SAO外伝 血の盟約の下に   作:佐藤 黎曜

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 やっちまった……

 今更、ラブライブ! 見始めちまった……

 猫の子かわいい……、リンちゃん、リンちゃん……

 エンディングでずっとマラカス振ってるの……かわいい……(情緒不安定)

 


守ってくれないか

 腐肉(ふにく)騒ぎの後、自室に戻ってからも僕は彼女の様子が気になっていた。

 

 戦うことに(おび)えているようだった。あの目、あの声、あの様子。ああいう奴は知っている。無理やり通わされて道場で長続きしない奴だ。

 

 かといって、すぐさまどうにかできるわけでもない。なにしろ本人は強がって認めようとしなかったし、(はげ)まそうにも(なぐさ)めようにもなにをいっていいのかわからなかった。

 

 本当にここに残ってよかったのだろうか、彼女のためだなんて思ってたけど、結局ほんとうの戦いから逃げただけだったんじゃないか。ここにいても、僕が彼女にできることなんてないんじゃないのか。やっぱり茅場を殺しにいくべきなんじゃないか。

 

 どうしようもなかった僕は結局いつも通りに型稽古を繰り返していた。

 

【サイドチョップ】、活用三種。

 

 ひとつ、後衛とのスイッチ、横っ跳びで飛び退きながらの首狙い。ふたつ、内股(うちまた)、開き足で側面へ回り込みながら同じく首。みっつ、敵の突き技を、踏み込み、()()で横になって(かわ)し、手首、ないしは二の腕を狙う。回避と斬撃は同時に行われなければならない。

 

 習慣というのは恐ろしいもので、身体(からだ)を動かしているうちに彼女への心配も、茅場への殺意も、いつの間にかすっかり心から洗い流されていて、頭の中は数だけになった。

 

 けれどもやがて、ノックの音が僕を煩悶(はんもん)焦燥(しょうそう)のうちに呼び戻す。

 

 彼女か。

 

 僕はちょっと過剰(かじょう)に驚いて、空手で(きた)えた足運びの必要以上に機敏(きびん)な動きでドアにスパッと()り寄ると、返事もしないまま素早くノブを回し、開いた。

 

 立っていたのはケイタ君だった。

 

 遠慮(えんりょ)がちに(うつむ)いて立ち尽くしている彼の渋面(じゅうめん)を、僕もまた呆然と見上げた。なんの用だろう。(くさ)ったボア肉の件で改めて抗議に来たわけではなさそうだったけれど。

 

「……ごめん、遅くに。入っていいか?」

 

「あ、うん。どうぞ……」

 

 僕が手で促すと、彼は軽く会釈(えしゃく)して中に入り、ベッドに腰かけた。僕はその正面、化粧台の丸椅子に座る。

 

 (うつむ)く彼の苦悩をそのまま煮詰めてビン詰めしたような息苦しい沈黙に()えかねて、僕が要件を問おうとするその(きょ)を突くように、彼は顔を上げた。

 

 躊躇(ためら)いに揺れる瞳。

 

「……サチは、君から見てどうだ」

 

 どう、と訊かれても、困る。質問の意味がよくわからなかった。

 

 自分の彼女が僕になびくのを心配したのだろうか、という下世話(げせわ)な考えが浮かんで消えた。まさか。そんな雰囲気(ふんいき)じゃない。

 

「……どういう意味?」

 

 結局バカ正直に問い返すしかなかった。

 

 今の一言でその真意を()み取れるほど、付き合いは長くない。

 

「戦えると思うか」

 

 ああ、そうか。

 

 彼女の様子がおかしかったから、心配していたのか。

 

 おかしいのは彼でも彼女でもなく僕の方だ。彼女の変化に気づいていながら、今の今まで、なんの躊躇いも疑いもなくクソ狭い寝室でバカみたいに型稽古を繰り返していたのだから。

 

「強がれてるうちは、大丈夫だと思う」

 

 僕が無責任にもそんな風に答えると、彼は声を低くして、

 

「強がりが過ぎるんだ、あいつは」と、()いた。

 

 だって本人がだいじょうぶだっていってるんだから、しょうがないじゃないか、と思う。

 

 僕にどうしろっていうんだ。

 

 けれど()き上がる怒りは、彼女になにもしてやれない自分への(いきどお)りがそのまま彼に転嫁(てんか)しただけだということは自分でわかっていたので、僕はこのみっともない気持ちをひとまず胸の中にしまい込んで、表立って彼に文句はいわなかった。

 

「君が、(そば)にいてあげればいいんじゃないの。てっきり彼氏かなんかだと思ってたけど」

 

 文句はいわなかってけれど、結局、言葉はトゲトゲしくなった。

 

 けれども彼は特別気を悪くする風もなく、ただ落ち込んだ様子で「違うよ」と、小さな声で否定した。「彼氏じゃないよ」と。

 

「じゃあ、なんなのさ……」

 

「なんだかわからなくなるくらい、長く一緒にいすぎたんだ。そのうち、お互い大事なことは、なんにも話せなくなっちまった。僕には頼ってくれない」

 

 君のことが好きだからじゃないか、とはいえなかった。

 

 そんな風に他人の気持ちを測れるほど、僕は友情にも愛情にも詳しくはない。

 

「僕になら頼るの……」

 

「君の話ばっかりするんだ」 

 

「……なんて?」

 

「イノシシをドロップキックで蹴り飛ばしたとか、モノマネが上手とか、チュートリアルの(あいだ)も全然取り乱さなかったとか、借り物の槍でダッカーのソードスキルを弾き飛ばしたとか……、彼がいれば、絶対だいじょうぶとか」

 

「買い(かぶ)りだと思う。初めに会ったとき、イノシシから助けたイメージが大げさに残ってるんだよ、きっと」

 

「そのイメージ、守ってくれないか」

 

 昨晩のことを考えれば、やぶさかではない。

 

 けれど、ここに残って、彼女を見守ろうと決めたのは僕の意思であって、この男に頼まれたからじゃないという子供じみた意地、のようなものが胸にわだかまって、素直に、すぐには首を(たて)に振れなかった。

 

 なんで僕に頼むんだ、とも思った。長年連れ()った仲間の役割を、ちょっとすれ違っただけの異邦人(いほうじん)に、こんなに都合よく外注していいもんなのか。お前ずっと彼女と一緒にいたんだろ?

 

「僕をパーティに誘ったのは、彼女のため?」

 

「……否定はしない。でもテツオは、君のこと本気で心配してたよ」

 

「どうして?」

 

「ほっとくと死ぬ、って」

 

「もう五百人も死んでる。いまさら僕ひとりが死んだからなんだっていうんだ」

 

 彼がぎょっとして息を()んだ。

 

 けれどそれから、僕をしっかり見据えてゆっくり言葉を()いだ。

 

「僕らが悲しい」

 

 切実で誠実な声だった。

 

「サチは特に。この一週間を一緒に過ごして、もうみんな君のこと仲間だと思ってる。それでも一人で行くっていうなら、止められないけど」

 

 こいつら、お人好しが過ぎるんじゃないのか、と思う。この状況でよくも信用してくれたものだ。脳味噌お花畑かよ。

 

 今は調子よく仲間みたいな素振(そぶ)りで居座ってるけど、僕は最初、君らを放ってさっさと一人でフィールドに出ようとした男だぞ?

 

 彼女との会話が想い起こされた。

 

『付き合い、長いんですか?』

 

『うん』

 

『でも、ずっとばかなんだ』

 

 (さみ)しそうな、微笑み。

 

『そうなの、ずっとばかなの』

 

 このまま彼の望み通りにことが運ぶのがなんとなくカンに障ったので、ちょっとだけ意地悪をいってみることにした。

 

「彼女、このゲームの初めに、君たちが自分をほっといて狩りを続けてたの、根にもってる」

 

「……え?」

 

「ばーか、だって」

 

「あ……いや……、もうそろそろ次の村に着きそうだったし、彼女から夕方に一度落ちるって聞いてたし……、まさかこんなことになるなんて思ってなかったし……」

 

「なんで僕にいいわけするのさ、みっともない。だから頼ってもらえないんだよ」

 

「返す言葉もない……」

 

 彼の顔に、ズーン、と縦線が落ちた。ひどく落ち込んだようだ。ざまみろ。

 

「……わかったよ」

 

 ややあって、僕がいうと、彼は「へ?」と間の抜けた顔を(さら)した。

 

「彼女を気にかけておけばいいんだろ。だから、君もしっかりしなよ、部長」

 

「ありがとうっ、……ん? 僕が部長ってもう話したっけ」

 

「見りゃわかる」

 




 夏休みいっぱい使ってストイックに小説を書こうと決めたのに、μ‘sが俺を誘惑するんだ……

 シューカツ? ナニソレオイシイノ……?

 
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