ダンジョンでモンスターをやるのは間違っているだろうか   作:BBBs

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 残念なお知らせですが6巻7巻8巻は牛の出番ないので飛ばしました。
 でもそれだけだと寂しいので以下6巻ダイジェスト。

アポロン「ベル・クラネルは俺のものだ、俺だけのものだ!」
ヘスティア「なにこいつこわい」

 アポロンファミリアが 勝負をしかけてきた!

ベル「Lv.4に勝てるわけ無いだろ! いいかげんにしろ!」

 ベルの あばれる!
 なんとかのヒュアキントスは たおれた!
 アポロンモブAは たおれた!
 アポロンモブBは たおれた!
 アポロンモブCは たおれた!
 アポロンモブ以下略
 ミス! ダフネに ダメージを 与えられない!
 ミス! カサンドラに ダメージを 与えられない!

 残念ながら当然の結果でヘスティアとアポロンの戦争遊戯(ウォーゲーム)は終わった。
 勝負が着いたために原作通り全財産没収とアポロンのオラリオ追放の罰を下した。
 なお、ベルがアポロンの卑劣な手(ヘスティアを()質など)によって改宗(コンバージョン)させられたら、フレイヤとロキがアポロンにウォーゲームを仕掛けていた模様。
 フレイヤの言い分、アポロンはあの子(ベル)に相応しくない。
 ロキの言い分、なんかおもろいしドチビ(ヘスティア)の手から溢れたらうちがもろうたるわ!

 ちなみにベル先輩Lv.4説が公布される前にアポロンは仕掛けてしまったので、自ら負確を引いた模様。

 7巻と8巻? それならベル君が無双したり、フレイヤとロキが介入して普通に終わったよ。


 あ、今回導入部です。


出会ってしまったあの子

 

 

(まあ! 最近の若者は裸で出歩くなんて、破廉恥でいけないわね!)

「ひっ」

 

 今日も一日(冒険者狩りを)頑張るぞい! と気合を入れて熊っぽいのを挽肉にしていたら何かとぶつかった。

 おいコラァ! と倒れた存在を見れば、青白い肌に鱗っぽいものを生やした人型。

 額には紅い宝石のようなものが有り、ケツからは太めな尻尾が生えている。

 そんな地上の生き物と似て非なる人型は、青い肌が赤く染まるほど出血して傷だらけ。

 十中八九襲われたのだろう、なんか後ろからモンスターがよだれ垂らしながら走ってきてるし。

 

(ばっちいなぁ……)

「い、いやっ!」

 

 尻餅をついて後退っていた人型モンスターを掴んで持ち上げる。

 

「はなして!」

 

 いやだいやだと身を捩る、だがその程度の力では俺の手を振り解くことなどできぬぅ!

 

(最近はレアモンばっかで変な感じだな、滅多に見ないのが出てくるし)

 

 人型と走り寄ってくるモンスターを見て、左の壁に手を突っ込んで振りぬく。

 それだけで『ボッ』と音を立ててモンスターたちが穴だらけになって崩れ落ちた。

 削った壁の破片をぶつけた、砕けた壁の破片が超高速で飛んでモンスターの体を貫通した。

 火を吹いて燃やすのもいいが、手軽に出来るこっちのほうがお気に入り。

 雑魚を相手にするのもめんどくさいしね、それよりも『これ』どうすっかなぁ。

 

 これこと人型のモンスター、『彼女』をよく見ようと顔を近づければ身を反らして離れようとする。

 

「……やめて、おねがい」

 

 最後の懇願だった、恐怖に耐え我慢していた涙がこぼれた。

 モンスターと人間、両方に追われた彼女の心は擦り切れる寸前だった。

 この怪物に手にかかれば、さっきまで追いかけてきていたモンスターたちのようになる。

 死の恐怖に負けて、声を震わせながら言うのだ。

 

「……しにたくない」

 

 耳を澄まさなければ聞こえないほどか細い声、心の底から溢れでた願い。

 なので手放してやる、どうせ死ぬだろうし。

 手放してドスンと尻餅をついて地面に座り込むのは彼女、反射的に瞼を開いて見上げてくる。

 

(世の中辛いことも沢山有るけど、頑張って生きろよ!)

 

 ほんとつらいからなこの地下、弱肉強食的な意味で。

 親切な俺はクールに去るぜ! と踵を返して歩き出したら。

 

「どうして……?」

 

 なんて聞かれてもこう応えるしか無い、理解できるかしらねーけど。

 

(こんなところで野垂れ死ぬ奴を殺して楽しいか? って話だ)

 

 ここで殴りかかってくるなら潰す、だがそんな力もなくて死にたくないとか言っちゃうのを潰すのは楽しくない。

 だから殺さない、もし生き残って強くなったらまた会おう。

 ひらひらと手を振って、今後の貴殿の生存と成長を心よりお祈り申し上げていると。

 

「あなたも、おなじなの……?」

 

 ぶっ飛んだことを言われた。

 つい振り返り、顔の前で手を振ってしまった。

 

(どう見ても違うから)

 

 

 

 

 

 

「ヴォッヴォッ」

 

 顔の前で手を振った怪物は、今まで出会ってきた存在とは全く違った。

 捕まってしまったのに攻撃されない、むしろ興味を無くしたように手放された。

 他の怪物なら雄叫びを上げて襲いかかってきた、でも目の前の怪物はそんな様子は全く見せない。

 だからわたしは立ち上がってしまった、攻撃してこなかった唯一を追いかけるために。

 

「まって、まって!」

 

 どうして追いかけているのかわからなかった。

 攻撃してくる怪物たちも人間たちも、簡単に殺してしまえる力がある怪物を追いかけているのかわからない。

 ただ気まぐれで殺されなかっただけかもしれない、次は殺されるかもしれないのに。

 わからないままにわたしは走りだしていた、どんどん進んでいくあの大きな背中を追いかけて。

 

「はっ、はっ、はっ」

 

 見失わないように走って走って、どうしてか曲がり角で足を止めていた背中に追いついた。

 待っていてくれた? そう考えて息を切らしながら見ていれば。

 

「………」

 

 『彼』は顔を横にしながら振り返り、指を一本だけ立てて顔の前に持ってくる仕草。

 

「……?」

 

 何を意味するのかわからない、何となく同じ仕草をしてみると頭が揺れて頷かれた。

 じっとして動かないで、声も出さずにそこに佇む。

 何をしているのか、何を待っているのかと、黙って見ていれば声と足音が聞こえてきた。

 

『こっちの方に居るはずだ! 探せ!』

 

 体が震えた、わたしを追いかけてくる人間の声だ。

 

『ヴィーヴルをやれれば、俺たちゃ大金持ちだぞ!』

 

 武器を振りかざし、大声を上げながら攻撃してきた人間の声だ。

 その声と足音がどんどん大きくなってくる、あの曲がり角の先から走ってきている。

 彼はこの人間たちを待っているのだと理解した。

 わたしはどうすればいいのか、あの人間たちはわたしを殺そうとしているから逃げなくちゃ……。

 

「………」

 

 でも、彼ならあの人間たちを追い払ってくれるのではないかと考えてしまって。

 

「えっ」

 

 彼は音もなく飛び上がり、天井に指を食い込ませて張り付いた。

 そしてその直後、曲がり角から人間たちが現れた。

 

「っ……! 居たぞ!」

 

 わたしを見ながら武器を向け、じりじりと迫り寄ってくる人間たち。

 それを前にわたしは動けなかった、目の前の人間たちをこわいと感じながらも目を離せなかった。

 彼がゆっくりと天井から横の壁へと這うように動き、四人の男女の上へと移動している姿を。

 人間たちは気が付いていなかった、わたしの事ばかりで他に注意を向けることが出来ていないのだとわかってしまった。

 

「いいか、絶対に逃がすなよ」

 

 一番わたしに近い人間が言う、それと同時に彼が動いた。

 左手だけで壁に張り付き、右手を伸ばして一番後ろに居た男の顔を掴んで持ち上げた。

 顔を掴まれているせいか声も出せずに、首から頭が変な方向に曲がって男は動かなくなった。

 その男を後ろ手に放り投げ、通路の奥に消した。

 

「観念したか? そっちの方が手間が省けるぜ」

 

 嫌らしい笑みを浮かべ、わたしが動かないことに気を良くしていた男たち。

 次いで彼は最後尾となっていた女の頭を、先ほどの男と同じように掴んで持ち上げながら首をへし折る。

 一瞬で息絶えた女を肩に担ぐ様にして、左手を壁から離して音もなく地面に降りた。

 右手の女を床に置いて四つん這いの姿勢から右足を大股で一歩前に、最前列の男の斜め後ろに居た女の顔に、伸ばした彼の左腕が巻きつく。

 女の後頭部を掴み、女の頭を中心にして引っ張り回した。

 

 ほぼ一回転、体はそのままに女の頭だけがくるりと回った。

 どんな表情をしていたのかわからない、ただわかったのは女が死んだということだけ。

 そして彼はまっすぐに立ち上がって、開いていた右手の指で男の肩を軽く叩いた。

 

「何だ……?」

 

 舌打ちをして男が振り返れば、見下ろす彼の姿。

 左手には首がねじれた女の死体、床にはまた別の女の死体。

 もう一人居たはずの男は見当たらない、仲間が一瞬で全滅して自分一人だけになったなんて思いもよらなかったのだろう。

 呆然としていた男に向かい、左手の女を手放して男の体を掴み、右手は頭を掴む。

 

「──っ!? やめっ──!」

 

 体は右に、頭は左にそれぞれの手を動かした。

 奇妙な音が響く、そして男は二度と動くことはなかった。

 その男を放り投げて、彼は歩き出した。

 死んだ者たちには興味を一切残さず、ドスンドスンと大股で歩いて行く。

 その背中を見つめたまま、わたしは追いかけた。

 

 走って追いかけるその背中は、燃え盛る焔だった。

 わたしを害しようと迫ってきたモンスターたちが、彼に近づくだけで燃え尽きていく。

 残るのは灰になった体と、灰の中に塗れた魔石(いのち)のみ。

 彼に関わる者の末路なのだ、多分、恐らく、わたしもいずれそうなると、何となくわかった。

 それでも追いかけたかった、全てを燃やし尽くす焔だったとしても、暗く冷たいこの場所で一人はいやだから。

 

 だからわたしは、わたしが燃えてしまったとしても、わからなくてもわたしであるために。

 

「まってっ!」

 

 『わたし』が決めたことだから、わたしは近づくの。

 

 




どうせ みんな のうきんになる(牛のせいで)

牛の戦闘方法一覧
・正面から襲いかかってくる 発生確率:中
・壁(床と天井含む)を壊して突然現れて襲い掛かってくる 発生確率:高
怪物の宴(モンスター・パーティー)を冒険者一行に怪物進呈(パス・パレード)して自分はさっさと追い抜いて逃げ出す、擦り付けられた冒険者が全滅したらそのモンスターたちを全部挽肉にする。 発生確率:低
・目を付けた冒険者達をダンジョンから抜け出すまで延々とストーキングする(常に見える位置に居る、曲がり角から頭だけ出すなど) 発生確率:中
・今回の暗殺 発生確率:─(目撃者は居ないので報告されていない)

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