気になるあの子は魔導書が読める!?   作:久遠/kuon

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今日も暑いですね… 熱中症になって倒れたりしないように私は家に引きこもります!…じょ、冗談ですよ…!

では意識の途絶えた晃司くんが目を覚ますところから物語は再開しますー!


第三頁 《テット・ゲート》

7時ぴったり。平日用のアラームを解除し忘れた携帯が鳴る音で目が覚めた。

「夢、ではないよな……」

周りは見覚えのないホテルのような綺麗な部屋だったが部屋番号が105だった。寝巻きが風呂に入る前に渡された物だったから夢ではないのだろう。

寝巻きのままだが他に着替えが無いので仕方なく髪だけ整えて昨夜、剛毅がコーヒーを飲んでいたところへ向かう。

 

「ふぁ〜……おはよう……」

「おはよう。」

「お、起きたか!おはよう!」

「お〜おはようだよ晃司君!」

「あら、起きたのねぇ。おはよう」

「晃司! 早速行くぞ!」

剛毅が待ちかねていたように言う。 まだ寝起きなんだけど……。

「あんたも晃司君もご飯食べてないでしょ、座りなさい。これだからブラッディは……」

静佳が呆れたように言う。

「おお、そうだったな……晃司! 今日は千草の当番だから美味い飯が食えるぞ!」

この屋敷では家事が当番制で回されているようだ。

……千草の手料理。ちょっと楽しみだった。

 

朝食は和食だった。人参と大根を薄く切って白味噌を使った味噌汁と焼きサワラに、白身部分を丁寧に割った黄色の卵焼きに少し柔らかめに炊いた白飯が目の前に並ぶ。

「おおー! 美味い!」

「ああ! 最高だな!」

剛毅が絶賛する。

「あーうん、美味しいよねー」

悠大は美味しそうに食べるが何故か半笑い。

「そうねぇ、もう少ししっかり焼けば良かったかしら」

「美味。やっぱり朝食は和食ね。」

「?」

それぞれの反応に何か引っかかるが……。

 

朝食を食べ終わり、この豪邸の端にあるという模擬戦闘場に向かう。

模擬戦闘場なんて物騒な物があるというのが相当怖い。

そして、そこは屋内でありながら学校のグラウンドが軽く入りそうなほどの広さだった。

「つくづく思うけどここって何でもあるんだな……」

「これくらいしないとまともに戦えない敵が多いってことさ晃司君!」

悠大が笑いながら言う。さすがに冗談だと信じたい。うん。

「よっしゃ! 嬢ちゃん、晃司! 準備は出来てるか!?」

「あ、ああ。準備って言っても何すれば良いか分かんないけど…」

「私は、いつでも。」

「よし、まずは俺が相手してやる!思う存分好きに大暴れしやがれ!」

不敵に笑う剛毅に思わずたじろいで一歩下がってしまう。すると少し遠くの後ろに立っていた千草が一歩近づいてきて静かな声で言った。

「今からあなたが使う古式魔術は慣れるまで自分の内面と向き合う苦痛を伴う。それがいつ来るかは分からない。古式魔術を発動した時点からそれは始まるかもしれない。覚悟して。」

「ああ、分かった」

「それと、この古式魔術は私から離れすぎると効果が消えてしまう。範囲は広いけど注意。」

「了解だ」

聞く限りなかなか不便そうな代物だった。俺はそれを使いこなせるだろうか?

「健闘を、祈る。」

「嬢ちゃん!そろそろ良いかい?」

「大丈夫。いつでも行ける。」

「よし、じゃあ始めようじゃないか!」

「《テット・ゲート》!!」

普段のあまり感情のこもらない声に似つかわしくない力強い声が後ろで響く、と同時に背後から地面を揺らし轟音を立てて何かがせり上がってくる気配がした。

クラッ…とめまいがしたようなフラつきに襲われる。

「おお!それが晃司の潜在能力の象徴か!」

そして、右手には赤く燃え盛る長剣があった。柄には繊細な逆巻く炎の意匠があり、剣身はもはや大剣と呼ぶに相応しいほどの幅だった。そして見た目とは裏腹に意外と軽く一瞬だけなら片手で持ち頭の上まで掲げられそうだった。

「晃司の熱き闘志の現れか!」

剛毅は長剣を見て豪快に笑い飛ばした。

「その剣。どこかで見たことがある。」

「なんだこれ……全然熱くないけど……おれの手燃えないだろうな?」

晃司は自らの持つ剣に気を奪われ剛毅や千草の言葉が耳に入ってこなかった。

「さあ来い晃司! もう俺の魔法は発動してるぞ!」

「おいマジかよ! 早えよ剛毅! ……っていうか本当に? 何も起きてない気がするけど」

剛毅は先ほどと同様に腕を組み仁王立ちしているだけだった。

「ああ、もちろんだ! そっちから来ないならこっちから行くがそれではお前の模擬戦闘の意味が無いぞ?」

それもそうか、と呟いて剛毅に向けて一気に駆け出す。下段からの斬り出しで一息に逆袈裟気味に切り抜く!

(えっ、斬れた!?)

「避けろよ剛毅!」

「避ける必要が無い、だから避けない」

剛毅は低くそう呟いてニヤリと笑った…!?

逆袈裟気味に斬ったはずの下腹部は全くの無傷だった。

(どういうことだオイ!? 完全無傷の魔法!?)

斬り抜いた姿勢から肩口を切り裂くように右へ剣を振り抜く! そして振り抜いた勢いのまま剣の重さを利用して回転しながら剣を右下に腰だめに引き、一瞬のタメを持って一撃目とXの字を描くように斬り上げる!

「ハッハ! 良い動きだがそれでは俺を倒せない!」

「馬鹿! 剛毅! しっかり制御しろ!!」

悠大が慌てて叫ぶ。

シュッ……と剣を振り抜いた姿勢の俺の死角を突くようにいつもよりはるかに凄絶な笑みを浮かべた剛毅が手刀を首に向かって突き出してくる……!?

(剛毅が……2人……ッ!?)

と、ジュワァァァァッ!!

まるで熱した鉄を水に叩き込んだような壮絶な破裂音が模擬戦闘場に鳴り響く。

その音を立てた光は俺の脇の下を通り死角から現れた剛毅の居た場所を貫いた。

「剛毅、しっかりしてよ。今ので晃司は死んでたかもしれないのよ。」

「す、すまねぇ」

一度に多くのことが起こりすぎて訳が分からなかった。

「すまねぇ、晃司。今のが俺の魔法《ドッペル・シャドウ》だ。便宜的に俺らはアレを剛鬼って呼んでる。鬼って書いてアクセントは語尾だ」

剛毅が申し訳なさげに謝りながら説明する。

「剛毅は剛鬼を制御し切れないんだよ。だから静佳が《マテリエイト》で迎撃したってこと」

気づけば剛鬼は広い模擬戦闘場のどこにも居なくなっていた。

「どういう……ことだ?」

魔法の名だろうか? 専門用語が多すぎて理解が追いつかなかった。

「静佳の魔法。《マテリエイト》は何も無いように見える所から色々な物を錬成する。《ドッペル・シャドウ》は剛毅の魔法。質量を持った残像と気配が希薄な本体である剛鬼を創り出して突撃させる。」

「お、おおお! 二人ともカッケェ! なんか本当に人間離れしてるな!」

「いやいや、晃司君もかっこいいよ! 燃え盛る剣だぜ!?」

うおおー! と悠大と一緒にはしゃぎまわる。

「晃司。そろそろ剣を離さないと。疲れてしまう。」

え?と息を荒げながら千草を見る。

「《テット・ゲート》は発動者よりも使用者の魔力に依存する。」

「そうなのか、あれ? これどうやったら消えるんだ?」

「消えろと。思うだけで良い。」

「お! 消えた! さすが魔術の達人!」

「ただの、勘。」

「…」

イカサマを見るような目で千草を見つめていると千草が恥ずかしそうに、そっと頬を赤く染めた。

 

「よっしゃ! 必要なのは剣の鍛錬だな晃司!」

「おう! 頼むぜ剛毅!」

その日は1日模擬剣での素振りと筋トレに費やした。

夕方になり模擬戦闘場から本館に戻る道すがら、剛毅は少し前に他のメンバーは昼頃に帰ったので1人で歩きながら少し先のことについて考えていた。

(たった1日……何の気なしに過ごしてた日常が1日で変わってしまったのか……。これから……どうすりゃ良いんだろうな……みんなは俺を歓迎してくれてる…俺自身ここと今の環境を気に入った。でも……俺はいざという時みんなに迷惑をかけずに役に立てるだろうか?)

「迷惑をかけることは普通。迷惑をかけて。フォローしてフォローされて。感謝しながら信頼すれば良い。」

(そっか……俺は……みんなの為になることだけ考えれば良いのかな……)

「そう。至らないなら、私がフォローする。もう晃司もここに住めば良い。」

(ここに住む……か……んんっ!?)

「うわぁっ! 千草!? いつからそこに、ってか声漏れてた!?」

まさか考えていたことが声出ていたとは……っ!

「夕食の準備が出来たから呼びに来た。そしたら廊下で独り言、言ってた。」

そして内容が内容だったから自分なりの考えを言ってくれた……ということか。

「晩御飯、出来たのか。今日は千草の当番……だったよな! 昼飯は軽食だったから晩飯が一層楽しみだぜ!」

千草が何か言いたそうな顔をしていたので言われる前に先手を打った。

「…ありがとうな」

千草はちょっと虚を衝かれたような顔をした。

「色々あって、悩んでてさ。あのままじゃ答え、出なかったかもしれない。でも千草のおかげで決心がついたよ! まだ分からないことだらけだけど、俺……頑張るよ」

そう言った反面少し恥ずかしく少し顔を背けてしまう。

「うん」

声に釣られて見てしまった千草の顔はどこか嬉しそうな笑みを浮かべていた……ような気がする。

「晩御飯が冷めてしまう。」

先にいつもの調子を取り戻したのは千草の方だった。冷めるのが嫌なのだろうか、小走り気味にダイニングへと向かった千草の少し後ろから俺も続いた。

 




千草さん可愛いー!
あ、つい本音がw 晃司くんが羨ましい限りですw

では契約編はたぶん次でラスト!住むことを決めた晃司くんの引越しイベントですよ!晃司くんの宝物のアレが晒される…!?
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