ではどうぞ。
「──っん……ここは…?」
「目、覚めた?」
目を開けると見覚えの無い天井が視界に入った。
川原にて赤髪の男との決闘でダメージを負って気を失ってしまった一子。目を覚まし体を起こすと、起きるまで傍についていたであろう悠の姿がそこにあった。
「灰原君?ここは…。」
「学校の保健室。見た感じそこまで重症って訳じゃなかったから、家に送ろうにも君の家知らないし、流石に俺の家に入れるのもアレだから。」
「そっ、か…。」
一子は悠に一通りの経緯を聞いた後、心の内に留めるのが苦しいのか腕で顔を隠し弱々しい声で自らの心情を語りだした。
「灰原君…アタシ言われちゃったんだ。アタシには才能が無いって。才能の前ではアタシの実力なんて無力だって。
……笑えるちゃうわよね。こんな事今初めて言わされて今初めて気づかされた…。
…アタシのやってきた事って、無駄だったのかな?今までやってきたことって全部無駄な努力だったのかなぁ……。」
「……。」
男に言われた才能について自分と比べたことを悠に話す。
一子の隠した目元からはうっすらと涙の跡が出ていた。悠は掛けてやる言葉が思いつかず、一子の話を聞く事しか出来なかった。
「…学校側から家に連絡入れてもうすぐ迎えが来る頃だがら、俺はここで失礼するよ。」
掛けてやる言葉がない以上ここに居ても無意味だと思い、半ば逃げるように暫く一子を一人にした方がいいと判断し席を立つ。
扉に手をかけようとする悠だが、一瞬、彼女に情けや同情を掛けるつもりは無いが、悠は自身の思いを背を向けた状態で一子に向けて言った。
「…これは俺の勝手な意見だけど…君は今まで自分のやってきたことが無駄だと言ってたけど、少なくともそうは本気で思わない方がいい。それは自分自身を裏切るのと一緒だから……俺は、君が例え夢に裏切られても、川神さん自身を裏切ってほしくない……と思う。」
「………。」
それだけ述べた後、悠は今度こそ部屋を出た。残された一子は悠の言ってた言葉が脳裏に焼き付いていた。
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「くそっ!あの野郎、折角ワン子を手に入れられるって時に!」
先ほど一子と決闘していた赤髪の男、剛田 狂士郎は神の不手際により新たな人生を与えらた転生者である。
剛田の居るこの世界は彼が愛用してたゲームの登場人物がいる世界だったので神から貰った膨大な気と切り札を使ってヒロインたちに自分の強さを見せつけモノにしようとまず目を付けたのが一子だったが、途中悠に邪魔されてしまった為に公園で悪態をつきながら歩いていた。
だがあと一押しで一子の心は崩れる。その時に自分のモノにしてしまえばという邪な考えを浮かばせていると、ふと、剛田の視線が先にあるベンチに向けられる。
ベンチには先ほど剛田の邪魔をした悠が居た。顔を伏せながら座っている悠に、剛田は思わず怒鳴り散らしながらずんずんと足音を立てて近づいていく。
「おい!テメエさっきはよくも邪魔してくれたなぁ!あと少しでワン子をモノに出来たってのに、オイ!!聞いてんのかよ!?」
剛田は悠に先ほどの邪魔をされた恨みをぶつけようとしてくるが、悠は顔を伏せたまま目を剛田に向ける事無く、静かに、それでいて感情的に語り出す。
「…知ってるかな……夢っていうのは呪いと一緒なんだ。」
「はぁ?」
「挫折したら、そいつは一生呪われたまま…呪いを解くには夢を叶えるしかない。」
「んだよ、さっきから何言ってやがんだ…?」
「……分から無いかな。」
悠は立ち上がり剛田と対面する、腰にベルトと携帯を持ちながら。
顔上げたその眼に、この世界に来て、初めて怒りを表す顔をして。
「お前のしようとした事は…許されない。」
金色の携帯[オーガフォン]を開き[0・0・0]を入力してエンターキーを押す
<< Standing By >>
「──変身ッ!」
<< Complete >>
オーガフォンをベルトの[オーガドライバー]に挿し横に倒すと金色のエネルギー流動回路[オメガストリーム]が体を巡りフォトンストリームが形成され金の発光の共に現れたのは。
ギリシャ文字Ωを模して背中に[ワイズマンローブ]を羽織り全身が黒のボディ。
全てを地に伏せる地の帝王[仮面ライダーオーガ]
「姿が!?……そうか、テメエも転生者か!なら邪魔して来たのも納得できるぜ。
まずはテメエを殺さなきゃ、まじ恋のヒロインたちを俺のモノにできねえってか!」
剛田はオーガに接近し気の纏ったパンチをオーガの顔目掛けて繰り出す。
剛田にとってその一撃は一子に見舞わした時とは違い岩をも簡単に砕く本気の一撃。だが、パンチを受けたオーガは全く動じる様子はなかった。
「何ッ!俺の一撃を……ッ!ぐはッ!?」
放った一撃が全く効いて無い事に動揺する剛田に、オーガはお返しとばかりに剛田の胸に拳を突き出す。オーガの拳は剛田の胸に深く突き刺さり、剛田は大きく後ろに吹っ飛ばされた。
「がはっ!…はぁ、はぁ…野郎ッ!・・
ん?……ッ!?な、なんだこりゃ!?」
剛田は突き飛ばされたオーガを睨み付けていたが自分の体に違和感を感じた。違和感を感じた個所、先ほど殴った右手と殴られた胸を見ると、少しずつだが灰になっていることに気付き、声を上げた。
オーガの体は人体に有害なフォトンブラッドを全身に纏っている。その中でもオーガはサイガの2倍以上のフォトンブラッドが生成されてる、いわば猛毒の鎧なのだ。
その鎧に触れた剛田の体は灰化現象が起きており、長く触れてなかったお陰か灰化は少ししたら止んだものの、剛田の心情はオーガに対する恐怖心に満たされていた。
「はぁ!はぁ!くそっ!ならば、これならどうだあああ!」
直接触れることを危険と感じ気弾による遠距離攻撃に切り替えて仕掛けたが、オーガの纏っているワイズマンローブの効果で大したダメージは与えられなかった。
無言でゆっくりと歩いて距離を詰めるオーガに思わず足がすくんでしまう剛田。彼は百代に使う筈だった切り札を切り出す事にした。
「クソッ!クソッ!クソオオオ!、こんな所で使うには勿体ねえが、光栄に思え!!
今からとっておきの切り札で、テメエをぶっ殺してやる!」
直後剛田の体が強く発光し辺り一面が光に包まれ晴れた。晴れた次の瞬間、その光景は先ほどの公園では無く、広大な砂漠が広がっていた。
そして先程の態度とは一変した剛田の背後には数千万の軍団がオーガに矛を向けてた。
「これが俺の切り札”王の軍勢”だ!これだけの数ならテメエに触れなくとも殺るのに十分だぜ、さぁお前等、あの黒いヤツを蹂躙しろォ!」
雄叫びを上げてオーガに向かう軍勢を前に、オーガは慌てる様子もなくベルトに付いてる短剣[オーガストランザ]を取り外すと、オーガフォンに付いてるミッションメモリーをストランザへと装填する。
<< Redey >>
短剣だったオーガストランザは刀身がフォトンブラッドによって形成され長剣モードになり、オーガフォンを開いてエンターキーを押す。
<< Exceed Charge >>
フォトンブラッドがオーガストランザに集まり、フォトンブラッドが形成した巨大な光の刃は天にまで届くほどの大きさとなった。
巨大な光の大剣を軍勢に向けて横薙ぎに払い敵を灰と化し一掃する、[オーガストラッシュ]により、数千万の軍勢は瞬く間に大量の灰と成って散った。
次の瞬間また大きな光が当たりを包むと公園に戻った。
剛田はオーガを前に顔を青くしながら震えてた。自分の切り札が目の前の相手に全て瞬殺される光景を見て、自分はとんでもない化け物に手を出したことに絶望していた。
オーガは剣を仕舞いベルトの後ろに付いてる双眼鏡を取り出す。オーガには武器がオーガストランザしかないのを不便に思った悠が作り出したオリジナルのアイテム[オーガポインター]にミッションメモリーを挿し込む
<< Redey >>
オーガポインターの鏡筒が180°回転しキックモードになったのを右足に取り付け再度オーガフォンのエンターキーを押す。
<< Exceed Charge >>
フォトンブラッドがポインターに集まり構えるオーガを前に我を取り戻した剛田は一目散に逃げる。
みすみす逃がすつもり等毛頭無いオーガが足を向けてポインターから放たれるマーカーによって拘束されて剛田は逃げられず立ち止まる。空中に飛んだオーガは剛田目掛けて両足を揃えてポインターに向かって蹴りを放つ[エンドスマッシュ]を剛田を拘束するポインターへ叩き込んだ。
「ハァァァッ!」
「ぐあああああああッ!?」
キックを受けた剛田に金のΩのマーク浮かぶと、青い炎と吹き出す。
オーガの背後で音を立てず灰になり、剛田の野望は灰と共に風に流された。
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翌日、昼休みに昼食を食べた悠はベストスポットにて読書をしていた。
ふと誰かが悠の近くに立っていたので顔を向けるとそこには昨日別れた一子が。お互い顔を合わせた後何も喋らず一子は悠の隣に座る。
暫く無音の空気が続き、先に口を開けたのは一子だった。
「…アタシね、あれから考えたんだけど、もうしばらく夢を追いかけることに決めたの。
例え無理だと知ってもさ、行けるところまで行って後悔の無い様にしたいの……アタシが胸張って、自分を信じていたって堂々と言えるように!」
「……そう。」
少し悩みながらも自分の行く道を決めた一子に対し、悠は短く答えてあげた。
「そうだ!ねぇ、今から灰原君の事、ユウって呼んでいい?アタシの事も一子かワン子って呼んでいいから!」
「…なんでいきなりそんな話になるのかな。」
「いいじゃない!アタシがユウの事をそう呼びたいだけだし!ほら言ってみてよ!」
「俺が答えるより先に言ってんじゃん………まぁ、気が向いたらって事で。」
「今呼んでよー!」
静かだと思ってたベストスポットは主に一子の叫び声で賑やかな場になったとか。
と言う訳でオーガにオリジナルの武器を与えました。イメージはカイザポインターを黒と金にしたものです。
今回は主人公の内面が少し現れた話でした。
それではまた次回。