青学・新チームの挑戦   作:空念

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第七話 その頃の氷帝・2

「それで、新しいメンバーの目星はついたか?」

 氷帝学園・職員室にて。テニス部顧問の榊は、跡部ら三年生たちに問う。

「日吉や鳳らは大丈夫でしょう。ただ、他が情けなさ過ぎだな」

「そないな言い方せんとき。あいつらに多くを求めるだけ酷やろ。なあ岳人」

 跡部の言葉に、忍足がすかさず言葉を返し、向日に同意を求める。

 テニス部の顧問でありながら音楽教師でもある榊はそれなりに忙しく、練習を全て見る事は不可能である。そこで彼は、引退した跡部らに下級生の練習管理を任せていたのだ。

 しかし、跡部をはじめとして、宍戸らが後輩たちを連日鍛えているものの、これといった部員はほとんど居ない。結局、正レギュラーに決定しているのが日吉、鳳、樺地の三人であり、相変わらず他は横一線の状態であった。

「けどよ、どいつもこいつも弱えからな。だらしねえ奴ばっかだぜ」

 向日までが、辛辣な言葉を発する。身も蓋もない言い方だが、それほどまでに後輩たちが情けないのだ。

 氷帝テニス部の方針は弱肉強食、敗者切り捨てである。そうやって部員をふるいにかけてメンバーを厳選していく事で強さを維持してきたのだ。

 しかし、そのやり方には問題があった。跡部の代のように戦力が揃っていれば問題は無いのだが、今回のようにメンバーを厳選し過ぎると、正レギュラーに選ぶべき人間が居なくなってしまうのだ。

 そもそも、正レギュラーに内定している日吉にせよ、樺地にせよ、全国大会で敗戦を経験している。対外試合で負け無しなのは鳳だけだが、その鳳でさえも部内での対抗試合で日吉に負けている。敗者切り捨てなんて言っていたら、それこそレギュラー全員が消えてしまう。

「せやけどまあ、龍之介なんかは面白そうやけどな」

 横一線の控え陣だが、見込みが全く無い訳ではない。少なくとも、忍足のお眼鏡にかなう部員が居る様子だった。

「ああ、萩之介の弟か。確かに、あの中ではまだマシだな」

 忍足の言葉に、向日が同意する。忍足の言う龍之介とは、同級生で旧チームの元レギュラーであった滝萩之介の弟である。まだ一年で非力さが目立つものの、徐々に下級生の中で頭角を表し始めている。

「あと、斐田なんかもまあまあだな。まだまだ下手くそだが、なかなかしつこい奴だぜ」

 そしてもう一人、宍戸の口から別の一年生部員の名前が出る。主に宍戸が鍛えている部員たちの中で、この斐田という部員だけが宍戸に食らい付いていた。どうやら相当な負けず嫌いのようで、宍戸にテニスでボコボコにされても、『まだまだ』『もう一回』と挑んで来るのだ。プレーはともかく、性格は宍戸好みの選手と言えた。

「斐田なあ……気迫は買うけど、青学相手はキツいやろ。正レギュラーはまだ早いんちゃう?」

「ああ。だから関東大会まで時間をくれ。俺が徹底的に鍛えてやるぜ」

 宍戸の考えに懐疑的な忍足だが、宍戸は自信満々で言葉を返す。

「あとは、疋田龍輝ぐらいじゃね。まあ、まだまだ俺の域には達してねえけどな」

「いや、試合中にムーンサルト出来る奴なんか普通はおらんやろ」

 あまりにも違う基準で評価する向日に、呆れたようにツッコミを入れる忍足。だが、元レギュラーと打ち合いが出来るだけでも貴重な戦力である。

「百三十人もいて、たった三人か。慈郎の方は誰かいなかったか?」

「んぁ? 俺、寝てたから分かんね……ふぁぁ」

 跡部の問いに、芥川が欠伸混じりに答える。この男、こんな調子でいつも寝惚けているのだ。しかし、強い相手になると目が覚めるので、つまりはそういう事なのだ。

「なるほど、名前が出てきたのは、たった三人か。あとは部内対抗戦で決めるしか無さそうだな」

 挙がってくる名前は、一年生ばかり。この様子では、二年生には有望株が居らず、実力未知数な一年生が多くレギュラー入りするだろう。まあ、六角の天音たった一人に百人切りされてしまう程度なのだから、二年生が情けないといえばそれまでなのだが。

「話は分かった。残りのメンバー選抜もお前らに任せる。行って良し」

 榊が話を纏めると、いつもの締めの台詞でビシッと入り口の扉を指差した。

 




【青学戦オーダー】

ダブルス2  榎山・柏原
ダブルス1  桜木・椿
シングルス3 梅埜
シングルス2 疋田
シングルス1 滝
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