ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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義弟に彼女が出来た

 兵藤一誠。俺の義弟にして愚弟。

 

 既に分かると思うが、一誠の人気とは勿論良い意味では無い。完全に悪い方だ。

 

 変態三人組。それが、この三人の最も広く認識された異名である。

 

 まず変態一号である我が愚弟兵藤一誠。成績は中の下。毎回テスト前になると俺に泣きついてくる。とにかくエロい事に貪欲で、ほぼそれしか考えていない奴だ。

 

 まあ、性格は悪くないし顔もそこそこ良いからコレでエロが抜ければ念願の彼女の一つや二つも出来ると思うんだが……。如何せん、その事に頭が回らないようだ。

 

 次の変態二号、松田は丸刈り頭の一見すると、爽やかな感じのスポーツ少年に見えるが、残念ながら彼も変態だ。

 

 見た目通り身体能力も高く、中学時代は記録を塗り替えるほどの実力者の癖に、今は写真部に所属している。

 

 そして最期の変態三号元浜。メガネを掛けた男子生徒で、勿論変態。メガネを通じて女子のスリーサイズを測れる等というよく分からない特殊能力を持っているので、エロメガネ、スリーサイズスカウターなんて異名を持つ。

 

 しかも、こいつ等こんな事している癖に、彼女が欲しいなんて言うんだよな。頭大丈夫か?

 

「さて、俺はそろそろ自分のクラスに戻る。ヒトを待たせているしな」

 

「ヒト? 誰か一緒に食べる予定だったのか、兄貴」

 

「ああ。リアス嬢と一緒にな」

 

 俺がそう言った途端、変態三人組は一旦唖然となり次の瞬間、

 

『何いいいぃいいぃ!?』

 

 な、何だ急に!? いきなり大声出すとかビックリするだろ!!

 

 驚く俺など気にせず、三人は血の涙を流すような勢いで嘆き始めた。

 

「畜生っ!! 二大お姉様の片割れたるリアス・グレモリー先輩と昼食だと!? 何で兄貴ばっかりモテるんだよ!! 理不尽だーーー!!」

 

 いや、それは完全にお前の所為だよ一誠。後、俺はそんなにモテないぞ。

 

「クソっ!! やっぱり()()紅髪だからか!? だからなのか!?」

 

 松田が地面を叩きながら涙ながらに叫ぶ。

 

「紅髪、か……」

 

 俺は少し長めの自分の髪の毛先を弄りながら呟いた。

 

 俺の髪は松田の言う通り紅い。それこそ、リアス嬢の紅髪を殆ど同じぐらいだ。

 

 亡くなった実母から聞く限り、この髪は外人だった父親の強い遺伝らしい。

 

 らしいというのは、俺が実父に一度も会ったことが無いからだ。何せ、俺がまだ物心つく前に死んでしまったから無理は無い。というか、俺は父親の名前も知らないし、写真も無いんだよな。つまりは形見というべき物を俺は何一つ持っていない。

 

 まあ、そんな父の遺産? らしき物を持っているのと、リアス嬢とよくいるので、紅 の 二 人(スカーレット・ツイン)何て、よくわからないネーミングで呼ばれている。

 

「ま、とにかく、俺はもう戻る。……一誠、もし、またやっていたら分かっているよな?」

 

 俺の最後の一言に、一誠は背筋をピン、と伸ばして何度も頷いていた。

 

「うん、よろしい。それじゃあな」

 

 俺はリアス嬢が待っている自分の教室に急ぐために一誠の教室を足早に出た。

 

******

 

「兄貴! 俺、彼女できました!!」

 

 自室のベットで読書をしていた俺は、部屋に飛び込むと同時に一誠の口から信じられないことを聞いた。

 

「…………」

 

 ……ちょっと待て、落ち着け。兵藤夏蓮、落ち着くんだ。

 

「あー一誠、よく聞こえなかったからもう一度言ってくれるか。何が出来たんだ?」

 

「だから、彼女が出来たんだよ! 俺に!」

 

「…………」

 

 一誠の言葉に、俺は思わず天を仰いでしまった。

 

 そうか、一誠の奴、遂に……。

 

 ある考えに至り、俺は本を脇に置きベットを降りて、一誠に近づき、一誠の肩に手を置いて、出来るだけ、優しく言ってやった。

 

「一誠、どのギャルゲーの彼女だ? こないだ買ったヤツか?」

 

「違げぇよ!? ゲームじゃ無くて本物だからな!?」

 

「何て事だ……ここまでとは。一誠、大丈夫だ。全てこの兄に任せろ。……精神科か? 脳外科か? とにかく、早い方がいいな」

 

「だから違うって言ってんだろおおぉぉおおお!!」

 

 それから小一時間ぐらい俺たち兄弟はぎゃーぎゃー叫び続けていた。

 

*****

「何、本当に出来たのか、彼女が。お前に?」

 

「うん、もの凄く疑い深そうに見ているけど本当だってば」

 

 あの後、ギャーギャー騒いでいた俺たちの五月蠅さが下にも伝わったのか、義母さんが「うるさい!」怒鳴り込んできたので、そこで俺たちは一旦クールダウンして、改めて一誠の話を聞くことにした。

 

「しかしな、お前は熱血で努力家だが、それ以前エロいだろ? そんなお前を好きになるヤツなんているのやら……」

 

「なあ、それ褒めてんの? それとも貶してんの?」

 

「ん? 両方」

 

「おい!」

 

 一誠が抗議の声を上げるが無視。

 

「所で、彼女って誰なんだ? 写真とか有るのか?」

 

「ん? ああ、ほら」

 

 一誠がポケットからケータイを取り出して、画面を操作して俺に見せた。

 

「ほら、コレが俺の彼女、天野夕麻ちゃん」

 

「どれどれ」

 

 一誠が映し出した写真を見ると、成る程。コレは美少女と言っても良いだろう。

 

 黒髪を背中辺りまで伸ばし、顔は良く整っている。オマケに胸フェチの一誠の好みにどストライクの巨乳ときた。コレで「好きです。付き合ってください」なんて言われたら日頃から彼女に飢えている一誠は一瞬でOKしてしまうだろう。

 

「確かに可愛い女の子だな。しかし、この制服はウチ(駒王)じゃないな。余所か?」

 

「ああ、近くに女子校があっただろ? 其処の二年生なんだってさ」

 

 ふーん。……って、ちょっと待て。同じ学園のヤツならいざ知れず(それでもあり得ないが……)、他校の女子なんだよな? 何でそんな女子と一誠に接点があるのか?

 

「でさ、今度の休みの日に夕麻ちゃんとデートすることになってさ……って、兄貴聞いているのか?」

 

「え、ああ。夕麻ちゃんとデートするだっけ?」

 

「おう! でさ、兄貴、ちょっと相談なんだけど」

 

「ん?」

 

 一誠が急に視線を彷徨わせ始める。

 

――ああ、そう言う事ね――

 

 何となく一誠の言いたいことが分かって、俺は苦笑いを浮かべるほか無かった。

 

「その、今度のデートする場所で、良いところ何て知ってるか?」

 

 ……全く、この愚弟は……。

 

 俺は一誠を尻目に、パソコンを起動させて、素早くネットを開いた。

 

「兄貴?」

 

「ちょっと待ってろ。今、目当ての場所の時間帯調べるから」

 

 俺は素早く検索ワードを入力して、目当ての店のサイトを開く。

 

 えっと、確か次の休みの日なら……うん。

 

「一誠、此処なんてどうだ? 前に誘われて行ったんだが、中々おいしかったぞ」

 

 俺が出したサイトは、駅から少し歩いた所にあるちょっと小洒落なレストランのヤツで、主に学生をメインとした店らしく、高校生でも十分に手が出せる域だ。その上、中々どうしておいしいと来た。

 

「ああ、そう言えば、こんな店有ったな……。男三人で入るにはちょっと気が引けるから入ったこと無いけど」

 

 まあ、まず間違い無く男だけで入るような場所ではないな。俺が入ったときも殆どが女子同士か、恋人同士だったしな。

 

「ん? 兄貴、前に此処に行ったのか?」

 

「ああ、リアス嬢に誘われてな」

 

 俺がそう言った瞬間、さっきから終始笑顔だった一誠の表情が凍り付いた。

 

「あ、兄貴……」

 

「何だ一誠」

 

「それって、アレか。リアス先輩に誘われて食事に行ったと?」

 

「だからそう言っているじゃないか」

 

 何を言っているんだこいつ?

 

 俯いて表情が見えない一誠は体を震わせ、やがてかばっと顔を上げると俺の肩を掴んで急に揺らし始め――!?

 

「ちくしょー! 何で兄貴はこんなにモテるんだよ!! 理不尽だーーーー!!」

 

「ちょ、落ち、つけ一誠! お前に、だって彼女、いるだろうが、って、リアス嬢は彼女ねえぞ!?」

 

 単純に、友人として食事に誘われただけだ。普通だろ?

 

「普通男女二人だけで食事するなんてよっぽど親しくないとねえよ!!」

 

「じゃあ、俺たちはよっぽど親しい仲と言う事で!!」

 

「やっぱり彼女じゃないかーーー!!」

 

 ああもう!! ああいえばこう言う。こう言えばこう言う。

 

 いい加減に……!

 

「いい加減にしろバカ!」

 

「ぐぺ!?」

 

 堪忍袋の緒が切れた俺は、ギャーギャー喚いている一誠の顎に思いっきり打ち込んだ。ただし、手加減はしたが。

 

 その反動で一誠は奇声を上げて床に倒れ込んだ。そして、そのまま顎をさすりながら呻くのだった。

 

「あ、兄貴……本気で打ったろ……痛てえよ……」

 

「何言ってんだよ。本気で打ったらお前の顎がとんでもないことになるだろうが……」

 

「相変わらず兄貴の腕はとんでもないな……」

 

 顎をさすりながら、一誠は上半身を上げた。

 

「まあ、コレでも結構鍛えていますから」

 

 そう言って、俺はポンポンと、腕を叩いた。

 

「とにかく、空いている時間教えるから一誠、今度のデートガンバレよ」

 

「っ、おう!」

 

 うん、良い返事だ。

 

 

 

 

 

 それから少ししてからじゃないと分からないことだが、そのデートの日、一誠は悪魔に転生した。

 

 

 それからだろう。俺たちの悪魔としての生が始まったのは。

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