ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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大学で部活に入ったのは良いんですが、何かこう、違和感を覚えるというか、肌が合わないというか……。


いよいよだ

 リアスと語らった次の日。俺たちは庭に集まっていた。

 

「さて、一誠。()ろうか」

 

「……ちょっと待ってくれ」

 

「あ? なんだよ。あんまり時間がねえんだ。有効的に使わないと」

 

「……なんで兄貴が木刀構えて俺と対峙してんだ!? どういう状況だよ!」

 

「状況って、お前なあ……」

 

 一度構えた木刀を降ろして俺はため息を付く。全く、こいつは何にも分かっていないのか?

 

「一誠、さっき言っただろ? お前の今の状態を確認するから、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発動して模擬戦をやるって」

 

 そう、現在俺は一誠と模擬戦をやろうとしている。

 

 あの後、リアスと話し合った結果、一誠に自信を付けさせる為には、やっぱり目に見える成果が一番だろうと、そういう結論に至った。

 

 ……まあ、少し前までは普通の高校生だった一誠にはそういうのが丁度良いだろう。調子に乗らせない程度でな。

 

「ほら、取り敢えず、二分――十二回分の倍加ぐらいはやっていいから、やるぞ」

 

「う……分かったよ。……寄りにもよって兄貴か」

 

 おいこら。自分は小声で言っているつもりかもしれんがばっちり聞こえてんぞ。この野郎しばくぞ。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!」

 

 一誠の声と共に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が出現する。

 

『Boost!!』

 

 赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が音声を発し、倍加を告げる。

 

 その後、連続して十一回の倍加の音声が流れる。

 

「よーし、十二回いったな? じゃあ、始めるぞ」

 

「おう!」

 

『Explosion!!』

 

 音声と共に一誠の力が上昇したのが何となくだが分かる。相変わらず、ふざけた能力だ。

 

 さて、と。

 

 俺は木刀を構えて一誠を見据える。

 

 一誠も油断なく構えてこちらを見てくる。

 

 ……へえ、格闘の基礎はちゃんと出来てんな。俺と小猫ちゃんが教えた甲斐があったもんだな。

 

 じゃあ……

 

「行くぜ!」

 

 掛け声と共に俺は踏み込む。

 

 そしてそのまま一誠の脳天目掛けて打ち込む。

 

「っ!」

 

 それを一誠は腕をクロスして受け止める。

 

 おお、今の止めるか。なら!

 

 俺は一度距離を取り、今度は右側から攻め込む。

 

 修行を始める前の一誠ならギリギリ反応出来ないくらいの速度で、木刀を横薙ぎに一誠に叩き込む!

 

「なろっ!」

 

 それを一誠は左手の籠手で受け止める。

 

 って、マジかよ。これを止めるか。

 

 一瞬、動きが止まる俺だが、お構いなしに一誠は右手で殴り掛かってくる。

 

 俺はそれを躱し、後方に跳んで再び距離を取る。

 

「…………」

 

 再び木刀を構える俺だが、正直なところかなり驚いている。

 

 いやはや、まさかここまでいくとは……。

 

 一誠の能力の強化に驚く俺だが、流石にやられっぱなしは性に合わんな。少しギアを上げるか!

 

 俺は魔力で身体能力を強化し、一気に一誠の後ろに回り込む。

 

「なっ!」

 

 突然俺が後ろに来たのを驚いたのか。一誠は反応出来ずに固まってしまう。

 

 ――戦っている最中に固まると死ぬぞ!

 

 そう心の中で叫び、俺は一誠の項あたりに思いっきり体と同じく魔力で強化した木刀を叩き込む!

 

 ガンッ!

 

 クリーンヒット! 手ごたえあった。

 

「いっつう!」

 

「!」

 

 ……いやいや、ちょっと待てや、おい。

 

 こっちが木刀で本気でボコそうとしていないとは言え、力は結構、本気(ガチ)だぞ? あいつ、それを受けて、痛いですむのか。

 

 カウンターのように俺に今度は蹴りを入れてくる一誠。

 

 これを躱しまた距離を取る。

 

 ……正直、俺の予想を超えている。これが神滅具(ロンギヌス)。これが、神をも殺せる力を持つ神 器(セイクリッド・ギア)……。

 

 ……ははっ。

 

「良いねえ。面白れえぇ……」

 

「……なんだよ兄貴。急に笑い出して。(こえ)ぞ?」

 

「ん? ああ、済まない。ちょっと面白くてな」

 

「はあ?」

 

「いや、こっちの話だ。……さて、一誠は次は魔力の一撃を打ち込んでみろ。素のお前じゃあ米粒位の大きさというあまりにも貧弱なものだったが、今の強化されている状態でどんぐらい撃てるか試しみろ」

 

「……所々俺を貶してんのは分かるけど……まあ、了解」

 

 なぜかげんなりとする一誠だが、素直に俺のいう事を聞いて、魔力を打ち出す構えを取る。

 

「ドラゴン波ならぬドラゴンショットォオオオオオ!!!!」

 

「まんまだな!」

 

 思わず突っ込む。

 

 一誠の赤い魔力の球が一誠の手を離れると同時に巨大な魔力の塊となった。

 

 うは、すげえ!

 

 いきなりのサイズの変化に驚く俺だが、直ぐにあることを気が付いた。

 

 ――やべ、これ食らったら不味くね?

 

 そう考えた瞬間、俺はすでに躱すことに頭がいった。

 

 幸い、スピードはそこまでのモノじゃない。普通に躱せる。

 

 俺は一誠の魔力弾を躱す。

 

 そして、魔力弾の行方を見て、躱したのが正解だと把握する。

 

 一誠の放った魔力弾はそのまま地面を抉りながら進んでいく。

 

 そして、そのまま隣の山にぶつかると同時に、巨大な爆発を起こす。

 

 ドッゴオオオオオオオオオオオンッッ!!

 

 煙が晴れて、山を見ると、山が無くなっていた。

 

「マジか……」

 

 比喩でも何でもない。文字通り山が下の部分を残して完全に抉れているのだ。最早、山とは言えないだろう。というか、あの山に生息していた動物たちごめんなさい。

 

 いやあ、マジで危なかったな。神 器(セイクリッド・ギア)無しだと、あれを受け止めんの無理だわ。

 

 一誠の方を見ると、自分で放った魔力弾の威力に驚いているのか、地面に座り込んでいる。神 器(セイクリッド・ギア)の宝玉が輝きを無くしているのを見ると、どうやら力がリセットしたみたいだな。

 

「お疲れ様、2人共。さて、感想を聞こうかしら。夏蓮、イッセーはどうだった?」

 

「どうもこうもねえよ。力だけなら結構ガチでやってたんだぜ? それを一誠のヤツは全部受け切りやがった。見ろよ、木刀なんてボロボロだ」

 

 そう言って俺は木刀を前に出す。

 

 すると、木刀はミシリ、と嫌な音を立てて、柄の部分を残して綺麗に折れた。

 

神 器(セイクリッド・ギア)を使わなかったとはいえ、最後の魔力弾を食らったら流石に不味かっただろうしな」

 

「そう。という事よイッセー、あなたはこう思っていたんじゃないの? 『自分には何にも才能が無い』って」

 

「部長、気づいていて……」

 

「確かに、それは半分正解。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発動させていないあなたは弱いわ。けれど、籠手の使うあなたは次元が変わる。あの一撃は上級悪魔クラス。アレが当たれば大抵の者は消し飛ぶわ」

 

 うわあ……あれで上級悪魔か。それじゃあ、魔王様はどんくらいなのかねえ。

 

「莫大な力を受け止める基礎が出来た体を作る事で、あなたはあんなにも強くなる事が出来る。始めの数字が高ければ高いほど、より脅威になっていくの。これはあなたにしかない力、つまりはあなただけの『才能』よ」

 

 リアスが褒める様に言う。

 

「その通りだぜ、一誠」

 

「兄貴……」

 

 俺も便乗して、一誠に言う。

 

「確かにお前には剣術の才も、魔力の才も無いかもしれんが、それを補うもんがある――要は使い方次第だ。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)はお前の立派な『才能』だ」

 

 そう。一誠は別に弱くは無い。ただ、強さの部分が他の奴等とは少し違うだけだ。

 

「お前の力は、フェニックスを倒すのに十分使える。――お前を馬鹿にしたあの女たらしにお前がほえ面かかせてやればいい」

 

「兄貴……」

 

 何やら感慨極まった顔で俺を見てくる一誠。あら? なんか変な事言っちまったかな? まあ、良いけど。

 

「さあ、ゲームまで残り数日。皆、絶対にライザーに勝つわよ!」

 

『はい!』

 

 新たな気持ちを胸に、俺たちはゲームに向けて修行を再開するのだった。

 

******

 

「ふむ……」

 

 午後9時。俺は自室にて悩んでいた。

 

 一誠の実力を確認してから数日。いよいよゲーム当日となった。

 

 学校が終わり、家に帰宅して、部屋に籠っていても、緊張感は拭えない。

 

 いや、緊張感というよりは、昂揚感かな? 戦いに向けての、喜びが溢れてきてしょうがない。

 

 おいおい、俺ってそんな戦闘狂だったか? 案外、自分の事は一番良く分からないのかもな。

 

 そこまで考えて、俺はふと、右手を前にかざす。

 

 手のひらに光が集まりだし、やがて、光は剣の形を取る。

 

 光がはじけ、俺の手には、一本の銀色の剣が握られていた。

 

 剣、と言っても、どちらかと言えば、片刃。つまり刀に形状は近い。柄には装飾が施されているが、実用性なのは、以前から使って分かる。

 

 ――灼 輝 の 龍 刃(グロリオ・ドラゴ・エッジ)

 

  銀  星  輝  龍(シルヴァリオ・シュテル・ドラゴン)リンドヴルムの宿す俺の神 器(セイクリッド・ギア)だ。

 

 能力は相手のエネルギー攻撃の吸収。そして、吸収した力を一気に解放して、一時的に爆発的な力を所有者に与えるこの二つだ。

 

 しかし、一見、強そうに聞こえるこの能力(ちから)だが、一誠のと同様に弱点はある。

 

 まず、所有者の容量(キャパシティ)を超える攻撃を吸収することが出来ない。これはもう、当然と言えば当然だ。バケツだって、容量を超える水を流し込まれたら溢れてしまうだろう。それと同じだ。

 

 ただ、この弱点は一誠のと同様に体を鍛えていけば、何とかなるだろう。

 

 次に、効果範囲だ。

 

 これはもう、そういう仕様だと思って諦めるしか無い。

 

 つまり、剣が触れた部分のみしか、攻撃を吸収出来ないのだ。

 

 例えば、俺が後ろから攻撃を受けても、その攻撃が当たる部分に剣を持っていかなければ当然、吸収は出来ない。

 

 一誠のもそうだが、神様が作ったって割には案外神 器(セイクリッド・ギア)も弱点が多いよな。いや、そういう風に作ったのか? どちらにしろ、考えて分からないか。何せ分かるのは作った神様だけなんだし。

 

 ――全くですね。あの能無しの頑固クソ神め――

 

「……え?」

 

 なんだ、今、声がした……?

 

 辺りを見渡しても、もちろん誰もいない。一誠とアーシア嬢も俺と同じように自室で準備しているはずだし、義両親も、下に居るはずだ。

 

「気の、せいか……?」

 

 自分で言っておいて何だが、聞き間違いでは無いと思うが……。

 

 釈然としないものの俺は、着替えに取り掛かる。

 

 着るのは学校の制服だ。最初は昔道場で使っていたヤツを使おうと思ったのだが、生憎と三年前から身長が伸びており、着るに着られなくなっていた。

 

 まあ、仕方ない、と。他のメンバーは制服を着ていくみたいなので、俺も制服だ。

 

 駒王学園の制服は中学のヤツと比べると、結構動きやすく出来ている。ぶっちゃけ、運動もそれなりに出来る作りだと思う。

 

 あーでもな、戦闘で絶対破けたりするだろうしなー。そうなったらリアスに頼もうかな? ちょっと汚い気もするが、悪魔として勘弁してほしい。

 

「さて、時間か」

 

 時計を確認すると、そろそろ家を出ないとまずい時間だ。一誠とアーシア嬢を呼びに行くか。

 

 俺は部屋を出ると、まずは一誠の部屋の前に行き、ドアを叩く。

 

「一誠? そろそろ時間だ。行こうぜ」

 

 声を掛けると、直ぐに反応が返ってくる。

 

『兄貴? 分かった、直ぐ行くよ」

 

 少しして、足音が二人分、こちらに近づいてくる。

 

 ……あれ? 二人分?

 

 俺が訝しげに思うのと同時にドアが開く。

 

 中から出てきたのは、一誠とアーシア嬢だった。

 

「アーシア嬢、なんでまた……てか、シスター服?」

 

 一誠は俺と同じ駒王学園の制服だったが、アーシア嬢のは以前、彼女が教会に居た頃に来ていたシスター服だった。

 

「は、はい。部長さんが『一番動きやすい服で来るように』と言ってたので、これに……今は私、悪魔になってしまいましたが、主への信仰心を無くしたことはありません」

 

 いや、まあ、アーシア嬢が良いならそれで良いけど……。案外、リアスもあっさりOKしそうな気がするな。

 

「まあ、アーシア嬢が良いなら……。一誠、準備出来てるか?」

 

「おう! ばっちりだぜ」

 

 パン、とこぶしを手のひらに当てる一誠。その表情は気合十分だ。

 

「は、良い顔だ。気負いすぎて滑んなよ?」

 

「あたりめーだ。兄貴こそ、油断して足元掬われるなよ?」

 

 はっ!

 

「誰に言ってるお前。……よし、じゃあ、勝ちに行くぞ」

 

『おう(はい)!』

 

 一誠と、アーシア嬢も気合の籠った返事をしてくれる。

 

 さあ、やることはもうやった。後は全部ぶつけるだけだ。




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