僕と島田姉妹と逃走劇   作:玉虫子希

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第一問

 子供召喚獣騒動からしばらくした日曜日の朝。普段ならゲームをしているか寝ているかのどっちかの時間だけれど今日はちょっと違う。

 僕は財布や弁当が入ったバックをもち、近所にあるとある駅前広場で待ち合わせをしていた。

 いつもはこういう待ち合わせには遅れている気がするけれど、今日はしっかりと約束時間の10分前に来た。

 元々僕だって好きで遅れている訳じゃないからね。そりゃあまあ、寝坊して遅れることはあるけどさ……。

 それにしてもてっきりもう来ているものだと思っていた待ち合わせの相手がまだ来ていない。もしかして何かあったのかな……?

「む?明久ではないか」

 腕時計で時間を確認していると不意に後ろから聞き慣れた声で名前を呼ばれた。

「あ、秀吉。おはよう」

「うむ、おはようなのじゃ」

 話しかけてきたのは私服姿の秀吉だった。少しレアな秀吉の私服姿。サイコーだね!

 ただ残念なことに今日の待ち合わせ相手は秀吉じゃないんだよね。それなのにこんなところで偶然会うなんて珍しいな。秀吉もどこかに行くのかな?

「秀吉、どこかに行くの?」

「ワシは久々の補習のない休みじゃからちょっと劇でも見に行こうと思ってな。それに今ワシの尊敬しておる劇団の劇をやっておるようじゃから丁度良いと思ったしのう」

「はは、秀吉らしいね」

 流石は秀吉、休みの日もこうやって演劇の勉強をやっているんだ。夢が決まっているっていいなあ……。

「そうかの?ところでおぬしの方こそどうして駅前などに来ておるのじゃ?ワシはてっきり家でゲームでもやっておるのかと思ったのじゃが……」

「……ま、まあその、僕はたまには軽くどこかに行こうかなー、なんて思ってさ。あはは」

「ならば何故ワシから目をそらすのじゃ?」

 頬を書きながら誤魔化そうとしてけど流石は秀吉。すぐに僕が隠し事をしているということに気がついて疑わしげな目で見てきた。

 こ、困ったな。悪いけど今回のことはいくら秀吉であっても言うわけにはいかないんだよね……。けど秀吉の演劇部で培った観察眼の前で隠し続けるような器用なことは僕には出来ない。

 ど、どうしよう。ここは諦めて言うべき?いやいや待て吉井明久よ。このことはそんな簡単に話していいことではない。考えるんだ、秀吉からうまく隠す方法を!

 必死になっていろいろな方法を考えていると、やがて秀吉は観察してくるのをやめいつもの優しく明るい笑みを浮かべた。

「ま、ワシにも言えないことぐらいおぬしにもあるじゃろう。深く尋ねようとは思いはせぬ」

「本当?ありがとう秀吉!持つべきものは雄二なんかじゃなくて秀吉だね!」

「言っておる意味が分からないのじゃが……」

 流石は秀吉。気が利くなあ。他のメンバーだったら確実に何を隠しているのかを聞き出した上でFFF団に通報するだろう。話しかけてきたのが秀吉で本当に良かった。

「ホント助かるよ。……ついでに僕が今日ここに来ていたことも他の皆には言わないでくれるかな?」

「まあその程度のことぐらい構わんぞい。それに、大方の予想は付いておるからの。……姫路か島田、じゃろう?」

「うぐ!」

「ふふ、どうやら図星のようじゃな」

 やはりな、と表情をにやけさせる秀吉。くっ、気づかれたか!

「一応言っておくけどこれはね!」

「まあ落ち着くのじゃ。そんな言い訳をせんでも誰にも言うつもりはもとよりないから安心せい」

「うう……頼むよ秀吉。もしこれがFFF団の連中にばれたら……」

「死は免れぬじゃろうな」

 分かってもらえるなら助かる。あの集団、元から怪しかったけど最近は姫路さんや美波と話すだけでも嫉妬して襲ってくるくらいにエスカレートしてきてるくらいだからなあ……気持ちも分かるけど。

「まあワシも気をつけるつもりじゃがおぬしは特に隠し事が顔に出やすいからの。他の衆に見つからぬようにな」

「いわれなくてもそのつもりだよ」

「はっはっは。それじゃあワシは失礼するぞい」

「うん、演劇楽しんできてね」

 じゃあの、と手をあげて秀吉は駅の中へと消えていった。

 うぅ、また秀吉にかりができちゃったなあ。今度何かお礼しとかないと。秀吉の背中を見送りながらそう思う。

 

 

 

 

 

「バカなお兄ちゃん、おはようです!」

「うわわっ!?」

 約束の時間が三十分くらい過ぎた頃、後ろの方から足音が聞こえたと思ったらいきなり背中に何かが飛び付いてきた。

 むむっ。この感覚……間違いない。

「葉月ちゃん?」

「えへへー。お久しぶりですっ!」

 予想通り僕に飛び付いてきたのは葉月ちゃんだった。と、いうことは。

「こら!まーたやってる。アキに迷惑だから離れなさい、葉月」

「美波も。おはよう」

「おはよ、アキ」

 少し遅れて聞こえてきたもう一人の待ち人の声。Tシャツの上にカーディガンを羽織り動きやすそうなショートデニムという服装の美波だった。

 そう、今日はあの子供召喚獣騒動の帰りに約束した三人でのお出掛けをするために僕らはここに来ていた。

 そういえばこの三人だけの組み合わせっていうのも珍しいような気もする。

「ごめんね、ちょっと準備に手間取っちゃって」

「その、葉月が悪いんです。葉月、忘れ物をしちゃったのです……お姉ちゃんは悪くないから葉月が謝るべきなんです!ごめんなさいです!」

「いやいいんだよ二人とも。ほら、僕も丁度さっき来たところだから」

「ホントに?ウチらに気を使わなくてもいいのよ?」

「本当のことだから気にしなくていいよ。だから謝らなくてもいいんだよ、葉月ちゃん」

「バカなお兄ちゃん……ありがとうです!」

 パッとヒマワリのような満面の笑みを浮かべてくれる葉月ちゃん。やっぱりコロコロ表情が変わって可愛いな。

「それよりほら、そろそろ駅にむかったほうがいいんじゃないかな?」

「そういえばそうね。多分次の電車が来る頃じゃないかしら」

「でしょ?だからほら、早く行こう!」

「う、うん……葉月、行くわよ?」

「はいです!」

 葉月ちゃんの手を美波が引いて、僕らは駅舎の中へと入った。

 

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