ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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お久しぶりです。ようやく期末テストが終わり、書き終わりました。

今回は予想よりかなり長く書いてしまいました。オマケに、ちょびちょび書いていたので変な部分もあるかも知れませんが、ご了承ください。


イカレてんなこいつ……

「あーびっくりした」

 

 俺、兵藤夏蓮は体にべったりとくっ付いた返り血の臭いに顔を顰めつつ、呟いた。

 

 あの後、朱乃から魔力で作った水で顔に付いた返り血を洗ったが、体についた血は流石に量が多くて洗えなかった。

 

 しっかし、ホント驚いたぜ。まさかあそこで最後の特攻を仕掛けてくるとはな。

 

 向かってくる先が俺で良かった。もし一誠の方に向かっていったら、行動できたか分からなかったしな。

 

 けど、俺だって殆ど無意識に近かったかな。奴さんがこっちに向かってきたから、神   器(セイクリット・ギア)を瞬間的に展開して、そのまま斬りつけたんだし。

 

 しっかし、初めて生きている何かを斬ったけど、あんまり感じないな。

 

 いや、斬った感触はあるんだ。けど、特に感想が浮かんでこない。唯、斬ったという事実が残ったような感じ。

 

 ……前にお師匠様が言っていたな。「誰かを傷つけることに慣れるな。それはもう武を嗜む者では無い。武で遊ぶものだ」、と。

 

 少しだけわかった気がする。だからこそ、ちゃんと考えないとな。

 

「兄貴、大丈夫なのか?」

 

 隣でいきなりの事に呆気に取られていた一誠が心配そうに聞いてくる。

 

「ああ、問題ないよ一誠。ちょっよびっくりしたけど」

 

「なら良いけど……」

 

 ったく、一誠め。ホント他者を心配する所は昔っからだな。こういうのを前に出して行けば持てるとは思うんだけど。

 

「怪我が無くて良かったわ……。ごめんなさい、私が油断してた所為で」

 

 リアスが少しションボリしながら謝ってきた。

 

「気にするなって。特に怪我なんて無かったんだから」

 

「でも……」

 

 それでも尚、言おうとするリアス。

 

 全く。俺は思わずため息を付きたくなるが、寸前で抑える。

 

 代りに別のことを言う。

 

「終わっちまったもんはしょうがないだろ? 次からはちゃんとするようにすれば良いんだよ。な、リアス」

 

 俺がそう言うと、ようやくリアスは笑みを浮かべた。

 

「そうね……終わってしまったものは変えられない。次からは油断せずに行くわ」

 

 うん、過去ばかりを悔むんじゃなくて、未来を考えないとな。

 

「さて、みんな。今日はお疲れ様」

 

 リアスがそう言うと、他のメンバーも何時もの雰囲気に戻った。

 

 そして、今日はこのまま解散の流れに入った。

 

 帰り際、木場からは「今度手合わせをしましょう」と言われ、塔城ちゃんからは「……先輩、やりますね」と褒められ? 朱乃からは「あらあら流石ですわね」と何時ものニコニコスマイルを浮かべながら言われた。

 

「あ、そう言えば」

 

 帰ろうとして俺はふと、思い出した事があった。

 

 ちょうど良いと思い、リアスに聞いてみる事にした。

 

「なあ、リアス。俺たちの駒って何だ?」

 

 すると、リアスはとてもいい笑みでこう言った。

 

「『兵士(ポーン)』よ。夏蓮とイッセーは」

 

 ……兄弟揃って一番弱い駒でした。

 

******

 

「『兵士(ポーン)か……特性ってあんましなさそうだな」

 

 深夜、誰も歩いていなさそうな時間帯に俺は一人で散歩していた。

 

 春とはいえ、まだ少し肌寒い時期だ。とは言え、これくらいがちょうど過ごしやすい気がするんだがね。

 

 今日は特に指名も入らなかったので、リアスに許可をもらい、その辺をぶらぶらしていた。

 

 『兵士(ポーン)』。チェスのゲームの中で駒の数は八と、最も多いが、数が多いということで最も弱い駒とも言うべき物だろう。

 

 最初以外は一回の行動につき一マスしか進めず、相手の駒を取るときは斜めでしか取れない。要は最弱だ。

 

 唯一、他の駒と違って敵陣の一番奥まで行けば、『(キング)』以外の全ての駒に成れるという特性を持つが、そう簡単に成れるわけが無い。

 

 そう考えれば、『兵士(ポーン)』は序盤のゲームでつぶし合う存在、つまりは捨て駒みたいな感じだ。

 

 事実、俺もリアスとチェスをやった際には殆ど『兵士(ポーン)』を犠牲(サクリファイス)していた。それでも一度も勝った試しは無いが……。

 

「朱乃達みたいな特性は無いっぽいしな」

 

 悪魔となって、確かに身体能力は格段に上がったが、先日のはぐれ悪魔との戦いで朱乃達が見せたような特性は無いように感じられる。

 

 つまりはあまり使えない駒。そう言ったところだろう。

 

「幸先が悪い感じだな」

 

 一誠同様に俺も上級悪魔を目指しているのだが、未来が不安でしょうがない。

 

「修行かね」

 

 それしかないような気がする。と言うより、そうしないと翠とかにどやされそうだ。

 

「……ん?」

 

 俺は歩いているとふと、ある一つの家の前に止まった。

 

 外見はごく普通の一軒家だ。大きすぎ、小さすぎずと言ったところだ。

 

 普段なら絶対に足を止めて見ることもないごく普通の一軒家。

 

 だが、今はこの家は“普通”では無い。

 

「これは……血の匂いか」

 

 俺は悪魔になる前からもともと嗅覚が良く、悪魔になってから更に敏感になった。その為に、色んな匂いに敏感に反応しすぎて困るときもあるが。

 

 その他の四感もかなり強化されており、中々便利な物になっている。視力が上がったのは良いことだ。まあ、今は置いておこう。

 

 さて、血の匂いぐらい、何なら不思議では無いだろう。偶々怪我しているだけだとかもあり得る。

 

 だが、この家から漂ってくる血の匂いは尋常ではない。下手したら致死量クラス。と言うより、外にいる俺にまで嗅げる程の濃厚な物。コレはもう駄目なんじゃないか?

 

「……取り敢えず中に入ってみるか」

 

 普通に考えれば住居不法侵入罪。が、俺は悪魔。人間の方に適用されるかどうかは、後でリアスにでも聞いてみよう。

 

 そんなよく分からない事を考えながら、俺は家に近づく。

 

 ……物音が全然聞こえない。誰もいないのか?

 

 そう思いながら俺はドアに手を掛けた。

 

 ――キイィ――

 

「…………」

 

 開いた。簡単に。鍵すら掛かっていない。

 

 こりゃあ、マジできな臭いぞ? 油断すると痛い目あいそうだ。

 

 ドアをゆっくりと開けながら中に入る俺。

 

 電気は一つも付いておらず、中は家の中なのに寒い。いや、コレは俺が寒いと感じているのだろう。

 

「血は……あっちの方か」

 

 靴は脱がずに家の中に上がる俺。緊急時に逃げるために勘弁して欲しい所だ。

 

 なるべく足音を立てずに歩く俺。……何か、最早、泥棒だな俺。

 

 ……誰か居たら困るしな。うん。見つかったらまずいからな。

 

 ……泥棒の思考な気がしてきてしょうがないよ。

 

 何だか自虐ネタに走りながら、俺はゆっくりと歩く。

 

 やがて、リビングらしき部屋のドアをこっそりと開ける。

 

 中は仄かな灯りが付いており、それがロウソクによる物だと中を見て直ぐに分かった。

 

 部屋の中はソファーにテーブルにテレビと、特に代わり映えしない何処にでもある普通のリビング。ある一箇所を除いて。

 

「おいおい……これはヤバイだろう」

 

 壁に逆さまになって、一人の男性が貼り付けにされていた。

 

 ピクリとも動かないことから死んでいるのは明白だ。

 

 だが、貼り付けにされている方法が厄介としか言いようが無い。

 

 身体中が切り刻まれていて、中身が飛び出ている。

 

 更に、太く、大きい釘が男性の両手のひら、足、胴体の中心に刺さっていた。

 

 これヤった奴、どういう神経してやがる。大抵の人間は見た瞬間に吐くぞ。俺でも気持ち悪いとしか思えん。

 

「……何だよこれ!」

 

「っ!」

 

 新しい声。死体に気を取られていて気づかなかった。

 

 この声、まさか。

 

 まさかと思いつつ、俺は後ろを振り向く。

 

「一誠……」

 

 後ろに居たのは、我が義弟兵藤一誠だった。顔を青くして俺の後ろにある死体を見ていた。

 

「一誠、お前……」

 

 何で此処に? と言おうとしたが、それを無理となった。

 

「う、おええええぇえ」

 

「……」

 

 吐いた。それはもう盛大に。

 

 まあ、これは無理か。こんなスプラッター的な物を見ることは無いだろうし。

 

「おいおい、大丈夫か一誠」

 

 蹲って吐いてる一誠に近づいて背中をさすってやる。

 

 少ししてようやく落ち着いたらしく、顔を上げる一誠。その顔はまだ青いままだった。

 

「少しは落ち着いたか?」

 

「ああ……兄貴は何でこんなところに?」

 

「散歩してたらこの家から変な雰囲気を感じてな。様子を見にきたわけ。お前は?」

 

「俺は依頼があったから来て……」

 

「成る程」

 

 俺たちは偶然鉢合わせたわけだ。

 

 俺は死体に近づいてその下の床にしゃがみ込んで、飛び散っている血に触れてみる。

 

「……まだ乾いていないな。殺されてさほど経ってない」

 

 まだ犯人は近くにいるのか? だとすると、厄介だな。

 

「なあ、兄貴は平気なのか?」

 

「ん?」

 

 やっと回復したらしく、一誠がこちらに近づきながら聞いてくる。

 

「まあな。自分でも不思議だよ」

 

 あんまりホラー系は好きではないが、この光景に嫌悪感は抱くがそこまでのものでは無い。

 

 俺は立ち上がって壁に書かれている文字を見る。

 

「……何て書いてあるんだこれ?」

 

「『悪いことする人はおしおきよー』って、聖なるお方の言葉をかいたのさ」

 

「っ!」

 

 第三者の声! 俺は後ろを振り向いた。

 

 一誠の後ろの方に、若い白髪の青年が立っていた。

 

 年は俺たちと然程変わらないだろう。神父服らしき物を身に纏っている。

 

 顔も中々整っている。イケメンと言っても良いだろう。

 

 だが、それら全てを台無しにするかの様な……狂気な眼をしている。

 

 神父はこちらを見ると、ニッコリと笑った。

 

「おーおー。これはこれは悪魔さんたちではありませんかー。集団でお仕事ですかー?」

 

 実に嬉しそうだ。と言うか、俺たちが悪魔だってわかっている時点で危ねえな。

 

 『悪魔祓い(エクソシスト)』かもな。だとすると状況的には面倒だぞ。

 

「なあ少年よ」

 

「んー? 何ですかい悪魔くん」

 

「これやったのお前か?」

 

 俺は後ろの惨状を指差しながら言う。

 

「おうおうイエスイエス! その通りですぜぇ。どうよ、いかしているでしょ。俺様の人生の中で最高傑作の一つ」

 

「なっ……」

 

 一誠が隣で驚きの声をあげていた。

 

「まあ、それは置いておきまして。俺のお名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属しております末端にございます。あ、君たちは名のんなくて良いよ? クソ悪魔の名前なんて覚えるだけ無駄無駄。大丈夫! 今すぐ君たち斬り刻んで新しい道見せてあげるから!」

 

 何が大丈夫なのかも分からないし、そもそも何言っているのかが全く分からん!

 

 と言うかマジでどうする? というより、何で俺はこんな悪魔の敵対関係にある奴らと会うんだ! むかつくなあもう、

 

「さてさて、それじゃあ行ってみようか!?」

 

 そう言うや否や少年神父は懐から柄からしきものと拳銃を取り出した。

 

 柄のスイッチらしき物を押すと、光らしき物で出来ている刀身が現れた。

 

「リアルビーム○ーベル!?」

 

 つうか光!? 悪魔って光が大の天敵だったよなあ!?

 

「ちいっ!」

 

 俺は素早く『神 器(セイクリッド・ギア)』を展開して構えた。

 

「あらららら? 悪魔さん『神 器(セイクリッド・ギア)』持ち? 良いねえ良いねえ。じゃあ行きましょうか!」

 

 少年神父は咆吼すると、こちらに斬り掛かってきた!

 

「一誠退いていろ!」

 

「うわっ!」

 

 混乱している一誠を後ろに追いやり斬り掛かってくる少年神父の剣を『神 器(セイクリッド・ギア)』で受け止める。

 

 鈍い音と共に鍔迫り合いの状態となる。

 

 ……悪魔の俺と拮抗しやがっている。いや、俺の方が若干押しているな。膂力なら俺の方が上か。

 

 だが、この剣を喰らうのはまずいな。人間だった頃で堕天使の光の槍であんなにダメージを負ったんだ。今の俺が喰らったらゾッとしないな。

 

 こうなれば経験者を呼ぶか!

 

「一誠っ! リアスでも誰でも良い。部活メンバー呼べ!」

 

「っ! ああ、分かった」

 

 直ぐに俺の言いたいことが分かったらしく、ケータイを取り出す一誠。だが

 

「ぐあっ!」

 

 次の瞬間、一誠は痛みの声をあげて蹲る一誠。

 

「一誠! おい、どうした!?」

 

 何だ、何をされた? 音も何も感じなかったぞ?

 

「う、うーん? 何やらお仲間を呼ぶようですが、そんな事させにZE!」

 

 よく見ると、ヤツが片手に持っていた拳銃の銃口が一誠に向けられていた。

 

 俺がヤツの銃を見ているのに気がつくと、ヤツは自慢そうに話し始めた。

 

「どーよ、『悪魔祓い《エクソシスト》』御用達の光を動力とした拳銃は。光が動力だから音も銃音も一切しない優れもの♪」

 

 音無の光の銃かよ! 何て厄介なモンを。

 

「このっ!」

 

「おっと!」

 

 剣を競り返すと、少年神父は勢いを消すように後ろに飛んだ。

 

「厄介だなその銃。先にそっちから潰すか」

 

「何々、この銃欲しい? あげないよ。くそ悪魔ごときによおおおお!!」

 

 いきなり豹変した少年神父が銃口をこっちに向けてくる!

 

 落ち着け。よく見ろ。撃つのはあいつ。反応速度は俺たち悪魔の方が上の筈だ。

 

 少年神父が引き金を引こうとする。……今だ。

 

 俺は地面を蹴って少年神父目掛けて突っ込んだ。

 

「っ!?」

 

 流石に俺の行動は予想外だったらしく、動揺するがそこは経験の差と言うべきか、直ぐに動揺を引っ込めて俺の拳銃を放ってきた。

 

 ここ! 俺は右にずれる。

 

 ――ズシュウゥウ!――

 

 肉が焼けるような音がするがこの際無視。痛みも!

 

 俺は少年神父の懐に入り込み、剣を奴目掛けて振ろうとする。

 

「うおっ!」

 

 少年神父はそれを後ろに行くことで回避しようとする。

 

 だが!

 

「甘いぜ!」

 

 俺は更に踏み込み剣を左手に持ち替え、柄の先端で少年神父の手首を力強く突く!

 

 ――グキッ!――

 

「ぐおっ!?」

 

 骨が折れる音がしたと同時に少年神父は短い苦痛の声をあげて持っていた武器、光の剣を落とした。

 

 床に落ちると光の剣の刀身は消え、柄だけになった。

 

 俺は素早く光の剣を手にとった。

 

「危ない危ない。こちらの言葉に引っかかってくれて有難う。

 

「てめえ……初めから剣狙いかよ」

 

「ああ。一番面倒臭い銃に意識を向けていると誤解させてその実、剣の方を狙う。使い古されたヤツだけど、結構効果あったな」

 

 俺は光の剣の柄をくるくる回しながら言う。

 

 最も、あの銃が厄介なのに変わりない。だが、敢えて銃を狙っていると見せかけ剣を狙った。そうすれば絶対に銃に意識が向いていうはずだから、容易に落とせる筈だ。

 

 結果、俺は賭けに成功した訳だ。

 

「この、この糞悪魔がっぁぁぁあぁあ!! よくも俺様も騙してくれたな! ぐちゃぐちゃに切り刻んでやるよぉおおお!」

 

 少年神父は狂乱しながら懐からまた光の剣を取り出した。

 

 げ、あれストックあるのかよ。俺がやったことあんまり意味無かったか?

 

「はっ、ほざけ。逆にお前をバラバラに切り刻んでやるよ」

 

 獰猛な笑みを浮かべながら、俺は再度剣を構えた。

 

 そして、再び激突しようとした時、

 

「――もうやめてください!」

 

 声が響いた。

 

「っ!」

 

「あぁ?」

 

 突然の声に俺と少年神父はどちらも止まり、声がした玄関に続く方のドアを見た。

 

 ドアの辺りには金髪をした美少女シスターがいた。

 

 金髪シスターってまさか……。

 

「アーシア……」

 

 後ろで一誠が呆然と呟く。

 

 やっぱり彼女が一誠の言っていたアーシア嬢か。成る程確かに美少女だ。

 

「っ! いやあああああぁああっ!」

 

 アーシア嬢は壁の磔死体を見ると悲鳴を上げた。

 

「あらららら。アーシアちゃんはこういうのを見るのは始めてでしたっけ? 大丈夫大丈夫。直ぐに慣れて嬉々としてこの芸術を見ることできるYO!」

 

 外道少年神父の言葉にアーシア嬢は叫ぶ。

 

「フリード神父! 今回は人間を惑わしていた悪魔の討伐のはず! その方は人間ではありませんか!」

 

「はあ? 何言っちゃってんの? 糞悪魔と仲良くするやつなんざ糞悪魔と同じぐらいに価値が無い存在だぜ? それを殺して何が悪いよ?」

 

「なっ……」

 

 神父のあまりの言葉にアーシア嬢は絶句した。

 

 そして、アーシア嬢は次に俺たちの方を見ると、目を見開いて驚いた。

 

「フリード神父……その人たちは……」

 

「ん? いやいや、こいつらは人じゃありません。こいつらは下劣でクソな悪魔君たちだぜぇ? なーに勘違いしてんの?」

 

 少年神父の言葉にアーシア嬢は今までで一番驚きを表していた。

 

「イッセーさんが……悪魔……?」

 

 自分に向けられた視線に、イッセーは目を逸らすしか無かった。

 

 ……何か嫌になるな。俺自身の事ではないが、それでも、知られたく無い事を知られたくない人に知られるのは、辛いだろう。今の一誠の気持ちは如何程か……。

 

「ま、兎に角兎に角そこの紅髪野郎。てめえはぶっ飛ばしてやるよ? じゃなきゃ俺のこの気持ちが全然落ち着かねえんだよおぉおおぉぉぉぉ!! 巫山戯んなよおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ!」

 

 しつこいなあ、おい!

 

 俺は確かに戦うのは好きな方だけど、こんなイカレ野郎と斬り合っても全然面白くねえ!

 

 俺が剣を構えようとしたその時、アーシア嬢が俺たちの間に入り込んできた。

 

 ちょ、何やって……。

 

 入り込んできたアーシア嬢を見て、少年神父は理解不能なモノを見るかなような目で見ていた。

 

「なーにやってんのかなアーシアちゃんは?」

 

「……もういやなんです。悪魔に魅入られたからと言って人間を殺して、悪魔だからって殺して……そんなのもう沢山です!」

 

 アーシア嬢……。今までどれだけ見てきたか。

 

 しかし、そんなアーシア嬢の叫びに少年神父は全く心動かされた気配はなく、逆に激昂した。

 

「はあ!? 何を言っているんだが全く分からないんだけどおおぉぉぉぉぉぉ!? 何寝言言ってんだこのアマ! 教会で習ったんだろ!? 俺たちは悪魔を滅ぼしてナンボ。悪魔はクソミソカスだって習っただろうが!」

 

「悪魔にだって良いヒトはいます! そこのイッセーさんは、本当に良いヒトです! 悪魔だからってそれは変わりません!」

 

 芯の強い子だ。今夜だけで色々とショッキングな場面に出くわしたはずなのに。

 

 っ! 俺はアーシア嬢のシスター服の襟を掴んで後ろに引いた。

 

「きゃっ!」

 

 アーシア嬢は突然の事に短い悲鳴を上げるが、アーシア嬢のすぐ目の前を拳銃を持った神父の手が横切る。

 

「おいおい、こんないたいけな少女に何手を出そうとしてんだお前は?」

 

「……ああもうイライライライライラするねえええ!! 何なんだめえらあぁあぁあ!」

 

 俺たちに少年神父が斬りかかろうとしたとき、床が青白く輝いた。

 

「何事さ」

 

 少年神父が呟く。

 

 やがて、青白い光は形をなしていき、魔法陣、グレモリー眷属の転移魔法陣になった。

 

「これって!」

 

 ばっ、と一誠の方を見ると、

 

「へへっ……」

 

 通話状態の携帯電話を手にした一誠が得意げに笑っていた。

 

 ナイスだ一誠! 相手に気づかれず良くやった。後でめちゃくちゃ褒めてやろう。

 

 やがて転移魔法陣が輝き、中から数人の悪魔が出てきた。

 

「やあ、助けにきたよ」

 

 いつものスマイル顔で挨拶してくる木場。

 

「……神父」

 

 いつも通りの無表情、塔城ちゃん。

 

「あらあら、大変」

 

 いつも通りの笑顔の朱乃。

 

「随分勝手な真似しているみたいね」

 

 そして最後にリアス!

 

 グレモリー眷属集合か! いいところに来てくれたぜ! ホント。

 

 ……と言うか、みんなホント普段通りだな。それだけ自分に自信があるわけか。まあ、あいつ等こういう状況何度も経験しているんだろうしな。

 

「あーらら、悪魔さんの団体さん登場か!」

 

 リアス達を見ても、奴さんは嬉々としている。

 

「ま、と言うわけだ。形勢逆転ってヤツだな」

 

「おーおー! 悪魔のくせに仲間意識バリバリバリューですか? 悪魔戦隊デビルレンジャー結集ですか? いいねぇ。熱いねぇ。萌えちゃうねぇ! 何かぁい? キミが攻めで彼が受けとか? そういう感じなのなの?」

 

 ……生理的に嫌悪し始めたよ。こいつ……。

 

「………下品な口だ。とても神父とは思えない………。いや、だからこそ、『はぐれ悪魔祓い』をやっているわけか」

 

 木場が一歩前に出て言う。

 

 『はぐれ悪魔祓い』? はぐれ悪魔みたいなもんか。

 

「あいあい! 下品でござーますよ! サーセンね! だって、はぐれちゃったもん! 追い出されちゃったもん! ていうか、ヴァチカンなんてクソくらえって気分だぜぃ! 俺的に快楽悪魔狩りさえ気が向いたときにできれば満足満足大満足なんだよ、これがな!」

 

「一番やっかいなタイプだね、キミは。悪魔を狩ることだけが生き甲斐………僕たちにとって一番の有害だ」

 

「はぁぁぁ!? 悪魔さまにはいわれたかないのよぉぉ? 俺だって精一杯一生懸命今日をいきてるの! てめぇら糞虫みてぇな連中にどうこう言われる筋合いはねぇざんす!」

 

「悪魔だって、ルールはあります」

 

 朱乃も前に出て言う。表情は普段通りだが、その視線は鋭い。

 

「いいよ、その熱視線! お姉さん最ッ高ッ!! 俺を殺そうって思いが伝わってくるよぉ! これは恋? 違うねぇ……、俺は思うよ。これは殺意! 最高! これ最高! 殺意は向けるのも向けられるのもたまらんねぇッ!!」

 

 何度も言うようだけど、こいつマジでおかしいんじゃないの? 見ているだけで嫌になるし、聞いているだけで吐き気がするわ!

 

「なら、消し飛びなさい」

 

 リアスがゾッとするような冷たい声で言う。

 

「イッセー、ゴメンなさいね。まさか、この依頼主のもとに『はぐれ悪魔祓い』の者が訪れるなんて計算外だったの……で」

 

 一誠から次に俺に視線が向く。

 

「何で貴方が此処にいるの、夏蓮?」

 

「いやあ、散歩してたら偶然ね」

 

「凄い偶然ね」

 

 リアスが嘆息しながら言う。

 

 そこで、ふと、俺の左肩を見た。

 

「夏蓮、怪我したの……? イッセーも……」

 

「え?」

 

 ああ、そういや、銃で撃たれたんだな。さっきまでテンション上がっていて忘れていたんだな。

 

「ああ、さっき光の銃で撃たれてな。まあ、大丈夫だ」

 

 俺が笑いながらそう言うと、リアスはすうっと目を細めて『はぐれ悪魔祓い』の方を見た。

 

「よくも私の夏蓮に下僕であるイッセーを傷つけてくれてわね……? 私、自分の所有物を傷つけるヒトは許さないことにしているのよ」

 

 ……怖ぁ。こないだの堕天使と対峙した時みたいな迫力を感じるな。

 

 後、「私の」のニュアンスが何か変な感じが……。

 

 リアスが手にやばいくらいの魔力を集め始め、再び開戦かと思われたが。

 

「! 部長。この家に複数の堕天使の気配が迫ってきています!」

 

 木場が顔色を変えて言ってきた。

 

「っ、ここで堕天使とやるのは得策ではないわね。朱乃! 転移魔方陣を」

 

「はいっ!」

 

 リアスの言葉に朱乃が素早く反応して、転移魔方陣を展開する。

 

「部長! アーシアも!」

 

「眷属では無い子は転移魔方陣は通れないわ。諦めなさい」

 

 アーシア嬢は置いてけぼりか……。

 

「アーシアァァァァァ!!」

 

 一誠の悲痛な叫びと共に、俺たちは転移魔方陣に包まれていった。




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