SAO外伝 血の盟約の下に   作:佐藤 黎曜

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 だから、死ぬから(筆者が)

 この主人公、全然筆者のいうこと聞かない(泣)


思い出の中じゃ死ねない

 ――――セミの声が聞こえる。

 

 日に焼けたアスファルトの熱を背中と後頭部に感じる。ブルーの水性絵の具をぶちまけたみたいな空に太陽。眩しくて目を細めた。

 

 ふと、光が遮られる。日傘(ひがさ)だ。

 

「だいじょうぶっ? わたしのいってることわかるっ? 返事して!」

 

 白いワンピース姿の女性だった。彼女は、ええと、誰だったっけ。きれいな顔をとても恐ろしげに歪めて、必死にこちらに呼びかけてくる。

 

「……うん」と、とりあえず返す。

 

 僕はどうしてこんなところに横たわっているのだろうか。

 

 ふと、別のシルエットが近づいてきた。それから、その子が、その子が、いきなり上から降ってきて、と、ひどく狼狽(ろうばい)した男の声が聞こえた。彼女は声の方を振り返って、「いいから救急車ぁ呼びなさいッ!!」と凄まじい声で叫んだ。僕は怖くて、寝そべったままビクンと震えた。ひっ、と悲鳴が漏れた。彼女が怖くて、なんだか居心地が悪くて、すぐにでも起きて逃げ出してしまいたかった。救急車? 誰かケガしたの? わけがわからない。

 

「君、()かれたの! ねえ、思い出せる?!」

 

 轢かれた。そうだ、車。坂から転げ落ちて、それで、跳ね飛ばされたのだ。その事実に思い当たって、身体(からだ)から一気に血の気が引いた。死んでしまう、と思った。あんなモノにぶつかられて生きていられるはずがない。怖くて震えた。

 

「どうしたのっ? どこか痛い?!」

 

 問われてはじめて、急に、ずきん、と。その痛みに思い当たった。

 

「いたい……」

 

「痛いの!? どこ?!」

 

「かた……」

 

「頭はだいじょうぶ? へいき?」

 

 なんで頭の心配なんかするんだろう。痛いのは肩だ。

 

「ひだり、かた、いたい……」

 

「そう、肩が痛いのね? それで、頭は? 打たなかった?」

 

「あたま……、わかんない……」ぼうっとする。現実感がない。

 

 また、男の人の声。住所が、住所が、わからなくて、「電柱ッ!!」再び彼女が叫ぶ。また、こっちに声をかけてくる。

 

「どこか(しび)れたり、目が(かす)んだりはしない?」

 

「うん……、でも、かたいたいの……」

 

「そっか……」と、彼女はひとまず安心したように息を()いた。「うん、でも、痛いのはだいじょうぶだよ」と。僕にはけれども、今も内側から焼けつくようなこの鈍痛が、とてもだいじょうぶなものだとは思えなかった。今にも死にそうな気がしていた。「だいじょぶじゃない……、いたいよ、ネエネェ……」弱気が出た。

 

 泣きそうな僕を、でも彼女はこういって励ました。

 

「生きてる証拠よ、なんくるないさ」

 

 そっと僕の右肩(・・)に手を添えてきた。

 

「そっちじゃないよ、ネエネェ……」

 

「こっちじゃないの? 違う?」彼女は怪訝(けげん)そうに首を傾げた。

 

 違う。そうだ。記憶と違う(・・・・・)。あのとき外れたのは右の肩だ。この痛みは、今の――――

 

 急速に頭が()えてくる。僕にはいかなければならないところがある。やらなければならないことがある。

 

「ごめんなさい。僕、いかないと」

 

「どうしたの? まだ寝てないと……」

 

 僕が上体を起こすと、彼女はびっくりしたように身を引いた。同時にあたりを包んでいた熱気が薄らぎ、景色は陽炎(かげろう)のように揺らいで遠のいた。風が吹く。葉擦れのざわめきに急かされるよう立ち上がると、僕はもう24歳の姿に戻っている。群青色の毛皮のベスト。タスキ掛けした革ベルトにはナイフがびっしり刺さっていて、左の腰にはダガーの収まった鞘。そこはもう熱にうだされた道路の上じゃなく、高台の墓場だ。無骨で巨大な鉄塊みたいな扉の前に、日傘の女性が寂しげに立っている。

 

「……そっか、君、生きてるんだね」彼女は軽く目を伏せって、小さく笑った。

 

「はい、まだ一応。だから今、思い出の中で死ぬわけにはいかないんです。……ほんとに死んじゃったら、また来ます」

 

「うん、気長に待ってる。いってらっしゃい」

 

「ええ、いってきます」彼女に背を向けた。

 

 開けた木々の向こうの空はそのまま映画のスクリーンのように、跳ね飛ばされて回転しながら空を舞う僕の姿を、千分の一倍速のスローで映していた。

 

 僕は走り、地を蹴って、その空へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時が動きだす。世界が回りだす。ほんとうに回っていた。

 

 ぐるぐる回転する世界をひどくゆっくりと感じる。ぐる。遥か遠くに、円を描いて廻るイノシシたち。ぐる。真下に僕を跳ね飛ばした親玉。今更だけど、ほんとうにデカい。まずササマル君が、それから何匹ものイノシシが順番にその両の脇腹へと突っ込んでいった。ぐるり。親玉はボディを打たれて悶絶したのか、四つの足を折って腹で地を裂くように滑ってゆく。土煙が吹き上がる。ぐるん。様々な角度で回転しながらひっくり返ってゆくイノシシたち。ぐるん。吹き飛ばされるササマル君が地表に対して斜めに錐揉み回転しながら、ゆっくりと放物線を描いて落下しようとしているのが確かめられた。ぐるり。ゆっくりと回る世界の中で、HPバーだけが視界の左上でかっちりと固定されていて、極めて遅々とした速度で減少を続けている。攻撃を受けてから、実際に受けたダメージ分の数値がなくなりきるまでには、どうやら(わず)かながらも()があるらしい。つまり死が決した後、死んでしまう前にできることが残っている。ぐるん、ぐるん。ササマルのHPバーの減少は、ちょうど中身が4分の3になったところで止まった。だが危機は去っていない、彼が地に叩きつけられた後、イノシシに連続でかかってこられれば危うい。ぐるん。注視を続ける。僕はバレエダンサーのように自らの身体の回転に合わせて首を廻して、彼を見つめる。僕のHPバーは半分を割って黄色く変色し、まだ減少を続けているが、今はいい。ぐるん。僕の身体が放物線の頂点に達し、瞬間、宙の一点に留まる。ほとんど同時、彼が不安定に伸びた右足を地に擦った。滑り、次いで左足を接地できないままもう一回転して膝をつき、そのまま地を転がる。僕はゆっくりと地へと落ちてゆこうとしている。くそ、遅い。重力はなにしてる。もっと強く引っ張ってくれ。ササマル君が転がってゆく。僕は着地の準備を始める。ぐるん、ぐわっ、と開脚。支えの効かない空中で、上体を右に、下半身を左に(ひね)る。ぐるん、ぎしり。ササマル君が地を転げている。大地が近づく。ぐる、ぐいん。僕は上体と下半身を逆に返し、慣性と遠心力を瞬間的に右足の先端に集めた。胴廻(どうまわ)し回転(かかと)落としの要領。得意技だった。いける。

 

 あらゆる音は消えている。が、なにか叫んだ気がする。

 

 地表に対して真横に倒れたまま回転する身体。背中越しに、右の足裏を地に叩きつけた。だがそれだけで勢いを殺しきれない。右足を地に残し、再び上体を右に返す。さらに左に返す。その反作用で、めいっぱい開いた左足をつま先で大きな円を描くように廻し込んで、地に叩きつける。背中を(つか)って伸び上がる心構えで、跳んだ。まだ勢いが殺しきれない。フィギュアスケーターよろしくトリプルアクセル。宙で回転しながら、完全に身体を伸ばし切り、姿勢を地に対して縦に正した。ラスト一回転、宙で両脚を開き、背を伸ばしたまま腰を前に折る。大股開き、膝と股関節を柔く遣って衝撃を吸い着地、(つよ)く遣って重さを抑え込む。両の拳を、深く腰を落とした姿勢で地に垂直に叩きつけた。土砂が噴き上がる。

 

 着地、完了。真っ向を見据える。こちらに背を向けて腰をついているササマル君を確認。すぐには起きられそうにない。彼に向かって突進し飛びかかろうとするイノシシが一体。黒いやつだ。が、今の僕なら問題ない(・・・・・・・・・)。彼我の距離、目測で6メートル。

 

 左、右、と、2歩で詰めた(・・・・・・)。右の裏突きで、首の脇をを打ち上げる。錐揉みして身体とHPの半分ほどを吹き飛ばされる黒いやつがひっくり返るのを見届けず、左でダガーを逆手に引き抜き、(つか)の頭を右肩に添えるよう左腕を畳み、左足を浮かせ、左半身(ひだりはんしん)を内に(しぼ)る。(せん)。踏み込み。そして、(せん)。左から飛びかかってくる青い奴の喉笛に、振り子の軌道で柄元まで刃を差し入れる。システムアシストはなかったが、一撃で殺せた。

 

 続けて三匹。右から迫る青いやつを、右半身(みぎはんしん)を引いて入り身になって|躱しつつ、返すダガーで額を貫き、右のスローイングナイフで脇から首を刺して殺した。転身。背後から迫ってきていた同じく青いやつの首を両脇から同時に刺して殺す。さらに黒いやつ。さっきササマル君を襲ったやつだ。右のナイフを投げて牽制。即座に左のダガーで【スラストチャージ】を発動。仰け反り(ぎわ)の喉笛へと、システムアシストに加えて僕自身の重心移動で重さを増した突きを捻じ込んだ。撃破。その爆砕を見届けず転身。正面から飛びかかってくる青いやつの右の牙に右手を添える。膝を遣って足をその場に置いたまま身を引きつつ、転身。牙を撫で上げるように捻った。その突進力は逸らされ、捻じくれて、イノシシはひっくり返った。そのどてっ腹に、すかさず【スタブ・フォール】。殺した。

 

 僕はさらにその場に留まり、全方位から飛びかかってくるイノシシを殺し続けた。転身、刺す、転身、突く、転身、投げて転がして突き下ろす、転身、投げたナイフを追いかけて突っ込んで突く。転身、逸らして他のやつにぶつけて二本同時に突き下ろしてまとめて殺す。転身、殺す。転身、殺す。転身、殺す。転身、殺す。転身、殺す。転身、殺す、転身、殺す、転身殺す転身殺す転身殺す。転身。見た。やつだ。

 

 彼我の距離は10メートル、真っ(こう)にやつを見た。体高およそ2メートル強。全長、推定5メートル。ファミリーサイズのワゴン車みたいにデカいやつ。毛は真っ黒で、鋭い目はマグマみたいに真っ赤なギラつきを放ってる。額から(いびつ)に突きだしているのは、どうやら古ぼけた剣の(つか)だった。頭の上に、二段に積み重なったHPバー。二段目の中身がそろそろなくなりそうなところだ。なんだ、僕が知らないあいだに、ずいぶん傷ついている。それから、やや暗い赤色のカーソルが見えた。あの色にはどんな意味があるのだろう。そういえば、僕のレベルが上がるにつれて、雑魚イノシシのカーソルは鮮やかな赤から薄い桃色へと色彩を変じさせていた。そして、普通の大きさの黒いイノシシのそれは今、やはり純色の赤で、あのデカブツは黒ずんだ血の色。まあ、どうでもいいか。どうせ殺すのだ。

 

 僕に向けて殺到(さっとう)していた雑魚(ざこ)どもは親玉がこれから行う攻撃に際して引っ込んでいるらしいのが気配で感じ取れた。不思議な感覚だ。目で視ていないのに、()える。突進が来る。僕は左半身(ひだりはんみ)で深く腰を落として待ち受けた。やれる。今ならやれると確信がある。もうレベルもステータスも残りHPも関係ない。やれるのだ(・・・・・)

 

 

 ――――そんなわけなかった。

 

 

 このときの僕はどうかしていた。奇跡の時間は唐突に終わる。遠くで親玉が前足で地を()き、突進の動きに入るのを認めると同時、僕の中でなにかが終わった。ド(タマ)鉄杭(てっくい)を打ち込まれたような頭痛と共に、眼ン玉に墨汁(ぼくじゅう)を垂らしてしまったみたいに視界を闇が(おお)った。そして、地面が垂直に起き上がってきて(・・・・・・・・・・・・・・)、僕の身体に叩きつけられ、土を()んだ。

 

 重力が完全におかしかった。実際におかしいのは僕の頭の中なんだろうけど、ええと、これ、どうすればいいんだろう。このまま寝てたら寝違えそうな角度で曲がった首。右頬は土に押し付けられている。うつ伏せに倒れた僕の身体の全面を圧迫している地面は、まるでそり立つ壁のように感じられた。90度、傾いでしまった世界で、そり立つ壁をすごく大きな影が駆けてきているのが暗い視界に映った。あれ、なんだっけ。僕はなにをしようとしていたんだっけ。このままだと、あの大きいの、僕のところにくるな。そうすると……、どうなるんだろう。

 

 まあ、いいや。なんかもう眠いよ。

 

 ゆっくりと目蓋(まぶた)を閉じようとしたそのとき、チカリ、と、視界の中でなにかが光った気がした。

 

 あれ、なんだろう。流れ星みたいにきれいだな。

 

 目を凝らそうとしたそのとき、視界が塞がれた。目を閉じたからじゃなく、そんな平穏な理由じゃなく、僕はごしゅごしゅと顔面で地を擦っていた。なんでそんなことになってるのかというと、僕はどうやら両足を何者かに引っ張られて引きずられているらしかった。「ごふっ、ごふっ!? ごっ?!」腹から滑って落ちる。ガサガサとたくさんのなにかが擦れる音。一瞬の浮遊感。足が底について、重力が戻る。我に返る。僕は枯れ草のたくさん詰まった穴倉のような場所に引きずり込まれたらしかった。身体の前面が温かい。柔らかい。互いの鼻がくっつく距離で、滂沱(ぼうだ)の涙を流す彼女の顔が目の前にあった。「え、え、君なんでいるの」おいてきたはずだ。今晩このことを知らせてもいない。けれど、「だんでびだぐだっぢゃうどおっ?!」と、いきなりすごい声で叫ばれた。なんでいなくなっちゃうの、だろうか。それから彼女は10秒ほどかけてほとんど言葉の(てい)を成していないグチャグチャの声で僕へと罵詈雑言(ばりぞうごん)らしきものを浴びせかけた後、僕のベストの肩口あたりを握りしめ、勢いよくすがりついてきて、おいてかないで、と涙声でもう一度いった。僕はそれでなんだか胸が苦しくなってしまって、狭苦(せまくる)しい空間で彼女をそっと抱いて――――

 

「ナァ、いちゃこいてるとこ悪いんだが、上向け、カンフーマスター」鼻にかかった女の声が降ってくる。なんとなく上を向く。「んごっ?!」硬くて長くて冷たいなにかを口に突っ込まれて、その先端から喉に苦々しい液体が流れ込んでくる。飲んでしまう。

 

「回復potナ。後でお代にここのクエ情報もらうヨ。で、それ飲みながら聞け。ここはイノシシの寝床って設定らしい。一時的な退避エリアとして使える。近くであのデカブツがボディプレスかますと崩れちまうんだが、お仲間がみんなしてタゲ取ってっカラ、まあだいじょうぶダロ。しっかり回復シロ」

 

 僕は彼女を抱いた両手を上手いこと放せないまま、回復ポーションを踊り食い……、否、踊り飲みしつつ、彼女の話を聞いていた。暗いし、引き下げられたフードのせいで顔がよく見えないが、頬に左右三本ずつ、ネズミみたいなヒゲのペイントがあるのがわかった。それから、肩からわずかに覗く、金の巻き毛。

 

「お前さんが助けに入った槍遣いナラ、回復済ませて復帰シタ。オレッチのおかげでな」

 

 そうだった。そもそもが僕はササマル君を助けに入ったのだ。なんだか前後の記憶が曖昧(あいまい)なんだけれど。

 

「で、HP真っ赤にしたまま無茶な戦い方を続けるお前さんから、なんとかザコどものタゲを取り返して、回復する隙を作ろうとお仲間、だいぶ躍起(やっき)になってたんだが、たくさん殺した方にヘイトがいっちまうみたいで、そうこうしてるウチに親玉までソッチを狙い始めた。しかも突然ぶっ倒れるシ。もう絶対絶命だってときニ、華麗にオレッチと、そこの彼女さんが助けに入ったってコッタ。感謝シロ」

 

 彼女は彼女じゃないんだけど。あれ? 禅問答みたいになってしまった。勝手に恋人にされて怒ってないかな、と視線を下にやるが、彼女は僕の肩口に頭を(うず)めたままだ。

 

 ひとまず飲み終わった。空ビンを上に吐き出す。

 

「ぷはっ。それは、どうも、ありがとうございます。……ヘイトってなんでしたっけ」

 

「憎悪値。プログラムに組み込まれた敵愾心(てきがいしん)ダナ。ああ、まだ出るナ。pot飲んでから体力回復しきるまではだいぶ()があるゾ。基本ダロ、だいじょうぶカ? 冷静カ?」

 

「すんません、なんかボウっとしちゃって。それで、仲間はみんな無事なんですね? ええと……」

 

「ああ。ランサーと、メイサーと、スタッファーと、ナイファーと、……オイオイ、なんダあの女、すげーナ」

 

 ケイタ君とテツオ君もきてる。でも……

 

「女、ですか?」彼女はここだ。

 

「仲間じゃないのカ? アイツいなかったら、お前さんの離脱、失敗したかも知れんゾ? 」

 

「それじゃ、お礼がてら、助けに入んないと」

 

 登ろうとする。視界左上、HPゲージはほぼ満タンになっていた。

 

「マァ待てヨ」頭を押し戻される。「まず作戦だ。お前さん、あの親玉の攻略法に心当たりないカ?」

 

「攻略法っていっても、ええと、トレインしてぶつけるやつ。さっき横腹にぶつけたときは……」

 

「却下ダ。タイミングがシビア過ぎる。さっきお前らがやったあれは偶然ダ。少なくとも運営が想定した攻略法じゃナイ。あのときあのデカブツ、スッ転んでからたったの二秒ぽっちでもう元気に動いてやがったゾ。リスクとリターンが釣り合わん」

 

「えっと、じゃあ雑魚同士をぶつけるのは? 雑魚が大勢転がってるときは、あのデカいの、気を遣って突っ込んでこないみたいなんです」

 

「根本的な解決にならんナ。雑魚が転がってるときは、親玉は気を遣って突っ込んでこナイようだから、ブレイクポイントぐらいにはなるが、連中どうやら無限湧きダ。潰したところでキリねぇゾ」

 

「えっと、デカいやつ、攻撃の前後に、隙とかありませんか」

 

「確認できナイ。突進は躱すとそのまま後ろまで走り抜けちまう。あの大きさ、速さ、カラーカーソルの色合いから見て、正面からソードスキルでの迎撃は不可能ダ。それからボディプレスはな、潰されっともちろんヤバいが、一瞬、土煙で視界が塞がる上に、近くで衝撃を喰らうと、硬直(ディレイ)か、悪くすりゃ転倒(タンブル)をもらう。さっきお仲間のメイサーがヤバかったぞ。まあ、すぐフォローが入ったんで立て直せたが、ありゃ飛び上がりのモーション確認したら全力で走るしかナイ」

 

「えっと、他に、牙が光る攻撃ありませんでした?」

 

「牙の突き上げダナ。確かに、首を上に振り抜いたあと、技後硬直があった。ほんの2秒くらい。ただその隙突いてアタックしても、ダメージ量のタカは知れてる。短い隙に無理してしかけても、かえって危ない。アイツちょっとやそっとじゃ硬直(ディレイ)もしやがらねえゾ。なにかあるはずなんだ、なにか……」

 

「弱点とかですか」

 

「ああ、あのテのデカブツには普通、技の前後に大きな硬直(ディレイ)か、それともウィークポイントあって然るべきなんダ。だがそれがナイ。オカシイ。こんな序盤の中ボス級の難度じゃナイ。オレッチは最初、額からこれ見よがしに突き出してる剣の柄がそうじゃないかと考えタ。だが、お仲間のナイファーが投剣を当てたときも、アイツびくともしやがらネエ」

 

「えっと……、取り囲んで、交代で気を引きながら、横とか後ろからとかちょっとずつ攻撃できませんか」

 

「ああそうダナ、どうやら正面に密着すると牙の突き上げをカマしてくる確率が高いみたいだカラ、オマエのお仲間もさっきからそうして、短い隙を突いてギリギリのところでダメージ(けず)ってる。ナイファーとランサーがザコを引きつけてナ」

 

「……なら、なんとか今の条件で頑張るしかないんじゃないんですか」

 

「危なすぎる。女フェンサーはかなりの手練(てだ)れダシ、あとのふたりの連携はたいしたもんダ。だが、あんな綱渡りがいつまで続くか……。さっきみたいに手伝ってやってもいいガ、オレッチの勘が確かナラ、これから……、アッ?!」

 

「な、なんですか」

 

「いわんこっちゃネェ、親玉の攻撃パターンが変わっタ!!」

 

 僕は穴倉から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 お、終わらない……、パンティ……(錯乱)
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