東京喰種√D   作:白雫

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世界史と日本史の記述の勉強に時間をとられてしまい、投稿が遅れました<m(__)m>
主権国家がー、とか、鎖国体制はー、とか、かなり時間のかかる宿題と講習で……
 
どうでも良いですね、はい。

ということで、どうぞ、ごゆるりと。




第11話 とある禁忌の

 

 

「………お急ぎにならなくとも、あなたは優秀な喰種捜査官になれますでしょう」

 

「私は一刻も早く捜査官になって、アリスを捜さなきゃいけないの。

 あの子は今もどこかで喰種どもに怯えながら助けを待っているんだから。

 もう、自分の力不足で誰かを失うようなことは嫌なの」

 

「………貴女(あなた)が、そう仰るのなら」

 

 

 私を孤独と絶望から救ってくれたアリスを失うなんて、そんなのは認められない。

 

 

 

 

 

 物心ついたときから、私の周りには安寧と安心がなかった。

 

 

「───妾の子よ」

 

「一族の面汚しめ」

 

「あんな子、なんでお産みになったのかしら」

 

「彼の方がよっぽど優秀じゃないか」

 

「だから本家の名は名乗らせないんだろう?」

 

 

 いわゆる庶子であった私は、父親とも滅多には顔を合わせず、母親も私の小さい頃になくしてしまった。

 そんな私に、家の中に味方などいるわけもなかった。

 

 人の悪意にばかり晒されてきて、どんな人に対してもその行動の裏側にひそむ本意を探ろうとしてしまうようになった。

 

 誰の優しさも嘘っぽく見えて、仮に誰かを信じたら手痛いしっぺ返しを貰うんじゃないかと疑った。本当なら、誰とも話したくなかったし、ずっと一人になっていたかった。

 

 それでも、外見を取り繕わなければもっとひどい目に遭わされると、家の中では良い外面を被った。

 習い事もこなし、言われたことには全て従い、行儀良く、逆らう心など持たぬように生きてきた。

 

 

 

千夜(ちよ)ちゃん、ほら、飴をあげるよ」

 

 

「千夜ちゃん、高いたかーい」

 

 

「大きくなったねぇ」

 

 

 唯一、優しくしてくれた遠縁のおじさんは。

 

「………喰種に負けるとは、情けない」

 

「あんなのに構っていたから、廉道さんはダメになっちまったんですよ」

 

「あーあ、なんだってあんなのに情けを掛けて」

 

 皆、死人に石を投げるように、私に良くしてくれたおじさんを非難した。 

 葬儀の日にさえ、顔を見せなかった父親は当然私を庇ってくれることなんて無く、親戚連中はみな一様に私を遠ざけた。

 

(─────)

 

 こんな世界に生まれたことを心底後悔したし、周りにいる者達はみな憎き敵だった。

 

 

 

 

 

 

 

(とこ)()さん、放課後遊びに行かなーい?」

 

「いえ、私は用事があるので」

 

 あなた方の幼稚さに合わせるつもりはない。

 

「あのさ、掃除当番なんだけど………」

 

「あなたの担当なのですから、きちんとやってください」

 

 あなたの仕事を都合よく引き受けるほど、私は暇ではない。

 

「あのさ、友達大切にしないと、嫌われるよ?」

 

「必要ありませんので」

 

 友達なんて者は、簡単に人を裏切る都合の良い存在でしかない。私には、そんなものは必要ない。

 

 

 学校の同級生たちにも事務的な対応を心がけ、プライベートな会話は一切を避け、誰にも心を許さないように気をつけた。

 

 教師にも、肉親にもそれは同じ。

 

 

 地元の中学校にあがる頃には、私的な理由で積極的に私に話しかけてこようとする者は一人としていなくなっていた。

 

 

 私は、心が根本から曲がっていた。腐っていた。

 

 今思うと、気持ち悪いとさえも思える。

 

 でも、私にとっては、人と話すことは悪しきことであり、憎むべきことであり、私が傷つかないようにするために避けるべきものだった。

 

 コミュニケーションを必要以上にとれば、私の心を踏み荒らされるかもしれないと、幼いながらに警戒していた。

 

 

 でも。

 そんな私に、

 

「────あ、あの」

 

 ある日の放課後、帰り支度をしていたときに、前の座席に座っていた女子生徒が私にためらいながら話しかけてきた。

 

「……なんですか?」

 

「え、えっと、と、常夜さんっ、聞きたいことがあるんですけど!」

 

 彼女は中学校からこの学区に引っ越してきたことと、引っ込み思案だったのか他の生徒と話すことを避けていたために、小学校からの繋がりがある者達と上手くつき合えてなかった。

 

「質問?」

 

「こ、ここの問題のここが、良く分からなくって………なんでこんな数字になるのかなって……」

 

 はにかみながらそう言ってきた彼女に毒されたのだろうか。

 その純真そうな顔に浮かぶ緊張と、わずかな親愛の情に、不思議とそれまで人に対して抱いていた嫌悪感がうかぶことはなかった。

 人の悪意に敏感になっていた私は、彼女からそういった心を感じることは全くなかったことに動揺してしまった。

 

「……ここ、ですか?」

 

 彼女の示してきた問題に目をやると、それはかなり基礎的な範囲で、理解出来ていないというのはかなりおかしなことだった。

 

 

(何かたくらんでいるのでは?)

 

 こんな純朴そうな顔の裏で一体何を企んでいるのか、と疑ってしまうほど、ともすれば小学校に通っていなかったのでは、というくらいだった。

 それなら話は簡単だった。

 いつも通りにすればいい。

 必要以上に話せば、仲良くなれば、失ったときの傷を追わなくてすむ。

 

 

「………それくらい、自分で理解できるでしょう。

 私でなくとも、保護者の方か先生に聞けばわかります」

 

 いつも通りに突き放そうとして、私は自分の心がなぜか痛んだことに内心ひどく動揺した。

 

「え…………」

 

 私の言葉に傷ついたらしい彼女の表情は、なんだかどこかで見たことのある顔に似ていて。

 

「…………」

 

 彼女の、アリスの無言の訴えに、私はあえなく屈してしまったのだった。

 幼い私の心の弱さのせいだったのか、アリスから感じた“何か”のおかげなのか、それは今でも分からない。

 

 

 

 

「──千夜ちゃん!ここの問題がわかんないです!」

 

「………これ?なんでそんなに胸を張っていられるの……?」

 

 それからというもの、アリスは私にしつこく構ってきた。

 

 

「千夜ちゃん!明日海に行こ?」

 

「突然すぎます。嫌です」

 

「えー!?そんなぁ………」

 

「う………」

 

 どんなに突き放しても、アリスはゴキブリのごときしつこさで私につきまとってきた。 

 

 

「あの、千夜ちゃん………これ、食べても良いよ……?」

 

「………それ、全くたべてないですよね?私に丸ごと押し付けてますよね?」

 

「でも………」

 

「好き嫌いしてはいけません」

 

「ふえぇ……千夜ちゃんが教育ママだよ……」

 

「…………このパンなら貰ってもいいですよ」

 

「ホント!?」

 

 私は、いつの間にかアリスにのめり込んでしまっていた。まるで、それまでの心の寂しさを埋めようとするかのように。

 

 

「…………あ、あの、アリス?」

 

「んー?なにー?」

 

「そ、その………これ、よかったら」

 

「ふ?……え!?こ、これわたしが行きたかった映画のチケット!」

 

「その、アリスが、見に行きたいって行ってたから………も、もしよけれ」

 

「これくれるの!?千夜ちゃんありがとう!!あ、二枚あるってことは、千夜ちゃんも一緒に行ってくれるってこと!?」

 

「え、ええ」

 

「やったー!」

 

 何年ぶりか、私は自分から誰かに話しかけたのもアリスだった。

 まさか、それが休日に遊びにいく誘いになるとは。誰より私が驚いた。

 

 

「………アリス」

 

「ん?ち、千夜ちゃん?ど、どうしたの?そんな怖い顔して………」

 

「あなたに伝えなければならないことがあるの」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「わ、私と、く…………」

 

「う…………」

 

「………今日、私の家に来ない?クリスマスパーティーをやろうと思うの」

 

「………へ!?」

 

「だから、その、クリスマスだから」

 

「………まっかせてください!この渋谷アリス、命に代えてでも千夜ちゃんのクリスマスパーティーに人をたくさん呼ぶよ!」

 

「……へ!?」

 

 アリスは私の他にも、たくさんの友達が出来ていた。

 本当は、アリスと二人でクリスマスパーティーをしようとしていたから、アリス以外の人が来るのは予想外だったけど。

 そんなアリスの紹介なら、と受け入れることが出来て、私はアリス以外の人とも親しくなれた。

 

 

「衛七!?今日家に来る人が凄く増えちゃったの!」

 

「お嬢様、落ち着いて。それで、どのくらい増えたのででしょうか」

 

「20!準備急いで!?」

 

「………え」

 

 私はクリスマスみたいな浮ついたことに、てんで縁がなかったし、興味もなかったから、

 

「うわー!?ここが千夜ちゃん()!?」

 

「大きいねー!常夜さんって、すごいお嬢様じゃん!」

 

「どうしよう!?みんな来ちゃったよ!」

 

「………お、落ち着い、ええと、とりあえず、お嬢様はご友人とクリスマスの定番の遊びでおもてなしを」

 

「私何すれば良いかわかんないよ!?」

 

「ええと、この教本には、プレゼント交換とか、赤髭危機一髪とか、ボードゲームとか書いてありますが」

 

「何ソレ!?」

 

「………さあ」

 

「やっほー千夜ちゃーん!」

 

「あああ!?」

 

 完全にテンパって、クリスマスパーティーの準備がものすごく大変だった。

 

 

「え!?千夜ちゃん誰この男の子!

 ……ん?も、もしかして、婚約者(ふぃあんせ)!?」

 

「違うから!彼は私の従者で、衛七っていうの!」

 

「え、あ、そうなんだ。わたし、千夜ちゃんと一緒にこんな大きな家に住んでるイケメンなんて、婚約者以外に思いつかなかったよ」

 

「「「「なんで!?」」」」

 

 普通は兄弟とか?とかだろ!、と他の子達が突っ込んだりした。

 

 アリスといると、灰色に見えていた世界が輝いて見えた。

 通学路に咲くアジサイをみては「かわいい」と言い、砂浜を歩いているだけのヤドカリを「頑張れー」と応援しながら砂浜に寝転がったり、初雪だというだけではしゃいで、周りを見ずに車道に飛び出てそのまま車に引かれそうになったり。

 事前に通告されていた定期テストに怯えたり、テストの点で一喜一憂したり、私とテストの見せ合いっこをして笑ったり。

 

 アリスが教えてくれたのは、「こんな世界なんて」と腐ったり、「私はいらない子なんだ」といじけたり、「生きているのなんて時間の無駄」と虚しく悲しんだり、「心を動かさなければ、許さなければ心は傷つかない」なんて諦めたりすることは間違ってるってことだった。

 

 

「こんなに楽しくって素敵な世界なんだもん。

 『良心に嘘をつかないようにすれば、人生はとても素晴らしいものになる』っておじいちゃんも言ってた!」

 

 なんでそんなに楽しそうなの、と私が訊いたときに、目を輝かせながらそう言ったアリスの、全身から溢れてくるような幸福感が、私のモノクロの世界にカラフルな色彩を与えてくれた。

 

 

 だから。

 私は、アリスに恩返しをしなきゃいけない。

 

 私の人生を、私の命を救ってくれたアリスは、今、醜い喰種達の手に落ちてしまっている。

 遺体が見つかってないのだから、未だ卑劣な者達に囚われているのだ。

 

 

 

 

 

 私が、アリスを助け出す。

 

 

 

 

 

 そのためになら。

 

 

 

 

 

 私は、なんでもできる。

 

 

 

 例え、普通に生きていれば味わうことは無かっただろう地獄のような苦しみでも。

 

 

 例え、人の道から外れるようなことであっても。

 

 

 私に出来ることなら、本家に媚びへつらうことだってやってやる。

 





今夜、空を見上げた方はいらっしゃったでしょうか。

台風でぐずる空、星の瞬く空、すこし丸みを帯びた美しい空。

読者様の頭上にある空は、どんなものでしたでしょうか。


ちなみに、私の場合はうわの空でしたが(´◦`)ポカーン
(補習ってつまんないですよね………ですよね?)





スミマセン。
では。
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