SW中にもう一話くらい投稿しますから、それで勘弁してくださいw
明くる朝、まだ寝たい欲求を断ち切り、起き上がる。
(よし、今朝は誰も襲撃をかけてこないな)
普通のことに安心しながらも着替え始める。
リビングに向かうと、カウンターを挟んだ向こうのキッチンで千草がスクランブルエッグを作る匂いと音が五感を襲った。
静かにキッチンから少し離れたテレビの前のソファに座り、千草が料理しているのを眺める。あまりにも効率化されていて手伝いを申し込むことも出来ない。
(声をかける前はジト目気味の目も相まってもっと大人しいと思ってたのにな……。本当はこんなにもテキパキと動くんだな)
カウンターの上に置いていたコショウを取ろうと前を向いた時にバッチリと目が合った。
「晃司。起きてたの、おはよう」
「ああ、おはよう」
料理しているところを見られたくなかったのか頬を少し染める千草。可愛い。
目が合ったのに手伝わないのもどうかと思って、声をかける。
「大丈夫か? 手伝う? 」
「ううん、いい」
そのまま目を合わせずに作業に戻る。浮かしかけた腰をソファに下ろし……かけて、思い立って新聞を取りに階段を下りて玄関へと向かった。
取ってきた新聞を読みながらみんなが起きるのを待つ。
キッチンには既に誰も居ない。千草は隣のソファでおれが読んでいるのとは別紙を読んでいる。料理はあとは温めるだけでOKだ。
『第五特区に新たな図書館が誕生! 敷地面積は改修前のなんと4倍! 色々なジャンルの本が館ごとに所蔵され、館を繋ぐ連絡通路は全ての館に対応しているため非常に便利! 来たる五月一五日を待て! 』
(図書館の広告にしてはかなりフランクだな)
今まで大して新聞を読まなかったおれがこんな感想を思えるようになったのはここに来て新聞を良く読むようになったからだ。
次の記事を読んでいると美穂が起きてきた。
「おはよー」
「おう、おはよう」
「おはよう。」
眠そうに目をこすりながら洗面所の方へ歩いていく。
しばらくすると静佳と阿古も起きてきた。
剛毅は昨日の夜遅くから出かけている。今日の夕方には帰ってくるそうだ。
「今日の担当誰だっけ? 」
静佳が顔を洗って戻って聞いた。
「千草だけど? 」
どうかしたのだろうか?
「メニューは? 」
「スクランブルエッグとトースト。」
「それだけ? 」
「それだけ。恐れなくて良い。」
恐れる? 最初から最後まで良く分からなかった。
「準備は出来たか? といっても何も要る物は無いと思うけど」
クレイドルを出てすぐの道路で荷物の確認をする。荷物と言うほどの量は無いけれど。
「失礼なっ! 女の子は陰で色々と努力してるのだよ! 」
そうだそうだ! と阿古に賛同するのは美穂の声。随分と仲良くなったものだ。
「ゆっうえんっちー! ゆっうえんっちー!」
「分かった分かった、千草が戸締りの確認してくれてるから騒ぐな」
軽く頭を抑えて落ち着かせていると、千草が出てきて屋敷の正門の戸を閉めた。
施錠自体は簡単だが、この街最新鋭のセキュリティが付いているらしい。
今、クレイドル内には誰も居ない。みんなどこかへ用事で出て行ったからだ。
「よし! 現地集合だから遅れないようについてこいよ! 」
「はーい! 」
「分かったよ! コウちゃん! 」
「腕を組むな! 」
バッと勢い良く抱きついてきた阿古の腕を払いながら駅へと向かう。
「晃司。昨日と同じ五特区? 」
「ああ、そうだぜ。昨日より少し先の駅まで行くよ」
電車に揺られていると昨日行ったシティジェルが見えた。
「おおっ! 屋上も楽しそうだったんだね! すっごい木が生えてる! 」
「お〜線路が高い位置にあるから良く見えるな〜」
民家などはすぐに後ろに流れていくのにシティジェルの屋上はなかなか見えなくならなかった。中からはあまり分からなかったが相当な広さだったのだろう。
第五特区、十一条駅で降りる。第五特区は大半が学生向けの施設になっているので分かりやすいように主要路線の駅は○○条となっているのだ。
「おーい晃司〜! 遅いぜ! 集合時間五分遅れだ!」
駅の南三番出口を出てすぐのところに居たジョージが笑いながら叫ぶ。
「その手には乗らないぞ!」
理由は教えてくれないがジョージの腕時計は標準時より五分早めてあるのだ。
「ちぇっ、ちょっとくらい慌ててくれても良いじゃねぇかー」
「まあまあ、間に合ったから良いじゃん!」
「そういう問題じゃないんだよなーアッキー」
「ま、まあまあ」
さすがに明希奈と真衣二人にとりなされて、なお文句を言うほどのことでも無かったらしい。
すぐに別の話題を切り出す。
「そういや、その子だれ?」
阿古と仲良く手を繋いだ美穂を指差して言う。
「おれの妹だ。急で悪いな」
「いや、チケットが一枚必要になったって聞いてちょっと不審に思ったがこういうことだったんだな。大丈夫、気にするな」
ピラッと長財布から七枚のチケットを出してみせる。
「よし、じゃあ行くか」
開園は九時。今は八時半だから今から向かうとちょうど良いくらいだろう。
ホビーズ・ラグナロクは運用方法も独特だが、それ以上にもっと来園客向けの仕掛けがある。
それは……
「なぁ、わざわざこんな怖い思いする必要は無いと思うんだけど!? 」
いくつにも連なった集音マイク付きの車両群。
「大体、なんで高いところに行ってすぐに下に落ちなければならないのか!?」
一方通行の心許ないレール。
「三万光年譲ってそれは良いとして途中で空を駆けるのはいかがなもの……うわァァァァァァァァァァァ!!」
「いやっはァァァァァァァァァァァ!!」
隣と後ろで美穂ジョージ阿古明希奈が叫んでいる。
「だっ、大体っ! 美穂が怖いって言うから一緒に乗る羽目になったのにっ、うわぁぁぁ! ぜっ全然怖がってないじゃないか!」
そして小心者を乗せたコースターの真下に変化が起きる。
バシュッ、といういっそ爽快な音とともにレールが消える。
「あ」
それは悲鳴だったのか無意識に漏れた音だったのか……。
このジェットコースターの名前は『トビウオ』。
トビウオが海から空へと跳ぶようにコースターがレールから空へ飛ぶ。
そしてそれだけに留まらない。シートの脇にあるマイクが乗客の悲鳴を拾い、数値化する。そしてその数値により、先のレールのランクが変動する。
空を飛んだトビウオの放物線上に突如レールが現れ、再び車輪と噛み合う。
恐怖は持続する。
「ぜぇぇ……はぁぁ……」
「いやー! 『トビウオ』のSSランクなんて久しぶりだったよー!」
明希奈は大変ご満足の様子だ。美穂と一緒に笑い合っている。まさか搭乗前の美穂のお願いって……。
「晃司、お疲れさま。」
「お、お疲れさま……だね」
真衣と千草の二人は下で手を振っていたらしいのだが、それを確認している余裕は無かった。
「よし、次行こう! 次!」
「楽しそうだな、ジョージ……うっ……」
未だにぐるぐると回っているような気持ちになる。
「なにせトビウオの最高ランクだからな! 縦三回転横二回転からの空中ドリル飛びなんて他のライドじゃ体験出来ないぜ!」
平気でいられるこいつらが本当に人間なのか本格的に審議する必要がありそうだ。ていうかそんなに回ってたのか、アレ……殺人級ってレベルじゃないぞ……!
「いやー、晃司乗せて正解だったな! ……はっ!」
「今の言葉は聞き逃せないなぁ……ジョージィィィ!!」
貴様の首をへし折ってやるっ!
とヘッドロックをかけていると無情な死刑宣告が告げられる。
「晃司。次アレ。」
千草の指差す方を見ると、高速で走る時の慣性を利用して時々シートごと車両の消えるジェットコースターが走っていた。名前は『カゲロウ』。
「あははっ……よく無事故でここまで来れたね」
もはや感動すら感じる。どうやらこの遊園地では想像以上に心臓に悪いイタチごっこをしているらしい。
後で運用方法の発案者とコースターの立案者をぶん殴らないと。それがシートに腰掛ける晃司の最後のまともな思考となってしまった。
「ちょ、ちよっと休憩……トイレ行ってくる……」
その後、『立体交差するレール(二車両同時走行)』『垂直上昇、垂直下降のコースター』『自由落下コースター』に乗せられ、極め付けに『走馬灯コースター』という名前が完全にアウトな物にも乗せられたため流石に音を上げた。
トイレを口実に風に当たりたかったのだ。途中まではトイレにも駆け込みたかったが、連続して乗るうちに吐き気すら消え失せてしまったのだ。
「うぇー……さすがに目が……回る……」
この遊園地は東実験区の擬似海と隣接している。実験区の擬似海とは言っても、隣接している部分から見えるのは客で賑わう浜だ。実際に実験機のある海はもっともっと奥の方。いくら実験機でも、いや、だからこそか。街の人々には見せられない。
「ほんっと、恐ろしいほど広大だよなぁ……」
そんな水平線すら見える海を眺めながら柵に身を預ける。
くるりと遊園地側に体を向けると多くの客がガヤガヤと楽しそうに次のアトラクションを目指して歩いていた。
「ゲテモノアトラクション以外にも色々あるみたいだし、今度はそっちに行きたいとこだなぁ」
残念ながら恐怖ライドが苦手なのは真衣とおれの二人だけ。千草も恐怖ライド好きだと判明した今、完全な少数派に意見する余地は残されていないのだった。
そしてそんな客の中に、頭に暗視ゴーグルのような物を着けた高校生くらいの女の子がいた。
(なんだろうあの子。今時のファッションってやつなのかなぁ)
そしてその子がこちらを見ると携帯を取り出し、画面を何度もスクロールした後におれの顔と何回も見比べた。そして何か操作したあとカバンに入れた。
(なんだ? おれに何か用かな?)
見覚えは全く無いのだけれども……。
そしてその子はキッとこちらを睨み付け、レザーっぽい黒の手袋を取り出し、それをはめながらこっちへと歩いてきた。
カッ、という音の鳴りそうな勢いで正面に立つといきなり
「古守晃司ですね? <ケイオス・クワイエット>第五所属、西臣 紗夜(にしおみ さや)です。私との模擬戦闘を許可します」
「え?」
一気に畳み掛けられたせいで理解が追いつかない。
日常かはたまた非日常か……。
(適当に煽って続きの言葉が出てこない)
相変わらず前書きと後書きに何を書いて良いか分からないですw