僕と島田姉妹と逃走劇   作:玉虫子希

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第二問

 電車とバスに揺られ、僕らは如月ハイランドへとやってきた。

 少し前にどこに行くか美波と二人で相談したとき、はじめは駅前でなにかしようかと思っていたのだけれどせっかくだから少し遠出をしようということになり、結果的に以前雄二と霧島さんとのウェディング体験の関係でいろいろあったここで遊ぼうということになった。

 チケットを購入して入場ゲートをくぐると、そこは以前来た時と比べ少し雰囲気が変わっていた。

「あれっ、前の時と少し変わった?」

「たぶんそこの花壇の花とかが変わったからじゃないかしら?」

「花壇?あっ、ホントだ」

 美波に言われて花壇を見ると、たしかに以前の時とは別の、品種はわからないけれどカラフルな花が咲いていた。ほかにもあちこちの装飾が季節に合わせたものに変わっている。

 まあ前来た時から結構たっているし、変わっていて当然か。

「はえ?お姉ちゃんとバカなお兄ちゃんは前に一緒に来たことがあるですか?」

「まあいろいろあってね」

「むー、葉月も一緒に行きたかったのです」

「ちょっと用事があったからよ。ほら、今回はウチらが一緒に遊んであげるから、ね?」

「……はいです!」

 少しむくれていた葉月ちゃんだけどすぐにぱぁっと明るい笑顔になった。

 せっかく遊びに来たのだから、ちゃんと笑顔で楽しみたいよね。

「それじゃあ葉月、何に乗りたい?」

「うーん、葉月は……」

 今回のチケットは以前のプレミアムペアチケットではなく、ごく普通のフリーパスだ。けれど例のウェディング体験とかがない以外は基本的にどのアトラクションも遊び放題乗り放題だからかわらないみたいだ。

 だからせっかくだし葉月ちゃんの好きなところへまずは連れていこう、ともともと美波と打ち合わせてあった。

 葉月ちゃんは入り口でもらったマップとアトラクション一覧をみて真剣に考え、あるアトラクションを指さした。

「葉月はまずここに行きたいのです!」

 葉月ちゃんが指差した、その場所は……

 

 

 

 

『それでハ出発デス』

 どこか胡散臭い日本語を使う係員の言葉の後ベルが鳴り響き、葉月ちゃんが希望したアトラクション――――いわゆるコーヒーカップが動き出した。

「葉月一回これ乗ってみたかったのです!」

 真ん中のハンドルを握りつつ、葉月ちゃんは満面の笑みを浮かべた。

「コーヒーカップかあ。ドイツにもあったけれどそう言えば乗ったことなかったわね」

 美波も少しはしゃいでいるのか周りをキョロキョロ見回している。

 かくいう僕自身もすこし恥ずかしいと思いながらも久しぶりのこのアトラクションを楽しんでいた。

 いつ以来だろうなあ、これに乗ったの。

 ああ、思い出した。小学生のころ家族で一緒に別のところにある遊園地に行った時だ。あの時は姉さんと一緒に乗ったんだけど、ものすごい勢いで回されて大変なことになったんだよなあ……。

「これを回すと早く回るのですね!たのしいのです!」

 …………。

「葉月ちゃん」

「なんですか?バカなお兄ちゃん」

「これは絶対に速く回しちゃダメだからね?」

「?はいです」

 さすがに葉月ちゃんはそこまでやらないいい子だと信じているけれど、念のため注意した。

 こんないい子に僕の二の舞にはなってほしくないからね。

「アキ。さすがに葉月はそこまで早く回せないわよ」

「そうだけどまあ、一応ね」

「もう、心配性なんだから……もしかしてアキってば、コーヒーカップでも無理ってくらいにアトラクションが苦手だったり?」

「いや、べつにジェットコースターとかフリーフォールとかも平気なんだけど……昔ちょっとね」

「?」

「逆には回せないのですね……ちょっと残念ですけど、おもしろいのです!」

 かくして数分間。葉月ちゃんがまわして、美波が少しはしゃいで、そんな二人を僕を眺めながらそれぞれの形でコーヒーカップを楽しんだ。

 ……予想外の刺客がいることに気が付かないまま。

 

 

 

『どこだあいつらは……ん?あれは吉井に島田!?』

 

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