気になるあの子は魔導書が読める!?   作:久遠/kuon

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とりあえずこれとあと1話溜めてる分を明日出しますー
それでストック無くなるので週一更新出来れば良いなー程度にw
前回意識を失った晃司の身に一体何が起きたのか!そしてなぜ千草は襲われたのか!今回明かされまーす


第二頁 契約

「……っ! いたた……何が起きた……?」

街灯がちらほらと点き始めた路上で俺は起き上がる。路上に寝転がっていたせいか、背中側が全面的に痛い…。

「あれっ! 腕は………ッ!?」

ナイフで斬られたはずの腕は、あった。

確実にナイフは身体を貫き、振り切られていたはずなのに。

だがそれは腕と呼ぶかどうか悩んでしまう物だった。アスファルトの破片が腕の形を模している。

「う、うわぁぁぁ!」

思わずソレを振り払おうとすると、その途中で

「ああっ! そんなに激しく動かさないで!取れる!」

まだ声変わりを迎えていなさそうな少年の声が聞こえ、振り回そうとしたソレが止められる。

当然、感触は無い。

物凄く気持ちが悪い感触だった。思わず身震いしてしまう。

「取れる……? おいこれはなんなんだよ!?」

膝立ちでその少年に掴みかかるように詰め寄ると

「よしてくれ、混乱してるのはこっちの責任だがまずは事情を聞いてから暴れてくれないか」

真上から太くよく通る男の声がした。

見上げると、屈強な体つきの大学生くらいの男が立っていた。

「お前ら……なんなんだよッ……」

わけが分からなかった。まるで異世界に叩き込まれたような思いがする。

「それについちゃ、後で答える。その前にこっちからも質問だ」

「なんだよ……!」

たぶんこれは夢なのだ。とても良く出来た。夢。

「この都市の名前と特徴とお前の名前と年齢は?」

「ここは特別教育都市。ナノテクが発展しててその方面だけ頭一つ世界レベルから抜けてるって話だ。おれは古守 晃司。年齢は…17だったはず。本当になんなんだ。あんたら部外者か?」

もはやヤケクソだった。

「うし、頭は問題無いな」

こちらの質問には全く耳を貸さない。

「さっきからなんなんだ! コレはどういうことだ! それに…あのブロンズの髪の子はどうなったんだ……」

自分のことはどうでも良かった。

自分がとっさとはいえ命を懸けて守ろうとした凪良さんが怪我でもしていたら……。と思うと居ても立ってもいられなかった。

「嬢ちゃんならそこだ」

くいっと親指で俺の後ろを指す。

バッと座り込んだまま、後ろを振り返ると少し離れたところに眉を寄せた凪良さんが立っていた。

「良かった……無事だったのか……」

「……バカなの?」

凪良さんが疑わしげな目を向けながら聞いてくる。

急に聞かれても覚えが無くて返答出来ず無言になってしまう。

「自分からナイフに飛び込んだ……。」

「あ、ああ。本気っていうより凪良さんが怪我するよりマシだって……」

本心だった。直前まではドッキリかと思っていたがアレは明らかに本気で斬るつもりの動きだった。と、思う。

 

「……。晃司……あなた私と契約……しない?」

 

「え?」

いきなりの名前呼びと内容に二重で驚いた。

ケイヤクって、なんだ?

「私と、契約。」

凪良さんが同じことを繰り返す。

「嬢ちゃん、それじゃ伝わらんよ。順を追って説明しようや。……ちょっと長くなるが、聞いてくれるな?」

大男が言う。

「凪良さんが関わってるんだよな……?」

もしも困っているなら助けてあげたい。

「ああ、そうだが……お前さんは一途だな。まあ、良い。諸事情で俺たちの立場についての詳細は言えない。現状についてだけ説明する」

自分の立場が言えないってことはP・Aの秘密部、みたいなものがあるのだろうか。

「まずお前が見た、あのスーツ姿の兄ちゃんは俺たちの敵だ。あいつを釣るために囮作戦をしてる時にお前も釣れた。んで、勝手に飛び込んで怪我した。OK?」

身も蓋も無い言い方だった。

でも客観的に見ればそんなものか。

「あ、ああ……なんとか……」

「で、怪我したお前の腕の応急処置のためにちょっと特殊な技術を用いた。ここまでが現状だ。で、こっからは先の話だ。よく聞け。理解出来なくても理解しろ」

ギッ、とすごまれて思わずひるむ。

無茶言うなよ……そう思ったが声には出せない。

「嬢ちゃんは今、自分と一緒に働いてくれる奴を探してる。そして加えて言うと、この仕事は危険だ。人を選んじまう。そこで飛び切りの命知らずのお前が抜擢された」

「……それで?」

まだ話の続きが読めなかった。

要するにP・Aとして働け、ということなのだろうが、それとケイヤクが結びつかない。

「つまり、あいつの使い魔、もっと言えば使い勝手の良い奴隷になって死ぬ覚悟はあんのか? ってこと」

脚色しているに違いない。

「おれは……」

「悩むようなら止めといたほうが良い。こっちだって遊びじゃねぇんだ」

大げさだとは思うが、覚悟を問われて甘いことを言うような根性は無い。

「契約してやる。それがあいつのためになるなら」

「ハッハ! だとよ、嬢ちゃん。契約の準備だ!」

「馬鹿みたい……」

呆れたように凪良さんが呟いた。

 

 

「ここが俺らの拠点だ!」

終始説明していた大男が何が面白いのか笑いながら言った。

目の前に北欧の山の上に堂々と立っていそうな大きな館があった。

今まで十年ほどこの都市に住んでいたがこんな館があることは聞いたことも無い。

「普通の……いや普通では無いけど……って豪邸じゃん!っていうかあんたらP・Aの特殊部隊とかじゃないんだな!?」

「お、さすが良い目の付け所だな! 俺らはP・Aなんかよりもっと深い位置にいる! ……まあその話は中でしようや」

深い位置にいるって、なんかここに来て怖くなってきてしまった。

そして、大男と少年と凪良さんは中に入ってしまった。

「お、おい待てよ!」

慌てておれも中に入る。もう辺りはすっかり真っ暗だった。

 

中に入ると正面には大きなエントランスのような空間が広がっていた。

「あんまり物が無いんだな。調度品はいっぱいあるけど」

こんな屋敷に入ったことが無いため、思ったことを言うと

「うちもそんなに金儲けてるわけじゃないしな」

と返された。儲けてないのにこんな屋敷を拠点に、って不思議だらけだった。

「そんなことより早く契約しないともう保たないよ!」

あの少年が藁人形(?)を手に慌てたように言ってくる。

「おーおーそうか! ならパパッと説明するかね!」

この男はガタイの良いコワモテな見た目によらず説明好きなのかもしれない……。

「これ以上なんかあるのかよ……」

わりとお腹いっぱいだった。

「お前がさっきから見てるフシギテクノロジーは俺らみたいな裏の人間から魔法って呼ばれてる」

「魔法ーーー!?」

とんでもないワードが飛び出してきた!

まさかのファンタジー路線。

「お前が思うようなキラキラしたもんじゃないと思うが……」

「早く続きを教えてくれ! おれも空飛びたい!」

誰もが夢見たことはあるはずだ、鳥のように空を飛ぶことを!

「お、おう…。この魔法ってのはトンデモ科学とか空想科学とかの発展だ。気合い入れりゃ誰でも出来る。ま、そいつの《マリオネット・ダンス》みたいにほとんど固有化しちまってるが」

ついっと少年と少年の持つ藁人形を指差す。

「マリオネット・ダンスってあの藁人形?」

「ああ、それでお前の腕を繋いでる。そんで、今から行う契約だが、これは魔術っていう一度失われた技術だ。魔法とはちょっと違う」

魔法に魔術。

名前は物凄く似ているが違うのか。

覚えておかないといけないな。もしかしたら空を飛ぶ時に重要になるかもしれない。

「魔術は特定の一個人しか使えないと言われてる。この魔術ってのが厄介の種で、一部の人の魂に魔導書風に刻まれてんだ。分からなくても良い。じっくり理解していけば良いさ。ともかく、俺らの敵は魔導書を解析しようと狙ってくる」

魔術のノウハウを書いた魔導書。

それが一部の人の魂に刻まれてる、と。

なるほど分からん。

「ならさっさと全部解析したら良いんじゃないか?」

ふと浮かんだ疑問を口に出す。

「ところがそうもいかねぇ理由があるんだ。魔導書が魂に刻まれてるって言っただろ? その魔導書の文字が誰にも読めねぇんだよ。読みたきゃ一度魂をバラさなきゃならない」

バラす……解体するということだろうか?

魂なんて人間の大元みたいなものがそんなに簡単に分解出来るとは……。

「最悪、消える。」

と、そこに凪良さんが口を挟んできた。

「え?」

「魂は、根幹。バラされると人は消える。」

さらっと怖いことを言った。

消えるって……それ死ぬってことだよね?

「ま、そういうこと! そして魂をバラしやすいのがちょっとしたことですぐに心変わりする時期である子供ってことで、日本全国の学校を集めたこの特育都市は格好の標的ってわけ」

この特育都市は正式名称を『特別教育都市』と言い、その名の通りに『日本全国の学校を一つの都市に集約して子供達をまとめて安全に管理し教育に関する情報の伝達を迅速にしよう』というコンセプトの街だ。

だから大人も街のシステムを回すために居るが、学生のバイトで成り立っている場合が多いので大人は大抵教師だ。そのため圧倒的に子供が多い。

そんな街を狙うやつを撃退するということは……。

「つまり正義の味方だな!」

「一概には言い切れんが……まあそういうことだ」

大男が苦笑いを浮かべる。

「…そろそろ、契約。」

凪良さんが再び口を挟む。

「おーそうだそうだ! 良し、いよいよだな! 行ってこい晃司!」

いきなり馴れ馴れしくなった大男に促されて凪良さんについて行く。

さっさと歩いて行ってしまう凪良さんについてどんどん地下へと潜っていく。

「なぁ……凪良さんのする契約っての……魔術ってやつの一つなんだろ? 凪良さんも人……消したことあるのか……?」

無言の空気に耐え切れず思わず無神経な質問をしてしまう。

「凪良って、好きじゃない。千草って呼んで。」

「あ、ああ……ごめん」

「私は魔導書が読める。唯一の人間。魂をバラしたことは無い。」

歩く速度は緩まらない。

螺旋階段が終わり、暗い廊下を奥へと歩いていく。

距離感はあまり掴めない。

「魔導書を読める!? 読めないんじゃなかったの……?」

「体質。あまり理由は言いたくない。」

きゅっ……と拳を握りしめていることが後ろからも分かった。

「そっか……。あのさ、その契約ってのをするとどうなるんだ?」

「あなたのパラメータが更新され、腕が治る。ちょっと特殊な力が使えるようになる。そして私の隷属になる。」

隷属、奴隷か……ま、まあ聞かなかったことにしよう。うん。

「お、おお……要するに俺は人間をやめるのか……」

「安心して。そこまで深刻じゃない。見た目も身体能力も普段は変わらない。と思う。」

「そっか、なら良いや!」

そうこうしてる内に木製の重そうな扉が見えてきた。

「ほんとに覚悟は出来てるの?」

「ああ、やると決めたからにはやる。」

それが千草のためならなおさらだ。と、これは心に仕舞っておく。

「そう。後悔しても知らないよ。」

やらなかった場合、腕を片方失うことになるよね? つまりこれって一種の脅迫……。

扉を開け、中に入る。学校の教室ほどの広さの木製の床と打ちっ放しのコンクリート壁の部屋だった。千草は部屋の奥からかなり大きめのシートを取り出し床に広げた。

そのシートはどうやら紙で出来ているらしく、精密な模様が描かれていた。たぶん魔法陣……かな?

「……魔法陣ってこんな適当で良いの?」

なんかイメージと違う、と思わず呟いてしまった。

「聖書も所詮印刷。」

なんだかモヤモヤする感じの納得だった。

「《テット・ゲート》イニシャルセッティングモード」

小さく呟くと魔法陣が白く光り輝く。

「お、おおおー」

「感動してないで、中に入って。」

失礼します。なんて意味の無い挨拶をしながら魔法陣に踏み込む。すると魔法陣の輝きが増した。

ジッと千草に見つめられる。何かやらかしてしまっただろうか。

「これ、飲んで。」

すっ、と少しだけ液体の入った小瓶を差し出してきた。

「これは?」

「良いから。飲んで。ただの私の唾」

あ、ああ……と生返事をしつつクイッと飲む……。

「え、えええッ!? 唾!? 千草の!?」

「契約のため。成分だけ調整した合成液。」

「なんだ……良かっ……良くねぇよ!?」

思わず頭を抱えそうになり顔が焼けるように熱いことに気づいた。すると千草がスタスタと魔法陣を横切りおもむろに俺の制服のシャツのボタンを外し始める。

……もはや頭がショートして言葉も無く、動くことすら出来なかった。

三つくらいボタンを外したところで俺の胸にキスをした……ッ!?

「いやいやいや何してるの!?」

「契約。」

……もうどうにでもなれ。と、考えることを放棄したら

「もう終わった。片付けるから退いて。」

「え? 終わったの?」

ほとんど放心状態だったが案外短かった。

「契約は完了した。腕を見て。」

「うおっ、戻ってる!……ほんとに俺の腕?」

ペシンッ! と腕を叩かれる。

「イタッ」

「分かった?」

「あ、ああ」

なんだか釈然としないが契約は完了したのだろう。

特に力が溢れ出て止まらないーーーっ! なんてことはない。

 

すると、バンッ! と、扉の開く音に慌ててシャツのボタンを付けると

「晃司君の右腕崩れたけど大丈夫!?」

あの少年がバラバラになった藁人形らしき物を手に飛び込んできた。

「悠大、契約が終わった。」

千草が淡々と言うと

「あー、それで崩れたのね! 良かった良かった。そしたら晃司君はどうするの? 寮戻るなら送るよ?」

こんなちびっこい少年に送られるような年齢では無いんだが。

「もう遅いから。ここに泊まると良い。」

「それが良いかもね! 部屋はまだまだ空いてるし!」

「105号室が、良い。」

トントンと話が進む。

「よし、じゃあ早速準備してこよう! あ、晃司君は上に上がって剛毅(ごうき)君に着替えとかもらっておいで! さすがに制服のまま寝るわけにはいかないでしょ?」

いつの間にか泊まることは確定してしまったようだった……。

「あの、剛毅……さんって?」

「え? あー、あの無駄にムキムキした人さ!」

ああ、あの説明してくれてた人のことか。

「あー、分かりました。えーと……」

「ん? ああ、なるほど! 僕は見ての通り君より年下さ! 悠大(ゆうだい)って名前さ。好きに呼んでくれて構わないよ! 気軽に行こうよ気軽にね!」

やたらと明るいテンションの少年だった。

「あー、分かった。悠大、105号室ってどこ?」

「えーと、1番最初に入ったエントランスの右の階段を…やっぱり説明しにくいから剛毅に聞いてくれ! じゃ!」

そう言うとさっさと上に行ってしまった。

「ユウは言葉より行動。」

千草が小さく呟いて解説していた。

「……そうみたいだね」

まったく同意だった。

 

千草はもう少し用があるとかで下に居るらしいのでおれは階段を上がってきた。

「剛毅さん、悠大に着替えと部屋について聞けって……」

コーヒーを飲みながら新聞を読んでいた剛毅は、クッとコーヒーを一息に飲み干して豪快な笑みを浮かべた。

「おう、悠大に聞いたぜ。それと俺のことをさん付けで呼ぶのはよしてくれないか。どうもムズムズして苦手なんだ」

心の中で評価を『世話好きで超兄貴肌』とランクアップした。

「えーと、じゃあ……」

「そいつはブラッディオーガとでも呼びな」

横合いからかけられた女性の声に驚き振り向く。

笑いを含んだ声色に妖艶な魅力が混ざってる。妖艶な魅力ってイマイチ分からないけど直感的に。

「よしてくれよ、別に普段から血塗れなわけでもねぇんだから」

また豪快な笑みを浮かべながら剛毅は返す。

普段からってくだり……妙に怖いな。

「へぇーこの子が新入りかい、今度は可愛いのが入ったねぇ」

バスローブ姿の年上の女性に迫られ思わずたじろいでしまう。

恥じらいは無いのだろうかっ!

「手、出してはいけない。私の部下。」

地下から上がってきた千草が扉を閉めながら言う。

「なんだい、嬢ちゃんのツバ付きなのかい」

ツバ付きって……。

ちょっと残念そうに頬に手を当てながら女性は言った。

「晃司。この女狐は静佳。近づいたら、食べられる。」

「ひどい言い様ねぇ」

口元に笑みを浮かべながら静佳は言った。

「剛毅、着替え渡して。晃司は受け取って風呂へ。」

「はいよ、俺もついでに風呂入るかぁ! ほら、晃司、着替えは行くついでに取ってきてやるから左の階段上って突き当たりに行ったら風呂だから先行っとけ」

「お、おう!」

変に気を使うことのない、ここの住人の対応にいつの間にかこの環境に置かれていることに慣れてしまっていた。

 

風呂はどうやら男女別の温泉形式のようだ。

源泉では無さそう。

「改めてとんでもない豪邸だなぁ」

一人で脱衣所で服を脱いでいると剛毅が入ってきた。

「おう、待たせたな! ほら、着替えだ」

ヒョイっと投げられて慌てて受け取る。

「制服はそこのハンガーにかけとけ、シワになるからな」

この人の世話好きスキルはどこで培ってきたのだろう……。

「すまんな、アレでもみんなお互いに信頼し合ってるんだ。お前も変な距離感じずに気軽に接してくれて構わないんだぜ。信頼がねぇとやってられないからなぁ……こんなこと」

「アレ?」

「嬢ちゃんと静佳のことさ」

「あ、ああアレのこと……」

ガラッと脱衣所の奥の戸を開けると、さすがに展望ではないが大きな露天風呂があった。

「おお〜! こりゃすげぇ!」

「ハッハ! やっぱ晃司も日本人だな! 良い感性してるぜ! のんびりしていくと良い!」

「はぁ……最高だ……」

熱い位の湯に浸かりながら思わずため息をついてしまう……。なんて気持ち良いのだ……。

「なあ晃司。完全に今更なことなんだがよ、俺らがやってることは本当に命がけなんだ。魔法だの魔術だのってのは簡単に常識の壁を越えてきやがる。いつ死んでもおかしくない。だから俺らを信頼すると誓ってくれ」

「ああ、分かった。今日会った人達はみんな良い奴だった。だから俺はみんなを信頼する。」

「そうか。良く言ってくれた。よし! 明日は休日だな? 嬢ちゃんの古式魔術で手に入れた力を試そうじゃないか!」

「おお! そうか! おれはついに憧れの超能力を手に入れたんだもんな!」

「ああ、それとな晃司。千草を落とすのは大変だぞ。下手したら俺らの仕事よりもな」

豪快な笑いとともにそんなことを言われ思わず吹き出してしまう。

「うっそ!? そんなにおれ分かりやすいのか!?」

「ハッハ!今のはただのカマかけだ! そうかそうか! 嬢ちゃん狙いか、いやいや頑張れ晃司!」

「剛毅兄貴……」

ほどよくあったまってきたところで、俺は剛毅に聞いてみた。

「なぁ……古式魔術について詳しく教えてくれないか……?」

「古式魔術について……か。古式魔術が1度失われた技術だってことは前に言ったな?」

「ああ、魂に刻んであって、読もうとしたら死ぬとかなんとか……」

「そう、概ねその通りだ。だが何故、魂にわざわざ記載されていると思う?」

「……なんでだ?人にバレたくない……なら一箇所に保管するべきだし……」

「それがな、分からないんだよ。さっぱり。なんで人の魂に、しかも魔法も古式魔術も知らないような人達の魂にさえ、記載されているのか。どうやって記したのか。誰がやったのか。どれくらいの数、そしてどんな種類の魔術なのか。なぜ科学を無視出来るのか。古式魔術については何も分からねぇ」

「そんな……じゃあ……」

「ああ、その謎を明かして全ての魔術を魔導書として現存する物にする。それが俺らの敵に対する唯一の勝利条件だ」

「古式魔術について今分かってることってあるのか……?」

「俺らも嬢ちゃんの使う《テット・ゲート》以外の魔術は見たことがない。嬢ちゃんはここに来るまでの間に幾つか魔導書として作成したらしいが書庫に入ることは固く禁止されてる。だから憶測程度のことしか言えないが、古式魔術には魔力がほとんど必要無い物があるらしい。俺らの扱う魔法は科学技術で説明がついてるようで実際はついてない。説明出来ない部分はそれなりの魔力で補ってるんだ。魔力は誰しも個人差はあるものの持っている。永久油田のような物で長期的には尽きることは無いが短時間に取り出せる量に限りがある。古式魔術はそんな魔法や魔力の概念を丸ごと無視してきやがるのさ。魔術について分かるのはそんだけさ!」

「そっか……なあ、魔力が暴走することってあるのか?」

「ほとんど無いと思って良い。俺らみたいに扱い慣れてるやつはそんなヘマしねぇし、魔法のマの字も知らないやつはそもそも魔力を魔力として取り出せない。晃司だって今まで知らなかっただろ?」

「ああ、そうだな」

「動かしたことの無い筋肉は急には動かせない。無理に動かそうとしてもセーフティがかかっちまう。まあ、火事場の馬鹿力みたいなのがあるから一概に無い、とは言い切れないのが辛いところなんだけどな」

「なるほどな……」

「さ、俺が言うのもなんだがちょっと長々と喋りすぎたな! 逆上せる前に出ようか!」

おう……という返事は声にならずフラッと倒れそうになってしまう。

「遅かったか!これは悪いことをした…な…」

心配して抱きかかえてくれた剛毅の声が遠くなっていく。

風当たりの良い場所で降ろされ横に寝させてもらう。

「…たし。…ウジの…絶してるとこ…ばかり見…る気が…る」

千草が様子を見に来てくれたらしい。残念ながら所々声が聞こえない。

「そう……う星……下に生ま……たのかも……」

剛毅の声も聞こえる。大丈夫だ、と言いたかったがどうも大丈夫ではないらしい…

「嬢ちゃ……、しょう……なとこ…晃司の……ど……思っ……だ?」俺の話をしているらしいことしか分からない。迷惑をかけてしまっているのだろう……。

「わた……は。……ない。コウ……わ…し……めに……なんて、馬鹿。」

また馬鹿って言われてしまった。でも、俺の千草に対する気持ちは変わらない…から…。そこで完全に意識が途絶えた。

 




晃司意識喪失エンド多くね?w
次はきっと起きてるから…(震え声)ていうか主人公の意識を落とす以外のエンドが分からないんですよね…引き上手い人にはほんと憧れるw
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