「ねえ、アキ」
「ん?」
「その、ね。今日実はウチ、お弁当作ってきたの」
「美波も?」
「ほ、ほらっ!今日は葉月もいるじゃない?それにたまにはこういうのもいいかなって――って、「も」?ってことは……」
「うん、僕も弁当作ってきたんだよね」
そういって僕はさっきの騒動のせいで開けることすらできなかった弁当箱を取り出した。
中身は遊園地ということで気軽に食べられるサンドイッチ。葉月ちゃんもいるからタマゴ、サラダ、ハムといったメジャーなものを作ってみた。
「よかった、中身は被らなかったみたいね」
一方美波が作ってきたのはおにぎり。それに加えてから揚げ、エビフライ、ウィンナーといった定番もの。
それに食べやすいようにピックがさしてあった。
「美波の料理は美味しいからなあ。食べてもいい?」
「もちろんよ。そのために作ったんだもの。アキには負けないんだから!」
「お姉ちゃん朝早く起きてつくってましたもんね!」
「こ、こら葉月!」
トラブルの中の束の間の休息。この光景はどこかほほえましくて、まるで家族で団欒しているように思えた。
この場合家族構成はどうなるのかな。
僕が父親役で、葉月ちゃんが子供役で、美波がお母さん、かな?
そうそう、もしこの前の子供召喚獣騒ぎの時、もし美波と僕の召喚獣が出てきたらこんな風になったんじゃないかな?
――ん?待てよ。
そういえば今回葉月ちゃんを連れた三人でお出掛けしようって美波に誘われたからきてるわけだけど、たしかあのとき、直前に僕が、僕と美波の召喚獣ができたとしたら葉月ちゃんみたいな感じじゃないかなっていったんだよなあ。
まさか美波は――こういった家族団欒のシチュエーションにあこがれていたのだろうか。
断片的に聞いた感じだと美波の両親は共働きで忙しいみたいだし、葉月ちゃんや両親と出かける機会は多くなかったのかもしれない。実際、何度か美波の家にお邪魔したときも家にいたのは美波と葉月ちゃんだけ それに日本に来てからは美波自身もいろいろあっただろうし。
だから美波は僕を誘って……って、さすがにそれは考えすぎかな?
うーん、でも、だとしたら僕は――
「……雄二」
「ん?なんだ?」
「……私も子供がほしい」
「ブフォォォッ!?い、いきなり何を言い出しやがる!?」
「……吉井たちをみていたら少し羨ましくなった」
「はあ!?」
などと考えているさなか、向こうのほうは向こうのほうでなにかトラブルというか夫婦漫才が始まったらしい。
なんというか、相変わらずの二人だなあ。
まあ、今日はなんだかんだで助けてもらった義理もあるし、助けてやりますか。
「雄二ー、僕らはもう準備できたから早くおいでよ」
「そ、そうだな!翔子、待たせてるんだから早くいくぞ!」
「……わかった」
そして雄二は僕の助け舟を使ってやや強引に話を終わらせてこちらにやってきた。
「俺はまたレストランでもいいかなと思ったんだが、前んときと同じくこいつが弁当を作ってきてたんだ」
「……すこし恥ずかしいけれど、これ」
そういって霧島さんがテーブルに置いたのは……前回の時とは異なる、立派な重箱だった。
「……ちょっと張り切りすぎた」
そういって少し恥ずかしがって頬を染める霧島さん。
……まあ、いいんだけどね?別に霧島さんは姫路さんみたいな殺人料理人というわけではなく普通に料理がうまい人だから。
けれどこの量をそもそも雄二と二人で食べきるつもりだったのだろうか。
僕も美波もお弁当を軽めに作っておいて本当によかったのかもしれない。
「ところで翔子」
「……なに?」
「今回は明久達も食べるわけだが大丈夫か?」
「……問題ない。一番下の段以外は……あっ」
「――明久。ちょっと離席する」
「……残念」
雄二は少し青ざめながら重箱の一番下の段だけ取り出して『サバの味噌煮』から出ていった。
……さっきの少し訂正。
霧島さんは『雄二がらみでなければ』普通に料理がうまいのだった。
数分後、雄二が戻ってきてから僕らはお弁当を食べ始めた。
とりあえずまず一番初めに美波のお弁当からからあげを一つ頂戴した。
「……おいしい」
美波のから揚げはお弁当向けとしてか、味付きの柔らかい衣を使ったタイプだった。
葉月ちゃんにも合わせるためなのか香辛料はすこし少なめだけれど、さめてもおいしくなるような配慮が見られた。
美波もたまに故意でタバスコを入れてきたりカラシまみれのシュウマイを食べさせてきたりと変なことをしてくるけれど、それさえなければ本当に上手なんだよなあ。もったいない。
「でしょ?じゃあウチもアキのサンドイッチ貰うわね」
「葉月もバカなお兄ちゃんのたべるです!」
そして今度は美波と葉月ちゃんが僕の弁当からサンドイッチをつまむ。
美波がとったのはハム、葉月ちゃんはタマゴだ。
「あれ、キュウリも入ってたのね」
「ハムだけじゃ寂しいかなと思って。塩もみしたきゅうりに少しレモン汁かけてみたんだけど合うかな?」
「普通においしいわよ」
「よかった。一応ほかにもハムとチーズだけのもあるからそっちも食べてみてよ」
「バカなお兄ちゃんのサンドイッチ美味しいです!サラダのも貰ってもいいですか?」
「うん、どんどん食べて」
「わーいです!」
どうやら僕のサンドイッチは二人の口にあってくれたようだ。
ちょっと普段とは違う味付けにしてみたりしたのだけれどうまくいってよかった。
「明久のサンドイッチか、少し気になるな。俺も一つ――」
「……浮気は許さない」
「浮気じゃねえだろ!?なんでそういう発想になるんだ!?」
雄二と霧島さんは結局夫婦漫才になった。
結局そのあともこんな感じのまま、僕らは昼食を楽しくワイワイと過ごすことができたのだった。
……約一名、ものすごく疲れ切った表情になっていたけれど。
えー、投稿が大変遅れまして申し訳ありません
ここのところあわただしかったり帰省したり(某艦隊育成ゲームのイベントがあったり戦車のりまくったり海洋SFアニメ映画見に行ったり)していたため更新できないでいました
来週以降もまた別の用事が入ってしまっているため間が空くかもしれませんがご了承ください