ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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リアルで少し忙しく遅れました


なにが起きてる……?

 突然のリアスの言葉に俺は思考が思わず停止してしまった。

 

 十秒ほどたっぷり固まって、ようやく頭が再び回り始め、俺は眼前のリアスに質問する。

 

「えーと、リアス? 俺の耳が正常なら、今処女を貰って欲しいって言った?」

 

「ええ、言ったわ。早急にお願い」

 

 ……ふう、俺の聞き間違いじゃなかったか。良かった良かった。

 

 …………。

 

 …………。

 

 …………うん。

 

 ちょっと待てやコラああああああああぁああ!! 良かった良かったじゃねえよ!!

 

 え、何これ!? 何がどうなってこうなっているの? 何でリアスがいきなりこんなこと言い出しているんだ! 意味分からん!

 

「ほら、時間が無いから急ぐわよ」

 

 そう言いながら服を脱ぎ始めるリアス!

 

 あれ、既に俺がOKを出したことになっている!? 良いのか、ムードもへったくれも全く無いぞ!

 

 俺が絶賛混乱中の間にリアスはあっという間服を脱ぎ、下着姿になった。

 

 っ!

 

 俺はリアスの下着姿を見て思わず息を飲んだ。

 

 悪魔になった直後にリアスの裸を見たことがあるが、あの時は完全に混乱していて、まともに見ていなかった。

 

 だが、今改めて見ると、本当にリアスの体は整っているとしか言いようが無い。

 

 陶磁器のような白い肌に滑らかな体。

 

 下着で抑えられている豊かな胸。

 

 それら一つ一つがリアスという存在を作り上げており、その内一つでも欠けていたら、今のリアスは無いだろう。

 

 ……ちょっと待て。何冷静になりながら変な事を考えているんだ俺は。やべーよ。これじゃ唯の変態じゃねえか。

 

「電気は消してくれる? 流石に明かりが有るのはちょっと……」

 

 あ、ココで恥じらいを持つか。

 

 言われるがままに電気を消してしまう俺。

 

 部屋は真っ暗になるが、悪魔の俺たちには特に問題ない。

 

 寧ろ、暗くなってよりリアスの体が扇情的に見えるようになった。

 

 や、やばい……。何か本気でリアスと情事しそうな雰囲気になり始めた。いや、別にそれは良いのかって違う違う! そうじゃない。

 

 あれ、確かリアスの家って貴族だよな。娘の初めての相手なんて事になったらどうなる俺!?

 

「もう、何しているの夏蓮。早くなさい」

 

「あっ」

 

 悩んでいたら、リアスに腕を引っ張られて、そのままベットに倒れこんでしまった。

 

 仰向けにベットに倒れこむと、リアスがそのまま馬乗りで俺に乗っかってきた。

 

「って、リアスおい待て。何かその場の空気に流されてしまっているが、マジでやるの?」

 

「今更何を言っているの、貴方も男なら覚悟を決めなさい」

 

「いきなりこんなことになって覚悟を決めろとか無茶振りだろ!」

 

「もう! 情けないわね!」

 

「もがっ!」

 

 再び口を開こうとしたら、リアスに口を塞がれてしまった。

 

 うっ、リアスの手のひら、すげえ柔らかい。それにコレは……石鹸か? ちゃんと風呂に入ってきたという事は、マジでやる気だったのか。

 

 パチッ。片手で器用にブラジャーを外すと、リアスの豊かな胸が露わになった。

 

 や、やばい……。何がやばいってもう……!

 

「む、もがーー!」

 

「ここまで来たなら覚悟を決めなさいって言っているでしょ?……それに私、あなたになら……」

 

 最後の方は小さくて聞き取れなかったが、まあ、今は置いておこう。

 

「それに貴方も初めてでしょ? 私の初めてのあげるんだから、おあいこよ」

 

 ……………………。

 

 思わず俺は視線を逸らしてしまう。

 

 が、それがいけなかったのだろう。リアスが半眼になるのが見えた。

 

 やばい。何がやばいってリアスさんがキレテいらっしゃる。それはもう見事に。

 

「…………あるのね?」

 

「…………」

 

 どうしよう、冷や汗が全く止まらない。まだまだ熱くならないのになー。

 

 リアスは俺の口から手を離して、人差し指を顎に付けて平坦な口調なまま続けて言う。

 

「ふーん、そう……で、何処の女? 朱乃、では無さそうね。そういうのをやるほどまだ関係が深いと思えないし……他の女生徒もそこまで貴方に接近できる子はいない筈だし……。そうなると、外部のヒトよね」 

 

 そこまで言うと、リアスはニッコリと笑みを浮かべた。それはもう、見る者全てを魅了する様な輝かしい笑みだ。

 

「で、相手は誰かしら?」

 

 だが、俺にとっては文字通り悪魔の笑みだ。

 

 俺は冷や汗をかきながら、顔をリアスから背けることしか出来なかった。

 

 あれーおかしいな。別にリアスは関係ないはずなのに、何でこんなに後ろめたいんだろうか。

 

 てか、何でそこで朱乃の名前が出る。あいつは唯の友達だぞ。

 

「夏蓮、こっち向きなさい」

 

「うぐっ!」

 

 リアスによって顔を前に戻されて、ぐいっと顔を近づけられる俺。

 

 って、やばいやばい。息かかってる! キスする位の距離! うおい!

 

「すっ、ストップストップ! 待てリアス!」

 

「待たないわ」

 

 えーーーー。横暴だよ。

 

 真剣な表情で俺を見つめてくるリアス。

 

「夏蓮……」

 

 俺の名前を呼び、そして何か言おうと口を開いた時。

 

 突如、床が輝き出した。

 

 それを見て、リアスはため息をついた。

 

「遅かったか……」

 

 それだけ言うと、リアスは輝く床を睨みつける。

 

 俺もそれにつられて床を見ると、輝きは魔方陣に姿を変えた。

 

 って、また誰か転移してくるのかよ。今度は誰だ? 朱乃か? 祐斗か? 小猫か? って、誰が来ても絶対にヤバイ!

 

 どうやってごまかそうか慌てふためく俺だが、俺の予想に反して魔方陣から現れたのは……メイドさんだった。

 

 いや、秋葉原によくいるメイドコスプレじゃ無くて、どうも本物のメイドさんみたいだ。何と言うか、雰囲気的にそんな感じがする。

 

 銀髪を後ろで三つ編みにしている美人さんだ。魔方陣から来たという事は、この人も悪魔なんだろう。

 

 俺の上に跨っている――俺の方は見ていない――リアスを見て、銀髪のメイドさんはため息をついた。

 

「……こんな事をして、破談に持ち込もうとしたのですか?」

 

 銀髪のメイドさんが声音に呆れを含みながら言う。それを聞いたリアスが、不機嫌そうに言う。

 

「こうでもしないと、お父さまもお兄さまも話を聞いてくれないでしょ?」

 

「それでこの様な下賤な輩に? そのような事をしたら、旦那様もサーゼクス様も悲しまれますよ」

 

 何かもう訳が分からなくなってきた。

 

 話から察するに、何やらリアスは自分の家関係で、意に沿わない事をさせられそうになっている訳で、俺との性交でそれを無かった事にしようとしている訳だ。

 

 で、そんなリアスの行動を察知して、この銀髪メイドさんが駆けつけてきたという訳だ。

 

 てか、破談? 破談って言うと……。

 

「全く、貴女は……」

 

 ため息をつきながら、ここで漸く銀髪メイドさんが俺の顔を見た。

 

「――――っ!?」

 

 そして、見た瞬間、目を見開いて固まった。

 

 まるで信じられないモノを見たかのような目だ。そう、幽霊を見ているかのように……。

 

 何だよおい。俺の顔に何か付いているか?

 

 耳を澄ませれば「いや、まさか……そんな事が……」と呟いていた。

 

 何なんだよおい……。

 

「グレイフィア?」

 

 訝しげにリアスが銀髪メイドさんの名前を呼ぶと、メイドさんがはっ、と我に返った。

 

「どうしたのグレイフィア?」

 

「いえ……何でもありません」

 

 いや、何でも無い筈がないと思うんだが……。

 

 困惑するなか、銀髪メイドさん……グレイフィアさんが俺に向かって丁寧にお辞儀しながら挨拶をくれた。先程の狼狽は一欠片も見せずにポーカーフェイスを整えていた。

 

「申し遅れました。私はグレモリー家に仕えるメイド、グレイフィアでございます」

 

「あっ、これはどうもご丁寧に。リアス様の兵士(ポーン)をやらせてもらっている兵藤夏蓮です」

 

「カレン? ではこの方が……」

 

「ええ、私の兵士(ポーン)の一人。灼 輝 の 龍 刃(グロリオ・ドラゴ・エッジ)の所有者よ」

 

 グレイフィアさんはどこか異質な者を見るかのように俺を見る。

 

 否、性格に言うならば、疑惑の目だ。何かを探るような、そんな目。

 

「銀星輝龍の力をその身に宿した存在……」

 

 そうグレイフィアさんは呟くと、床に散らばっているリアスを服を拾い始めた。

 

「何はともあれ、むやみやたらと、殿方の前に肌を晒すものではありません。あなたはグレモリー家次期当主で、事が事ですから」

 

 そう言うグレイフィアさんに、リアスはふん、とそっぽを向くだけだ。

 

 ……何か子どもっぽいなあ。普段が二大お姉さまだからか? こっちが素なんだろうな。可愛いと少しおもった。

 

 俺と同じことを思っていたのか、グレイフィアさんは嘆息しながら、リアスに上着を掛けた。

 

「グレイフィア、あなたがここへ来たのはあなたの意志? 家の総意?……それとも、お兄さまの御意志かしら?」

 

 おいおい、何か面倒な事になってきているな。リアスも相当不機嫌だし。

 

「全部です」

 

 グレイフィアさんはそう即答した。……全部っておい。

 

 リアスはため息をついた。

 

「そう……お兄さまの『女王(クイーン)』であるあなたが人間界に来たのだから、そうでしょうね……。良いわ、私の根城で話しましょう。朱乃を連れてきていいわね?」

 

「雷の巫女ですか? 構いません。上級悪魔たる者、『女王(クイーン)』は常に側に侍らせておかなくては」

 

「よろしい。夏蓮」

 

「ん、おう」

 

 蚊帳の外だったが、ようやく会話に入れた。

 

「今日はごめんなさいね。急に押しかけて色々として……」

 

「いや、別に……」

 

 そう、別に俺に実害は無い。無いのなら、別段気にすることも無い。

 

 いやあ、これであれも有耶無耶に……

 

「それはそうと、後で相手はしっかり聞くから……良いわね?」

 

「……イエス、マム」

 

 前言撤回。しっかりと覚えていました。チクショー!

 

 チュ。

 

 っ! 何やら頬に柔らかい感じが。え、ちょ、まさか……。

 

 その感触が、リアスが俺の頬にキスをしたのだと気づいたのは、リアスがグレイフィアさんと一緒に魔法陣の上に乗ってからだ。

 

「今日はこのお詫びで許して。それじゃ、また明日学校で」

 

「あ、ああ……」

 

 俺が唖然としながら手を降ると、リアスは笑みを浮かべて、彼女も手を降った。

 

 そして、魔方陣が輝き、二人は光に包まれていった。

 

「…………はあ」

 

 自分以外、誰も居なくなった部屋で、俺は人知れずため息をついていた。

 

 ふと、時計を見ると、あまり時間が経っていないのが分かった。

 

「その割には色々と濃かったな……」

 

 突然のリアスの処女を貰え発言。更にそこから銀髪メイドさんの登場……何このギャルゲー。

 

「…………」

 

 が、俺にとって最も重要な所はそこでは無い。いや、一応そこも重要なんだが、本当に重要なのは、

 

「……最悪だな。嫌なこと思い出しちまった」

 

 ぼやき、ベットに寝転ぶ俺。

 

 ここ最近は意識の片隅に置いといてはいたが、決して表には出してこなかった事。

 

 もう過去の存在へと成り果ててしまった存在。

 

「……琥珀」

 

 何気なく、呟く。

 

 

 

 二度と呼ぶ気が無かった彼女の名を。

 

 

 

 守る事が出来なかった、彼女の名を。

 

 

 

 もう会うことが出来ない彼女の名を。

 

 

 

 ――自分を救ってくれた大切なヒトの名前を。




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