パワード・アサルト~使い捨て兵士達の賛美歌~ 作:ヤーンスポナー
かなり設定に無理がありますがそこはご都合主義。
東シナ海、上海と鹿児島の中間点あたり。
高度8千メートルの空を、3機のC-130Hが飛んでいる。
3機の輸送機に対して、護衛戦闘機はF-15Jが6機のみという少なさだ。
しかし、これは輸送機を守るつもりが無いのではない。そもそも、"輸送機は"エンゲージするつもりがないのだ。
もちろんそれは当たり前の事なのだが、この輸送機の任務は決して中国などの軍事基地に空挺部隊を投下するなどというものではない。
むしろ、現空域に"ある機体"を届けるのが任務であった。
C-130の機内には、信じられ無い位の物が乗せられている。
まず一つわかることは、これが高機動装甲ユニットと呼ばれる代物であることだ。
ただし、陸自で使用している陸上強襲型や、陸上歩兵型ではない。
外観として見る限りは空自で使用している海上型を素体とした、海上雷撃装備型に似ている。
つまりは、この高機動強化装甲ユニットは外部取り付け型の武装・ブースターユニットを装備しているのだ。
では、主たる装備は魚雷なのかと聞かれると、答えは否だ。
そもそも、高度8千メートルで魚雷など使い道がない。唯のデットウェイトだ。
では何が武装なのか。
それは外部取り付け型の武装・ブースターユニットの上部に2門取り付けられているあまりにも大きいガトリング砲だ。
GAU-8 アベンジャー。
A-10という近接航空支援機がある。それは、この化け物を搭載する為だけにその機体の2/3ほどを使用していると言われている。
それを、2門。どれほどの反動が機体を襲うのかと考えると、普通は末恐ろしくなる。
むしろ、まともに撃つことが出来るのかと疑うほどの代物だ。
後は精々8連装フレア発射機が2門、ECMジャマーが1機だけだ。
これだけを聞くと、まず設計者は何を考えてるのかと疑うだろう。
だからこその、この部隊なのだ。
『それでは作戦概要を再度説明するぞ』
そう、強化装甲ユニットに無線が入る。
『今回の試験は高機動強化装甲ユニットの航空戦力化の検証。そして、高機動強化装甲ユニットの兵装強化の為の検証の二つが目的だ。馬鹿でかい兵装に怯えているかもしれんが、一応日本の科学者達が知恵を振り絞って作ったシステムを元に日本の技術者が死ぬ気で作った反動制御システムが組み込まれている。簡単に言えば、その試験であるわけだな』
その言葉に対してため息をして毒づく。
「所詮第11技術試験隊は便利屋部隊という訳ですかい。そもそもそんなもんを態々"実戦"で使う事ないでしょうに」
『まぁそういうな。実戦は一番いいデータが集まる。仕方のないことだ』
そう宥める指揮官に対して何度目になるかわからない愚痴を吐きそうになるが、もう無駄だと分かっているから口に出す前に消え失せた。
『今回軍事衛星が中国から北九州へと向けたH-6爆撃機中隊が3つ、合計18機向かってきている。護衛はJ-10と言われるやつが同じく18機だ。この防御網を打ち破るには普通の戦闘機なら時間がかかる。だが、こいつなら話は別だ』
そう言って指揮官がモニタにデータを表示する。
『今回は便宜上"試作空中強襲型"と命名しようか。この試作空中強襲型は敵の爆撃機に対して強襲を掛け、一定のダメージを与えた後離脱することを目標として作られている。もちろん空中で使うためにあるからこいつは普通の戦闘機と同じくらいの速度が出る。はっきり言った話、かなりのGが襲うだろうけど、そこも含めて設計してある。限度はあるが、頑張ってくれ』
「まったくよく言うもんだ」
『あと、注意点だがこいつは局地戦闘機より稼働時間が短い。よって一度爆撃機師団に攻撃を加えた後は反転追撃はせずに、速やかに高度を落としてくれ。撃ち漏らした後は別のところの迎撃部隊が処理してくれる』
「要するにはその迎撃部隊のお膳立てってことかよ。まったく・・・」
『最初から壊滅状態にしてやればいい話だろう?期待しているよ』
「ほざけ」
今度こそそう吐き捨て、機体の最終チェックを開始する。
『回収は海上自衛隊の強化装甲ユニット母艦が行ってくれる。指定された海域に離脱後は向かってくれ』
「了解。ささっと終らせてやろう」
機体の最終チェックを終え、前を向く。
後は、仕事をこなすだけだ。
『切り離し、用意!ハッチ、開け!』
その乗員の声と共に、ハッチが開き風が吹き込む。
後は、態々この機体の為に輸送機に付けられたカタパルトによる射出を待つのみ。
『カタパルト展開。射出用意!』
「準備、よろし」
『射出!』
その声と共に、けたたましい音と共に機体が射出され、空中に投げ出される。
すぐに、ブースターを点火し、加速する。
左右の2機からも同じように2番機、3番機が射出され、加速を開始する。
『2番機、異常なし』
『3番機、何も問題はありません』
「よし、敵爆撃機中隊へ打撃を掛ける。各員ついてこい」
その言葉と共に目標に向けて加速し、進む。
しばらくすると、レーダーに敵影が移る。
『敵爆撃機中隊、及び敵護衛戦闘機確認。敵護衛戦闘機がこちらに反応を示してきます』
「一応は20mmの装甲はぎりぎり耐えられるぐらいには残してある。一気に突き抜けるぞ」
そう言って、フレアの発射準備をする。
『敵戦闘機、交戦距離に入った』
その言葉の数秒後、機体にアラートが鳴る。
『敵戦闘機、ミサイルを射出。旋回を開始しています』
「まだフレアは撃つな。少し引き付けるんだ」
そう指示を出し、フレアの設定を完了させる。
そして、最適のタイミングが来た。
「今だ!フレア射出!すべてばら撒け!」
その言葉と共に8連装フレア2門から合計16発のフレアが射出される。
ある程度の距離を保っている2番機、3番機からも射出され、合計48発のフレアが囮になる。
そのフレアによって、ミサイルは見当違いの方向へ舵を取り爆発する。
『敵追撃が来る!正面!』
「よし、最初の一撃だ。散らしてやれ!」
そう言ってアベンジャーの照準を合わせ、銃弾を放つ。
毎分3900発の、弾の種類によっては戦車さえ無力化する鉄の雨が降り注ぎ、不運な敵戦闘機の数機が一瞬で粉みじんになり、散っていく。
「撃ち方やめ!残りは本命にお見舞いするぞ。直進!」
そう言って最終加速を掛け、後の2機もそれに追従する。
敵爆撃機の群れを捉える。まだ、遠い。
1回の攻撃で、最大の戦果を得るようにせねばならない。
逸る心を抑え、期を待つ。
そして、彼我の距離がある程度詰まったところで、声を張り上げる。
「今だ!出来る限りお見舞いしてやれ!」
その言葉と共にアベンジャーが火を噴き、弾丸が爆撃機に降り注ぐ。
3機合わせて6門のアベンジャーが放つ弾幕は、ある1機を一瞬で爆散させ、他の1機を一瞬で穴だらけにして火達磨にする。
出来るだけ多くを無力化する。その為に流石の反動制御システムも悲鳴を上げるほどの反動も無視して撃ち続ける。
そして、ぼろぼろになった爆撃機の群れを突き抜け、一気に離脱する。
「戦果は?!」
そう他の2機に確認する。
『やりましたよ。後部カメラで爆撃機部隊の2/3の撃墜、及び無力化を確認。戦闘機も一部撃墜しましたし、戦果としては上々です』
そう2番機が返す一方で、3番機が話す。
『問題は反動制御システムですね。撃ち続けたせいでエラーを吐いてます。というか、これ以上撃てば制御システムごと機関砲がぶっ飛びますよ』
確かにこちらの方でもガタがきているらしく、これ以上の使用は物理的にも不可能だろう。
「流石に無理をさせすぎてるな・・・。まぁ成果が挙がっただけマシだが、量産化する場合はやはり20mmバルカン砲を主兵装に選択せざるを得ないだろうな」
『そもそもブースターユニットを切り離した場合武装がなくなるのも問題です。海上型には万一に備えて対人用の実体剣が装備されていると聞きますし、最低でもそれくらいは欲しいですね』
「その場合は盾も一緒に欲しくなる気もするな。もしくは7.62mm機銃の方がいいかもしれん」
『ではそう報告しましょう』
作戦結果は上々。機体評価としては改善点の塊。
そう報告しようと頭の中で決めながら、回収予定海域まで減速しつつ進路を取った。
ということで第三話でした。
流石にどう考えても人間よりちょっと大きい位のサイズの兵器にアベンジャーなんて乗せたら大変なことになります。ですから、外部武装です。
日本の技術者達が迷走した結果の試験をこの部隊がほとんどすべて実戦で試しています。ご苦労なことです。錬度どうなってるのやら。
生還が前提だからこの部隊はトンデモ兵器を使わせられる訳です。一体いつになったら彼らの愛機が現れるのだろうか。真実はだれにも分からない。
次話の更新予定は特にありません。ほとんど気まぐれですから・・・