青学・新チームの挑戦 作:空念
あの全国大会から半月後、新学期が始まった。
全国を戦った三年生は引退し、残った一・二年生に部活が引き継がれた。だが、彼らには全国大会のことを振り返っている余裕は無い。新部長の下、先輩達から受け継いできた強豪校としての伝統を守るべく、日々練習に励んでいる。
そして九月に入り、彼らにとっての最初の山場、校内ランキング戦が行われた。
次の新人戦の団体戦レギュラーを決める大事な一戦である。彼らの熱の入りようは凄まじかった。まあ、旧チームからのレギュラーである三人――海堂薫、桃城武、越前リョーマにとっては、単なる通過点でしか無かったが。
「楽勝。まだまだだね」
「お前……少しは先輩を敬え」
生意気な言葉を口にする後輩に、呆れたようにため息をつく二年・池田雅也。だが、実力の差は歴然であるので、仕方が無い。彼が越前リョーマにランキング戦で完敗するのは、これで三度目である。
だが、今回は池田自身も越前戦以外は全勝しており、レギュラー入りが決定している。その嬉しさが表に出て、後輩の毒舌も今回は気にならない。
そして、他のブロックでも、レギュラーが決まりつつあった。
新部長の海堂薫や副部長の桃城武は当然レギュラー入り。それ以外では、荒井将史や永山美智夫、伏見彩太も勝ち上がった。
その中でも、最もサプライズだったのが、とある部員が勝ち抜いた事である。その部員の名は、一年の加藤勝郎、通称カチロー。リョーマの応援トリオの一人である。
今回のランキング戦、実は海堂の『旧レギュラー以外はどんぐりの背比べ。誰がレギュラーになっても一緒』という考えから、旧レギュラー以外は籤で振り分けられたという事があった。その為、いささか偏った振り分けになったのである。そして比較的一年生が集まったブロックを、カチローが勝ち抜いたという訳である。だが、運も実力の内。勝ちは勝ちである。それに、カチローが勝ち抜いたのは、彼の努力の賜物である。
「レギュラー入りおめでとう」
素直に祝福する、応援トリオの一人である水野カツオ。
「畜生っ、このテニス暦二年の俺が負けるなんて……」
そしてコートでへたり込みながら、これまた応援トリオの一人である堀尾が悔しそうに声を上げる。とはいえ、内心では彼もカチローを祝福していた。水野も堀尾も、カチローが毎日努力していたのを知っていたのだから。今回のランキング戦で、カチローが二年生に勝ったのも、その成果が表れたというべきか。
「二人とも、ありがとう。僕、レギュラーの足を引っ張らないように頑張るよ」
念願のレギュラー入りに、新たに意気込みを語るカチロー。そんな彼に、リョーマも彼なりの祝福の言葉を投げかけた。
「ふっ、まだまだだね」
こうして、新チームのレギュラーが決まった。だが旧レギュラーから海堂、桃城、リョーマが残ったとは言え、三年生が抜けた穴はあまりにも大きかった。シングルスは旧レギュラー三人で何とかなるかもしれないが、明らかにダブルスが弱点である。その為、新人戦に向けて、顧問の竜崎スミレは大いに頭を悩ませるのであった。