気になるあの子は魔導書が読める!?   作:久遠/kuon

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長らくお待たせしました!修学旅行やら中間テストやらで忙しくて……
とりあえず次は1週間以内に上げれたら良いなと思ってます!まだテスト週間なもので…
どうかご愛顧よろしくお願いします!


第十七頁 もう一度

さて、初対面の奴に宣戦布告され、アイスを奢ったり燃やされかけたり拘束されそうになったり殺されそうになったりで、うっかり忘れそうだが今日は遊園地に遊びに来ているのである。

そんなわけでおれは今みんなと合流するべくお化け屋敷の待合室に向かっていた。

「誰か居るっかな〜っと」

待合室に行くと、みんなが談笑しながら待っていた。なんだ……? なんだか、空恐ろしい……!

「おーい。何話してるんだ?」

くるっとみんなが一斉にこちらを向く。

「おお、晃司遅かったなー」

「真衣ちゃんがあんたのこと待ってたよー?」

「真衣ちゃんも私たちより遅かったんだけどね!」

「ご、ごめんね……晃司君」

「お兄ちゃんまさかとは思うけど忘れてないよね?」

「罰ゲーム。」

…………。忘れていた。すっかり忘れていたッ!そう言えば一番クリアタイムの遅いチームに罰ゲームって……。

「ねえ、時にコウちゃんフラッシュバックって知ってる?」

「え? 閃光のように思い出す、だっけ?」

「そうそう、突然昔の記憶が何の脈絡も無く思い出すアレのこと」

「それがどうしたんだ?」

罰ゲームの話からフラッシュバックの話へと急に移った意図が分からない。

何か裏でもあるのか?

「よし、じゃあ行こうか!」

「行くってどこへ?」

「そりゃもちろん罰ゲームをしに、だろ」

ジョージがいやにニヤニヤしながら言う。

 

そして連れてこられたのは

「か、『トビウオ』!?」

それは一番最初に乗った恐怖ライドランキングNo.1(自分調べ)の一度レールが消え、コースが乗客のリアクションによって変わるという恐ろしい仕様のジェットコースターだった。

(だが一度経験しているとしていないとでは意味が違う! そう、展開と仕組みが分かっていれば対策が取れる! そう、このジェットコースターの仕掛けは『叫んだ声量によってコースのランクが変わる』だったはず!)

「ねえ晃司」

「なんだ?」

列に並んでいる時に珍しく明希奈が名前でおれに話しかける。

「もしかして歯を食いしばったり、口を必死で閉じたりしてジェットコースターのランクを前より下げて難を逃れようとか思ってる?」

なん……!?

い、いや慌てるな。こいつはみんなが考えるであろう当然のルートを予測して話しかけてきているだけだ……! 騙されるな!

意思を強く持てば乗り切れる!

「いやぁ? 別に考えてないけど?」

「そう、なら良いけど。意味無いよって言おうと思って」

意味が無い?

作戦は完璧なはず……。なら揺さぶりか!

「え? どういうこと?」

「考えてないなら理由は知らなくても良いんじゃなーい?」

明希奈が途中からニヤニヤして言う。

「やっぱり一度言いかけたことって気になるんだよなぁ」

「そう? なら教えてあげる」

一体どんなトリックがあるというのか……! 少し食い気味に続きを待つ。

「『フラッシュバック』。一度経験したランクをその日限りであればもう一度体験できるシステムの名称よ」

「なん……っ!? そ、それってつまり……」

「シリアルコードを係員に言えば最初からSSランクに乗れるというわけね」

なんというジェットコースター嫌い殺しのシステム……!

「それと、みんな結構ノリノリだったからもう一個オプションでスタンディングも付けると思うわ」

「スタンディング!?」

途中から聞いていたのかおれより前で並んで待っていた千草が話に入ってくる。

「この街のナノテクの特徴。簡単に形を組み替えることが出来る。特に今回は、途中でレールを替えれるほどの応用性を持つコースター。」

レールを急に取り替えても安全性を確保できるほどの技術力がある、ということなのだろう。

普段以上に饒舌だった。やはり楽しみなのだろうか。

列が前に進んだので前に向き直って進むときに少し楽しげに歩く千草を見て気が軽くなった。

(こんなに楽しそうにしてるもんな。腹をくくっておれも楽しめるように協力しよう)

 

そして。

人は記憶を美化してしまう、という話がある。二回目に乗ったライドは全く楽しそうには見えなかった。

ただ、目の前に広がる恐怖と少し赤くなってきた青空。

いつか美化されることはあるのだろうか。

ガタン。

技術の進歩で乗り物の類の振動はほとんど無く

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

車両の前後で意味の全く違う悲鳴が空に響きわたる。

「うぉぉぉおおぉぉぉ!!」

レールは右へ九十度傾き”ろうと”の形のようにスクリュー回転。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

その後大きく半円を描くように上へと突き進み、その半分の直径くらいの半円を描いて元の向きへ戻る。

「ひゃっはぁぁぁぁぁ!!」

テンションがマックスになった阿古やジョージの悲鳴を背にライドがぐんぐん加速していく。

「……ぉぉぉぉぉぉぉぉ」

口を閉じようとしても激しく左右に揺れるせいで安全バーが顔に当たり声が漏れる。

「……ぉー……かなり、楽しい。」

千草が隣で呟く。荒れ狂うほどの暴風でも聞こえるほどの声量が出ている。

ちょっとほっこりしていると十五秒連続逆さまで進むゾーンへと突入した。短いようで長い、魔の領域。

「これ!! 安全バー緩くない!? 落ちる! 落ちるから!!」

ご丁寧なことにこのゾーンはライドの速度がかなり落ちる。眼下に広がるのは隣の特区の青い水面。

水とはいえ落ちたらひとたまりもない。

「晃司。ロックが外れている。」

「えっ!? 嘘だろ!?」

どうやらおれの人生はここまでのようだ。青い水面が一気に目の前に迫ってくる錯覚に襲われる。

「……うそ。」

クスッと笑って千草が言う。

「もし落ちても私が支える。」

きゅっと安全バーの下から手を伸ばしておれの腕を掴む。

ミシミシと音を立てて折れかけていた心が暖かくなる。

「千草……」

「はいはい、そこのお熱いお二人さん! もうすぐ通常……いや、苛烈なライドに戻りますよ!」

後ろからジョージの叫ぶ声が聞こえた。と同時に垂直落下。

「え? ぁぁぁぁぁ!?」

もう一度言う。垂直落下した。逆さまのまま!!

「ゔぁ、はにゃぁぁぁぁぁ!!」

一気にさっきまでの錯覚が現実のものとなる。

恐ろしい速度で迫り来る水面に自然と目が閉じそのまま気絶した。

 

「はっ!」

目を覚ますと周りが真っ青だった。

「水の……中?」

逆さま走行時よりは速い、大体40kmくらいの速度を出しつつ水中を走行している。

「そう、しかも潜水型の実験機がたまたま来てないおかげで魚たちが結構集まってると来たもんだ」

「そもそも水中走行自体珍しいんだから凄い引きの強さよね」

嬉しいんだか少し悲しそうなんだかよくわからない声色で喋るジョージと明希奈。

「SSランクの異種なんて滅多にお目にかかれないんだけど速度がなぁ〜」

「スピードジャンキーめ」

そんな話をする余裕を見せていると水中トンネルの終わりが見えてきた。少しずつ速度も上がりシートに頭を押し付けられて呼吸が少し苦しくなる。

「さ、今度こそ堂々と言えるぜ。こっからは掛け値なしのジェットコースタータイムだ! もはや仕掛けは何一つ残ってない! エンジョイしようぜ、ビー ハッピー!!」

 

そこから先はいつも通りだった。右に左に振り回されて頭がガンガンと痛む。腰もふわふわするし、何が『ビー ハッピー』だ……。

そして気づけば辺りはすっかり西日に照らされてオレンジ色に染まっていた。

「そろそろ帰らなきゃだな。名残惜しいが投票して今日はお開きにするとしようぜ」

この遊園地は特殊な運営法で経営してるため、出口での気に入ったアトラクションへの投票が義務化されている。

「これからも御社のさらなる発展に期待を込めて!」

「こめて!」

「こめて。」

阿古と美穂がまるで投資家を気取って言いながら『トビウオ』に投票する。

ひょいっと千草も同時に。

「まだまだ不満は多いがかなり楽しめたからこれ一択だな!」

「あのライドにはまだまだ可能性を感じるわ。特に応用度が高いところとか!」

こくっと二人で目を合わせうなづいて『トビウオ』に投票する。

「あれでもまだ不満なのかよ……。ロケットにでも乗れば?」

「ああ、いつかは乗りたいものだな」

冗談を言ったはずなのに大真面目な顔で返されてしまった。

「私は……あのお化け屋敷で」

「ああ、おれもそうするかな」

直接の原因じゃないにしろ、壊しちゃったし。

 

それからの帰り道、まだ少しふわふわした気持ちのまま電車に乗り込む。空いた車内に電車の揺れに沿って眠るみんな。

おれもだんだん眠くなってくる。

「ねぇお兄ちゃん」

隣で寝ていると思っていた美穂が話しかけてくる。

「どうした?」

「急に遊びに来てごめんね」

昨日今日のハイテンションだったのが少し落ち着いている。

美穂は手を両膝にそれぞれ置いて、向かいの窓に映る赤い街並みをじっと見ていた。

「あのね、今日はありがとう」

「ああ」

「あのね、今日は楽しかった」

「そうか」

「あのね、昨日本当はなかなか眠れなかった」

「……」

「あのね、あのね……」

美穂の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる。

隣で楽しそうに言う声が途中から涙声になっていた。

美穂が詰まった喉で時間をかけて何度もつかえながら言った。

「あのね、ほんとは……少し寂しかった」

左手で頭を撫でる手を強めて右手でそっと美穂の手を上から握ってやる。

「ごめんな」

「また、遊びに来ていい?」

「事前に連絡くらい入れてくれよ」

ぐしゃぐしゃにした顔をこっちに向けてニッと笑って

「うん」

と言った。

その顔を見つめるのがなぜか嫌だったのでぐっと押すように撫でる手を強める。




スヴェイジェシカ編。もうちょっとだけ続きます
最後の方を書いていると実家に残した妹に会いたくなってきました……。
妹居ませんけど
そもそも実家暮らしですけど
1人でも共感してくれる人が居たら嬉しいなぁ
妹欲しいヾ(:3ノシヾ)ノシ
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