気になるあの子は魔導書が読める!?   作:久遠/kuon

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まさかの連日投稿っ!
ちょっとくらい更新時期を安定させろってお叱りを喰らいそう…。
でも書き上がったら一日として待つことが出来ないのです!w
そんなわけで毎作品が出来立てホカホカの超新鮮小説をお楽しみくださいw


第十六頁 カウントダウン

とっさに真衣を自分の体の後ろに隠した。後ろから困惑している気配が伝わる。

廃病院を模したルートだろう暗い通路の奥からチリチリと焼け付くような殺気を感じる。

(なんだこれ……なんだこの殺気!)

「真衣、今すぐここから出てくれ。絶対戻ってくるな」

自分でも不思議なくらいあの茶髪で奇妙なゴーグルを着けた少女に警戒していた。まだ、姿は見えないというのに。

「え、でも……」

早く! という言葉の代わりに背中を押して出口へと送り出した。

そして振り返ると

「やぁ。古守晃司。見つけたよ」

五〜六歩離れた位置に目元にゴーグル、両手にレザー手袋のあの少女が立っていた。

でも、なんだろう……どこか違和感が……?

「沙耶ー! 見つけたって何をよ……あ、出口!」

「フウカ、先出といて」

後から追いついてきた少女の友達であろう黒髪を短く肩のところで切りそろえた少女が露骨に不思議な顔をする。

「どうしたの? 沙耶」

「犯罪コード122、不法侵入罪」

不法侵入……?

「ああ、ピースエイダー様のお仕事ってわけね。分かったわ、外で待ってる」

それにピースエイダー……?

どういうことだ、さっきは自分でケイオス・クワイエットの一員だと名乗っていたのに。

出口を潜り抜けて外へと向かう黒髪の少女を目で追いながらわずかな違和感を探ろうとする。

「ごめんなさい。あなたが逃げるからもう勝手にフュルギエを使ってしまいました。でもピースエイダーっていうのは本当ですよ? もちろんケイオス・クワイエットのことも」

ゴーグルのせいで表情をうかがうことは難しいが、頬が紅くなっているような気がする。

「ほら、これが証拠ってやつです。リギャザー《グロウズポッド》」

すっ……と、手のひらを上にして体の横に緩やかに掲げる。

ボイスコマンドを受理したナノデバイスが少女の手のひらの上辺りにただの四角い箱を作り出す。そもそもナノデバイスは不正を防ぐためにこの建物内では動作しないはずなのに。

それも少女がピースエイダーなら辻褄が合う。有事の際、治安維持活動が行えるように特別にナノデバイスへのアクセスルートが確保されているはずだ。それにしても職権乱用過ぎるだろ!

「それと……不法侵入、しちまいましたよね? 廃区に入ったでしょう?」

ゾッと背筋を指先で撫でられたような不快感が襲う。

「なんで知ってる……! あの件は秘匿扱いになっているはずなのに!」

「簡単かことですよ、私はC・Qの第五所属ですから」

C・Q、たぶんケイオス・クワイエットのことだろう。

(ここまでピンポイントに言い当てられると流石に信ぴょう性が出てきてしまうな……)

「そろそろ良いですよね……? 始ちまいましょう、戦闘を」

その一言を合図に一気に違和感が増幅する。

「資料によると燃え盛る長剣を手に戦いやがったんでしたっけ? 私の魔法も炎に関連したものなんですよね。ね? 楽しみになってきたでしょ?」

口調に、違和感?

確か最初は敬語だったはず。それが今は……。

「そんな不思議そうな顔しないでくださいよ。私の魔法の副作用ってだけなんですから」

副作用……魔力の酷使による性格が歪むってやつか……、いよいよ本物ってわけだ。

チリッ……チリチリチリチリチリ! という音が通路の脇に無造作に転がされたぬいぐるみから鳴り響く。

そして、発火した。

「さあ、さっさと剣を抜いちまってくださいよ。どこに隠しているかは知りませんけど、このままじゃ丸焦げになっちまいますよ?」

「くっ!」

一層激しく火を噴くぬいぐるみから遠ざかるように距離を置く。

「ほらほらぁ! こっちからどんどん仕掛けちまいますよ!?」

左手で額のゴーグルを抑えながら右手をおれの近くにある鉄製の机へ向ける。

だがぬいぐるみのように発火はしない。

(どういうことだ? 炎関連とは言ってたがどんな魔法なんだ)

「んー、何か警戒してます? なんならネタばらしでもしましょうか? 逃げ回られても経験積めなくて困るのは私の方ですし」

すっ……と足元にあった空のガラスで出来た薬瓶を右手で拾う。

そして左手で指差すと薬瓶が発火した。

(ガラスで出来た物は燃えないはずだ……。それと、なんだ? なんとかポッドってやつに薄っすらと何か描かれている?)

肩の辺りに浮いた四角い物体の表面に刻印のような物が炎に照らされて浮かび上がっていた。

「右手で無機物の性質を可燃と不燃に切り替え、左手で無機物の温度を上げ、燃やす。ただそれだけってわけですよ」

でも、と一拍置いて

「この魔法、屋内で使うとどうなると思います?」

まさか……。

でもだとすると!?

「まあそういうわけでちゃっちゃと本気出しちまってください。死にますよ?」

相変わらずゴーグルで目は見えなかったがきっと笑っているに違いない。それほどまでの気迫を感じる。

(何か……打開法は無いか……!?)

当然テット・ゲートは使えない。アレは発動を千草に頼った魔術だ。おれ一人ではどうしようもない。

「これだけ言ってもダメですか……。ならもう少し追加しちまいましょう」

つい、と右手をこちらに向ける。

「複製、グロウズポッド」

ふわっ、と背後から押し出された空気の流れを感じ、後ろにナノデバイスが現れたことが分かった。

「私は同質のポッドを何個も作り出すことをピースエイダーでのメインウェポンとしています。そしてそいつには発火の刻印魔法を刻んでるので、まあ後ろには行かない方が賢明ってやつでしょう」

さっき見えた刻印はそういうことか……。

でも、それが分かったところでどうする?

どうしようもない!

退路まで塞がれた以上手持ちの何かで対応するしか無いか……。

「じゃあ手始めにここら一帯の物を全部燃やしちまいましょうか!」

右手と左手をそれぞれ前へと差し向ける。

その指先が、ひたりとおれの顔を見据えた。

ヂヂッ、バチバチバチバチッ!

爆ぜる音と共に、辺りに転がっていたボールペンやカルテ、バインダーに本棚までもが赤く赤熱し燃えていく。

(くそっ! この状況を打ち破る何かは……!)

必死に辺りを見回していると、本棚の陰に奇妙な物を見つけた。

赤と青に両端が分かれた鉛筆だった。

なんだあれ……あれ自体は奇妙でもなんでもないのに……なぜ燃えない? 真っ先に燃えてもおかしくないはずなのに。

……そうか! そういうことか!

だとすれば……なんとかなるかもしれない!

「こりゃあ流石にキツイなぁ。逃げさせてもらうぜ」

ニヤッと笑いながら言うと少女は首を傾げた。

「ん? 今逃げるって言いましたよね? 残念です。対逃亡用の経験に切り替えちまいますね」

ユラァ……と両手を広げ、直立する。

チリ……チリチリチリチリチリチリチリッ!! という例の音が辺り一面から聞こえ始める。この辺りの壁を一気に燃やし尽くす気らしい。

「まあ安心してくださいよ。燃やすのは建物の一部に留めますし、逃げ場が無くなったあなたをゆっくり拘束してあげます」

「まあそんなに先のことを考えるなよ、鬼が笑うぜ?」

ガッ! と、近くにあった本棚から本を一度に出来る限り引き抜き相手へと投げつける。

だが。

シュッボッ!!

という辺りの空気を巻き込む音と共に本がまとめて燃焼して消え去る。

少女は微動だにしていなかった。広げた両手すら動かさなかった。

「鬼が笑うのは来年のことを考えた時でしょう?」

「へへっ、ならおれが笑わせてもらうぜ。どうやら読みが当たったようだからな!」

「読み? 一体何のことでしょう? 私は全部のトリックを公開しちまったんですけどね?」

こっそり横目で自分の右手に着けた時計を盗み見る。表示時間はリミットの残りわずか。あとは場を保たせて、上手く行くように神に祈るしか無いな。

ボッ! という音が次々と辺りから聞こえ始める。いよいよ壁が燃え始めているようだ。

「それに、もうチェックメイトですね。まさか壁が燃えて無くなった直後に逃げようとか思ってます? それなら無駄ですよ。そうならないように調整してますから」

「へぇ、なら壁に自分から退いてもらおうかな」

「何を言ってるんですか? 酸素が足りなくて頭のネジでも吹っ飛んだんですか?」

「いやいや、そういうわけでは無いぜ。まあ落ち着いて待ってなって。三……二……一……ゼロ」

ジャッ! と音を立てて近くの壁が消失し、一気に外までの道が出来る。

「なるほど。脱出失敗時のペナルティドアですか。少しは考えたようですね。でもどうします? そこから出るためには炎を越えなくちゃいけないですよ?」

「当然、そうはさせないって顔だな。ま、その辺はちゃんと考えてるよ」

外まで開いた通路へ向けて歩き出すと、そこに行くまでにあった炎が全てひとりでに消えた。

「なっ!? 一体何をしたって言うんですか!」

「刻印魔法。あんたの作った火の中に一箇所だけおれが作った火の壁が紛れてたってわけ。あんた、そのゴーグルで視認した物しか対象に出来ないんだろ? もう燃えてる物をもう一度燃やそうなんて、考えないはずだ」

「私の……負けです。行ってください」

「やけに素直なんだな」

「これは模擬戦闘ですから。実戦ならどこまでも追いますよ」

「へ、へぇ。そりゃ怖い」

苦笑いしながらペナルティドアを潜り抜けて建物の外へと出た。

後ろを振り返って追ってこないのを確認すると、アトラクションの出口へと向かった。

「真衣になんて説明しようかなぁ……」

考えれば考えるほど頭の痛くなる悩みだった。

 

 

 

【西臣沙耶の視点】

先ほどまで燃え盛っていたここら一帯はすでに私の魔法の効果で完全に鎮火していた。

職権乱用に器物破損、過剰戦闘と、ただ『戦いたい』というだけでハイリスクな行動を取った少女は焼かずに置いておいた診察用の椅子に見立てた椅子に腰掛けながら呟いた。

「古守晃司……。本を投げつけた瞬間に刻印魔法を刻み、私の魔法をたったそれだけで攻略した、か……。予想していたよりもはるかにスペックの高い人材のようですね」

今回はC・Qとピースエイダーの両方からお灸を据えられそうで憂鬱な気分になる。

「全部自己責任なんですけどねー」

せめて気を紛らわそうと背もたれに身を預けて思いっきり倒れこむと、逆さまの見知った顔が見えた。

「……」

「……。早かったですね」

その見知った顔は自分より一つ上の学年で、ピースエイダーという組織でも先輩で、この街では暫定最強のアンセットコアの使い手だった。

「……私今日非番なんだけど」

「……なんでわざわざ来たんですか」

「こんな大規模かつ複雑な仕組みの構造を迅速に再現出来るのは私だけだってさ」

先輩が心底嫌そうな顔をして辺りを見回す。

「あー……それは、ごめんなさい」

「帰ったら覚悟してよ?」

「ハイ」

以前似たようなことをして、しごかれたことがあったがまたあの地獄を繰り返すことになるとは……。

「前よりキツイよ」

「……マジですか」

次々と元通りに戻っていくアトラクションを見ながら顔を覗かせた地獄のことと先に行かせた友人を思い、ハァとため息を吐いた。

「あとで謝らなきゃな……」

二人だけで遊びに来たわけでは無いから良いんだけど。

古守晃司。心の中でもう一度だけ呟いた。




Q.沙耶さん、あなた戦闘中完全に晃司くんを殺す気でしたよね?

沙耶「だって臨場感出ないですし。やっぱりリアリティーって大事だと思うんですよね」

Q.あなた本当に治安維持部隊の一員ですか?

沙耶「なんですか、ぶち殺しちまって良いんですか」

Q.今の発言はさすがに……

沙耶「おいカメラ止めちまってください」
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