った下手人も大体予想できた。私はこれからソイツを締め上げに行くからお前達は少し待ってろ。」
「え、マジかよ!?」
「じゃあそっちの方は任せます。俺等は早退してアホ上司のとこに行きますけどいいですよね?もしかしたら元に戻る術を知ってるかもしれないんで。」
「好きにしろ。捕まえた所で元に戻れるかどうかの保証は無いからな。」
那月は空間魔術を用いて部屋から姿を消す。残された三人は早退の許可を貰った為に灰原宅へと揃って向かった。
灰原宅への道中。そろって早退するという奇妙な光景にクラスメートたちが疑惑の目を向けるもそこは古城(悠)の巧みな話術と二人のその場のフォローによってどうにかやり過ごしたのだが、三人から漂う空気は決して明るいモノでは無く、むしろドロドロとした重い空気だった。
そんな中、式神を通じて入れ替わった事情を知り、監視と言う名目で同行している雪菜が三人に声を掛けた。
「あのぉ…三人とも大丈夫ですか?その、顔色が…。」
「大丈夫かだって?……大丈夫じゃねえに決まってんじゃん。それに何か凄くダルいんですけど…。」
「どうすんだよコレ、どうすりゃいいんだよ、元に戻るよなコレ?戻るよね?」
「マンガやアニメじゃお決まりの定番だけど実際元に戻る保証なんて何処にもねえじゃん、オレこのまま灰原として生きていかなきゃいけねえのかな?…。」
(お、思った以上に精神的にやられている…!)
時間が経つにつれて三人の脳裏には次第に不安と焦燥が募り、保てていた平常心が崩れ非常に不安定な状態となっていた。
もしこのままだったらどうしよう、という気持ちが渦巻くに渦巻いているなかで、雪菜は古城の体に入ってる悠にずっと気になっていた事を訪ねた。
「それはそうと灰原先輩、今暁先輩の体になっている訳ですけど、何か異常とかは有りませんか?」
「? それってどういう……あぁそういう事か。」
「?どういう事だ?」
「良いですか先輩方。今灰原先輩は暁先輩の体、つまり第四真祖の力を持っている…いえ、この場合今は灰原先輩が第四真祖という事になっているんです。」
「あ……そう言われれば何時もより体が楽だな…。」
「…ちょっと待てよ、てことはオレが今灰原だから…オレが仮面ライダー!?」
「そうなっちまうなぁ。てかさっきからなんかダルいわ秋にしちゃあっついわって思ったら、コレ吸血鬼になったからか!」
「それなぁ、基本日の光はキツいんだよ……あーーでもそう思ったらこうして日の光浴びるのすっげえ久しぶりだなぁ、何か心地良くなってきちまった…。」
「おお、体軽い!流石仮面ライダーの体、自分のと全然違う。」
「アレ?もしかして俺だけが損している?この体何も良い所無し?」
「オイ!それ失礼だぞ!!」
手を広げて日光を浴びるキンジ(古城)や小刻みなステップで体の具合を確かめる悠(キンジ)をフードを深々と被って恨めしそうに睨む古城(悠)。
何時の間にか先程の重々しい空気が何処かへと消え去った三人に雪菜は咳払い一つして話を戻した。
「それでですね!第四真祖になったのなら、当然その身に十二の眷獣も宿している事になります!
見た所先輩の魔力にこれといった乱れは感じませんが、何処か可笑しな所はありませんか?」
「いや、特に何とも…。」
「そうですか…やはり精神面がしっかりしているのかその辺の心配はいらないようですね。
普段の灰原先輩なら特に吸血衝動に見舞われるような心配もありませんし。」
「ん?どういう事?」
「ッ…そ、それはですね…。」
「あーー、それはだな灰原……ちょっと、耳貸せ。」
頬を赤く染めて言葉が詰まる雪菜を前に、キンジ(古城)が古城(悠)の耳打ちする形でその理由を話した。
「…………は?性欲で血が欲しくなる?」
「え!?」
「バカッ!耳打ちした意味!!」
古城(悠)がうっかり放ったワードに何故か悠(キンジ)も反応するのも気になったが、雪菜が言い辛そうな反応を見せていた理由を理解した古城(悠)を見て咳払いをした後、雪菜が口を開く。
「中身が入れ替わった理由はともあれ、このような形で真祖の力を得たと言う前例はありません。だからいつ第四真祖の力が暴走を起こすか、私にとってそれが一番心配なんです。」
「そうか、俺はてっきり暁が別の男の体に入ったり、俺が暁になったりで複雑な気持ちになっているとばかり…。」
「それとこれとは全然別です!!
それよりも暁先輩の体で何時もの様にからかうの止めてください!!…何か、調子が可笑しくなっちゃいそうなんです…。」
「ほお、普段見る事のない一面を見てドキドキしてると。それは俗に言うギャップ萌えと言うヤツだな。いや待て、でも中身が全くの別人の場合、コレはギャップ萌えと言えないのでは?」
「冷静に分析しないでください!!もう!!……それよりも灰原先輩の方はどうするんですか?正直言って暁先輩のよりも深刻だと思うんですけど。」
「やっぱそう? まぁ手が無い事は無いんだが、色々不安なトコがなぁ~。」
「おーい、二人だけ分かってるような雰囲気出さないで、オレ等にも教えて欲しんだが?」
「簡単に言えば、この中で一番窮地に立たされているのは俺の体の中に居る遠山ってコト。」
「へぇ~………え?」
古城(悠)の放った言葉に唖然とした表情になる悠(キンジ)。
「いやだって俺世間騒がしてる仮面ライダーだし。今絶賛戦争中で当然向こうに狙われている身だし。」
「そう言われれば、確かにオレよりもヤバい境遇だな…。」
「…………ウソだろ。」
言われてやっと自分の立ち位置を理解した悠(キンジ)は頭を抱えだす始末。そんな悠(キンジ)に古城(悠)はせめてもの慰めに肩に手を置いて声を掛けてやる。
「まぁそう気負わなくてもバグスターは他の連中に任せりゃいいし、元に戻るまでの間ジッとしてれば害は起こらんさ。」
古城(悠)の頭の中では下手人探しは自分と那月が見つけ出し、神太郎が元に戻る方法を見つけるまでの間二人を灰原家へ保護すれば良いと考えていた。
特に気を付けるべきは悠の体に入ったキンジの安否だ。この中で一番恨みを買っている人間は言わずもがな悠だ。武偵の経験で多少のトラブルなら乗り越えられるとしても流石に限度があるのは目に見えてる。
そんな考えを周りに悟られない様に振る舞いつつ落ち込む悠(キンジ)を慰める古城(悠)。取りあえず早い所家に辿り着かせる為に進ませようとした矢先だった。
ーゴオォォォォォォォォン!ー
「「「「ッ!?」」」」
最悪のケースは常に嘲笑いながら身構えている。
「重加速ッ…お前等!」
身に掛かるどんよりとした感覚、重加速に動きが鈍る四人に古城(悠)と悠(キンジ)の懐から飛び出てくるシフトカーとバイラルコア達。
四人の肩に乗り、体の自由が戻る。そしてヤツ等が姿を現した。
「アレは…!」
「ロイミュード…!!」
「こんな時に限って…!」
此方を標的ににじり寄って来るコブラ型、バッド型、スパイダー型の三体。低位の下級ロイミュードであるがこの状況で来られた今、想定を絶する位最悪の敵だ。
ここでの逃走の選択は間違いなく悪手だ。五体満足無事に逃げ切れる保証は無いし、ココは住宅街のど真ん中。逃げる最中の二次被害も小さいモノでは済まないだろう。
ならば取るべき選択肢は一つ。古城(悠)は肩に担いだバッグを降ろし、懐に手を…。
「ん?…あ、そっちか!」
「ておおおおい!?何やってんだお前は!?」
「何ってベルトだよベルト!!見りゃ分かんだろ!!」
古城(悠)は悠(キンジ)の服の中に手を入れて弄りだす光景に何処かアブない雰囲気がでそうだが、敵が眼前に迫ってるこの状況下のお蔭で誰もそこに触れなかった。
「灰原お前…オレの体で変身するのかよ!出来るのか!?」
「時間稼ぎに立ち回るだけだって!えーっとこの辺に……あった!って、コレは死ぬヤツと。」
「死ぬの!?」
懐から出て来たオーガギアをキンジ(古城)に渡し、再度懐を弄る。
「えーっとコレは!…ダメだ、感染する。」
「先輩そんな悠長にしていていいんですか!?もうそこまで敵来てますよ!?」
取り出したゲーマドライバーを雪菜に渡してまた懐に手を突っ込む古城(悠)。
「おぉぉい灰原ぁ!!早く探せ!!敵ももうそこだし、さっきから体触られてくすぐってえし!!!」
「落ち着けって!えぇっと確かこの辺には!…コレは…。」
「危ねぇ!」
三体のロイミュードが一斉に四人へ襲い掛かって来るのを、それぞれがバラバラになって避けていった。
そして悠(キンジ)から離れてしまった古城(悠)の手にあるのは、ロストドライバーと愛用のエターナルメモリだった。
周りを見渡して悠(キンジ)と大分離れ、ロイミュード達もそれぞれの目に付いた標的を狙うためバラけて動いていた。
「仕ッ方ねえ、やるだけやってみっか!」
<< ETERNAL >>
古城(悠)は即断し、ロストドライバーを身に着けガイアウィスパーを鳴らすと、ロイミュード達の視線が古城(悠)に集まる。
「変身ッ!」
<< ETERNAL >>
ドライバーへメモリを挿し、スロットを倒すと一陣の風に包まれて古城(悠)の姿が変わっていく。
「変身した…!」
「?…いや、なんか可笑しくね?」
「前に見たのと比べて、姿が…。」
傍らで見ていた三人が首を傾げながら古城(悠)の変身した仮面ライダーエターナルの姿に注目する。
身を纏っていたローブが外され、胸部と脚部に付いていたマキシマムスロットすらも外された状態。そして両手足の炎の色が青から赤い炎になっていた。
過去に見たエターナルと比べてみると見衰えるその姿を見て、弱体化したと言う印象が三人の目に写った。
「やっぱレッドフレアか!…まぁ変身出来ただけ儲けか…!」
自身の手足を見ながらそう呟くエターナルに三体のロイミュード達が一斉に襲い掛かって行った。
コブラ型の突き出す拳を後ろに受け流し、間髪入れずに向かって来るスパイダー型の前蹴りを腕でガードする。蹴りの威力に押され、壁際まで吹き飛ばされる。
「ッ──ウラッ!!」
続いて殴り掛かってきたバッド型大振りのフックにタイミングを合わせてカウンターを見事決める。
だがそこまでのダメージを感じられず、少しよろける程度だった。
そこからはロイミュード達の攻撃をひたすら受け流していくだけで精一杯のエターナル。これはキンジ(古城)や悠(キンジ)の目から見ても異様と見れる光景だった。
「灰原のヤツ、なんか調子悪くねえか?さっきから耐えてばっかだぞ。」
「やっぱ何時もと比べて弱くなっちまったから本調子じゃねえのか!?」
「……それもありますね。でも大本の理由はもっと別モノのようです。」
「? どういう事だよ姫柊。」
「率直に言って、暁先輩の体に入っている事が灰原先輩のブレーキになっているんです。」
「オレの!?でも吸血鬼の体はそこらの一般人と比べたら…!」
「腕力といった力量でしたら確かにそうですが、決定的に違うのは体のつくりです。
灰原先輩は長く戦って来たから戦闘行為に適応できる体つきになっている。でも暁先輩はそうでは無い。
例えて言うなら陸上選手が走り馴れた靴とそうでないので走っている様なものです。」
「ッ!もしかして、あんな風にみすぼらしくなっているのも、灰原じゃなくてオレの体で変身しているから!?」
「その可能性が非常に高いです。灰原先輩もそう思わせるような発言をしていたのを聞こえてましたし。」
「………ッ、だったら!」
雪菜から告げられるエターナルの弱体化に耳を傾けつつ、悠(キンジ)が懐に手を入れて取り出したマッハドライバー炎を腰に当てる。
ベルトが瞬時に巻かれる動作に一瞬面を喰らいながらも、意を決した目を戦ってるエターナルに向けていた。
「遠山、お前まさか…!」
「あぁそのまさかだよ。一人より二人だ、アイツを助ける!」
「無茶ですよ!確かに今の遠山先輩は灰原先輩だから仮面ライダーになれますけど、リスクが高すぎます!!」
「…自分でも分かってるよ。でも…このまま黙って見てろって言うのも無理があるって!!」
悠(キンジ)の目にはロイミュード達の光弾を浴びて火花を散らし倒れるエターナルの姿が。
これまではずっと助けられてきた。だから今度は自分が助ける番だと。
強い決意を胸に、それを感じ取った二人は止める言葉も掛けず前に出る悠(キンジ)の背中を見つめる。
「「………??」」
「……………なぁ。」
前に出て一向に次の動きが無い悠(キンジ)が気まずそうに首を回して来た。
「………このベルト、どう使えばいいか知ってるか?」
「「…………知らなかった のかよ/んですか !?」」
二人が同時に突っ込む中、エターナルはコブラ型と取っ組み合ってる最中だったので聞こえなかった。
「いやぁ、着ければどうにかなると思っていたんだが…アハハ。」
「何やってんだよ……えーっとこれ確かコレ使ってるの見た事がある!
確かココを上にあげてだな…。」
「バイクです!ここにバイクのミニカーを入れてました!」
「バイク!?えーっと何処だ?バイクの、バイクの…!」
懐から色々取り出して探してく中でロックシードやらガイアメモリなどがボロボロと地面に落ちて行きながらも、悠(キンジ)はようやく変身に必要なシグナルバイクを見つけ出した。
「あった!それでコレを…!」
<< Signal Bike! RIDER! >>
「へ、変身!」
<< CHASER! >>
少しぎこちない面持ちで発した言葉と共に姿が変わっていく悠(キンジ)。仮面ライダーチェイサーへと変わった自分を見てリアクションを隠せずにいられなかった。
「お、おおおぉぉ! な、なれた!!」
「遠山!!」
「お、おう!行って来る!!」
「グッ──ハァ…。」
三体同時の攻撃を受けて地面を転がるエターナル。不完全な形態、馴れない体でどうにか受け身は取っているが、そろそろ限界に近い。使って行く内にメモリの適合率がどんどん下がってきているのがその身を通して感じているからだ。
やはり他人の体で使うと適合率の高いメモリも性能を発揮できないのかと頭の隅で考えながらも、此方に近ずく
ロイミュード達を前に身構える。
(まだかよ、重加速が結構時間経ってんぞ…。)
何かを狙っているエターナル。だがそんな心情を余所に三体のロイミュードが同時に襲い掛かっていく。
「うおおおおぉぉぉッ!!!」
「ッ!?」
向かって行くロイミュード達の横から飛び掛かっていくチェイサー。先頭のバッド型を殴り飛ばしていく光景を前にエターナルは空いた口が塞がらない程絶句する。
「おま、遠山!?なんでお前変身してんだよ!?」
「助けに来たに決まってんだろ!!あとはオレに任せろぉぉ!!!」
「あ、オイ待て!!オイって!!」
「うおおおおッ!!」
エターナルの静止を聞かずロイミュードへ殴り掛かっていくチェイサー。
「オォラァッ──ってイ゛ィ!?」
スパイダー型に狙いを付け殴りに行く為に足に踏み込みを入れようとした時だった。
足の踏ん張りが効かず、前のめりになって行くチェイサーを半歩引いて躱すスパイダー型。足取りがおぼつかない足取りよろめくチェイサーの背中に蹴りを入れて転倒させられる。
「ッつう!…んのぉ!ってぇえ゛!?」
立ち上がって再度殴りに行くチェイサー。牽制のジャブ程度のパンチを繰り出す筈が、何故か大きく着き出す腕を掴まれ、エターナルの元へ投げられた。
「あだぁ!?イテテ、どういう事だよ?なんで…?」
「当たり前でしょうが!初っ端から高性能のライダーシステムをまともに扱えると思ってんのか!?ペーパードライバーにモンスターカー運転させるもんだぞ!」
「う、嘘だろぉ…。」
駆け寄るエターナルがチェイサーの性能に振り回されて碌に戦えない事を告げる中、そんな事情など知った事無いと言わんばかりにロイミュード達の猛攻は止まらなかった。
<< RIDER SLASH >>
<< MIGHTY CRITICAL FINISH! >>
「セァ!!」
「しゃんらぁー!!」
向かって来るロイミュード達の左右から突如として現れた二人のライダー。サソードとエグゼイドがそれぞれバッド型とスパイダー型を必殺技で斬り倒した。
「え…!?」
「ハァ…やっと来たよ。」
「残りは一体か…。」
「ちょ、待って、おえッ気持ち悪い…いきなり襟首掴まれたと思ったら何時の間にかココだし…。」
「ならば下がっていろヤツはオレが…ん?」
「何々どうした…んん?」
膝に手をやって口元を抑えるエグゼイドとサソードヤイバーを構えるサソードであったが、エターナルとチェイサーの二人のライダーを見て仮面の下で目が点となっていた。
「え…どういう事?何で灰原君が二人…。」
「コレは…。」
「オイお前等!あっち!!逃げてる!!」
二人の目が残ったコブラ型から外れた途端、好機と見たのかコブラ型は踵を返して逃げ出したが。
<< CRITICAL DEAD! >>
逃走を図るコブラ型の足が地面から生えた手によって捕まる。
地面から生える様に出て来たゾンビの幻影たちが一斉にコブラ型を掴みかかると、赤く点滅しだし爆発していった。
「うおッ!? な、なんだよアレ!?別の敵か!?」
「あー、まぁパッと見だったらそう思うわなぁあの決めワザ…。」
「待たせたなァ!諸君!!」
高らかに叫んだ声の主に全員の目がそちらにいった途端、誰もが目を半目にさせた。
ゲンムが腕組みをしながらチャリに跨っていた。
「………えっと。」
「ふぅ。少し距離があったからシャカスポで来たがギリギリ間に合ったようだ……ム!?どういう事だ!何故悠君が二人いる!?それにそのエターナルの姿は…!?」
「あーー、取りあえず話せば長くなるんだけど…。」
「あれれ~? なーんか、面白い事になってるね♪」
その一部始終を全ての元凶が見ていたのも彼等にとって一番の不幸だった。
「成程、そんな事が…にしてもねぇ~。」
「中身が入れ替わるって本当にあるんだ…。」
「………。」
先程の戦闘をどうにか終えて灰原家へ辿り着いた四人は、リビングにて神太郎達に事の説明を話し終えた後だった。
些かまだ理解が追い付かない神太郎達であるが、古城(悠)は神太郎に率直な質問を投げる。
「でだ、俺達に起きたこの現象、どうにか出来るか?」
「う~~~~~ん…………そりゃあ頼られたら出来る限りの事をするつもりだけど、私にとっては未体験の領域だからなぁ……時間はかかると思うが、どうにかやってみよう。」
「頼む。」
「「お願いします!」」
「任されたよ……でも参ったねえ。秋君が欠けている今、キミも少しとは言え外れるとなると…。」
「変身は出来ても足手纏いになっちまうか、ハァ……暁、せめてもうちょっと体鍛えてくれれば…。」
「オレの所為!?いやこれでもバスケとかやってた身なんだけど…。」
「馬鹿か貴様は。境遇がどうあれ戦いから無縁だった男にそんな期待するだけ無茶振りと言うヤツだろう。」
「ッ!?彩守君が、他人のフォローを…!?」
「コイツの言ってる事に反論を言ってやっただけだ。」
「へぇーへぇー分かっていやすよぉ、意味も無い八つ当たりだって、でもつけなきゃやってられんのですよぉ、なんせどこぞのヘナチョコ剣士様に?大方の仕事任せちゃったとなると不安でしょうがないんですよ、えぇ。」
「…誰が、ヘナチョコだと?」
「アレ?オタクとは言ってませんよ?もしかして自覚あり?この前は敵の眼前でバテちゃって最後まで寝てましたしねぇ~?」
「貴様……斬り殺す!」
「やってみろやァ!コッチはいい加減鬱憤溜まってしょうがねえんじゃあ!!」
「止めろぉぉ!!それオレの体何だぞ!?」
「灰原先輩抑えて!下手に感情的になると、眷獣が…!!」
「彩守君も刀を取り出さない!アナタはその前にバグスター倒したからバテて仕方なかったでしょうが!!」
「だったら……こいつの体を使い物に出来なくしてやる!!」
「オレェ!?ちょ、ちょっと待てって!!」
「安心しろ命は獲らん。手足の一本を綺麗に斬り落とすだけだ!」
「どちらにせよとんだとばっちり受ける羽目になってんじゃねーか!!」
「やれるもんならやってみろやァ!!その前にこの吸血鬼パワーでブッ飛ばす!!」
「目が赤く…!?もしかして自分の意志で制御を!?」
「なんかやってみたら出来た!!」
「うわー、流石悠君。オカルトの力を初っ端からモノにしちゃったよ。」
「呑気に見てないで止めてくださいよ!!あーーッもう!!ラ・フォリアさんは何処!?もうこれ以上は抑えらんないんだけど!!!」
刀に手を掛ける蓮司を羽交い締めで抑えるハルナは、キンジ(古城)と雪菜が前後から必死に抑えてる古城(悠)を止められるのはもうラ・フォリア位しかいないと叫んだ途端、神太郎が思い出した様に”あ”と声を上げた。
「そうだった、彼女たち今仮装の衣装を上で選んでる最中だったっけ。」
「仮装!?何の!?」
「ハロウィンだよ。ホラ私達いつもギスギスした日々過ごしてるじゃん?だからこういった年間行事位は楽しんじゃおうかな!って。」
「とにかく上に居るのね!?遠山君!!上に行ってラ・フォリアさん呼んできて!!」
「わ、分かった!!」
「アラ?なんか騒がしいと思ったら、みんな帰って来てたんですか?」
「ッ!ラ・フォリアさん丁度イイとこ、に…。」
リビングの入り口から聞こえた声にハルナは救世主でも来たかのようにを輝かせて振り返った。が、彼女の纏っている衣装に言葉が失った。
「…えと、その格好は?」
「コレですか?狼男ならぬ狼女です!ワン♪」
頭部に髪と同じ色の犬耳カチューシャと手足には毛皮で来た手袋とブーツ。そこまでは良かったが全員の目を集めたのは纏っている服、否、ビキニタイプの水着に所々毛皮が着いた露出が多い衣装は仮装と言うより、コスプレに近かった。
来ている本人はコレといった羞恥心など見せ付けずノリノリでポーズなど決める中、声を掛けようとした矢先、秋程まで熱くなっていた古城(悠)が打って変わって大人しく顔を背けて何やら鼻を抑えていた。
「?…灰原、お前それ…!」
「……ちょ、アレ反則。」
ラ・フォリアの格好に動機が早くなりながらも、いち早く異変に気付いたキンジ(古城)は、古城(悠)から流れる様に出ている鼻血を見て、自身も大いに困っている吸血衝動に襲われているのだと知った。
「えー何々?悠達帰って来てんの?おかえりー!」
「ッ!せ、川内…アンタも、それ…。」
「ん?あぁコレ?どう似合う?キョンシーだよ!!」
「…違う!キョンシーそんなエロくない!!」
「分かる!その気持ちわかるぞ灰原!!」
今日偶々来ていた川内が披露した格好が自身の制服と同じ配色のチャイナ服と前に札を貼ってある帽子を被っていた。ただし、これでもかと背中と短いスカートにスリットが入っており、おまけに胸元が露出している。
キョンシーらしく両手を前に出して跳ねている所為で、めくれるスカートと僅かに揺れる胸を見て、鼻血の勢いが増す古城(悠)と吸血衝動とは違う胸から込み上げて来る何かに胸を抑えるキンジ(古城)。そんな彼等に、更なる追い討ちが。
「姉さん!私の制服何処にやったんですか!?…ッ、ゆ、悠さん!?ッ!!み、見ないでください!!」
「……。」
「は、灰原ーーーッ!?」
羞恥心で顔を赤くした神通が、バニーガールの衣装で来た途端、古城(悠)は静かに倒れた。
出るトコは出て引き締まっている神通の体にピッタリ貼りつく胸元が大きく開いたスーツに足の網タイツがもう反則並みの威力に最後の壁が崩壊した瞬間だった。
前倒れで頭部を中心に血が広がる光景は一種の殺人事件を思わせた。即座に悠(キンジ)が安否を確認する。
「し、しっかりしろ灰原ぁ!!」
「…あ……暁……お前、苦、労してん、だな……バカにして、ゴメン…。」
「灰原ーーーッ!?」
「な、なんか大変な事になってますよ先輩!……? 先輩?」
「…フッ、大丈夫だよ雪菜。あの程度で死ぬほどオレの体はヤワでは無いし、アイツもこんな形では死なないさ。」
「え…雪、菜?」
「ッ!?!?!? あ、暁、まさかお前ッ、ヒステリアモードに…!?」
神通の反則級ボディにやられたのは一人では無かった。キンジの体質である、性的興奮で覚醒するヒステリアスモードが中身が変わった現状で起こったのだ。
「どうしたんだい?もしかして、名前で呼ばれるの、嫌だったかい?」
「ッ!い、いえそんな事!!ただその、びっくりしちゃって…。」
「フフ、慌てる雪菜はカワイイな。見ていて本当に飽きないよ。」
「ッッッッ!!!!」
「………ガハッ! オレ、普段からあんなキザ過ぎるセリフ…!こうして見ると、精神的にくるものが…!」
「ん?顔が凄く赤いぞ?具合でも悪くなったかな、お姫さま?」
「お、お姫…!!」
「ガハァッ!!も、もう止めてェ!!」
「………何か、さっきより場を収め辛いんですけど。」
「………。」
ちなみに神太郎はラ・フォリア達に悠達の中身が入れ替わったのを説明していた。
『───許せぬ。』
陽が落ち、空が闇に染まった時刻。
誰も居ないビルの中で影に包まれながら静かな怒りを口にする異形。
クジラと思わせるようなフォルムに神官を思わせる杖を手に、僅かに女性と思われる体つきとは反面の低い男の声。大きく裂けた口から発せられる言葉に、周囲の空気が殺伐としたモノへ変えられる。
『偽りの天使、偽りの神……許すまじ。人が人である為に、不要な存在!』
傍らに倒れた制服姿のツインテールの少女を浮かせたソレは、瞬間移動によってその場から姿を消した。
その様子をアベルと、怪人態となったグレムリンが見届けると、二人は愉悦な笑みを浮かべた。
やっぱ主題歌がな流れてるシーンはイイですね!特にクリスマと同じ演出の必殺技シーンだったから心が踊りました!!
やっぱたっくんは変わらないなぁ、不器用なトコも猫舌なトコも、あと草加が今回仲間思いでちょっと新鮮味を感じましたね。