東京喰種√D   作:白雫

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一応書いておきます。
主人公の赫子設定を少し変更(1,2話)
細部の修正             7/13


第3話 蜘蛛の巣

 ソーマさんの後についてホテルを出ると、太陽が沈みかけていた。わたしが気絶する前は夜遅くだったから、半日以上寝ていたことになる。

 

 このままこの人について行けば、彼の言う喰種のグループに入って戦っていくことになるんだろう。

 ソーマさんがわたしを何かのグループの戦力として扱うって言っていたけど、やっぱり戦うのはイヤだ。わたしはまだ死にたくないし、もう誰も殺したくない。

 そうは言っても、あれほど圧倒的な力を持つソーマさんの隙をついて逃げられるとは思えない。今は時期尚早だった。従うより他はない。

 

 

 オレンジ色に照らされるビル裏の狭い路地を辿っていくと、ソーマさんは急に自動車の前で止まり、それを腕でどかした。

 車の下にはマンホールみたいなものが隠してあった。

 

「アリスちゃんさ、24区は知ってるよね」

 

「確か……喰種のための抜け道みたいなものだと」

 

「そうそう、そんな感じ。まあ、他にもいろいろ使ってたりするんだけど」

 

 そう言うと、ソーマさんはマンホールの蓋を開けて、

 

「ここがその入り口ってこと。俺らの目的地はここから結構行ったとこだよ」

 

 スルリと身を穴の中に入れていった。

 

『早くおいでよー、受け止めてあげるよー』

 

「結構ですよー」

 

 穴を通って反響しながら聞こえてきた声に返す。

 

『えー』

 

 さて。

 

(ハシゴがないってことは、飛び降りなきゃいけないのかな)

 

 暗い穴の底は見えないけど、ソーマさんの声の響き具合を考えると、ここは20Mくらいはありそうだ。

 

(あ、そうだ)

 

 わたしは、忌々しい人殺しの嚇子を背中からだして、穴の縁に突き刺す。

 

『蓋は閉めといてねー』

 

(それはやりますよ)

 

 穴に身を沈めて、わたしは壁と壁に背中と足の裏をつけて、嚇子との合わせ技で体を穴の口近くに固定すると、嚇子で車を動かして穴を隠し、蓋を取って頭上に被せた。

 嚇子って意外と便利だ。

 

 嚇子は人殺し以外にも使えるんだ、という自分への言い聞かせが含まれていることは否定出来なかった。

 

(あとは降りるだけ)

 

 わたしは彼に受け止められないように足の裏と背中を穴の壁に押しつけて下へと降りていく。

 

 

 

 

 無事穴の下に降り着くと、ソーマさんが不満げな顔で話しかけてくる。

 

「普通に降りて来ちゃったし」

 

「受け止めてもらうのは失礼かなと思ったので」

 

「そんな遠慮しなくても良かったのに……」

 

 ソーマさんはがっくりと肩を落としながら言った。

 

「まあ、それくらい器用に使えてれば言うことはないね。そんじゃ、れっつらごー」

 

 彼は真っ暗闇の中を歩き始める。喰種の暗視には、太陽光の届かない地下道を明かりで照らす必要がない。

 逆に、捜査官さん達にはここはかなり歩きづらいはずだ。

 まさに、喰種が隠れるにはもってこいの場所。それが24区だった。

 

 

 

 2人分の足音が暗い地下道に響く。

 そう言えば、いつの間にかわたしの服が、白い半袖Tシャツとジーパンから膝丈の白のノースリーブワンピースに変わっていた。新品のニオイがする。

 捜査官さん達に撃たれたり、転んだりあちこちに擦ったりしてボロボロだったから、誰かがわたしの寝てる間に換えてくれたんだと思う。心遣いが優しいし、センスもいい。

 問題は、誰に換えてもらったかということだ。

 

「あの、ソーマさん」

 

「ん?」

 

「わたしの服は……?」

 

「ああ、そのことね。いつ聞かれんのかとか思ってたけど、気に入ってもらえたようでよかったよ」

 

「いえ、そうではなくて……」

 

「え?だめだった?俺は似合ってると思うけど」

 

「そうじゃないです」

 

「えー、じゃあなによ?」

 

「わたしの服、誰が換えてくださったのかな、って」

 

「は?そんなの俺に決まってんじゃん」

 

「…………」

 

(決まってるって……)

 

 ソーマさんはデリカシーがなさすぎるようだ。

 

「……変なことしてませんよね?」

 

「あはは、今更過ぎるでしょ」

 

 ソーマさんはわたしの真剣な問いに笑って答えた。

 わたしはからかわれたことにふてくされてそっぽを向いた。

 

 

 

 

 もう地下に潜ってから大分経っているのに、ソーマさんはまだ歩き続けていた。

 

 入り組んだ道を歩いていたために、ここまでの道筋がすごくあやふやになってしまっている。

 ここから自力で出ることはもはや出来ないだろう。

 

(それが彼の狙いなのかもしれないけど)

 

 

 すると、進路の先に生き物の気配を感じた。

 ニオイから判断すると、喰種だ。

 

(2人はいるな)

 

 ここには喰種のニオイがあちこちにするけど、向こうの方から微かに強いニオイが漂っている。

 

「さあ、ついたよ。ここがキミのしばらくの隠れ家になる場所だ」

 

 そこは、これまでも何回か通ったことのある広い空間だった。そこに2人の喰種がポツンと立っている。

 

「はは、ソーマさん、ソイツがアリス?」

 

 男の喰種がわたしを指さしながらソーマさんに話しかける。

 

「そうだよ、テル。鍛えてやってくれよ」

 

「新入り、歓迎します」

 

「ネオも頼むわ」

 

 ソーマさんが親しげに話すのは、ツンツンした頭の男性喰種のテルさん。チャラくて軽薄そうな若い男の人だ。

 そして、平坦な声でわたしに声をかけてきたのはネオさんという女性喰種だ。なんだかすごく真面目なOLさんみたいだ。

 どちらもソーマさんとは違って顔をマスクで隠してはいない。

 

 

「んじゃ俺は上に戻るから。ひと月くらい預かっといてー」

 

「…………え?」

 

 ソーマさんの言葉に思わず声をあげてしまう。

 

「ん?どしたのアリスちゃん」

 

「ひと月って、わたし、それまでずっとここにいるんですか……?」

 

「そだよー。ここなら喰種が好きなだけ暴れてもばれにくいし、アリスちゃんを強くするにはちょうどいい」

 

 ソーマさんはあっけらかんと言った。

 

(ここに1ヶ月?冗談じゃない!)

 

 わたしは思わずソーマさんを睨みつける。

 

「そんな顔しなくても大丈夫だって。そんなに心配しなくてもそこの2人は優しいから。すぐに強くなれるよ」

 

 そんなわたしに白黒マスクはまったく動じなかった。

 わたしに見当違いな言葉を投げかけると、ソーマさんは「ばいびー」と言いながら地下道を今来た方向とは真逆の方に駆け抜けていった。

 どうやら本格的にわたしをここから逃さないつもりらしい。

 

 後を追いかけようとしたわたしの肩を、がっしりとテルさんが掴む。

 

「アハハ、にがさないよー?」

 

(これは、予想以上にマズいかもしれない……)

 

 わたしには、自由も拒否権もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




長めになってしまったので、二分割しました。

続きは編集してからまた明日に。
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