その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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お待たせしました最新話です。


三週という長い時間も合って、結構な文字数になっています。あと、展開が急すぎる場面もありますので前以ってご了承を。



決闘

 

 

 

BABELとの決戦日。時刻は深夜であと数時間経てば約束の時間となる夜明けが迫ってる中、悠はラボに一人残って作業していた。

 

他のメンバーは休息を取る為寝ており、神太郎もやっとの思いで新ガシャットを完成させた後、文字通り命が燃え尽きてライフが一つ減った。流石に五日間不眠不休で行った開発が無理をさせ過ぎたらしい。

 

だがその中で悠だけはラボに残って一人端末を前にキーボードを打っていた。刻一刻と時間が進んでく中キーボードを打つ音だけがラボに響く。

 

「……フゥ。」

 

一段落終えたのかキーボードから手を離し背筋を伸ばした。ポキポキと背骨が鳴らせ時計を見ると、夜明けまであと二時間。残りも済ませようと作業に取り掛かる悠の前に、湯気が立ち昇るカップが差し出された。

 

「まだ寝て無かったのか。」

 

「ソレ、こっちの台詞ですよ。いいんですか休まなくて。」

 

少し呆れた物言いで悠にコーヒーを渡すラ・フォリア。悠は受け取ったカップに口をつけながら隣にデスクに奇麗に並べてあるドライバーに目を向けた後また手を動かす。自分のだけで無く、秋やハルナ、蓮司のも含まれている。

 

「ドライバーの調整が出来るのは俺だけなんでな。アホ上司はガシャット仕上げた直後に爆睡だし。クリムは決戦に必要なデータの整理中で手が離さないから。」

 

「でも少しは休んだ方が…。」

 

「逆に何かしてないと落ち着かないんだよ。アンタを抱いても寝付けないと思う。

だからいっその事起きてる。徹夜は慣れてるし。」

 

「…流石の悠でも緊張はするんですね。」

 

「緊張?違うね、興奮してる。早く時間くればいいなって思ってるよ、えぇ本当に…。

……。」

 

「?…悠?」

 

何を思ったのか、動いていた手がピタリと止まって暫く空白の間が空いた後、悠は思い詰めた表情をしながら立ち上がり、ラ・フォリアと目線を合わせた。

 

「…あー……奴等との決着には当然勝つつもりだ。誰一人も、死なせず…楽勝にね。その為に色々考えた……でも、それでも何が起こるか分からない。最悪の事態が、どんな形で起こるか…。」

 

「……。」

 

「…こんな事を言うのは士気が下がるから言わない方が良いと思ったが……それでも万が一を考えたらやっぱ言っとけば良かったと後悔する前に…うん…ラ・フォリアだけには言っておきたい、オレは…ッ!」

 

「…それ以上は言わないで。」

 

ラ・フォリアの指が思いを告げようとした悠の口に触れて、その先の言葉が出ないよう口を閉ざした。

 

BABELとの決戦はこれまで以上に無い接戦になる事が誰でも予想できる。だから皆入念に勝つための準備をしてきた。だがそれでも全員が生き延びて勝つ保障は何処にも無い。

それを分かった上で悠は色々世話になってるラ・フォリアに自身の胸に在る思いを告げようとした。だが彼女は全て知った上で口を閉ざさせたのだ。

 

「それ以上先の言葉は明日、皆で帰って来て、ご飯食べて一段落着いたら聞かせて下さい。

こんな形で聞かされるの、真っ平御免ですから。」

 

「…大分無茶言ってくれるなぁ…どうかなぁ、正直言って不安で一杯。」

 

「随分と弱気ですね。」

 

「間近に迫って来れば、つい弱音の一つ吐きたくなるよ…。」

 

「…だったら、塞がないといけませんね。」

 

隠していた不安を漏らす悠の口をラ・フォリアは唇を合わせ悠に抱き着く。

僅かに離れた時口から聞こえる吐息と伝わって来る彼女の感触と温もりが心地よく感じた。胸中にある不安を少しでも紛らわすよう、この一時に自然と身を委ねた。

 

「…気分は晴れましたか?」

 

「多少ね…もうちょっと欲しいかな。」

 

「構いませんけど。整備の方、しなくていいんですか?」

 

「残り本気出せば30分で終わる。だから…あと80分は自由時間に出来るな。」

 

「そう…でしたら…イケるとこまで、いってみます?」

 

「それは………良いアイデア。ンンッ──。」

 

ラ・フォリアの頬に手を添えるとゆっくりと顔を近づけキスをする。唇が触れるだけでなく舌も混ざり合い、深く繋がる水音が聞こえる。

抱き合いながら唇同士を激しく二人。ラ・フォリアを何も置いていないデスクの上に出来るだけ優しく押し倒す。一度口を離して蕩けた瞳のラ・フォリアの表情に劣情が搔き立てられながら手を添えて白く透き通る肌に指を添わせる。

 

「今更だけど、ベッドじゃなくていいのかよ。」

 

「えぇ、平気です。

これはこれで忘れられない体験になるますし…その代わり、優しくシテくださいね?」

 

「そう、それなら熱く且つソフトに”ガシャン!”……。」

 

悠の手がラ・フォリアの頬から下に行って彼女の服に手を掛けた所で物音が鳴った。

 

 

 

 

「あ…あの、えっとぉ…。」

 

「………。」

 

「……あら、川内じゃないですか。どうしたんですかこんな時間に?」

 

固まった表情の悠と対象に、中断されたにも関わらず笑顔を振りまくラ・フォリアの視線の先には、夜食を載せたお盆を持った川内が顔を真っ赤に慌てふためいていた。

 

「ち、違うんだよ!!悠が寝ないで作業してるって早霜から聞いたから差し入れ持って行こうとしただけで!!二人が良い雰囲気になって夜戦しようとする所を覗き見ようとかそんなん思って無いからね!!」

 

「全部言ってるしダダ洩れだし…ていうか普段オープンなクセにいざという時初心かよ…。」

 

「まぁそれはそれで可愛らしいじゃないですか…それはそうと川内、もし興味おありでしたら、このまま三人でシテみますか?」

 

「えぇッ!?ラ、ラ・フォリアと一緒に……でも私一緒にするなら神通と、って決めて………あ、でもなんかそれはそれですっごく興奮しそう…。」

 

「だ、そうですよ?」

 

 

「…………………………いや、やっぱ、今は止しとく…うん。」

 

「…今もの凄く間が空きましたね?」

 

顔に手を当て、勢いで色々と熱くなった自分を収めようとする悠と、少し残念そうな表情を浮かべるラ・フォリアであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして約束の夜明けまで残り30分。

暗い空にうっすらと白みが見える時間帯に、四台のマシンが走っていた。

 

先頭にディケイダーに跨る悠、その後ろからガタックエクステンダーに乗ってる秋とハルナ。サクラハリケーンに乗る蓮司とウラナ。そして神太郎はネクストライドロンに乗って約束の場所へ向かっていたのだ。

 

太陽が空に昇ったと同時に目的地の広場に着いた六人。真ん中に丸型の噴水が置かれてる広場にはまだ誰もいなかった。

 

 

「居ない…もしかして遅刻、じゃないわよね。」

 

「朝早いもんね~、ふぁ~~。」

 

「それか、罠、というのもあり得るな…。」

 

 

「ご心配なく。遅刻も罠もございませんよ。」

 

 

広場に誰も居ない事に罠を警戒した蓮司であったが、それを否定するように噴水の前に魔方陣が現れ、そこから史汪と黒咲が姿を現した。

 

「おはようございます。仮面ライダーの諸君。」

 

「おたくら、何時からスタンバってたんだよ?」

 

「待ち合わせは10分前に着くのがマナーよクワガタボウヤ。ギリギリに来たからものだからコッチが遅刻を疑っちゃったわ。」

 

「ちょっと出る前に、ねぇ…。」

 

「…オイ、なんで俺を見るんだよ。」

 

「悠兄さんが時間一杯までイチャイチャタイムしてっからでしょ。」

 

「そんな長い時間掛けて無い。」

 

「一人一人相手にすればそりゃ時間かかるでしょでしょ、7人も。」

 

「あんな朝早く家の前に居るなんて誰が想像したよ。

…つかお前だって速吸に呼ばれて離れてたけど何してたんだよ?」

 

「え…あーいやそのー…。」

 

「ギュッと抱き着いて、ほっぺにチューしてたよ。」

 

「ちょ!ウラナ、お前見てたの!?」

 

「へぇー…どうだった?」

 

「……夢のひと時でした。」

 

「ねぇレンジ!アタシ達もチューする?」

 

「ぶッ!?……ごほん!いいかウラナ。一人前の女性になりたくば、慎みという言葉を覚えろ…オレはその方が好みだ。」

 

「?…つつしみ?って分かんないけど、それで好きになってくれるなら分かった!」

 

「やだ、この子純粋すぎる…。私から生まれたとか自分でも信じられない。」

 

「いやー、こういう時もマイペースで頼もしいんだがブレないんだが…まぁ私は好きだけど。」

 

 

「ハッハッハッハ。仲が宜しくて羨ましいですねぇ…おや?アナタは…。」

 

「ん?…ッ!ヤダなに、なんでアンタが…。」

 

「ん?私かい?あぁそうか、まぁこの見た目だしね。

人違いさ、キミ達をこの世界に送った神とはね。」

 

「そう、ですか…確かに髪と言いその雰囲気は別人そのものですね…いやはや、失礼しました。」

 

「そういやそっちは一人…いや一羽足りてねえなぁ。鳥頭だから待ち合わせ時間忘れられたか?」

 

「そうでも無いわよ。むしろ今日のに関して一番やる気出してたのアイツだし……あぁ。来たわね。」

 

黒咲が雪の様に降る金色の羽を見て上を見上げると、眩い光を発しながらゆっくりと空から降りて来るモノが。噴水の石像の上に降り立ったジャッジこと仮面ライダーオーディンは両手を広げて高々と語りだす。

 

「人間。遂に貴様への審判を下す時がやって来た。今度という今度は、逃れられんぞ。」

 

「あー、そういやすっかり忘れてたわ。アンタ見た目の割りに印象薄かったから。」

 

「プフゥーッ!!www」

 

「おー、煽る煽る。」

 

「貴様…ッ!下等な分際で何処までもコケにしおって!」

 

 

「黙って欲しいなら閉ざしてみろよ…その前に調理してやる。」

 

<< FIRE! ALL CORE/ENGINE! >>

 

 

「お喋りはココまでですか。」

 

<< DRIVER・ON  NOW! >>

<< SHAVADUVI TOUCH HENSHIN~♪ SHAVADUVI TOUCH HENSHIN~♪ >>

 

「フゥーー…ヌンッ!!」

 

 

「皆、言わずとも覚悟は出来てるね?…行くぞ!」

 

<< MIGHTY ACTION X >>

<< DANGEROUS ZOMBIE >>

 

 

「当然だ。」

 

<< メロン >>

<< メロンエナジー >>

 

「特訓の成果見せてやるぜ!!」

 

<< SignalBike/ShiftCar!──Rider! >>

 

 

「ハルナ!」

 

「えぇ!行きましょう!!」

 

<< MAXIMUM MIGHTY X >>

 

<< デュアル ガッシャット! >>

 

 

静かな早朝の広場にそれぞれのドライバーから流れる待機音が鳴り響いた。広場は直ぐ憩いの場から一転し、意地と信念を競う戦いの場へと変わったのだ。

 

 

「グレートX-0──」

 

「Let,s!──」

 

 

「「「「変身ッ──!」」」」

 

「「MAX大変身ッ!──」」

 

 

<< DRIVEtypeFUTURE! >>

 

<< メロンアームズ! 天・下・御・免!──MIX! >>

<< ジンバーメロン! ハハァ! >>

 

<< DEAD HEAT! >>

 

<< ──MIGHTY ACTION──X──アガッチャ!>>

<< ──DANGEROUS ZOMBIE! >>

 

<< MAXIMUM POWER!──X! >>

 

<< ──PERFECT KNOCK OUT! >>

 

 

並び立つ六人の戦士。ダークドライブタイプフューチャー、斬月ジンバーメロン、デッドヒートマッハ、ゲンムゾンビゲーマー、エグゼイドマキシマムゲーマー、パラドクスパーフェクトノックアウトゲーマー。

 

 

「変ッ身!」

 

「変身ッ!」

 

<< CHANGE NOW! >>

 

<< CHANGE BEETLE >>

 

 

六人の前に立ちはだかる金色の侵略者達。ソーサラー、コーカサス、そしてオーディン。

 

 

エグゼイドはホルダーのスイッチを押して、街中の広場から遺跡のある草原地帯へステージを変えると各々武器を持った。何時でも前へ出れる為に。

 

 

<< CONNECT NOW! >>

 

「では始めるとしましょう!我等BABELとキミ達の最終決戦を!!」

 

「さぁ、楽しませてもらうわよボウヤ達!!」

 

「我が審判を、受けよ!!」

 

 

 

「…行くぞテメエ等ぁ!!」

 

 

「参るッ!」

 

「マッハで行くぜぇぇぇぇッ!!」

 

「ヌンンンァアアァァァァッ!!!」

 

「ハァァァァアアッ!!」

 

「イヤァアアアアッ!!」

 

 

BABELとの最終決戦の火蓋が、今切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠の考案した作戦に従いそれぞれが分担して当たっていく中で、ソーサラーへと真っ先に向かって行ったのはゲンムとマッハの二人。

 

<< Burst! キュウニ・DEAD HEAT! >>

 

「トバしてくぜぇぇぇぇぇえッ!!!」

 

マッハは先陣を切るが如く、ソーサラーを相手に最初からタイヤをバーストした状態でソーサラーへと向かっていった。

 

自身の正面から向かって来るマッハに対し、ソーサラーは防御魔法であるリフレクトを使った方がマッハの出してるスピードも合わさったカウンターを出来ると思い、右手の中指に嵌めたコモンリングを翳そうとした瞬間だった。

ベルトへ向けた右手が離されるように弾かれ、左頬辺りに強い衝撃が奔った。

 

「ッ!?」

 

一瞬の出来事に脳が揺れて思考が鈍くなってる今でも困惑するソーサラーだが、その疑問は直ぐに解けた。

 

右手を振り抜いたマッハが、自身の目の前に居た。ただ単純に、最もシンプルに、加速してソーサラーの反応を追い越したのだ。

 

「速…ッ!」

 

「ウラウラウラウラウラウラァッ!!」

 

高熱の蒸気に当てられながらマッハの繰り出すラッシュを長斧であるディースハルバードを盾変わりに防ぐソーサラー。

そんなソーサラーの背後に凶刃が振るわれようとしていた。

 

「ハァーーーハァッ!!取ったぁぁァァァッ!!!」

 

「ッ!?──クッ!!」

 

「うおッ!!」

 

ソーサラーは背後からソードモードのブレイカーを振るうゲンムの存在に気付くと、ハルバードを自分ごと独楽の様に勢いよく回り、挟み撃ちにしようとしたマッハとゲンムをハルバードで薙ぎ払う。

 

「グハァッ!!──ォォ…!」」

 

「背後からの奇襲で声を出すとは、浅はかにも程がありますね!」

 

<< LIGHTNING NOW! >>

 

「ッ!──ギョァアアアアアアッ!!!……カ…」

 

<< GAME OVER >>

 

ソーサラーの放った雷光はゲンムを瞬く間に包み、その体を徐々に焼かれて爆散していった。

 

「おやおや、もう一人脱落ですか…呆気ない。」

 

「…ハハ。そいつはどうかなぁ?」

 

「? 仲間が死んだというのに何を言って…。」

 

自身がゲンムを消滅したに関わらず、感情的どころか動揺すら見られないマッハの平然としている態度に首を傾げるソーサラーの背後に、紫の土管が現れた。

 

「ブゥゥゥゥゥゥゥンッ!!」

 

「ッ!?──何ですって!?」

 

「ハイ隙ありィ!」

 

<< シューター! >>

 

「グァァッ!!」

 

背後の土管から奇抜に出て来たゲンムに目を奪われたソーサラーの背中に光弾を撃ち込むマッハ。それに続くように、ゲンムはハンマーモードのブレイカーを落下と同時にソーサラーに叩き付けた。

 

「グァァァッ!!」

 

「ダァァァッハッハッハ!!!ん残りライフ、96ゥ!」

 

「まさか、蘇生する手段をお持ちとは…!」

 

「ビックリした?でもゆっくり驚くヒマをやる気はねぇぜ!!」

 

<< Burst! キュウニ・DEAD HEAT! >>

 

「不正な転生者ァ!!貴様は神であるこの私の才能でェ、駆除してくれるゥッ!!!」

 

<< 高速化! >>

 

「ッ!──やはり一筋縄でいかない相手ですね!」

 

<< EXPLOSION NOW! >>

 

 

「オゥラァァァァッ!!」

 

「シェァアアァァッ!!」

 

ソーサラーの放つ爆撃並みの攻撃を、マッハとゲンムはペースを緩める事無く、寸で躱しながらただ一心に走り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イエェァァァァァァッ!!!」

 

「ハアァァッ!!」

 

気迫を込めたコーカサスの精錬された拳と、重量級であるエグゼイドのパワフルな一撃が衝突し、大きく鈍い音と共に空気が揺れる。

 

合わさった拳を通じ、コーカサスは仮面の下で目を見開いていた。見た目は以前と比べたら天と地の差程に変わったが、コーカサスが驚いたのはもっと別の面。拳から伝わる気迫と、仮面の下で此方を見ているであろう眼差しが以前と比べ別格、別人と言って良いほどの変わりようだ。

 

(この子、一体どんな鍛錬を…!)

 

 

「トォッ!!」

 

巨体のエグゼイドの背後から飛び出て来たパラドクス、振るわれるパラブレイガンの一撃を横に跳んで躱すコーカサスに追撃を仕掛ける。

 

<< 1・2・3・4! >>

 

「テェエイッ!!」

 

「ッ!──ッ!?」

 

<< 4連打! >>

 

コーカサスは袈裟懸けに振るわれたパラブレイガンの一振りを、斧の刃に触れて受け流そうと触れた瞬間、四度強い衝撃が左手を襲い、強烈な痺れを起こす。

 

(今の…!ボタンを押した回数分の攻撃を繰り出せるって事?)

 

コーカサスがパラブレイガンの能力に気を取られてる間に、エグゼイドとパラドクスは同時にコーカサスへと仕掛けに行った。

 

「タァッ!!」

 

「ッ!──カッ!」

 

先程コーカサスに印象を植え付けたパラドクスが袈裟懸け、横薙ぎ、切り返し等の連撃を繰り出し、その背後からエグゼイドがガシャットに着いてるボタンを押すと、マキシマムゲーマーから勢いよく飛び出し、パラドクスとコーカサスを超えて背後に立った。

 

「ッ!?」

 

「「ハァッ!!」」

 

まさかの着脱自在に驚くコーカサスに、エグゼイドはキースラッシャーを、パラドクスはパラブレイガンで前後挟み撃ちで振るう。

だがそれしきの動揺でコーカサスの芯を完全に乱す事は無かった。

 

「ァイィイッヤァッ!!」

 

コーカサスは迫る剣と斧の刃に対し、即座に回し蹴りで弾き飛ばし。

 

「カァッ!!」

 

「ガハッ…!?」

 

「ブッ…!!」

 

腰を落とし、左右に居るエグゼイドとパラドクスの鳩尾に掌底を入れて下がらせる。

 

すると無人状態のマキシマムゲーマーが自立行動でコーカサスに殴り掛かって行くが…。

 

「フッ──ムゥゥゥゥンッ!!」

 

コーカサスは迫る巨拳を掴み、マキシマムゲーマーの怪力を上手く利用しての一本背負いで、重量256.0kgを軽々と宙へ投げた。

 

「ゲホッ…ウッソ!?」

 

「なんの!」

 

エグゼイドは宙を飛ぶマキシマムゲーマーに向かって跳び、空中でタイミングを見計らってゲーマーを着込むように合体すると胸の顔の目からコーカサスに向けてビームを発射。

コーカサスは地面を蹴って回避し、着地したエグゼイドと横に並ぶパラドクスと相対した。

 

「やっぱ強いね!全然攻撃が当たってない!!」

 

「えぇ、手強いわね…でも勝負はこれから!気合入れていくわよウラナ!」

 

「うん!」

 

 

「…フッ、基本もなっちゃいないひよこちゃん達が随分様変わりしたわね…。

イイわ、それでこそ腕が鳴るってものよ!!」

 

足を踏み出し拳を突き出して構えるコーカサスの目に捕らえているのは、倒すべき敵として認めた強者であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして残るオーディンを相手にするダークドライブと斬月は…。

 

 

<悠!>

 

「あぁ!──そこォッ!」

 

「ッ!?──ガァッ!!」

 

「セェアッ!!」

 

「ッ!」

 

瞬間移動を駆使し相手の死角を突いて攻めて来るオーディンに対し、ダークドライブはタイプフューチャーの能力である未来予知でオーディンの現れる位置を割り出し、出現と同時にブレードガンナーの斬撃を見舞わす。

それに続き斬月もオーディンへ斬り掛かりに行くが、オーディンは瞬間移動で斬月の攻撃を避ける。

 

防ぐ為に咄嗟に前に出した腕にくっきりと斬られた箇所が付けられたオーディンは憤慨しながらも、即座にオーディンは次の一手に動いた。

 

先程から殺したい程憎いダークドライブを狙って行くもどの攻撃も見透かされた様に先を読まれカウンターを決められた。だがら先に斬月を仕留め、仲間の死で動揺している所を狙おうと斬月の死角へと瞬間移動をしたオーディンが手刀を叩き込もうと腕を振るう。

 

 

「ツ──剣バカ五時!」

 

「ハァッ!!」

 

 

「ガァッ!?──な、何ッ!?」

 

ダークドライブが叫んだ直後、斬月は無双セイバーをオーディンの居る方へ振るい、オーディンの胸部に斬撃を見舞わせた。

 

胸を抑えて二人から距離を空けるオーディン。ダークドライブが自身の現れる位置を斬月に教えてもタイミング的には確実にこちらの攻撃が早く届く筈だった。なのに斬月の振るった一撃が自分より早く届いた。

 

「教えてくれてありがとう、くらい言えないのか?」

 

「無い。言わずとも分かっていたのでな。」

 

「嘘つけぇ。」

 

「嘘ではない。」

 

<二人共、無駄話は程々にしたまえよ。>

 

 

自分の動きが読めるダークドライブが唯一の障害だと思っていたオーディンであったが、位置さえ知れれば即座に的確な剣戟を魅せる斬月もオーディンにとって大きな脅威となりうる存在であった。

 

 

「ッ…!

認めぬ、認めぬぞ!!貴様等如き下等な存在に!この我が追い詰められるなど!!」

 

オーディンは手を二人に翳すと、二人の周りに金色の羽が舞い散る。

 

金の羽はオーディンにとって攻撃の一つ。触れると爆発する羽の特性を前以って知ってる二人はローリングで回避。

オーディンは攻め手を変え、間合いに入って直接攻撃するのでなく、ダークドライブと斬月の攻撃が届かない所での遠距離戦に手段に変えたのだ。

 

避けた先に回り込まれ金の羽を放つオーディン。すると斬月がダークドライブの前に立つと、ジンバーアームズから網目状の電磁バリアが半円状に囲う様に張られ、金の羽の爆発から二人を守った。

 

「お前こそ”ありがとう”の言葉は無いのか?」

 

「いんや、お前に頼らなくてもクリムがどうにかしてくれてたさ。」

 

<私かい?>

 

「今俺とクリムは一心同体だろう?ならクリムの手柄は俺の手柄。」

 

「減らず口を。それで、こういった場合の対処は考えてないのか!?」

 

「当然だろ、こういう時は新入りの出番だ…クリム!」

 

<彼なら既に呼んでいるよ。>

 

 

「死ね!死骸を曝せ!!我の下す審判で、全て消え果るのだ!!──グァァッ!?…ッ、誰だ!!」

 

瞬間移動を繰り返し羽を散らすオーディンの背中が何者かに撃たれる。

躍起になって下手人を探すオーディンの耳に、重低音のクラクションが近づきながら向かって来る。

 

「ッ、貴様か!!」

 

オーディンは音のする方角へ金の羽をまき散らし巨大な爆発を起こす。炎の中から無傷の状態で出て来た新たに開発した青いトレーラー型新武器、トレーラー砲が銃弾を発射。オーディンは瞬間移動で回避してる間に、トレーラー砲はダークドライブの元まで辿り着いた。

 

「それが言ってた切り札か?」

 

「あぁ!見てろよ…。」

 

ダークドライブはやって来たトレーラー砲を手に取ると運転席部を下にスライドさせると銃形態へ。銃口となっているコンテナの上部にシフトネクストを挿し込んだ。

 

<< NEXT砲! >>

 

「バリアしまえ剣バカ!」

 

「ッ!」

 

斬月が身を守っているバリアを解くと、ダークドライブは未来予知でオーディンが現れる位置を補足し、トレーラー砲から高密度のエネルギー弾を発射。

 

「ッ!? クゥッ!!──グアァァッ!?」

 

オーディンが現れた先にあったのは、こちらに向かってくるトレーラー砲からの砲撃。迎撃に金の羽を放ち砲撃を無力化しようとしたオーディンだったが、砲撃は真っ直ぐと金の羽の妨害を突き破りターゲットであるオーディンに命中した。

 

「まだまだァ!」

 

「ッ!──ガッ!?…な、何故だァ…!?」

 

放たれた砲撃を避ける為瞬間移動で砲撃から逃れたオーディンであったが、砲撃の弾道が曲がり、次にオーディンが姿を見せる位置へ自動的に向かっていく追尾型は、姿を見せたオーディンの背中に直撃した。

 

「ハッ!どーよ俺の創ったコイツの性能!完璧だね!」

 

「武器自慢は終わってからにしろ!──ハァ!!」

 

「ッ!オノレェ!!」

 

<< SWORD VENT >>

 

最早瞬間移動は通用しないと悟ったオーディンは、ゴルドセイバーを召喚し肉薄してくる斬月を迎え撃とうと構える。

 

「アァァアアアアァァァッ!!!」

 

「───セェアアッ!!」

 

炎と風を纏わせた金の双剣を振るうオーディンに対し、斬月はオーディンが振るうよりも早く間合いに入り、すれ違い様に胴に一閃。

 

「ングゥァ…ッ!──ウオォォッ!!」

 

互いに足を止め背中を向けるなか、オーディンは斬られた箇所を抑えながらも振り向いてゴルドセイバーを斬月へ振り下ろそうとするも、斬月は無双セイバーでゴルドセイバーを弾き返し、オーディンの手から離れ宙を舞った。

 

「ッ!!」

 

「なってない剣だ──己の能力で驕った結果か!」

 

「グォォァァァァッ!!」

 

斬月は無双セイバーでオーディンの肩口から袈裟懸け、切り上げのコンボを決め大ダメージを与える。もう一本のゴルドセイバーが手から離れ体中スパークを発するオーディンは、やがて爆散して消えた。

 

「フン…思ってた以上に歯応えの無い。」

 

「そりゃそうだ。所詮人形を使ってしか戦えないヤツなんだからな。」

 

<二人共!12時の方角、正面だ!>

 

 

 

「ゥゥゥ…ッ!!──ヌァアアァアアーーッッ!!!

認めぬッ!!断じて認めぬッ!!下等な人間如き!!地を這うしか能の無い下等生物如きにッ、この我がァァァアアッ!!」

 

キズ一つ無い状態で再度姿を見せたオーディンは、これ程までに無い憤怒の感情を露わにし叫んだ。

明確な殺気を向けられるダークドライブと斬月だが、どこ吹く風の如く流し、オーディンの冷静を欠く為に発破をかける。

 

オーディンの本体を誘い、確実に倒す為の作戦に則って。

 

 

「人間如き、ねぇ。俺から言わせてみれば、お前如き、ってカンジなんだけどねぇ?実際弱いし、オタク。」

 

「なッ…なにィ…!?」

 

「井の中の蛙…いや、貴様の場合、檻の中の小鳥だな。

小さな檻の中を、自分だけの世界だと思っている…憐れな雛鳥だな。」

 

「へぇ、お前もそういう事言えるんだ。」

 

 

「雛鳥、だと…?この、我が……このッ!大空を自在に駆けッ!下々の遥か上を取ったこの我がァァァァァァァッ!!!」

 

斬月の放った挑発が効いたのか、完全に冷静を欠いたオーディンはゴルドバイザーを手に取り、デッキからカードを、全てを無に帰す最終攻撃のカードを引き抜いた。

 

<< FINAL VENT >>

 

「消えろォ!我の前から全てぇぇエエッ!!」

 

 

 

「ッ!──来たッ!」

 

<< COME ON! >>

<< HUNTER!/DOCTOR!/BRAVER! >>

 

<< タイヤ・カキマゼール! >>

 

<< ピーポー!・SAVER! >>

 

「しくじんなよ!チャンスはこの一度きりだ!!」

 

「貴様こそ、狙いを外したらただでは済まさんぞ!!」

 

ダークドライブはジャスティスハンター、マッドドクター、ファイヤーブレイバーの三つのタイヤを合わせたピーポーセイバーにすると、ブレイバーの能力である[ラダーエキスパンダー]によるパワーアームが斬月を掴み持ち上げ、契約モンスター、ゴルドフェニックスと合体したオーディンに狙いを定めた。

それと同時にダークドライブはブレスに挿してるシフトフューチャーを外すと再度起動ボタンを押した。

 

<< FIRE! ALL CORE/ENGINE! >>

 

<< ヒッサーツ!──FULL THROTTLE! >>

 

ダークドライブは起動させた状態のシフトフューチャーをトレーラー砲のコンテナに装填。すると銃口にエネルギーが充填される。

 

 

「死の審判を受けよォォォォォォォッ!!!」

 

ゴルドフェニックスと合体した状態で体当たりをするオーディンの必殺技[エターナルカオス]。無限の力を纏って繰り出す技は正に終焉の一撃。

 

太陽かと見間違える程の輝きを放ちながら向かって来るオーディンに対し、ダークドライブと斬月は…。

 

 

「今だッ!」

 

「行っけやァッ!」

 

斬月を掴んだパワーアームは、あろうことか向かって来るオーディンに目掛け斬月を投げ飛ばした。

 

「馬鹿めッ、自ら死にに来るか!!ならば望み通り、我が憤怒の炎に焼かれよォォォォォッ!!」

 

 

 

 

「フン、貴様の怒り如き──恐るに足らずだ!」

 

<< メロンオーレ! >>

<< ジンバーメロンオーレ! >>

 

「ハッ!──」

 

斬月は取り出した専用アームズウェポンであるメロンディフェンダーにエネルギーを纏わせ、向かって来るオーディンに目掛けブーメランの様に投げた。

 

ロックシード二つ分のエネルギーを纏ったメロンディフェンダーは本来の防御に使う防具では無く必殺の武器となってオーディンへ放たれたが、オーディンのと比べれば威力は劣る。だが、接触し僅かにオーディンの動きが止まれば、ゾーン状態に入った斬月の前であれば今のオーディンは試し斬り用の畳表だ。

 

<< メロンスパーキング! >>

<< ジンバーメロンスパーキング! >>

 

 

「ッ!!───カァッ!!」

 

「何ィッ!?」

 

 

斬月は全身にエネルギーを纏わせ、オーディンから発せられる高エネルギーの奔流を防ぎながら懐に入ると、オーディンとゴルドフェニックスの接合部分を斬って切り離した。

 

分離させられたオーディンとゴルドフェニックス。その二つに銃口を向けるダークドライブ。

 

「本体は……オメェだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ー数時間前ー

 

 

「え……マジで?」

 

決戦を控えた悠達、彼等は今ラボにて悠から告げられた真実に言葉を失っていた。

 

「でも、そういうのって本当にあるの?」

 

「有り得ない話では無いよ?転生者は必ずも、人の姿で新たな生を受けるとは限らないからね。」

 

「正に物の怪か…。」

 

「でも何でそれに気付けたのさ?」

 

「俺がお前らと決別しようと家を出た時あったろ?あの時ヤツと戦って、偶然にもその証拠を掴んだんだよ。」

 

「あぁ、あのプチ家出騒動ね。」

 

「決別騒動ね…とにかく!写ってたんだよ記録する為に使ってたカメラモジュールに!

もしヤツが本体ならこれまでの不可解な謎と合致する。だから…。」

 

「オレとお前で組んで倒すしかない、と?」

 

「あぁそうだよ不本意ながら。俺の考えたプラン通りに進めるなら悔しくもお前の腕に頼るしかない。」

 

「おぉ、珍しく素直だねぇ、私としてはこのままキミ達の仲が進展してくれれば…。」

 

「「そんな展開御免だ!!」」

 

「…自覚無いのかねぇ、こういう時に限っては息ピッタリだって…。」

 

「黙っておきましょう。その方が都合イイみたいだし。」

 

「フン……オレ自身としては貴様と肩を並べるのは断固して御免だ……だが、それしか敵を討つ手立てが無いというなら、百歩譲って従ってやる。」

 

「ハッ…当日しくじんじゃねぇぞ。ちょっとでもミスったら全部パァだ。」

 

「ならば祈ってろ。オレとしては貴様がヘマしないか不安だがな。」

 

「言ってろ。俺がどれだけお前より上か、特等席で見せてやるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本体は……オメェだ!!」

 

<< FullFull!・NEXT"BIG!"・ターイホウ! >>

 

ダークドライブの放った必殺の一撃。放ったと同時にタイプネクストに戻り、ネクストライドロン自身が弾丸となって放たれた砲撃は真っ直ぐ狙い通りに、ターゲットへ直撃した。

 

地に落ちていく金の戦士に──では無く、金色の光を放つ不死鳥へ。

 

<ッ!───グ、グォァァァァァァァッ!?!?>

 

一発の砲弾となったネクストライドロンが契約モンスターのゴルドフェニックスを貫く。モンスターであるはずのゴルドフェニックスから断末魔とも呼べる絶叫が場に響く。

その叫びはソーサラーとコーカサスの動きを止める程に。

 

「ッ!まさか…!!」

 

「ジャッジの正体に気付いたのですか…!?」

 

 

<何故だ!?何故我がッ!!何故だぁァァああッ!?!?!?>

 

 

「…うるせぇ、とにかく死んどけトリ公。」

 

 

<ヌゥゥァガァァァァアアアアッッ!!!───>

 

喉が張り裂けん程に腸の中に仕舞っていた私怨を吐き出しながら本当のジャッジ、ゴルドフェニックスは空に大きく爆ぜて消えていく。

 

 

 

「ジャッジ…。」

 

「……。」

 

ゴルドフェニックスが撃破され、地に倒れてるオーディンのアーマーがカードデッキごと塵となって虚空に消えていくと、残ったのは下級ロイミュードのボディだけ。

ソーサラーとコーカサス。戦いの最中であるにも関わらず目の前で仲間をやられた為か、ロイミュードのボディを見て立ち尽くしていた。

 

その光景を皮切りに、ライダーズの作戦が本格的に始動する。

 

「オーディンを倒した!…ウラナ!!」

 

「うん!作戦通りにだね!!」

 

パラドクスは能力でエナジーアイテムを操作し、一つのアイテムをエグゼイドへ取り込ませる。

 

<< 巨大化! >>

 

「ッ!!──うおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

巨大化のエナジーアイテムを取り込んだエグゼイドは巨体であったその体を更に大きくさせ、15m級に大きくなった自分のサイズに驚きながらも自身の真下に居るコーカサスを見下ろした。

 

「コレって反則級だけども…いくわよぉ!!シャラァァッ!!」

 

 

「ッ!?!?きょ、巨人!?」

 

巨大エグゼイドは、真下で驚愕しながら見上げるコーカサスに隕石級の拳を叩き付ける。

コーカサスは咄嗟に身を転がして回避する、大地が震えて軽い地震が起きる程の威力にコーカサスは仮面の下で冷や汗を掻くも、更にもう一撃、迫って来る拳を懸命に躱す。

次々と振って来る巨大な拳を前に躱し続けるしか取る行動は無かった。

 

 

「ッ!!ラヴァー!!今援護に…!!」

 

 

「行かせっかぁ!!」

 

「貴様の相手は私達だァ!!」

 

 

「クッ、退きなさい!!」

 

コーカサスを助けに行こうとするソーサラーをマッハとゲンムが前に出て、身を挺して防ぐ。

 

 

「シャラララララララァィッ!!」

 

「ヌォォッ!!」

 

豪雨の如く振って来るエグゼイドの巨大な拳。一撃でも喰らえば即死レベルのダメージは間違い無い攻撃を死に物狂いで躱し続けるコーカサス。

 

一方的な蹂躙と呼べる攻防は、エナジーアイテムの効果切れによって幕が閉じ、風船の空気が抜ける様に小さくなったエグゼイドは、小さく肩で息をするコーカサスの前に相対する。

 

「フゥ、フゥ、フゥ…流石に肝が冷えたわよ。でもこれ以上は…。」

 

「…上手くいったみたいね…ウラナ。」

 

「?何を言って……ッ!?」

 

コーカサスはエグゼイドの言ってる言葉に違和感を感じ、その視線を辿ってみるとその違和感の正体に気付いた。

 

先程まであった筈のモノが無くなってるのだ。腰に取り付けていたパワーアップツールである、ハイパーゼクターが。

 

するとエグゼイドの隣に姿が見えなかったパラドクスの姿が急に現れ、高々とその手に持っているハイパーゼクターを突き上げたのだ。

 

「イエーィッ!!作戦成功だね!

シュウ、パースッ!」

 

「お、っとォ!!よくやったぜウラナ!姉ちゃん!」

 

「ッ!お嬢さんの派手な攻撃は、ラヴァーからゼクターを奪う為のブラフですか…!!」

 

「ヴェアァッハッハッハッハッハ!!!今更気付いた所で遅いわァ!!

ハイパーゼクターはコチラが頂いたァ!!」

 

ハルバードでゲンムのソードとつば競り合っていたソーサラー。

エグゼイドが巨大化してコーカサスに攻撃し、意識をエグゼイドへ向けてる間に、パラドクスは透明化のエナジーアイテムで姿を消し、ほんの僅かな間を通ってコーカサスからハイパーゼクターを掠め取ったのだ。

 

奪い取ったハイパーゼクターをマッハへ投げ渡したパラドクスはエグゼイドとハイタッチをするさまを、コーカサスは不覚を取った自分を恥じながら見ていた。自身の技を磨き上げる事を信念とするコーカサスにとってハイパーゼクターはそこまで重要視していなかったが、何でもありの戦いの場でまんまんと敵の策に掛かった事への後悔の念がコーカサスを満たしていた。

 

(してやられたわ。トリさんがやられた動揺もあったとはいえ、近づく気配に気付けなかったなんて…!)

 

 

 

「これで残りは貴様等二人だけだ。」

 

「あ、レンジ!!アタシやったよ~!褒めて褒めて~!!」

 

 

「どうするよ?と言っても、降伏なんて聞く気ないけど。」

 

「じゃあ何で言ったのさ?」

 

 

エグゼイドとパラドクスに合流する斬月とマッハとゲンムに合流するダークドライブ。

戦況は明らかにBABEL側が不利、ライダーズにハイパーゼクターを奪われその上完膚なきまで潰す気満々かダークドライブの手にはディケイドライバーが、マッハも手に入れたゼクターを使う気であり、斬月の手にもゲンムから渡された新たなガシャットが握られている。

 

「これは…覚悟を決めるしかないですね!」

 

「…フフフ。イイじゃない。こういう緊迫感、味わうのはお師匠様以来よ…!

…我、死地となるべき場と見る成り!」

 

どうせ死ぬのなら最後まで戦って、それが彼ら二人にとっての悪足搔きであると同時に、死んで行った仲間達へ顔向け出来る為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーパチパチパチパチー

 

 

「ッ!?」

 

「アナタは…!」

 

突然耳に聞こえて来る乾いた音。それが手を叩いて拍手する音だと気づくのは、間に入ってきた下手人がソーサラー達の前に姿を見せた時だった。

 

 

「いや~はや、中々に見応えのあるショーだったよ!うん!まぁ見違える程強くなったようで!」

 

「アベル…!

引っ込んでろ!幾らお前が転生させたヤツ等でも、この戦いを邪魔する権利は無いぞ!」

 

 

突如介入して来たアベル。その行動は自身がこの世界に送ったBABELを助ける為だと思って叫んだゲンムであったが、アベルはそれに対し、首を横に振った。

 

「違うさカイン。ボクは既に勝敗の決まった戦いをこれ以上見たくないんだよ。だから出て来たのさ。」

 

「何ですって!?」

 

「待って頂きたい!確かに我々に勝ち目はほぼゼロですが、だからと言って…!」

 

「ハハハ、全くもう……

 

 

 

うるさいなぁ──ッ!」

 

 

「「ッ!?───」」

 

アベルが二人に向けて手を翳すと、ドス黒いオーラの様なモノを放ち、それに触れた二人は糸が切れた人形の如く顔を俯き、意思の無い従者としてアベルの傍に控えた。

 

 

「ッ!?何をした!」

 

 

「所詮彼等はボクが用意した引き立て役…キミ等を倒し甲斐のある名役者…ラスボスとして育てる為のね。」

 

 

「あぁ?何言ってやがんだテメェ。」

 

「オレ達が、ラスボス?」

 

 

「そう!そしてそのラスボスを倒し、ハッピーエンドを築き上げる主役は…この、ボクさ!!」

 

 

「何を血迷い事を…!」

 

「そーだ!そーだ!!」

 

「アンタねぇ、今まで散々色んな人苦しめておいて、ふざけた事言わないでよ!!」

 

 

「…そう。そこまで言うなら仕方ない。

見せてあげよう。ボクが新たに得た新たな姿…真の力を!」

 

そう口にしたアベルは、全身からソーサラーとコーカサスにやった黒いオーラに身を包み、その姿を見えなくさせる。

 

黒いオーラで繭のような形になると、ライダー達が真っ先に感じたのは…身の毛がよだつ様な悪意。

 

怒り、憎しみ、哀しみ、妬み、様々な感情が入り混じった吐き気を催す程の悪意。

 

全員が武器を構え、何が来るのか警戒するなか繭が次第に晴れてその影が見えて来た。

 

 

 

白い体に、金の装飾。

ソレだけの特徴を捉えればダークドライブやマッハは残り最後の一体であるバグスターと決めつけていたが、目の前に立ってるソレは、二人の知ってる最後のバグスターとは全く外見が違っていた。

 

頭部の大きな一本角に背中にはマントでは無く金色の翼、ドラゴンの頭部を模した両肩という外見をした圧倒的なプレッシャーを放ってくるソレは、高々と名乗り上げた。

 

「コレが!全てのバグスターの力を!!平成ライダー達を苦しめたラスボス達の力を一つに集めた真の神!!

その名も──完全究極神・ゲムデウスだァァァッ!!!」

 

 

「全てのバグスターを、一つに、だと…?」

 

「何だよソレ…冗談キツイにも程があるだろ…!?」

 

「待て!ヤツは全てのバグスターと言ったが、まだ一体、最後のバグスターを倒していない!ヤツの言ってる事は矛盾しているぞ!」

 

 

「ハハハ、信じられないなら……見せてあげようか。」

 

斬月の言った疑問に対し、アベル、ゲムデウスは確実な証拠を見せる事にした。

 

ゲムデウスの胸にほんの一瞬、金の二本角が生えた白い怪人の顔が浮かぶと、ゲムデウスは翳した手をゲンムに向けた。

 

するとゲンムの体が、着火剤に着けた火の如く燃え上がる。

 

「グァッ!?ヌガァアアアァァアアァァァッ!!!!」

 

「じ、神太郎さんッ!!」

 

「ゆ、悠兄さん、コレって…!」

 

「超自然発火能力…ダグバの!!」

 

 

「ガァァァァアアアッ!ヴェアアアアッ!!───ッ!」

 

<< GAME OVER >>

 

体を地面に押し付けても一向に消えない炎に焼かれてゲンムは消滅。

また出て来た土管からフラフラの状態で出て来た神太郎の傍では、ライフ表示が96から95へ減っていった。

 

「の、残りライフ、95……アベル、まさか貴様は…!」

 

「そう!お察しの通りだよカイン!!

ボクがゲムデウスになる為には全てのバグスターのデータをこの身に取り込むことが何よりの必須。だが膨大なデータを受けるにはそれ相応の器、強いバグスターになる事が何より必要だったんだ!!

だから…ボクは自分にこのガシャットのウイルスを入れて少しずつなっていったんだ。最強のバグスター、究極の闇をもたらす者に!」

 

ゲムデウスが取り出したのは、最後のレジェンドライダー、クウガのガシャットだった。

 

「さて折角だ。試運転も兼ねてゲムデウスの力をお見せしよう!!」

 

ゲムデウスの胸に次に写ったのは、射手座のサジタリウスゾディアーツ。

ゲムデウスの腕にサジタリウスの武器である弓、ギルガメッシュが装備されると、ゲムデウスは弓矢アポストロスを上空に放った。放たれた矢は無数に分裂し、弓矢の雨となってライダー達に降り注ぐ。

 

「ッ!お前等下がってろ!!」

 

「悠兄さんオレも!」

 

<< NEXT砲! >>

 

<< シグナルコウカーン!・カクサーン! >>

<< タクサン!・カクサーン! >>

 

降って来る矢に対しダークドライブとマッハは弾幕を張って矢を防ぐが、余りの物量に少しでも気を抜けない。

 

そんなを嘲笑う様にゲムデウスの胸にはロード、水のエルが写り、ライダーズの足下に紋章を浮かべた。

 

「秋!灰原くん!下!!」

 

「「ッ!!───グァァアアッ!!」」

 

「おのれッ!──ハァァッ!!」

 

「アタシも行く!!──イヤァァッ!!」

 

地面の紋章が大きく爆発し、派手に吹き飛ぶダークドライブとマッハ。

 

コレを見て斬月が無双セイバーを手にゲムデウスに特攻を仕掛け、それに続いてパラドクスも。だがゲムデウスは今度はロードバロンの顔を写し、自身をドス黒い気体状に姿を変えると斬月とパラドクスを包んで宙へ浮かせた。

 

「グゥゥッ!!ガアアアッ!!」

 

「ウァァアアアッ!!」

 

斬月とパラドクスを地面に叩き付けたり、電撃を見舞わせたりなどの攻撃で大ダメージを与えたゲムデウス。

 

地面へ勢いよく落ちる斬月とパラドクスを他所に降り立ったゲムデウスの背後に向かって来る巨大な影が一つ。

 

「ん?」

 

<< MAXIMUM CRITICAL BREAK! >>

 

「ハァァアアアーーッ!!!」

 

 

「ハハ、無駄無駄。」

 

必殺のキックを叩き付けようと迫るエグゼイド前に、次に写したのはワーム、カッシス。

拳を握って腕を振るった途端、ゲムデウスを除く全てが停止した。向かって来るエグゼイドも、風も、光も、何もかも全て。

 

止まったエグゼイドを前にゲムデウスは武器である大剣、デウスラッシャーを手にすると、無防備な姿を晒すエグゼイドへ黒の斬撃を放った。

すると止まっていたモノが全て動き、エグゼイドのキックは空を切り、ゲムデウスの放った斬撃がエグゼイドへ直撃した。

 

「ッ!!──ウァァァァァァッ!!」

 

 

マキシマムゲーマーに大きく切られた跡が着けられ立ち上がれないエグゼイド。倒れるライダー達の中心に立つゲムデウスは大手を広げ歓喜の声を上げた。

 

「アッハッハッハッハ!コレがゲムデウス!!真の神の力!!ッハッハッハッハッハ!!!

もう誰もボクには勝てない!!抗う事すらできない!!全てはボクの描いたシナリオ通りに進められる絶対の力だ!!フハハハハハハハハ!!

あぁそうだ…。」

 

何を思ったのかゲムデウスは取り出したクウガのレジェンドライダーのガシャットを、未だ肩で息をする神太郎へと投げ渡したのだ。

 

「…何の真似だ。」

 

「あげるよ。もうボクには必要無いしね。おめでとう。これで全てのレジェンドのガシャットが揃ったね♪まぁ、全部のガシャットを使った所で、敵う訳無いけど♪」

 

「アベル…ッ!」

 

「さぁいよいよエンディングが近いぞカイン!

ボクが新たに記す歴史、伝説のストーリーが!!その時を待っているんだな、カイン♪

フフッ、アハハハハハハハッ!!」

 

歓喜とも狂気ともいえる笑いを響かせながらアベルことゲムデウスは意思を失ったソーサラーとコーカサスを連れてこの場から消えた。

 

ガシャットを手にした神太郎が目にしたのは、傷つき倒れてるライダーズの五人。

 

 

 

 

 

BABEL、バグスターの脅威を軽々と越えて現れたゲムデウス。

 

真の敵、アベルの言うエンディングの意味にイヤな予感を感じる神太郎であったが、一先ず気を失ってる五人をどうにかするのが先決だと一人動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゥ~~~…。」

 

ココはBABELの活動拠点である大臣の書斎。大臣が普段座っていた椅子に腰かけるアベル。その傍らに従者の如く控えてるソーサラーとコーカサスを置いて大きく息を吐いていた。

 

「ん~~!最高の気分だ。

ホントいい働きをしてくれたよキミは。全てのバグスターの膨大なデータを纏めてくれたお陰でボクはゲムデウスになれた♪そこの二人よりどれだけ優秀であるか証明出来て良かったね♪」

 

<……。>

 

アベルはバグバイザーに閉じ込めてる番堂へ感謝の言葉を送るが、番堂はそれに対しての返事を一切言わなかった。短く溜息を吐いたアベルは背もたれに身を乗せながら寛ぐ。

 

「さ・て・と。カインにはあぁ言ったが、この世界で遊べるのももう僅かだし…最後の余興でも見せて貰うとするか♪

丁度イイ道化と…オモチャもあるし♪」

 

そう言って歪な笑顔を浮かべるアベルは懐から取り出したモノを見て更にその口元を歪ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片手に納まるサイズの、懐中時計の様なガジェットを手に。

 

 







完全究極神・ゲムデウス

アベルが全てのレジェンドライダーのバグスターの力を一つに集めた事によって誕生した上級怪人。

クウガからゴーストまでのラスボスの能力を操り、大剣・デウスラッシャーと盾・デウスランパートを手に高い攻撃力と防御力を持つ。

外見は原作ゲムデウスにダクバの特徴である白い体と金の装飾を合わせたモノ。
アベルが前以ってクウガのラスボスである、ン・ダグバ・ゼバのウイルスを自分に入れて長い時間を掛けてダグバの力を得たからである。


後書き

か、かかかか克己ちゃん!!

まさかのまさか過ぎる登場に脳細胞がフルスロットル状態!!この作品を書いてる自分としては、嬉しすぎるサプライズです!






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