その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
遂にBABELとアベルの企みが明らかになった!計画の主柱となるバベルの塔を破壊しようにも破壊出来ず、更にアベルのクソ野郎は俺の隠してた秘密をバラしやがった!
一体どうなる最新話!?」

「またとんでもない事実を隠してたんですねぇ…もしかしてまだあるんじゃないですか?女性関係について、別の世界で現地妻を作ってたりとか。」

「そんな事は一切ありません!プライベートでの付き合いとかはこれっぽっちもございません!」

「プライベートって事は、仕事での付き合いはあるという事ですか?」

「………。」

「ねぇ?」







 

 

 

イレイザー。無数にある世界を転生者達の悪意によって影響が及ぶ前に、ガンとなる転生者をその世界から抹消する特別な資格を持つヒットマン的な存在。

 

世界のバランスを保つ役所な為に当然ながら厳守すべきルールが幾つかある。その中の一つ、イレイザー自身が世界に影響を及ぼさない為に決められた滞在期間がある。

 

灰原 悠が各世界に居られる期間は──僅か1年。

 

 

 

 

 

アベルが何の悪意もなく明かしてしまった悠の隠していた事実。ソレが明らかにされた今、戦況が有利に傾いていたチームライダーズの間に亀裂を生じ出していた。

 

 

「オイ悠兄さん!何で何も答えねぇんだよ!なぁ!!」

 

「ねぇユウ!ホントに、ホントに居なくなっちゃうの!?」

 

「………。」

 

「二人共落ち着きなさい!!」

 

「今は戦いに集中しろ!!敵が目の前に居るんだぞ!!」

 

何も答えてくれないディケイドの肩を掴んで問い詰めるマッハとエグゼイドR。

エグゼイドLは、マッハとエグゼイドRを落ち着かせる為に間に入るも一向に収まらず、サソードは一人、ゲムデウスへと姿を変えたアベルに対しディケイド達へ激を飛ばしながらサソードヤイバーを一人構えていた。

 

そしてゲムデウスはデウスラッシャーを手に、ゆっくりとした歩調で一歩一歩五人に近づいて来る。

 

『う~ん、どうもバトる空気じゃないねぇ……ならここは、ボクの新しい力のお披露目でもしちゃおうかな!』

 

「「「「「ッ!」」」」」

 

ゲムデウスの持つデウスラッシャーから膨大なエネルギーが放出される。一目で視て、本能が逃げろと叫び出す位に強大な。

 

『スゥゥゥゥゥ……”水のエル”+”アークオルフェノク”+”アルビノジョーカー”……【奥義──】』

 

デウスラッシャーの刀身に、水のエル、アークオルフェノク、そして白いカミキリムシの怪人、アルビノジョーカーの幻影が吸収するとデウスラッシャーの刀身に稲妻を奔る。

 

『【──魔神三激】───ハァァッッ!!!』

 

振るわれた一閃。三体の怪人の力を合わせて放たれたゲムデウスの一撃。大気すら両断する一撃に五人は炎に包まれるだけでは無く、背後に建っていたビル群も横に真っ二つに斬れてしまい、轟音を響かせて崩れ落ちていく。

 

「ふぅー」、っと軽く運動した後の様に息を吐くゲムデウス。デウスラッシャーを肩に担ぐ彼の視線の先には、先程の一撃で変身が解かれ、満身創痍状態の五人の姿が。

 

悠と蓮司は血を流しながらもゲムデウスを睨みながら立ち上がってきたが、後の三人は見ただけで分かる位の重傷を、特にウラナは当たり所が悪かったのか気を失いハルナが肩を揺すって叫ぶが、いつもの元気な声は返ってこない。

 

そんな彼等を目にゲムデウスはデウスラッシャーを消したどころかアベルの姿に戻った。

 

「ん~、初めて撃ったけど扱いがイマイチだねぇ~。

今ので全体の3割か……ま、徐々に慣らしていけばイイか。さ、今日はもう帰るよ~。」

 

『……あぁ。』

 

バベルの塔へと戻っていくアベルの後に付いて行くゴルドドライブ、ソーサラー、コーカサス達。

 

ゴルドドライブがほんの少しだけ、傷だらけの悠達、特に秋を見る。仮面の下から向ける視線に込められたのは当然の結果だと訴える侮蔑か。それとも、あれだけの威勢を張っておいてこんな結果となった、失望か。

 

どちらにせよ、アレだけの力の差を見せつけられ、最早アベルに敵う者は居ない、例えライダーズでも。ゴルドドライブはその事実を再確認しながらバベルの塔へと帰還していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

残された悠達。ゲムデウスの思い掛けない一撃に相当な痛手…物理的にも、精神的にも大ダメージを負わされた五人。

 

ハルナは意識の無いウラナに治療を施した後、バグスターである彼女を自身の中に入れた。体が幾段か重く傷の痛みも増したが一先ずウラナの死は免れた事に安堵する。

 

そんな中、無言を貫いていた悠がやっと言葉を口にする。

 

「…一旦引き上げるぞ。体制を立て直す。」

 

先程のアベルが言ってた滞在期間の話では無く、これからの方針についての内容だった。

 

アレだけの秘め事が暴露された後で流石に黙って看過出来ないと異を唱えようとしたハルナだったが、それよりも早く動く者が。

 

「オイ……なにさっきのしれっと無かった事にしようとしてんだよ…。」

 

「……。」

 

秋が傷で痛む体に鞭打って立ち上がりながら、ふらつく足取りで悠に迫っていく。

 

そして悠の元まで辿り着くと、その胸倉を掴んで目を合わせる。

 

「何で…何でそんな大事な事今まで黙ってたんだよ……。」

 

「……。」

 

「…何時までもだんまり決め込んでんじゃねぇよ!」

 

「……お前に…お前等には…。」

 

掴まれていたその手を、悠は振り払いながら淡々と告げる。

 

「関係ない。だから話さなかった。それだけだ。」

 

「関係ないって、灰原くん…。」

 

「元々俺達は、緊急で一時的に組まされたチームだ。当然終われば、解散する仕組みだ。」

 

「だから…だからこの世界から居なくなるって言うのかよ……アンタは、アンタはそれでいいのかよ!!」

 

「……………あぁ。」

 

「「ッ!」」

 

「……。」

 

「…最初から、そのつもりだったんでな。」

 

「ッ!……けんな……ふざけんなよ!」

 

「ちょ、秋ッ!……あ、灰原くんも!?」

 

秋はそのばにいたたまれず、三人を残しその場を後にした。

 

それに続いても悠も、二人に何も告げず背を向けて去っていく。

 

ハルナはどっちを追うべきか悩むも、今まで静観してた蓮司が話しかける。

 

「止めとけ。今奴らに何を言っても聞く耳を持たんさ。」

 

「彩守くん…。」

 

「それよりも今は……ッ!!」

 

「ッ!彩守くん!!…ぐ…ッ!?」

 

出血してる脇腹を抑えながら膝が崩れる蓮司に駆け寄ろうとするも、ハルナも負っている傷の痛みに顔を顰める。

 

とにかく今は二人を追うよりも、蓮司が言おうとしてた傷の治療に専念する必要があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面はガレージ地下ラボ、地下へと通じる階段を慌てた足取りで降りていく足音が、二つ近づいて来る。

 

慌てながらラボに入って来た古城と雪菜。彼等の視線の先には、椅子に座ってラ・フォリアに介抱されている凪沙と夏音だった。

 

 

「凪沙ァッ!」

 

「凪沙ちゃん!夏音ちゃん!」

 

 

「ぁ…古城くん、雪菜ちゃん…。」

 

「大丈夫です、でしたぁ…。」

 

「あぁ古城と雪菜。

心配せずとも少し酔ってるみたいです。ソレ以外は特に怪我は無いようですよ。」

 

「そっか…良かったぁ…。」

 

「ハァ、そうです、ね…ハァァ…。」

 

ラ・フォリアから告げられた言葉を聞いてホッと胸を撫でおろす古城。バベルの塔出現時、古城が外に買い物に行っていた凪沙を心配して外に飛び出て虱潰しに走り回った最中、ラ・フォリアから連絡を受けて灰原宅まで猛ダッシュして今に至るという訳である。かなりの距離を走ったのか、古城は平気そうだが、それに付いて行った雪菜は肩で息をするほど疲れているのが目に見える。

 

「もう二人共心配し過ぎだよぉ…まぁ、ちょっと怖い目にはあったけど…。」

 

「何ッ!?怪物どもに襲われたのか!?それとも、で、あでッ!?」

 

「落ち着け馬鹿者が。全く、妹の事になると見境なく取り乱しおって。」

 

「南宮先生!アスタルテさんも!?なんで此処に?」

 

凪沙に詰め寄る古城の後頭部に扇子を投げ当てた那月と傍らに立つアスタルテ。彼女たちが何故この場に居るのか雪菜が聞き出すと、那月は地面に落ちた扇子を拾いながら答える。

 

「いきなり出て来たあの塔についての詳細を聞こうと思ってな。

だが案の定、一番詳しそうなのはあのザマでな。」

 

そう言って那月が扇子で指す方には、端末に釘付け状態の神太郎。最早画面と顔がくっつく勢いで目を血走りながらキーボードを叩いている。

 

「……えっと?」

 

「気になるなら声を掛けてみろ。」

 

那月に言われるがまま恐る恐る近づいていく古城。

 

「あ…あのぉー。」

 

「私のッ、クリエイティブの時間を邪魔するなァァァァァァアアアアアアア!!シャアアアアッ!!!!」

 

「ハイィ!」

 

秋命名・ガシャット病に掛かった状態の神太郎を前に、古城は成す術無く追い返された。

 

「とまぁ、何を言ってもやってもあぁ返されるだけで会話が成り立たなくてな。一向に進展が無くて困ってる状態だ。」

 

「状況困難。故にアレに対処できる人物が到着するまで、我々は待機しています。」

 

「あぁ、灰原達、ね…うん、それ正解だな。アイツ等じゃないと、ダメだわ。アレ…。」

 

今はこの場に居ない悠達に尊敬の念を抱く古城。そんな古城の耳に階段を踏み歩く音が。

 

見上げると、其処に居た人物を見てギョっと目を見開いた。傷だらけで、それこそ血を流した状態でラボに入って来た秋を目にして思わず声を上げてしまう。

 

「し、秋!お前その傷!つか、他の奴らはどうしたんだよ!?」

 

「…ちょっと退いて、悪いけど構ってるヒマ無いから…。」

 

「秋…?」

 

古城を押し退いて神太郎に近づいていく秋。ガシャット製作に没頭中の神太郎に構わず、秋が何時もと違う声色で話しかける。

 

「ねぇ、聞きたい事があるんだけど。」

 

「だからァ!!今の私は神の領域ッ…!?」

 

「お、おい!秋…。」

 

「ど…どうしたんですか?」

 

突然の秋の行動にその場にいた皆が言葉を失った。

 

秋は神太郎の胸蔵を掴み、壁に叩き付けたのだ。

 

「しゅ、秋くん?何を…。」

 

「なぁ、何で今まで黙ってたんだよ……悠兄さんが、たった一年しかこの世界に居られないって。」

 

「ッ!!……何故、それを…。」

 

「……アベルから、全部聞いた。」

 

「ッ…あの野郎ッ!よりにもよってこんなタイミングで…!」

 

 

「お、おい秋…どういう、事だよ、ソレ。」

 

「悠が、一年しかいられないって…本当なのですか?お義父様。」

 

秋だけでなく、古城やラ・フォリアも神太郎へと真相を求められる視線を向けられた神太郎は、顔に手を当てて天を見上げた後、観念したように話す事にした。

 

「…事実だ。イレイザーが滞在する世界に何かしらの影響が出ない為の、イレイザーの法案が決定されて一番に出来たルールだ。」

 

「じゃあ、灰原先輩が後この世界に居られる時間は…。」

 

「今年の4月にココに来たから…残された時間は、あと4か月だね。」

 

「そんな…!」

 

「…待て。一つ、これだけ聞かせろ。」

 

神太郎の告げる真相に誰もが驚くなか、那月だけは神太郎の告げた真相に一つ気にかかる所があった。

 

「お前は今、何かしらの影響を与えない、と言ったが。少なくともココに居る者達は、多少なりともヤツの行動の影響を受けているぞ。」

 

「あ…確かに、私達は灰原先輩とかなり深く関わっていますよね、凪沙ちゃんや夏音ちゃんは灰原先輩達の争いに巻き込まれましたし。」

 

「そういや、オレ達の体が入れ替わった時なんかもそうだよな。オレの体で変身したり、遠山も仮面ライダーになったりよ。」

 

「どうなんだ?灰原 神太郎。この場合、影響を受けた私達はどうなるんだ?」

 

「ッ……。」

 

「……おやっさん、、まだ隠してるんなら言えよ。もう誤魔化しようがねぇってのは分かり切ってるだろ。」

 

那月の示した指摘に言葉が詰まってしまう神太郎だが、最早言い逃れ出来ない状況であるのが目に見えてる現状、神太郎は真実を話すしかなかった。

 

「……イレイザーはその名の通り、抹消者。ターゲットを確実に消すと共に、自身の存在も消す。」

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

「彼がこの世界から去ったと同時に、彼がこの世界に居たという全てが消える。

そう…キミ達が彼に関わった全ての記憶すらも、抹消するんだ。」

 

その言葉に今度こそ皆が言葉を失った。

 

秋も、掴んでいた手を放す位に神太郎の告げた真相が衝撃的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広場のベンチに並んで座る蓮司とハルナ。

 

ハルナの掛ける治癒によって怪我を癒す蓮司。ある程度治った所で、治癒を掛けるハルナに手で制した。

 

「この位で良い。後は自分の治療に専念しろ。」

 

「え、でもまだ残って…!」

 

「ウラナも分もあるんだろう。ある程度動ければ十分だ。」

 

そう言って蓮司はベンチから立ち上がる。これ以上何言っても聞きそうに無いなと思ったハルナは、言われた通りに自分に治癒を駆けていく。

 

暫し間沈黙の空気が流れる中、ハルナはふと、先程から気にかけていた疑問を蓮司へぶつけてみた。

 

「…ねぇ。灰原君の隠してた秘密についてなんだけど…。」

 

「何だ。」

 

「…彩守君、もしかして最初から知ってた?」

 

「…何故、そう思った。」

 

「だってあの時、皆それなりに驚いてたのに貴方一人だけ動揺も反応もしなかった。ずっとアベルに対して構えてたから、まさかって思って…。」

 

「…まさかお前に気付かれるとは思わなかった。」

 

「じゃあ、やっぱり。」

 

「オレはアイツからイレイザーの座を奪おうとした。だからどのような掟が課せられているかは当然知ってる。

一つの世界に1年しか居られないのも…その世界で関わった人間の記憶から消える事も当然な。」

 

「ッ!?記憶から消えるって……もしかして私達も?」

 

「さぁな。オレやお前、弟の方は分からない。だが、それ以外のヤツ等は確実に…。」

 

「そんな…どうにか出来ないの。これじゃあ、あんまりよ…。」

 

「…こればかりはどうしようも出来ん…ヤツがイレイザーである限り、な。」

 

「ッ!……彩守君、アナタまさか。」

 

蓮司の言葉の真意に気付いたハルナは、思わずベンチから立ち上がる。

 

「…オレは母と祖父を喪ってからずっと一人で生きて来た。だからイレイザーの役目はオレに相応しいと思った。

オレが居なくなろうが、死のうが、誰も悲しまないのだからな。」

 

「…本当にそう思う?」

 

「なに?」

 

「灰原君が居なくなって、もし私達が覚えていたとしたら、きっと…辛いと思う。

でもそれは、貴方の場合でも一緒の筈よ。」

 

「桜井…。」

 

「ウラナだって、絶対悲しむし……私も、彩守君が居なくなるのは……イヤかな。」

 

「……。」

 

「それに、灰原君だって辛い筈よ。少なくともココには、友達も、好きな人も出来たんだもの…その人達が自分の事を忘れるなんて、ある意味死ぬより辛いと私は思うよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は地下ラボに戻る。

 

神太郎の告げたイレイザーのルール、悠に関する記憶が消えると聞いて秋はラボの片隅で蹲っていた。

 

衝撃的過ぎたのか未だ頭の整理が追い付いていない秋の隣にそっと寄り添って座り込むラ・フォリアが、優しく声を掛けた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「………。」

 

「…それにしても、驚きました。隠し事が多い人だなと思ってましたけど、あんな大事な事ずっと黙っていたなんて…。」

 

「…ラ・フォリアちゃん、何とも思わねぇの?悠兄さんが居なくなって、忘れちまうって…。」

 

「私ですか?そうですね……ハッキリ言って、怒ってます。」

 

「……は?」

 

「物凄く、怒ってます。」

 

顔を上げてみたラ・フォリアの顔にはニッコリと笑ってるものの、青筋が浮かんでいた。

 

「そんな大事な事を私に隠してたなんて、ええそりゃ怒りますよ。会ったら一発引っ叩かないと気が済みません。」

 

「は、はぁ…。」

 

「…それから、あの人の本心を無理矢理にでも聞きます。」

 

「は…?」

 

「えぇ。あの人がこの世界から出て行く事にどう思ってるのか聞き出してやります。

 

「…そんなん聞いても無駄だって、だって悠兄さんは…。」

 

「何とも思って無い、そう言ったんですか?」

 

「…あぁ。」

 

「…本当にそうですかねぇ。あの平気でウソを吐く人がそんなあっさりと…。」

 

「ッ!」

 

ラ・フォリアからの指摘に思わず目を見開く秋。そんな秋を見ると、ラ・フォリアはにこりと笑った後立ち上がる。

 

「本当は私が行きたい所ですが、これから夕飯の支度がありますし、その役目は秋に任せます。

取り敢えず、私の分も殴っといてくださいね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の悠は、一人、この世界で最初に足を踏み入れた展望台に来ていた。

 

バベルの塔が混ざったその光景に思わず表情を顰める悠は、背後に気配を感じて口を開いた。

 

「生憎と、今は一人になりたい気分なんですがね。」

 

「そうか。だが私にはお前の事情について一切関係無いのでな。」

 

「とても教師が言っていい台詞とは思えないな。」

 

「今の私は攻魔官として来ているのでな。」

 

悠の元に来たのはバベルの塔について聞きに来た那月であった。

 

本当はバベルの塔について聞き出したい所であったが、此方に背中を向ける悠を見て一つ溜息を吐いた後話し掛けた。

 

「…聞いたぞ。お前、ここにはたった1年しか居られないとな。」

 

「それこそ先生には関係ないですよ。」

 

「一応貴様は私が請け負う生徒の一人だ。卒業しないまま学園を止められて泥を塗られるのは不本意だ。」

 

「そうですか、でも生憎とその心配は杞憂になりますよ。

それに、俺もう高校生って歳じゃないですし。」

 

「…フ。」

 

「…何が可笑しいんだよ。」

 

鼻で笑われた事が癪に障ったのかつい言葉使いが何時もの様になってしまう。そんな変化に那月は特に気にもかけず思った事を口にする。

 

「いやなに、如何にも大人ぶってるという態度についな。」

 

「は?」

 

「私から見たら今のお前はただ強がってるだけの子供にしか見えんよ。それもかなり幼い、幼稚な、な。」

 

「ッ!んだと…!」

 

「フン…普段のお前から珍しいモノを見れたからこの辺で失礼するとしよう。…丁度来たようだしな。」

 

そう言い残し那月は魔術でその場から転移した。

 

その後に悠の耳に入って来るエンジン音。那月と入れ替わるように展望台にやって来たのは、ガタックエクステンダーに乗って来た秋であった。

 

 

「秋…。」

 

「さっすがラ・フォリアちゃんだわ。何かあったら悠兄さんはココに来るって、ドンピシャだね。」

 

「…何しに来た。」

 

「アンタの本音聞きに、ね。」

 

「本音だと?」

 

「そ……なぁ悠兄さん。アンタ、ホントにこの世界から出ていく気?」

 

「…それについての答えはもう出した筈だ。」

 

「ああ…そうかよ……じゃあ取り敢えず──。」

 

「?……ッ!!」

 

ーバキィ!ー

 

「ブ…ッ!?」

 

背中を向けてた所為で秋から繰り出された拳に反応出来ず殴り飛ばされる悠。

 

 

口の中を切った所為で口に広がる血を吐き捨てると、秋を睨み付ける。

 

「何̪しやがんだテメェ…。」

 

「ラ・フォリアちゃんから。取り敢えず一発殴っといてくれだって…カンカンに怒ってたぜ、今まで黙っててよ。」

 

「……どうせ忘れるさ。何もかも。」

 

「…ふざけんな…いい加減しろよこの独りよがり野郎が!!」

 

秋は胸倉を掴んで自身の顔に近づける。真正面から面と面向き合って、ありのまま自身の思いをぶつける。

 

「アンタにとってオレ達はその程度の仲だったのかよ!一緒に過ごして、背中預けて戦ったオレ達は!!」

 

「ッ…。」

 

「オレ、悠兄さんに会えて良かったと思ってるよ。オレだけじゃない、姉ちゃんやラ・フォリアちゃんに、古城センパイにキンジセンパイも。みんなアンタの事好きになってんだよ!!

…悠兄さんだってそうだろ。アンタだってみんなと居て楽しいとか思った事あんだろ!」

 

「ッ…俺は。」

 

悠の顔が下を向いて俯く。それでも秋は言葉を投げ続ける。

 

「もう一度聞くぜ。アンタはこのままココから出ていく気かよ?

好きなヒト達を置いて、誰からも覚えて貰えずにッ、一人になる気かよ!!なぁ!!──

 

 

 

 

 

 

─そうやって、一人ぼっちで生きていく気かよ!」

 

「ッ───うるせぇぇええッ!!!」

 

ーバキィ!ー

 

「ガ…ッ!」

 

掴まれた手を振り払い秋の顔面に拳を叩き込む悠。

 

殴ったその手は、血が流れる程に強く握り締め過ぎてた。

 

「俺は!……オレはッ、ずっと…!ココに来るまでずっと…!──

 

 

 

───ずっと…寂しかったッ!」

 

 

「……悠兄さん…。」

 

殴られた箇所を抑える秋は、悲痛な表情を見せる悠の本心に耳を傾ける事にする。

 

「ガキの頃、目が覚めたら何も覚えて無くてッ、整理がつかないまま両親も死んでるって言われて!蔑まれながらあっちこっちたらい回しにされて!

…やっと見つけた居場所もッ、恩師も!大好きだった人も!!訳分かんねぇまま奪われた!

…オレだけが、こんな形で生き残った……あの時はただ、大事なモノを奪ってったアイツを殺したい一心でヤツの話を受けた。」

 

「……。」

 

「敵を討った後、心にぽっかり穴が空いた気がした。復讐が終わって、生きる目的が無くなったんだ。ただ…寂しいって感じるようになった。

…それからずっと戦った。戦って戦って、やがて殺されるその時が来るまでずっと戦い続けてきた…そして…この世界に来ちまった。

何時の間にか、オレの周りに人が集まるようになって…穴の空いた胸が、何時の間にか満たされていた。

…いずれ別れなきゃいけないって分かっているのに…お前達を、拒められなかった…。」

 

 

秋はこの時、初めて灰原 悠という人間の本質を知った。

 

普段の毅然とした振る舞いは感じられず、今にも泣き出しそうな位弱々しい姿。

 

文字通り、強者としての仮面を脱ぎ捨てた悠本来の本心を目の当たりにした。

 

そんな悠に対し、秋はそっと、肩に手に置いた。

 

「んな心配しなくても、もう一人になんかさせねぇよ。今の悠兄さん、色んな意味で危なっかしいしよ。」

 

「…どうやって?」

 

「んーー………分っかんね。」

 

「は?……お前な!」

 

「そういう難しい事考えるのは悠兄さんの役割っしょ?

それに、結局は自分の事なんだから、悠兄さんも積極的になんないと!な!」

 

「お前……言ってる事無茶苦茶だぞ。」

 

「ハハハ、まぁね♪」

 

「お前なぁ…。」

 

軽いノリで無茶苦茶な要望を吹っ掛ける秋にすっかり毒気を抜かれる悠。

 

それでも、悠にとってそれが救いとなったのか、胸の奥にまで溜まってた陰が晴れた気がした。

 

 

だがそんな余韻に浸かってられるのも束の間。展望台から見えた爆発が、次の戦いを知らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡る。

 

広場にてハルナの胸中の思いを聞かされた蓮司。思い掛けない言葉が出て来たことに呆然とする蓮司を前に、ハルナはハッ!とした後頬を赤くして否定の意を見せる。

 

「い、いいい今のはそういうのじゃないわよ!!ただウラナが悲しむからって言うのと!秋と灰原君を抑え役が私だけになるのもって意味で!!」

 

「…あ、あぁ……ッ!桜井!!」

 

「へ?──きゃ…!?」

 

突然蓮司がハルナを抱えその場から飛び退くと、先程まであったベンチが爆ぜた。

 

地面に伏せながら急襲してきた主を探すと、それは此方に向かって、二体、歩いてやって来た。

 

嘗て蓮司が単独で倒したバグスター、ブレイドのラスボスであるアルビノジョーカー。

 

もう一体がコーカサスが倒したカブトのラスボスであるカッシスワーム。

 

「バグスター!?よりによってこんなタイミングで…!」

 

「向こうにとっては此方の都合などお構いなしという訳か…桜井、お前は下がってろ。」

 

「彩守君!?まさか一人でやる気!?」

 

「お前の怪我はまだ完治していない、それに比べオレはある程度動けるから上、一体は前に倒した相手だ。倒せない道理は無い。」

 

「それでハイ分かりました、って言うと思う?それに復活したバグスターは強化されてる筈よ。

さっきウラナと戦ったバグスター達に手も足も出なかったし。」

 

「それなら尚更お前は行け。二人で向かうにしても、オレより怪我してるお前を気にしながら戦うのは正直不利だ。」

 

「それじゃあ彩守君が…!」

 

「えぇい!いいからここは素直に引け!…オレは、お前をココで死なせたく無い!」

 

「え…。」

 

蓮司の言う事を拒否してゲーマドライバーを身に着けるハルナ。蓮司はそれでもハルナに引く様に言うも、一向に聞いてくれないハルナに業を煮やしたのか、蓮司は胸中の思いを突き付ける。

 

その言葉にハルナが虚を突かれたと同時に、アルビノジョーカーとカッシスワームが駆けだして来た。

 

「ッ!──しま…ッ!」

 

相手に都合のいい隙を作ってしまったという大きなミスを痛感する蓮司とハルナに、二体の怪人の凶刃が襲い掛かろうとした時…二人の頭上を、二つの影が飛び越えて来た。

 

 

「「ウラァッ!!」」

 

 

蓮司達を飛び越えてアルビノジョーカーとカッシスに飛び蹴りをかました悠と秋。

二体の怪人は飛び蹴りを喰らって大きく後ろに吹き飛ばされ、悠と秋は、蓮司とハルナの前に着地を決めた。

 

 

「秋!灰原君!」

 

「へへ!ナイスタイミングだったっしょ?」

 

「貴様…。」

 

「よぉ、随分らしく無いマヌケっぷりじゃねぇの、まさか桜井と惚気てたのか?」

 

「なッ!?そ、そそそそんな訳ないでしょ!?バッカじゃないの!?」

 

「…なんか、その必死っぷりが怪しいんですけど、まさか本当に…。」

 

「秋!違うからね!?…って、それよりも灰原君、アナタ…。」

 

「…それは一先ず後!今は目先の問題から片付けていくぞ!」

 

「え、でも…。」

 

「…桜井。騒がせて、悪かった。

オレがこの世界から出るかどうかの問題は、この戦争が終わったらじっくり考える事にした。」

 

「ッ!…灰原君。」

 

「だからさ、さっさと勝って終わらせる為に…手、貸してくんない?」

 

「…どうやらお前が思ってた程、深刻にはなって無いようだな、桜井。」

 

「……もう!しょうがないわね!!やってやるわよ…今更仲間外れだなんて、それこそふざけんなって言う所だったわ。」

 

「おう……あ、ちなみにお前は強制な。最低でも肉壁は欲しいから。」

 

「壁にもならない位に刻まれたいか貴様…!……フン、騒がすだけ騒がしおって、戯けめ。」

 

「へへ…うっし!んじゃあ先ずはアイツ等パパっと倒すとしますかね!」

 

悠、秋、蓮司、ハルナの四人が並んで、アルビノジョーカーとカッシスワームを前に相対する。

 

未だゲムデウスにやられた傷は完治しておらず四人共ボロボロと言って良い格好。

 

それでも何故か負ける気など全然無かった。目の前のバグスターにも、BABELにも、ゲムデウスにも。

 

この四人なら、どんな壁すらもぶち壊して先に進めると。

 

<< MIGHT ACTION X >>

  

<< TADDLE QUEST >>

 

<< BANG BANG SHOOTING >>

 

<< BAKUSOU BIKE >>

 

 

「「「「──変身ッ!!」」」」

 

<< ガッチャーン!──LEVEL UP! >>

 

 

四人が光に包まれその姿を仮面の戦士へと変えていく。

 

銃士、騎士、そしてバイクに跨る救済の戦士に…。

 

 

<< I`ma KAMEN RIDER! >>

 

 

「…行くぞテメェ等ァ!」

 

「いざ…参る!」

 

「っしゃァ!!マッハで飛ばしてくぜぇ!姉ちゃん!!」

 

「このゲーム──ノーコンティニューでクリアする!!」

 

 

今この瞬間、本当のチームとして動き出す。

 





メタルクラスホッパー、思ってたより禍々しいフォームだった!

プトティラといいハザードといい、暴走フォームって何で魅力を感じるんでしょうね?
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