その男が進む道は・・。   作:卯月七日

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「前回のあらすじ!
お正月のお年玉争奪戦は激戦を繰り広げるも、意外な形で終わりを迎えてしまったのであった!」

「そういえばなんか100日経ったら死ぬってマンガ流行ってるけど、アレ面白そうだからオレ達もやろうぜ!悠兄さんを題材にして!}

「好きだね流行りモノ…って何で俺なんだよ?」

「まぁでも流石に死にネタはアレだからソフトなカンジで、”100日で小指ぶつけて悶絶”とか?」

「地味~に痛いのはイヤだな。」

「なら幸せ路線で、”100日後に入籍する”はどうです?」

「まだ法律上未成年だから!」

「ならば逆に”100日後に頸と胴が別れる”はどうだ?喜んで手を貸すぞ。」

「ただの殺害予告!」

「じゃあじゃあ!”100日後ウラナに新しいゲーム買ってあげる”ってのは!?」

「それまでちゃんとイイ子にしてたらね!」

「姉ちゃんは何かねぇの?」

「う~ん…じゃあ一番灰原君に効果有りそうなの。」

「もういいよぉ、なんだってぇ…。」

「”100日後にグレる夏音ちゃんを見届ける”は?」

「…なんだと?どうしてそうなった?100日の間に何が起きた!?俺か!?俺の所為なのか!?俺が悪人だから悪影響与えてしまったのか!?」

「効果有り過ぎてキャラ崩壊し出しちゃったよ。」

「うん、ちょっと反省。それじゃあ今回の最新話さっさとやっちゃいましょう。」




昔話

 

 

 

その日、神太郎も息抜きと言う名目でラボを空けて完全に悠一人という時に、彼女は唐突に表れた。

 

「取材?…俺の?」

 

「えぇ!是非とも悠さんの武勇伝を皆さんに広めてもいい時期かと思いまして!ハイ!」

 

開発作業している悠の元に訪ねて来たのは艦娘の一人である自称パパラッチ記者、青葉。

何かとスクープを求めていつもカメラと手帳を持ち歩いてる彼女は過去悠の盗撮写真を撮っていたという犯歴を犯した為にキツイお仕置きを喰らわせて以降大人しくしていたが、何故か今になって取材を申し込んできたのだ。

 

「何の為に俺の取材なんぞ…俺のプライベートなんざ知って、誰が得するってんだ?」

 

「いえいえ!それについては記事にしなくても大抵の皆さんが知ってますし!

聞きたいのは、悠さんがココに来るまでのお仕事についてですよ!」

 

「仕事、ねぇ……って待て。何で大抵のヤツ等が俺のプライベート知ってんだ?オイ!」

 

聞捨てならぬ言葉が出た事に反応を見せる悠だが、青葉の口から早霜という名前が出て来た事で素直に引いた所で、話の内容を戻した。

 

「仕事の取材と言ってもなぁ…アレって一応機密扱いなんだが。」

 

「そこをなんとか!話せる所までで構いませんので!」

 

「……なら、素直に話してくんない?どうして今このタイミングで俺に仕事の取材なんか?」

 

「あ~、それは、ですねぇ……分かりました白状します。

簡潔に言うと、月一で号外する記事に載せるネタが尽きてしまいまして…。」

 

向けられる圧に対して耐えきれなくなった青葉は素直に白状した。内容が内容だけに呆れる悠を前に、青葉はこの時の為に用意した秘策を切り出す事にした。

 

「勿論タダでとは言いませんよ!コレを…。」

 

「ん?なんだ、賄賂か?……。」

 

渡された紙袋の中から取り出したのは、包装された和菓子。”間宮羊羹”大きく描かれたソレが、袋の中に三つも入ってた。

 

「悠さんは甘いモノがお好みだと知ってますので!」

 

「コレって、お前等の中じゃかなり重宝されてるんじゃなかったっけ?一本手に入れるだけでもかなり貴重だとか。」

 

「青葉としても…青葉としてもッ、コツコツと苦労して溜めた券をココで使うのは非常に遺憾ですが…ッ!

コレも全て、満足いく記事の為に…ッ!」

 

「こりゃまた、大したジャーナリズム精神だことで……フゥム…。」

 

悠は悩んだが、手に持つ羊羹と悲願の眼差しで訴えてくる青葉を暫く交互に見ていく内に、仕方ないと言った風に溜め息を吐いた。

 

「…まぁ、いいだろう。休憩の茶飲み話程度に話してやりますか。」

 

「ッ!ほ、本当ですか!?あ、ありがとうございます!!」

 

青葉の秘策が効果覿面であったらしく、羊羹の包装を解いてく悠は青葉の取材とやらに応えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

用意したお茶と丸々一本をカットした羊羹をデスクに置き、椅子一つ分の間隔を開けて対面に座る悠と青葉。

 

手帳とペンを手に目を輝かせる青葉を前に、悠は湯飲みの茶を一口飲んでフゥと一息口から漏らす。

 

「さて、いざ話すと言っても何を口にすべきか…あっちこっちの世界を回っては、色んなクズ共を消して来たからなぁ…。」

 

「それでしたら此方が質問をしますのでソレに答えていただきましたら。あ、あと駆逐艦の小さい子達にも見せる記事なので、なるべく過激なエピソードとかは…。」

 

「オーケー。で、質問は?」

 

「ハイ!悠さんがココに来るまで請け負った仕事の中で、ズバリ!一番大変だったエピソードは?」

 

「いきなりぶっこんだ内容来たなオイ…大変だったの、かぁ……スプラッタのを除くとするなら、やっぱアレかぁ…。」

 

「ほおほお、どんな?」

 

「あぁ、アレは…。」

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

あの時の俺は、この仕事に就いてある程度こなせる様になった頃だ。

 

その時も一つの案件を終えて、次の仕事が来るまでの許された時間を有意義に使おうと思い、俺はとある喫茶店に入ったんだ。

 

店はこじんまりとした小さい店だが、古き良きアンティークな内装に店主の趣味であろうジャズのレコードをBGMにしながら、その店で一番人気のフレンチトーストとブレンドコーヒーを楽しもうナイフとフォークを手に取った時だった。

 

テーブルに置いた携帯が鳴り響いた。そう、仕事の合図だ。

 

俺はゆっくりと時間を掛けて楽しむはずだったフレンチトーストを口に押し込み、コーヒーで流し込んでいざ会計しようと席を立ちあったが、そこで小さな問題が起きた。

 

店員が店主しかいない為、当然会計も店主にしないといけないのにカウンターにいた筈の店主がいなかったんだ。恐らくトイレか裏に入ったんだろう。

しかもその時の俺の財布の中は細かい金が入っておらず万札だけ。

 

悩んだが少しでも時間を掛けるわけにはいかなかった為に俺は止む無く万札をその場に置いて、お釣りを受け取らず足早に店を出て次の仕事場である世界へと渡ったんだ。

 

これから待ち受ける至難など、コレぽっちも考えずに…。

 

 

───

 

──

 

 

 

 

「───あのぉ、その件っていります?」

 

「何言ってんだ、ちゃんと起承転結の順に話してんだろ。

心配せずともこれからが本題だ…。」

 

 

 

 

 

 

───

 

──

 

 

その時の仕事もとある転生者の抹消だった。

 

送られてきた情報によればソイツは俺も使っているあるアイテムを創る特典を手にして、その世界で売り捌いては荒稼ぎしてるらしい。

 

生み出して売ってるモノがモノの為にソイツは目を付けられた。俺もソレについてどれだけ危険な代物か分かっているからな。

 

簡単に人間を超人に変えてしまう魔性の小箱──ガイアメモリのな。

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

「ガイアメモリって、確か…。」

 

「コレだ。」

 

そう言って悠が変身に使っているエターナルメモリとロストドライバーを青葉に見せながら、ガイアメモリについて簡潔に説明する。

 

「俺はドライバーを使って仮面ライダーに変身するが、直挿しでコレを使うとドーパントっつう怪人になるんだ。

まぁ実際ドライバーはメモリの強い力が精神に影響を与えない為の制御装置に過ぎないから、俺もどっちかというとドーパントなワケだが…。」

 

「へぇ~。て事は、その転生者が凄く強かったと?悠さんの使ってるアイテムを造れるというのなら、一番強いメモリも創れるって事ですし。」

 

「あぁ、その事については…。」

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

 

 

『───ガハァァッ!?…な、なんでぇ…!?』

 

「オイオイ…ゴールドのメモリ使ってこの程度かよ…。」

 

とある廃ビルの中でエターナルに追い詰められてるのは、恐怖の記憶を宿したテラーメモリで変貌した上位のドーパント、テラードーパント。

 

テラードーパントの能力は、相手に強い恐怖心を植え付けるという精神干渉系の能力。強い恐怖心を抱いた者はまともに戦える事が出来ず、恐怖の化身たるテラードーパントの前から逃れたい一心を抱くようになり、やがては自滅まで追い込むという恐ろしい能力でエターナルも苦しめる…筈だった。

 

『なんでッ!なんでテラーの能力がッ、オレを恐れないんだよぉぉ…ッ!』

 

「特異体質、ってヤツらしくてなぁ、精神干渉は一切効かないんだよ。それと、お前と俺のメモリの相性もあるけど。」

 

『なんだよそれぇ…!とんだチートじゃねぇかよぉぉ!』

 

「御託はもういい。さっさと───死ね。」

 

<< NAZCA MAXMUM DRIVE! >>

 

<< UNICORN MAXMUM DRIVE! >>

 

 

『ヒィィィィィッ!!やだぁぁぁぁぁあああッ!!』

 

「フゥーッ!────ッ!ハァァッ!!」

 

『あああああッ!───ッ!?うわあああああああッ!!!』

 

エターナルに勝てないと悟ったテラーはその場から逃走を図るが、腰のスロットに挿したナスカメモリの超加速によって一瞬で先回りし跳躍、足のスロットに挿したユニコーンメモリによって足の先がドリル状のエネルギーに纏われる。

 

一瞬の内に自身の前方に回り込まれ恐怖に追い込まれたテラーの最期。翼を広げドリル状の足でキックしてくるエターナルの姿が強く目に焼き付けられた。

 

 

───

 

──

 

 

 

「え?あっさり倒しちゃったんですか?」

 

「あぁ。大体、金儲けしか能の無いド素人相手に俺が遅れを取るかよ。」

 

自身が思っていたのと全く違う展開に裏切られた青葉を差し置き、切り分けた羊羹を摘まむ悠。

 

「じゃあ一体何が大変だったんですか?まさか最初の要らない件の…。」

 

「違うっつの。言ったろ、ソイツはガイアメモリを創って、ソレを売り捌いてたって。」

 

「えぇ……え、まさか…。」

 

「お察しの通り、大変だったのは後始末だ。

売られたガイアメモリをその世界から一本残さず全部、壊して、根絶する事だ…。」

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

ヤツはネットやらSNSやら掲示板やらを使ってメモリのウワサを幅広く広めてたみたいでな、地方から態々足運んで買いに来たバカ共がわんさか居たのよ。

 

最初はエターナルのマキシマムでメモリの機能を停止させようと考えたが、ヤツの創ったメモリはT1でもT2でもない次世代型でな、メモリコネクタ要らずで簡単お手軽に使える厄介な代物だから正に時間との闘いだった訳よ。イレイザーのルールで、俺がその世界に居れる期間も限られてたし。

 

幸いヤツが残してた顧客リストが見つかったが、そう簡単に事は上手く進んじゃくれなかった。

買ったメモリに更に値段張らせて転売する転売屋や、買おうにも金が無くて持ってるヤツから奪い取ったなんてのも居たお陰で、文字通り三日三晩休む間も無く走り回ったさ。

 

ガイアメモリによる犯罪は公に開かされては無いが確実に起こっていた。だから此方も形振り構わず迅速にカタを着ける為にあらゆる手を使ったさ。

 

勿論、非合法な手もな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──フへへへへ。遂に、遂に手に入れたぞ!超人になれるガイアメモリ!コレで、ボクも…!!」

 

<< VIRUS >>

 

「フゥー、フゥー!……ん?」

 

ーガシャァアアン!ー

 

「うわあぁぁ!?ま、窓から、人!?ここ五階建てのマンションだぞ!どうやって…!”バキィ!”ぶへッ!?」

 

「フゥー…ヴァイラスか、使われる前に見付けられたのはラッキーだったぜ…フン!”バキャ!”」※メモリ踏み砕く

 

「あ…あああああぁぁぁぁ!!!な、なんてことしてくれるんだ!!ボクの、ボクの人生を変える希望が!!”バキィ!”ぶべらッ!?」

 

「うるせぇ!!人生変えたいなら引き籠ってねぇで外出ろ!!クセェんだよこの部屋!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

<< JOKER MAXMUM DRIVE! >>

 

「ウォラァァァァッ!!」

 

『ギャアアアァァ!!───がッ、ォ、オレの、メモリがぁ…!ヒィ!」

 

「オイ…オメェガイアメモリ三本も持ってたって?

今壊したので1本!あそこのヒョロメガネに売ろうとした2本!」

 

「ヒェ!!」

 

「んで最後の3本目、何処だ?隠し持ってるのか、それとも売ったのか!!言えやゴラ゛ァッ!!」

 

「ヒィィッ!……だ、誰が言うか!!バーカ!バーカ!!」

 

「…あっそ。チッ、最近使い過ぎて頭痛ェってのによ…。」

 

<< MEMORY >>

 

「な、なんだよ!?ていうかお前一体いくつメモリ持って…が、があああああああああああッ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<< QUEEN >>

 

「ねぇねぇ!コレ超~ヤバいんですけど!マジ使うとアゲアゲなキブンになるんですけどー!」

 

「マジィ~?それアタシにも貸してちょー!」

 

「え~?どうしよっかなぁ~?」

 

 

「…ねぇ。」

 

 

「あん?なんだし?…ッ!」

 

(ッ!?イ、イケメンがいきなり壁ドンしてきたし!?)

 

「それ、とても危ないモノなんだ。だから…俺に渡せ。」

 

「ッ!?」

 

(イケボ&顎クイからのオレ様!?…マジ卍!)

 

「な?」

 

「ハ…ハィィ…。」※恍惚顔

 

「うん、イイ子だ…”グギャ!”」※メモリ握り潰す

 

(イケメンスマイルしながらメモリ握り潰したー!?なんなにコイツー!?)

 

 

───

 

──

 

 

 

 

 

「──と、いうカンジでな。」

 

「なるほど~。ダイナミック入室したり、女の子をおとしたり、と…。」

 

「時には外国からの観光客もガイアメモリを買っていた所為で海を超える事になったり、どこぞの金持ちや官僚がゴールドのメモリ持ってたり、どこぞの研究所がメモリを複製しようとしたりで…そん時が勢い余って研究所もつぶしちゃったっけ。

そんなこんなで約100本のガイアメモリを日々追って壊して来たもんだよ。」

 

「ほぇ~、そりゃあ確かに大変ですねぇ、ガイアメモリを追って西へ東へと世界中を駆け回ったって事ですね!」

 

「…それだけで済めば、どれだけマシだったか。」

 

「え?どういう事ですかソレ?何か問題があったんですか?」

 

「あぁ、あった。多分その世界特有の厄介事だ…。」

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

とある森林の中で、黒焦げになるほどの感電死した死体が出たとのニュースを聞きつけて俺はその場所を朝一に訪れたんだ。

 

現場は森の中、電柱も送電線も無く、被害者の死亡時刻は天候も荒れていなのにも関わらず黒焦げになる程の高圧電流を受けての殺害。オレはドーパントの仕業だと思い独自に調べてく内に、ヤツと巡り会ってしまったんだ…。

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、お兄さんはどうしてこんな所に一人で来たの?見た所キャンプに来た人じゃないよね?」

 

「ん~、気分転換?」

 

「へ、へぇ~?お兄さんって高校生?今日は平日だよ?学校行かなくていいの?」

 

「あ~、永遠の17歳だからね~。」

 

(コ、コイツッ、まともに話す気全然ねー!

というか本当にどうしてこんな所に一人で…?もしかして、例の焼死体と関係あるんじゃあ!)

 

(うっぜ~、なにこのガキ。子供相手にここまで殺意芽生えたのは人生初めてだ…。)

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

「子供、ですか?」

 

「そ、メガネかけて蝶ネクタイした変なガキ。自称探偵なんだと。」

 

「その自称探偵が悠さんにとってどういった問題になったんですか?」

 

「森林の一件を機に、そのガキがドーパント関連の事件に首突っ込むようになってな。いくら何でも可笑しいだろって思ってソイツの記憶覗いたら、トンでもない事が発覚してな。」

 

「トンでもない事!?それは一体なんですか!」

 

「そのガキな、本当はとある組織に可笑しな薬飲まされて、体が縮んだ高校生なんだと。しかもメディアに載った有名人だとか。」

 

「へー!そんなマンガみたいな事が実際にあるんですね!」

 

「ドーパント事件に関わるのも、ガイアメモリを追って行けばその組織に辿り着けるかも、とか、自分の体を元に戻せるメモリがあるかもって。」

 

「そんな事が出来るガイアメモリってあるんですか?」

 

「さてなぁ、出来る可能性としてはオールドメモリか?…。

まぁあったとしても、メモリブレイクしちまえば掛けた能力はなくなっちまうから、どの道無意味だな。」

 

「どの道無意味、っと…では悠さんは、ドーパント事件が起きるたびにその小さくなった高校生に悩まされ続けたと?」

 

「あぁ。顔合わすたんびに睨んできたり質問攻めしてきたり、盗聴器なり発信機なりつけられたり、メモリ持ってるヤツに質問攻めでキレさせてドーパントにさせて暴れさせたり、戦ってる時サッカーボール蹴って邪魔してきたり…。

流石に毎度顔合わすのはアレだと思って、ダミーメモリで姿変えてたけど、それでもまぁ質問攻めだ後つけられるわでウザイったらありゃしねぇのよ。幸い仮面ライダーってのは最後まで隠し通せたけど、アイツ居なかったらぜってぇもっとスムーズに終わらせられたんだよ、ホンットもう…。」

 

(うわー、これは相当ですねぇ…深く追求するのは止した方が良いかも…。)

 

「…でもまぁ。そんな悩みの種に最後はやってやったがな。」

 

「やってやった?…どういう事ですか、ソレ?」

 

「なんやかんやあったけど、俺は一年という期間の内、どうにかギリッギリで!ガイアメモリの根絶を達成出来たんだ。」

 

「おぉー!流石悠さん!」

 

「で、俺はその達成したご褒美にボーナスと一つだけ願いを叶えてくれる権利を貰ったんだ。上の連中は俺がたった一人でガイアメモリの撲滅運動を達成できないと踏んでたから、アホ上司が賭けてたみたいでよ。」

 

「願いを一つ…どんな事を願ったんですか!?青葉、凄く気になります!」

 

「…俺が叶えて貰った願い。それはな…。」

 

「それは?…」

 

 

 

 

「…あのガキだけが俺を覚えてるようにした。だ。」

 

「……へ?」

 

「理解出来て無い、って顔だな。ちゃんとその辺も説明してやるよ…。

イレイザーは滞在した世界に影響を与えないよう、出て行った後は俺がいた痕跡や記憶が残らないようになってるってのはもう知ってるだろ?」

 

「えぇ。それで皆さん一刻ギクシャクしてましたよね。」

 

「もしもだぞ?自分はある人間の事を始めて会った時から今日までちゃんと覚えていたのに、周りは覚える所か最初から知らなくて、果てはソイツが居たという痕跡すら無くなってたら、お前はどう思う?」

 

「えーっと…不気味、ですね。その人は幻か幽霊だったんじゃないかって思いますね。」

 

「そこを突いてやったのよ!

アイツはとにかく目についた謎を自分で解かなきゃ気が済まなそうなタイプだったし、一生を掛けても絶対解けない謎。つまり、俺の存在を絶対解けない謎にしてやったのさ!

出て行った後のあの世界の事は知らされて無いが、俺の存在によって苦悩するアイツの困った顔が簡単に浮かぶわ!」

 

「へ、へぇー…悠さんって、その子の事そんなに嫌いだったんですか?だって、願いを叶えて貰えるなんて貴重な権利を態々仕返しに使う程ですし…。」

 

「あぁ。個人的にはとても好きにはなれないな。

アレは俺とじゃ性格的に水と油だろうし。それにアイツがやたらと誇張する”探偵”ってのもな…俺の知ってる探偵とその師匠と比べたら、アレを”探偵”として見れなくてね。」

 

「そう、ですか…。」

 

「…もうこの辺でいいか?次の質問に移っても。」

 

「あ、ハイ!それでしたらお次は…。

さっきのとは逆に、簡単だったお仕事は?」

 

「簡単かぁ……ならアレだな──。」

 

 

───

 

──

 

 

 

その世界じゃあVR技術が発展していて、性能面は俺達が使ってると同様に五感をリアル再現出来る程高くてな。その技術をふんだんに使ったオンラインゲームがかなり世間に広まって話題になってたんだ。

 

だが思わぬトラブルが起きた。オンラインゲームの開発者がヘッドギアに細工をしたらしくてな、HPが0になったら脳がヘッドギアからの電流で焼かれ、本当に死ぬようにしたんだと。傍迷惑な設定だよな。

 

で、その時のターゲットもそのゲームをやっている一人だったんだ。

 

 

───

 

──

 

 

「あー、なんかオチが見えてきちゃいましたよ。」

 

「うん。多分思ってる通りだよ。俺は話を聞いて直ぐ、そのヘッドギアに目を付けた。」

 

 

 

───

 

──

 

 

殺り方はこうだ。

まずミラーワールドを経由してソイツが寝ている部屋まで誰にも気づかれずに辿り着き、ソイツが被ってるヘッドギアを…外した。

 

無理に外しても電流が流れる仕組みだってのはニュースでも大々的に取り上げてたからな。ソイツの死亡を確認した後、俺はさっさと部屋を後にした。

 

その世界での滞在時間は僅か20分弱。コレを超える最速タイムは、まだ出ていない…。

 

 

 

 

───

 

──

 

 

「…なんか、大変だったエピソード聞いた所為で、全く面白味が無いですね。」

 

「…うん。俺も思った。順番間違えたな。」

 

「じゃあ気を取り直して次の質問!

これまで携わってきた仕事の中で起きた意外な事、ってありますか?」

 

「意外、かぁ…コレはギリセーフか?…。」

 

 

 

───

 

──

 

 

 

今回の仕事は楽勝だと思ってた。

 

そん時のターゲットの特典は”洗脳”。気に入った女を見付けたら手当たり次第洗脳をかけて、女囲ってウハウハと過ごすだけのヤツだったが、彼女を寝取られて自殺したのが出てしまった為、俺が動く羽目になった。

 

え?女の敵だから当たり前だ?…あぁ。確かに、色んな意味で、女の敵、だったのかな?アレは…。

 

 

 

───

 

──

 

 

 

「ん?どういう事ですか?」

 

「うん…結論から言うと、ソイツは死んだが、俺がやった訳じゃないんだよねぇ。」

 

「え?…。」

 

 

 

───

 

──

 

 

その世界に辿り着いて、俺は早々に仕事を終わらせるためにソイツの自宅へと向かってたんだ。

 

そんで曲がり角を曲がったらソイツの家に到着、って所で偶然にも遭遇しちゃったのよ。

 

 

 

 

自分の家の前で、ターゲットが同い年の女に刺されてる場面に、ね…。

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

「ええええぇぇぇ~~!?」

 

「いや俺も思ったよ?

え、こんなオチアリ?って…でもまぁ、真っ黒なドロッドロの瞳で死体抱きかかえてる彼女見たら、ねぇ…。」

 

「ち、ちなみに、その彼女さんも洗脳されてた人だったんですか?」

 

「…後になって知ったんだけど、どうも刺した彼女、洗脳なんて掛けられてないんだって。」

 

「え…じゃあ、なんで刺したんですかその人…?」

 

「そりゃあ単純に考えて、元々ソイツに好意を持ってた、って事だろ?

野郎が洗脳した女を囲んでウハウハする光景を見て、段々と歪んでいって、結果的にああなってしまったと…。」

 

「…愛って、恐ろしいんですね。人を殺しちゃう程に…。」

 

「あぁ。アレを見てイヤ程思い知らされたよ、うん…。」

 

この時青葉は、”貴方もそうなる可能性、十分ありそうですけどね”と口に出し掛けたが、残る最後の質問にも答えて欲しいが為にグッと堪えた。

 

「それではコレで最後の質問となりますが…。」

 

「最後に来てぶっ飛んだヤツは止めてくれよな。」

 

「大丈夫ですよ!真面目な取材にふざけた質問はしませんって!」

 

「どーだが…で、最後は聞きたいって?」

 

「ハイ!悠さんのイレイザーとしての、初仕事のお話を!」

 

「………。」

 

「?悠さん?」

 

これまで積極的に話してくれた悠が、突然眉間に皺を寄せて黙り込んだ。

 

「……悪いがノーコメント。ソレが最後なら、取材は終わりだな。」

 

「え、ちょっと悠さん!?」

 

「羊羹ごちそうさーん。」

 

悠は呼び止める青葉を無視して、最後の一切れと貰った紙袋を手にラボから出て行く。

 

残された青葉は、悠にとって思わぬ地雷を踏んでしまったのかと顔を青ざめてしまう。初めての仕事で何かあったのかと考える反面、機嫌を悪くしたであろう悠をどうすべきかと悩みだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラボから自室へと戻った悠。電気の付いていない薄暗い部屋と同じくらい沈んだ気分となっている悠は、徐に懐から一本のガイアメモリ、思い入れの深いアイテムであるエターナルメモリをジッと見つめだした。

 

そして自然と浮かんでくる一つの記憶。悠にとって自分の命と大事な人達を失って始まったあの夜の事を。

 

「流石に、こればかりは話したくは無いわ…。

 

 

 

 

 

 

──俺にとってのビギンズナイト…復讐のエピソードなんざ、なぁ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 






今回出て来た世界の三つの内二つ、皆さんお分かりですよね?

前回は不破さんと今回はアルトとでの連続神回!やっと面白くなってきましたね!

戦隊の方でレッドの人がダウンしたっていうけど、これからどうなるんだろう…。

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