僕と島田姉妹と逃走劇   作:玉虫子希

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第七問

『あとはこの鳳凰の間、サバの味噌煮だけだな』

『中村と矢野はそれぞれの出入り口の外で見張っていろ。もしかしたらどこからか逃げ出すかもしれない。俺たちはこの部屋は広いらしいから三人で見てくる』

『わかった』

『しかしだれもいないな』

『だが隠れているかもしれないぞ?なにせあの吉井に坂本だ』

『そうだな。よし、近藤と森は左、俺は右を見て回る』

『『『了解!』』』

 

 こういうときだけは無駄に統制が取れるFクラス。

 確実に僕らのことをつぶしに来ている。

 僕らは今うかつに動くことはできない。

 こうなるともう、雄二の言う『手』に期待するしかないのかっ……!

「(バカなお兄ちゃん……)」

「(……大丈夫。雄二が何とかしてくれるよ。それに、もしもの時は僕がどうにかするから)」

 どうにか、といっても策も何もない。けど、霧島さんは雄二に任せるとしても、せめて美波は葉月ちゃんだけでも、僕が……

『おヤ?どうさレたのデスカ?』

 そんなとき、どこか場違い感のある怪しい日本語が聞こえた。

 あれ、この喋り方どこかで……

『あノ、そこの三人の方。どちら様でショウか?』

 隙間から覗いてみると、以前お世話になった外国人(?)スタッフの人がいつの間にか現れてテーブルの掃除をしていた。

『困りマスね。ココハ関係者以外立ち入り禁止なのデスが』

『ああ、いや。俺たちは……』

『(ど、どうするんだよ)』

『(俺に聞くなよ)』

『(なんとか入口で関係者のようにごまかして入れたがここじゃそうはいかないぞきっと)』

『(須川に連絡でも取るか?)』

 突然現れたスタッフを前に福村君たちが困っている。

 なるほど、もしFFF団が来てもここは関係者以外立ち入り禁止。スタッフに注意されればいくらFFF団であっても逆らうことはできない。

 スタッフと関係があるからこそできる作戦というわけか。

 正攻法だけどすっかり考えから抜けてしまっていた。

 あとはこのまま僕らの名前を出さないまま彼らを追い払ってくれれば……

『ア、もしかシて皆さん。ここの式の主賓である坂本雄二サマ、坂本翔子サマのご友人の方でいらっしゃいマスか?』

ってちょっとおおおおおおおおおおおおおお!?

ここで雄二の名前バラしちゃだめでしょ!?

これじゃあここに僕らがいる、あるいはいたってすぐにばれちゃうじゃないか!

おまけに『プレミアムチケットで招待された坂本雄二の友人』という扱いで彼らも自由にここに入ってこれるようになってしまうかもしれない。

そうしたらきっとこの建物を囲んで逃げ場を無くしてからじわじわと詰めてくるかもしれない。

まずい、非常にまずいぞこれは。

案の定それを聞いた三人はしめたといわんばかりに口を開いた。

『いやそうなんですよ。坂本が、じゃない坂本さんが折角だからと誘われたんですよ!』

『坂本……さんは俺たちのクラスの代表をやってるんです』

『これから仲間もやってきますよ!』

 ひいいいいいいい!

「(おのれ雄二いいいいいいいいい!何が策があるだ!思いっきり逆効果だったじゃないかああああああああ!)」

 小声で怒鳴りつけながら雄二の胸ぐらをつかむ。

 けれど雄二は何も抵抗せずにニヤリ。

「(まあ、見てろって)」

『その前に皆さん。坂本翔子サマから先にやってきタ人に渡してほしいといわレて預かっテいるものガあるのデスが』

『坂本……って、霧島が?』

『ハイ。お昼時デスから先着の方に手作りの弁当をト』

『『『霧島の手作り弁当だと!?』』』

 三人が一斉にハモる。

 霧島さんは雄二にベタ惚れし表向きには春の試召戦争以降雄二と付き合っているという非常に残念なポイントがあるとはいえ、才色兼備で行内でも有名な美人さんだ。

 その霧島さんの手作り弁当ともなれば奴らが反応するのは無理はないだろう。

 さっき食べたけど実際とてもおいしかったし。

 あれ?でも……

「(雄二。霧島さんの弁当はもう全部食べちゃったよね?雄二も作ってきていないみたいだけど)」

「(お前は一つ忘れてないか?いつも姫路でやっているだろうが)」

「(姫路さん?)」

 なんで姫路さん?

 姫路さんと霧島さんの弁当って何の関係も――あ。

『そんなに量もないノデ五人くらい?で先にこっそり食ベテ欲しいとのことデスが』

『中村!矢野!』

『『話は聞かせてもらった!』』

『あ、ちょうどデスね。ではこちらの重箱になりマス』

『『『『『いっただっきまあああああすヒャッハアアアアアアアアアアアアアアアアア』』』』』

 彼らは重箱を受け取るなり取り合うように霧島さんの弁当――重箱の『最下段』だったものを平らげた。そして。

 バッターン。

 五人同時にそのまま床に崩れ落ちてしまった。

「……なあ、翔子。参考までに聞くがあの弁当には何が入っていたんだ?」

「……雄二を眠らせようと思って、ちょっとだけ強めの睡眠薬。それ以外は入ってないから大丈夫」

「ちょっとだけ強めってどれくらいだ?」

「……象にすぐ効く程度」

 雄二が青ざめていくのが目に見えてわかった。

 霧島さんはそんな強力な薬を使って雄二をどうするつもりだったのだろうか。

 聞かないほうがいい気がしたから何も言わない。

 とにかく、雄二の機転と霧島さんの愛によりなんとか一時的に危機を逃れることができた。

 




なんとか12月中に出せました。
再来週あたりにパソコンを修理に出すので次回は年明けとなりそうです。
みなさん、よいお年を。

……クリスマス?そんなものはありません
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