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そんなふうに日々は続いた。こんな日々がずっと続けばいい気がしていた。
けれど、どんな日々も流れゆき、いつかは思い出の
いろんなことを置き去りに、時間はずっと進みゆく。
未来はいつか、
逃げ場はない。
「少し、
この世界に来てから二週間が経とうとしていた、早朝、東の草原。
いつものクエストを受けて
右手に
僕らが
「えっと……」
ケイタ君が一歩進み出ると、首を
「遠慮、というのは、狩りのことですか? 猪を倒すなと……」
「倒すな、とはいわん。だがこの場は
「どうしてですか?」
「我々は、はじまりの街のプレイヤーを
重苦しい声で彼は告げる。
「多くのプレイヤーが
ひと呼吸おいて、
「攻略を目指しているわけでもないのだろう」
そして彼は、僕の後ろに隠れる彼女を見た。
毛皮のベストの下、胸元の、街の防具屋で買える一番上等な革の胸当てを見た。僕とケイタ君で割り
彼の視線に彼女は縮こまって、僕の背に身を寄せて、シャツの
この男のいうことも、態度も気に入らない。そんなことできるわけないだろうが。何人養うつもりだバカじゃないのか。剣
僕がいい返そうと口を開くと、男の後ろから駆け寄ってくるふたつの人影に
「コーバッツ、どうしたの……っ?」
そのうちの一人、背中まであるポニーテールを大きく揺らして走り寄ってきた、右腰に短剣を差した細身の女性が、彼に声をかける。
「……話の途中だ」
「なんの話をしていたかって訊いてるのっ! 剣を納めなさい!!」
「ん……」
彼は自分の得物に目線を落とすと、ゆっくりと腰の
「……失礼した」
一応の礼節はあるのか、それとも
それから、女性に向けていう。
「今、彼らに狩場を退いてもらうよう注意していた」
素っ気ない
「フィールドは私たちのものじゃないわよ……ッ」
「そうだ、特定のパーティが独占していいものではない。この場は彼らが
「あなたね……っ!」
いい争いが続く。僕らは置き去りだ。
僕は二人の身内らしいもう一人、細長い
「あの」
けれど
「クエストに必要なだけ素材を集めたら引き上げるつもりです。あと少しなんです。それまでここで、狩りを続けてもいいですか? どうしてもというのなら、よそに移りますけど……」
「はい、ええ、もちろん。どうぞこの場で。身内が失礼をしたようで申しわけありません」
と、女性が、勢いよくポニーテールを揺らして、頭を下げた。
「……いえ。じゃあ、僕らはこれで」
男の方はまだなにかいいたげだったけれど……、ダッカー君が強烈に
「あの、待って。ちょっと待ってくれますか」
慌ただしい声がかかった。視線を戻すと、縮れ毛の男だった。
「申し遅れまして申し訳なく……」
一瞬、場が
彼はひとつ
「すみません、私はシンカーといいます。厚かましいとは思いますが、お教えいただきたいことがあるのですが」
「……はい、なんですか」
ケイタ君が硬い声で返すと、男は恐縮しながら続ける。
「今私たちは、ボアの毛皮と肉の収集系クエストを進行してるんですが、他に、素材収集系のクエストに心当たりはありませんか?」
質問を受けて、ケイタ君は少しだけ迷う
「……どうしてそんなこと訊くんです」
慎重に、質問で返した。
シンカーさんは必死さの
「今、街を出ることを決めた初心者たちの間で、狩場を巡ったトラブルが増えてるんです」
さっきのがまさにそれだったわけだけど。
僕は意図してコーバッツというらしい大男を
シンカーさんが話を続ける。
「システムが供給するリソースは……、一度にフィールドに出現するモンスターの数は限られています。大勢が大量に狩れば、Popが
シンカーさんが頭を下げ、次いで、名の知れない女性と、コーバッツが遅れて続いた。
ケイタ君はこちらを振り返って不安げに僕の方を
ここで、僕を見るのか。僕が決めるのか?
「……ケイタ君に任せるよ」
僕が応じると、後ろで残りのメンバーもバラバラと
「……じゃあ」
それからしばらくケイタ君とシンカーさんは、店の位置をマップを可視化して確かめたり、クエストの内容や報酬について話し合ったりしていた。
その間に、女性が走り寄ってきて、話しかけてきた。
「すみません、連れが失礼したようで。ご協力、どうもありがとうございます」
彼女は勢いよく腰を折ってポニーテールを揺らした。
僕は、いえ、と、多少
コーバッツも続いて、「協力、感謝する」とのたまったけれど、僕はそっちには返事しなかった。
「んーとぉ」と、前に出て声を上げたのはテツオ君だ。「訊きたいことがあるんですけど」
「ええ、なにかしら」と、どちらかといえば
「組織だって動いてるんですか? あなたたちは」
「はい。まだ人数は少ないんですが……」微笑みを崩さず女性は答えた。
そして、頼んでもいないのにあとを継いだのがコーバッツだ。
「我々は、はじまりの街の黒鉄宮に常駐している」
……僕は
「
へえ、とテツオ君は感心したような声を上げた。
「それは大変でしょう。あの街で
テツオ君はそういった。それは、不可能だろう、という遠回しな進言なのかもしれなかった。
「そうだ。人手が要る。
女性の方がコーバッツを横目で睨んでから、かしこまった様子で、すみません、と付け加えた。「無論、強制はできませんが……」と。
お断りだった。
「そうですね、リーダーも含めて、相談しておきますよ」
テツオ君もその気はたぶん、ないのだろう。
けれど言葉を
やがてケイタ君とシンカーさんが戻ってくると、ふたつのパーティで簡単な
「……あれで、よかったのかな」
その日の狩りの帰り道で、ケイタ君が小さく呟いた。
「どうしてさ。訊かれたことに答えただけだろ」
僕が問うと、彼は悩ましく目を
「クエスト
「気にしすぎだよ。もしそうなっても、君のせいじゃない」
僕はそういいつつも、
話題を逸らしたくて、言葉を継いだ。
「シンカーさんだっけ。ずいぶん長く話し込んでたけど、なにかあった?」
「困ったことがあったら遠慮なく相談してくれって。あと、直接戦わなくてもお金と経験値が入るお使い系のクエを教わった。かなり効率が悪いんで、もう僕らの役には立ちそうにないけど……」
そっか。と、僕は頷いた。
「……あいつら、気に入らねー」
ぼそり、とダッカー君が反対側の
聞きとがめたのは、たぶん僕だけだ。言葉を返すべきか惑っていると、彼はもう一度、気に入らねぇ、と繰り返して、僕の返事を待たずに早足で進んで、パーティの先頭を歩き始めた。
いけないことなのか。
みんなで狩りに出て、買い物して、晩には
――攻略を目指しているわけでもないのだろう。
重たい声が、僕の腹の底に沈んでわだかまっている。
【予告】【サービス回!!】
意外なあの子がティジクンに迫ってドッキドキ?! 脳裏をよぎるサチの面影。けれども誘いを断り切れない彼は、組んず
ああ、それでいいのか主人公?!
この修羅場をどうやって乗り切るのか?!
乞う、ご期待!!