読者のみなさんは、中でするのと外でするのはどちらがお好きですか?
あと、正上位と騎乗位ではどちらがお好みでしょうか?
いやぁ、修羅場って怖いですねえ。(すっとぼけ)
「なあ、デュエルしようぜ」
その晩、部屋のノックがいつもより軽いクセに慌ただしかったので、どうしたのだろうと戸を開くと、ケイタ君でも彼女でもなく、僕に劣らず
「……とりあえず、入ったら」
「中より外だ。出ようぜ。いつものトコでいいだろ」
なにを焦っているんだろう。僕はそもそもどうしていきなりそんな話になったのか
ひとまず彼の
近くに光源は見当たらないが、見晴らしは悪くない。空間そのものの明るさが上手に調整されているらしい。奇妙な、のっぺりとした
僕らは示し合わせたように、五メートルほど距離をおいて向かい合って立つ。臨戦態勢。いや待て、そうじゃない。僕は相手の戦意にすぐ引きずられてしまうタチだけれど、今はよくない。
「あの、デュエルするんだよね?
「初撃決着モードでやる」
と、彼は短く答える。声が硬い。やっぱり様子がおかしい。
「一撃で死んじゃったり、しないよね……」
「お前、今レベルいくつ」
「……3に上がった」
「オレも3だ。HPは増えてっし、武器もお
「……そもそも勝負なら模擬戦でいいんじゃないの」
「毎日毎日よぉ……」
彼が頭を
離れて立つ彼の背は、僕と比べても低い。だから
「パーティでちまちまイノシシ狩ってよ。そろそろ一週間だ。初日から数えりゃ、もう二週間だぜ……。なあ、オレら、このままでいいのかよ……」
ぽつぽつと
「よくないの……。このままでいいじゃないか。死ぬまで猪、狩ってればいいんだ」
「お前、変わったな」
その一言が、今のところ僕には一番効果的な挑発だったかもしれない。
「どこが……」
そんなことをいわれるほど、付き合いは長くない。
僕のなにがわかるっていうんだ。
「初めて会ったときゃあ、もっとトガッてたろ。一人でなにもかもブチ殺しそうな
彼の言葉の一つひとつが、やすりみたいに僕の
僕が黙って異様な感覚を
「なあっ、逃げんのかよ?!」
叫びが夜闇に消えてから、たっぷり三秒。
「……わかったよ」
自分に確信が持てない。熱に
「ハ……ハッ……そうだよ……それでイイんだよ……」
彼はうわごとのように呟き、落ち着きのない様子でメニューを操作してから、僕のカーソルを指差す。ウィンドウが浮かび上がる。
【Dacker から 1vs1 デュエルを申し込まれました 受諾しますか?】
初撃決着モードの
【DUEL Mode Accepted!】のウィンドウが閃くと、彼はぶるりと一度、身を震わせてから歯を
カウントダウンが表示される。残り60秒。
彼が左腰の鞘から右手でダガーを抜いた。こちらに
そのままじりじりと、不安定な
「ほんとうに、やる気なんだね……」
応じて、僕はメニューウィンドウの装備欄を操作。左の腰に、
「……それでフリッカーでも打つつもりかよ」
「知ってるんだね。はじめの一歩、読んだ……」
「ああ、全巻
「趣味が合うね。決闘はやめにして、マンガの話、しない……」
「やめようぜ。ここじゃ読めもしねえのに。むなしいだろ、そういうの……」
カウント、残り15秒。距離、3メートル。
彼は構えを変えていない。あの姿勢からすぐにモーションに
通常攻撃で
残り15秒。彼はゆっくりとした前進を止めない。カウントを待たずに仕掛けてくる? いや、彼はそういうタイプには見えない。今のところ開戦に備えて間合いを計っているだけだ。
10秒。彼がじりじりとした前進をピタリと止めた。もう、半歩踏み込めばダガーが互いの喉笛に届く距離。
ギラついた目で、睨みつけてくる。
このプレッシャーはなんだ。模擬戦と同じようにやれば間違いなく勝てる相手であるはずなのに。勝つ? この男に? システム障壁のないところで斬ったり刺したりして? もうこの世界は遊びじゃないんだぞ?
まただ。あの感覚。足元から現実感が消えてゆく。
カウントが進むごとに圧力は増している。もう
【DUEL!!】
ウィンドウの閃きとまったく同時に、僕らの腕が交差、衝突した。僕は地を
彼はすかさず歩み足で踏み込むと、
体格からは想像もつかないくらいに
追撃が止まらない。彼は
弾き、
パアン! と引っ
終わった……? けど、デュエル終了の表示が、まだ出て、ない……。
伏せった彼の顔面が、打撃を喰らったとき独特の、面が赤く光るダメージエフェクトで、染まって――――
「オイ、ンだよそのしょっぺえ技はァ……」
鬼の顔だった。
顔面に
たとえ現実で鼻や目のフチの骨を叩き折る打撃であっても、システムに強攻撃と認められなければ意味がない。今の僕のステータス、それも素手では、体重の乗らない一打でデュエルを終わらせるに足らない。
彼の
なんだよ……、なにをそんなに、必死に……?!
僕は恐れた。怖くて怖くて下がり続けた。彼の技や武器ではなく、彼を駆り立てる得体の知れない想いを恐れた。それは僕が目を
とにかく彼を近づけたくなくて、猛攻を
訓練用のカカシ。誘導された。
「――――?!」
彼が身を屈めた。
突進、重単発突き、【スラストチャージ】。
「ォオッ!!」
「くっ――――?!」
右の
今、【サイドチョップ】を放てば、彼の喉を
「――――ッ」ドス、と彼の首を、右のダガーの
彼の脇を抜ける。そのまま背後に回る。ステップ。下がる。下がる。
そして彼が、背を向けて
「……っけんな」
「……?」
彼が振り返りながら、首の脇でダガーを立てた。まだ【スラストチャージ】はクーリングタイムを終えていないはずだ。あの構えからこの距離で打てる技は、【アサルトチョップ】あたりか? いや、いくらなんでも、そんな見え透いた……
ライトエフェクト。
「――――ふざッけんなアッ!!」
【投剣】。【シングルシュート】。
とっさに思い切り
彼の気迫に押されたように、僕はそのまま
彼は
「ァアアアアアアアァアアアッ!!」
「ぐっ……?!」
戦意はすでに尽きていた。もういい。やめてくれ。早く終わってくれ。けれど現実の戦いの中で僕に染みついた技がこの
逆手持ちダガーが僕の
不安定な片手
放せば斬られる。彼の右
「オイ、斬れよ……」
ダガーを振り被ったまま動かない、動けない僕に、熱した
「……ッ! ……ッ!!」
動けない。
「斬れッつってんだろォ?!」
ガシ、と、僕の
背中を
「本っ、気でッ! やりやがれ!!」
ガン、ゴンガン、と続けざまに放たれる拳を、右の手首と
ついに彼が僕の左手を
ヒュパ、と。
僕はついにそれをやってしまった。
狙ったわけではなかった。瞬間、
終わりじゃないのかよ。システムはなにやってるんだ。だって、斬ったぞ?
僕は、この手で、彼を、刃物で、凶器で、斬ったぞ?
今のを強攻撃だって認めてくれないのか。だって、そんな、こんなの終わらせるには、本気で斬るしか――――
僕は自分でも知らないうちに、まるでそういう人形のように立ち上がっていた。なんで立ってるんだ僕。もういい。そうだ、降参してしまえばいいのだ。どうやるんだっけ。思い出せない。
彼は笑っている。クツクツと、構えた肩を震わせている。
「やっと、斬ったな……」
そうだ、思い出した。負け宣言すればいいんだ。今すぐ、降参、とか、リザイン、とか、はっきり口に出していえば、それがシステムに認めてもらえれば、こんな馬鹿げた勝負はすぐに終わるのだ。口を開く。
声が、出ない。
「オイ、どうした。続きやろうぜ……」
ひゅう、ひゅう、という
声が
「こいよ……、なにしてんだ……」
彼の頭上のHPバーを見る。棒線の端に、一割近くも空白がある。
「こいっつってんだろ……!」
息が苦しい。視界は暗く、狭い。
「こいよォ!! かかってこいッつってんだろオッ?!」
「い、嫌だ……」
実際は、ひゃだ、とか、そんな発音だったかもしれない。
けれども彼は
「んだよ、それ……」
その顔面から表情が抜け落ちた。構えが
つられて、僕も両腕を下ろした。息が、やっとできる。
「オレなんかとは本気でやってらんねーって、そういうことかよ……」
「だって、こんなの、意味ないだろ……」
彼は
「……そうかよ」ぼそり、と呟いた次の瞬間。
彼は
【YOU WIN!!】
鮮やかなシステム窓が、僕の
彼のHPバーは、事態の展開に対してむしろ遅すぎるくらいにゆっくりと動き、たっぷり半分近くまで中身を減らしたところでようやく止まって、デュエルが終了したことにより不可視状態となって消えた。
「そうだよ、意味なんかねーよ」
「……なんで」
「だから意味なんかねーよ。なにもかもムダだ……」
彼の言葉が夜闇に溶けて消えていっても、僕は
僕の沈黙を拒絶とみたか、彼はひとつ舌打ちすると、ひどく頼りない足つきで小さな背を
「
彼が走り去り、軽く、けれど落ち着かないリズムの足音が夜闇に消え去るのを待って、僕は
実感に
「落ち着けよ……」
彼女に会いたかった。
彼女の
「もう戦うことなんかないんだよ……」
脳味噌溶けてる。そうかもしれない。いけないのかよ。
そうして僕は生まれて初めて、挑まれた勝負に背を向けた。彼との戦いが、そのくすんだ情熱が僕にもたらす変化を恐れた。逃げたのは僕だ。彼じゃない。
これは僕の負けだ。でもそれでいい。
これでいいはずだ。
【次回予告】【またまたサービス回!!】
彼女への想いを募らせながら、夜、布団の中で情欲を持て余すティジクンの耳に入る怪しい喘ぎ声。隣の部屋では謎の美少女が同じく情熱を
吸い寄せられるように少女の部屋を訪ねるティジクン。このまま溢れる想いをぶつけ合ってしまうのか?!
次回、突撃! 謎の美少女のお部屋訪問!!