気になるあの子は魔導書が読める!?   作:久遠/kuon

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最近一気に寒くなってきましたね〜。秋ってやつですよ秋!
秋と言えば……。
まあそんなありきたりな前説は置いといて私は秋にやりたい新たなゲームを提案します!
その名も『ヤンデレ女子育成格闘ゲーム』!!
内容はその名の通りで、ヤンデレ女子を殺されかけながらも必死で育成し、オンライン対戦でお互いに戦わせる……という!
対戦前に
「お兄ちゃん……あの女誰……?」
「アイツを殺したら褒めてくれるよね……お兄ちゃん……」
とか決め台詞を……。あれ?これ結局主人公死ぬじゃん!w
デッドエンドに突き進むワンストーリーアクションRPG……誰か商品化してくださいw


四章『忘却の街と喚び出すチカラ』
第十九頁 「チキン食えよ、美味いぞ!!」


梅雨入り前の初夏のような陽気、今日は制服のシャツの袖をまくらなければやってられないほどだった。

カバンを右手に持って道を急ぐ。ちょっとだけ遅刻気味なのだ。

全力で走れば余裕で間に合うほどの脚力はある。

この前、ある一件で手に入れたのだ。脚力だけでなく、潜在能力を引き出すという方法で全身体能力を。

でもこれは潜在能力を引き出しただけなので全力を出し過ぎると後でものすごい疲労と関節痛に襲われてしまうらしい。

ちょっと前に人を抱えたままビルの壁を駆け登るという荒業をし、そのあと約束通りジョージとボウリングにも行ってしまい、痛いほど身に沁みている。二重の意味で。

だから走りたくないのだ。

そしてそんな慌ただしい朝の街は遅刻しそう、とか課題が終わってない、とかとは別の意味で浮ついていた。

「なあ、バス停ってどこだっけ」

「この道をまっすぐ行ったらあるでしょ」

そんな会話がどこからか聞こえてくる。

「ほら……えーっと、昨日見たニュースの……あの……首相の名前なんだっけ?」

「いや、お前そんなことも忘れたのかよ。……あれ? おれも忘れた」

他にもバスに乗る時に前から乗ろうとした男子高校生、自転車に乗ろうとして鍵が無いことに慌てる男子中学生、携帯のパスコードを忘れてしまって半泣きになる女子高生まで居た。

今、この街で流行っている忘れ症、オブリポプルスとかいう現象だ。原因は分からず、根本的な解決法も見つかっていない。ただ、様々なことを一時的に忘れてしまう。

まったく、恐ろしい。

デート中にトイレに行って、その間に自分の彼氏の名前を忘れてしまった女子高生のことがニュースで流れるほどだった。

そんなわけで……。

(阿古は栗色の髪で、ポニーテールみたいな巫女さんみたいな髪型。よく猫耳が似合いそうなんて言われる美しいより可愛い顔つき。身長は低めで、頭に手を置きやすい高さ)

別に告白の練習ではない。こうでもしないと忘れることがあったら、と不安なのだ。

ちなみに千草と阿古は今日の四時間目の調理実習のための仕込みがあるとかなんとか言って先に行ってしまった。

調理実習って仕込みとか要るようなの作るっけ?

とにかく、だ。

色々と忘れないようにするためにブツブツ呟くのが珍しくない最近、誰に咎められるわけでもないのでどんどんエスカレートしていく。

(千草はちょっと気怠げそうな吸い込まれそうな黒い瞳。緩くウェーブのかかった、ブロンズの髪で肩にかかるかかからないかくらいの長さ。そしていつも淡々と話すから感情が無い、なんて言われるけど良く見れば小さくガッツポーズしていたり、悲しげにしていたり、と意外と感情豊かなことが分かったんだよな)

早歩きのまま、混雑する道を行く。

「……んで僕らがここに派遣されたんだっけ?」

「弟よ、大元の目的を忘れるなよ、まったく……」

すいっと大学生くらいの良く似た顔立ちで黒のパーカーをお揃いで着た男達とすれ違った。

その時、まるで古本屋の中に入ったような香りがした。

とても懐かしい匂いだった。

思わず気になり、立ち止まって後ろを振り返る。

「……なんの匂いだろう?」

後ろを振り返った時には男達はすでに人混みに紛れてしまって見つけることは出来なかった。

「結局なんだったんだろ……すごく懐かしい匂いだったんだけど……うぉっ!?」

前を向くと目の前に……魔女が居た。

思わずびっくりして後ずさるが、追うようにさらに迫ってくる。

本物の魔女ではないと思う。……たぶん。

ざっくり言うと、ハロウィンパーティーでハメを外してしまったような、なんちゃって魔女のような格好の短髪の大学生くらいの年上の女性がすぐ近くに立っていてこちらの顔を覗き込んでいた。

ご丁寧にあの『魔女と言えば』な幅広帽子も被っている。

すると、その魔女が唐突に顔のど真ん中を指差してくる。

「少年、君はあの匂いがする。だから私の護衛をしろ。フォローミー」

日本語も英語も流暢な不思議なハスキーボイスでわけの分からないことを言われる。

ものすごく近いし、指がガッツリこっちを向いてるので確実におれに話しかけているのだろう。

「フォローミー? あの匂い?」

「良いから黙って従え。フォローミー」

とても高圧的だった。もしかしたら日本人では無いかもしれない。艶のある黒髪にメッシュでも入れるように金色に近い白髪がところどころ混ざってるし。

「えーと……。フォロー……ミーってことは……」

「……」

何かを待つようにジッとこちらを見つめる魔女。

なるほど、そういうことか。

「あの……ちょっと胸とかお腹とか直視できないくらいに露出が多い気がしますけどすごく似合ってますよ。なんか、中世の魔女って感じ」

バッキィ!

「ここまで英語の出来ないやつは初めてだ」

「初対面で人の顔を殴るやつも初めてです……」

幸い距離が近かったためそんなに勢いは無かった。

思わず頬をさすってしまうけど。

「フォローミーってのは付いて来いってことだ。鎖国系日本人」

「鎖国系日本人って……。で、どこに連れて行かれるんですか? おれは」

もはや何にでもなれ、という感じだった。

幸い今は時間に余裕がある。特にこの後予定はない。

「そうだな、あの、なんと言ったか、物凄くいっぱい食べられるところーー」

「バイキング」

「ーーに行こうか。ご飯でも食べながら詳しく話そう」

朝ごはんはもう食べたんだけどなぁ……。

なんというか全体的に強引だった。

 

そんなわけで。

「……」

「……」

ガツガツガツガツ! と会場のあらゆるところから取ってきた料理をものすごい勢いでたいらげていく。

そして先ほどから無言なのはーーー-。

「……あの」

「今食べているんだから話しかけないでくれ」

こういうわけだ。

片時も食器を放そうとしない。一応一皿食べ終わったタイミングで話しかけたというのに、この魔女は何の躊躇も無く次の皿に手を伸ばしなさった。

「……」

だいたい、ここに来るまでの間もやけに注目を浴びたのだ。

たぶん、その魔女のコスプレのせいで。

「……結構いろいろ食べるんですね。てっきり和食は無理かと」

ダメ元で再び話しかけてみる。

「話しかけるなと言っただろ」

やっぱり門前払いされてしまった。

もう置いて帰ろうかなぁ。

護衛だとか言ってたのだって冗談だろうし。

良くて話し相手、最悪は食べるだけ食べて料金はこっち持ち、なんてこともあるかもしれない。

「まあ、こう見えても私は日本人だからな。向こうでは『日本人だから食えるだろ』って良く日本食を食べさせられたものさ。おかげで慣れたがね」

決してこっちを向かずに垂らした前髪で目元を隠しながらも応えてくれた。

「ヘリナ・ジオード。英玲奈と呼んでくれ」

「古守 晃司です。ヘリナなのにエレナ?」

「ああ、そうなんだ。そう呼んでくれ。日本名が先にあったのかどっちが先なのか私は知らないんだ。この黒髪も、金髪も、両方とも地毛だ」

「知らない……?」

不思議な話だった。

「しょうがない、今後のためにも少し詳しく話すか。私はな、記憶がほとんど無いんだ。さっきの日本食の話だって君に指摘されるまで忘れていた」

記憶喪失……。聞いたことはあるが目の前にするのは初めてだった。

「少し自己紹介が出来る程度のことしか覚えていない。親の顔も、どうやって今まで生活してきたかも知らないんだ」

一度口を開いてしまったからか、独白は止まらない。

「記憶がしっかりと続いているのは大学生としてこの街にいた春。ちょうど一年前だ。それ以前はどうやら外国に住んでいたらしい」

「記憶が無いって、どんな感じなんですか」

どんな感じって……おれはバカか。

動揺していたからか思わず、明らかに見当違いなことを言ってしまう。

「……そんなことを聞いてきたやつは初めてだ。コカミ、君は面白いやつだな。記憶が無いっていうのは、やはり寂しいかな」

カチャン、と気持ちを切り替えるようにして英玲奈が皿の上に乱雑に箸を置く。

「そろそろ本題に入ろうか。繰り返すことになるが、私の護衛をして欲しい」

目が本気だった。

「おれは普通の高校生ですよ。P・Aに頼んだ方がマシだと思うんですけど」

そして、いつの間にか話に引き込まれてしまっていた。

「いいや、君は普通の高校生じゃない。分かるんだ、私も似たようなものだから。端的に言おう。私は召喚士だ」

召喚士……RPGなんかで良く耳にするアレ、だろうか?

「さすがに冗談だと思ったかな。では軽い余興として本物を見せよう」

また魔術やら魔法やら絡みかぁ……。

いつか取り返しのつかないことになりそうで嫌なんだけど。

っていうか、もう取り返しつかないレベルまで来ちゃってる気がしてきた。

「本物って……何かドラゴンーとかスライムーとかをここに呼び出すってことですか?」

昼前の賑やかな街並みの見下ろせる、オシャレな店で流石にそんなおおっぴらなことは出来ないだろ。

「んー、ご所望ならドラゴンでも出してやろうか?」

ドラゴン出せんのっ!?

そ、それは是非とも見てみたい……。

「えっと……ドラゴンお願いします」

「はいはい、ドラゴン一匹オーダー入りました〜」

まるでウェイトレスを気取るようにどこからともなくバインダーを取り出して挟んであるB4くらいの紙をパラパラとめくる。

「そうだなー。ニーズヘッグでも呼ぶか」

ニーズヘッグ!?

もう名前からして強そうなんだけど!?

ガタガタと食器を動かしてテーブルに空きを作る。

そこにバインダーから一枚抜き取った紙をペラッと置く。

紙には手描きらしき魔法陣のようなものがウネウネと円状に描かれていた。

「えーと……」

その魔法陣の一番端円の外側に書かれたアルファベットだかなんだかの文字を指差して追いながらごにょごにょと何かしら唱えていく。

格好も格好だし、それなりにサマになっている。怪しすぎて店員さんにつまみ出されないかすごく心配だけど。

「……めんどくさいや。肉あげるから召喚されたまへー」

カッと魔法陣に置かれた指から魔法陣を描く黒い線をなぞるように光が飛び出し、鮮やかな虹色の輝きを与えていく。

「そんな適当で良いのか魔術!?」

思わずツッコミを入れてしまう。

「ん? ああ、私のは魔術じゃないよ。秘術さ。まあ魔術とほとんど同じで良いと思うよ。違いはこの世で使えるのが私一人だし、魔導書として魂に刻まれてるなんてこともないってだけ。……お」

英玲奈が下を向いて嬉しそうに目を輝かせる。

「いやー、良かった良かった。ちゃんと成功したよ。おーい、ニーズヘッグのおっさん。お礼に肉やるよ」

つられて下を見ると、輝く魔法陣の中心にとぐろを巻くように、ところどころ黒く煤けた赤い龍が眠っていた。

「ちっちゃ!?」

「大して魔力込めてないからね。仕方ないよ」

ツンツンと赤龍を突きながら英玲奈は言う。

すると。

「ーーっるさいなぁ。だいたい、俺の主食は死者の肉だっつってんだろ」

しゃべった!?

この龍しゃべんの!?

「いやー、そんなの用意するなんて無理じゃん? 代わりの鶏肉ならあるからそれで勘弁してよ」

「死者肉」

「鶏肉」

「死者肉」

「鶏肉」

「死者肉」

あくまでも譲らないニーズヘッグに

「チキン」

呼び方だけ変えて対抗する英玲奈。

「死者肉しか食わねぇっての!」

「チキン食えよ、美味いぞ!!」

そういう問題じやないだろ。

「そういう問題じゃねぇっつってんーーッッッ!!?」

ガツッと思いっきり串ごと焼き鳥をイグアナくらいのニーズヘッグの口にねじ込む。

「ご、ごはぁっ!?」

鼻から真っ赤な炎を噴き出してむせるドラゴン。

串ごとはダメだろ……串ごとは……。

だが、器用なことに尻尾を使って串を抜き取る。そのままヒュンっ、と串を真上に放り投げた。そして串に向けて炎を吐きかけ、燃やし尽くした。

もしゃもしゃと焼き鳥を噛みながら言う。

「ほう、こりゃなかなか美味いな。良いだろう、俺を呼んだ用を言え」

「特に無いよ」

美味いのか! 気に入っちゃったんだなー。ずっと焼き鳥の乗った皿の方を見ている。

でも英玲奈の言う通り、確かに理由は特に無いなー。

「そりゃ無いだろ。じゃあアレか? 俺はただ鶏肉を食わされたってだけなのか?」

「そうなるね」

改めて言われると酷い話だった。

怒って暴れ出したりしないだろうか。

「ふーん、まあ良いや。じゃ、とっとと帰らせてくれや」

「自分で帰ってよ、めんどくさい」

もはや英玲奈の強引さもワガママに到達しつつある。

キッ、とニーズヘッグの爬虫類の特徴的な瞳で英玲奈を睨む。

「……しょうがないなぁ」

ぱちんっと英玲奈が指を鳴らすと跡形もなくニーズヘッグが消え去り、魔法陣から輝きも失われた。あとついでに去り際に尻尾を使ってかすめ取った焼き鳥十五本ほども消えた。

って取りすぎだ!

「……と、まあこんな感じなわけだが」

「なるほど、今のが召喚術か……って全部本物ならトンデモナイなぁ」

「全部本物に決まってるだろ」

バキィ……と本日二度目の顔面パンチ。

「あの、すぐ殴らないでくれますか……」

「すまない、つい。とにかく、だ。この秘術を狙ってどこかの組織が私に追っ手を差し向けているらしい。だから撃退するか、ほとぼりが冷めるまで護衛して欲しい」

なるほどP・Aには頼めないわけだ。あのお役所サマにはとても受け入れられないだろう。

「分かった。受けるよ。その追っ手の特徴を教えてくれ」

さすがに放ってはおけなかった。

「分からないんだよ。会ったことないし」

無いのかよ!

「よくそれで護衛なんて頼みに来たな……。とりあえずはここで籠城戦でもして情報を集めようぜ。下手に動くよりマシだと思う」

「ほう、撃退するわけか。なかなか好戦的だな。でもその意見には賛成」

幸いなことにここは時間無制限で、取った皿の枚数によって料金の変動するバイキングだ。強靭なメンタルさえあれば何時間だって粘れる。

今が十一時を少し越えた辺りだから……十四時くらいまでは粘りたいところ。

そう二人で作戦を決め、時間稼ぎに料理を取るために立ち上がろうとした時。

「あの、お客様……」

この店のウェイトレスさんがやってきた。

顔を上げると、後ろに怒りのオーラでも浮かべていそうなレベルでキレたウェイトレスさんが立っていた。

「店内での火器の使用は厳禁でして……。要するに出て行って頂けますか? サイコ野郎ども」

しまった!!

ニーズヘッグの炎か……。

笑顔が素敵なウェイトレスさんと常識を前に、罵倒に言い返す余地も無かった。

そんなわけでおれたちは早速店から放り出されることとなった。




前書きで言うの忘れてましたw新章スタートです!!
出来るだけ描写を深くしてノリを軽くしたつもりなのですが……どう作用したでしょうか?上手く出来てたら嬉しいなー、と。
そして次回の投稿は1週間か、少し越えるくらいになりそうです〜。
ではではみなさんまた次回〜!
……あっ、くそっ、主人公殺られた!……妹めぇ……。
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