青学・新チームの挑戦   作:空念

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第四話 練習試合

 新人戦地区大会が終わってから一週間後、再び青学名物・校内ランキング戦が行われた。

 地区大会で準優勝という結果に終わってしまい、特にダブルスの弱体化を露呈してしまう結果となった。その為、竜崎スミレはレギュラーの梃入れを考えたのだ。

 正直なところ、旧チームの大石・菊丸ペアのようなダブルスはなかなか出てこないだろう。だが、強豪校と当たったとき、あまりにもダブルスが不甲斐なさ過ぎた。彼らなりに一生懸命だったのは理解しているものの、このままでは拙いという危機感が竜崎の中にあった。

 だが、今回の校内ランキング戦で勝ち残ったのは、以下の八名。海堂、桃城、越前、荒井、永山、伏見、池田、そして加藤の八名である。地区大会のメンバーからは誰一人レギュラー落ちせず、全く代わり映えしないメンバーとなってしまった。

 とはいえ、荒井以下五名の心にも、このままでは拙いという危機感が芽生えていた。あまりにもダブルスが弱すぎて、シングルスの三名に負担を掛け過ぎたという意識が強かった。

 特に、荒井たちにとって越前の敗戦は、本人以上に大きなショックであった。全国大会では負け無しだった越前が、地区レベルで不動峰相手とはいえ一敗を喫したのだ。その為、心のどこかにあった『ダブルスで負けても何とかなる』という考えは消えていた。自分が何とかしなければ、という意識が強くなっていたのだ。

 だから彼らは、練習でもこれまで以上に熱が入っていた。仮にもレギュラーとしての責任が芽生えてきたのだろう。今までは先輩や旧レギュラーにおんぶに抱っこだったのが、ここにきて変わりつつあった。

 中でも、特に急成長が見られたのが、一年の加藤である。加藤は練習後も堀尾や水野たちと自主練をしており、休みの日は父親がコーチしているというテニススクールにも顔を出し、懸命に練習に励んでいた。加藤の父親は、越前の親父ほどでは無いがプロになろうかという腕前だった人である。そんな父親の教えを受け、加藤はめきめきと腕を上げていた。

 さらに、加藤は頻繁にストリートテニスのコートにも出て行き、他校の生徒との野試合を重ねていた。そのような経験を積み重ねてきて、入学したときよりも、いや、地区大会前よりも一段と成長した姿を見せていた。おそらく、出番は無くともレギュラーの一員になったという事が、加藤のモチベーションを上げたのだろう。ますます練習に熱が入っていた。

 そんな生徒たちを見て、竜崎はこいつらを勝たせてやりたいと思っていた。だが、今の環境は切磋琢磨するには少し厳しいと言えた。レギュラーとそれ以外の部員との間の実力の差が大きくなりつつあり、さらに海堂や桃城、越前とそれ以外のレギュラーの差は未だ大きく、主力三人とまともに打ち合えるメンバーは居ない。本当は旧チームのような猛者揃いの状況が異常なのだが、それを考えても選手層の薄さは深刻であった。

 もっと色々な相手と試合をさせたい。その方法として手っ取り早いのが、他校との練習試合である。それも、生半可なチームでは駄目だ。

 都大会前の練習試合を組む為、竜崎はとある学校に電話をかけた。

 

 

*****

 

 

「皆、集合しな! 今から皆に言う事がある」

 竜崎は部員を集めて連絡事項を伝える。

「土曜に、練習試合をする事になった。都大会前の試合だ。皆、心して掛かるように」

 その竜崎の言葉に、部員の皆はざわめく。都大会まで一ヶ月という時期での練習試合に、特にレギュラー陣は気を引き締める。日ごろの練習の成果を試すとともに、都大会を占う一戦ともなる試合である。練習試合とはいえ、重要な一戦なのは間違い無い。

「よっしゃぁ越前、試合だってよ!」

「桃先輩、痛いっす」

 桃城がはしゃいで越前の頭をグリグリと撫で、越前は迷惑そうな表情を見せる。そんな桃城に、海堂は呆れかえる。

「……おい、はしゃいでんじゃねえぞ! 小学生かお前は」

「ああ? うるせえんだよマムシ」

 海堂の言葉につっかかる桃城。だが、海堂はそれ以上相手しない。彼は桃城から注意をそらすと、竜崎に問いかけた。

「……それで、相手はどこなんです?」

「おやおや、肝心の相手を言い忘れてたさね」

 はっはっはっ、と豪快に笑う竜崎。だが、次の顧問の言葉が、部員全員を凍りつかせた。

「練習試合の相手は、氷帝学園だよ。心して掛かんな!」

「ひ、氷帝だと!?」

 竜崎の言葉に、呆気に取られる海堂。むろん彼だけでなく、他の部員も固まるのであった。

 氷帝学園といえば、130人以上の部員を抱える大所帯である。旧チームから跡部や忍足らが抜けたとはいえ、強豪揃いの学校である。旧チームでは二度公式戦で対戦しており、関東大会でも全国大会でも大苦戦した相手である。

 今回も都大会を勝ち進めば当たる可能性のある学校であり、戦力を測る意味でも意味のある試合なのだろう。しかし、一歩間違えばこちらの戦力を見切られる恐れもある。それをあえてやろうと言うからには、竜崎なりの考えがあるのだろう。

 だが、対戦相手はまだ序の口であった。その練習試合のオーダーを聞いて、レギュラーたちはさらに驚愕するのであった。

 

「な、何だと……俺がシングルス1だと!?」

 試合のオーダーを聞いて、荒井は叫び声をあげる。荒井だけではない。他のレギュラーからも悲鳴に近い叫び声が出た。

「マジで! 越前がダブルスだと!?」

「越前にダブルスなんて無理だろ! 一体何考えてんだバアさんっ!」

「……先輩達、失礼っす」

 口々に出てくる、非難の声。オーダーを組みなおした方がいいのではという部員の声に、竜崎は一喝する。

「馬鹿者っ! 試合前からビビッてどうする! もうこれは決定だよ。いつまでも文句を言う奴は、即レギュラーから外すよ!」

 その言葉に、部員は何も言えなくなってしまう。だが、心の中では『ヤバイ、ヤバイ……』という声が絶えず響いていた。

 竜崎には竜崎の狙いがあるのだろうが、これでは不安が増すばかりである。ひどい奴なんか、バアさんは耄碌したのかとさえ思っていた。

 




【氷帝戦オーダー】

ダブルス2   海堂・桃城
ダブルス1   越前・加藤
シングルス3  伏見
シングルス2  永山
シングルス1  荒井

補欠      池田
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