ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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昨日、聖闘士星矢の映画見に行きましたけどあれはあれで有りなんだと思う作品でした。


負けない……

「おいおい……流石にこの状況はやばいんじゃないか……?」

 

 冷や汗をかきながら、俺は一人呟いた。

 

 現在この場に居るのは、俺の一誠の二人だけだ。

 

 小猫ちゃんも、朱乃も、祐斗もやられた。残りは四人。数でいえばこちらが有利かもしれないが、実際は全く逆だ。

 

 こっちはボロボロも良いところ。マジで最悪だ。

 

「兄貴、一体何が……」

 

 一誠がこちらに駆け寄って来て言う。

 

「どうもこうも、敵の攻撃だろ。その所為で朱乃と祐斗はやられた」

 

「でも一体誰が……」

 

 おいおい、誰ってそりゃあ、お前。今残っている奴なんてあいつだけだろ?

 

「一誠、後残っている敵はあれだ」

 

 そう言って俺は空に指をさす。

 

 その指の先に、ローブを纏った女性が一人、浮かんでいた。

 

撃破(テイク)

 

 笑みを浮かべながらそう言うのは、ライザーの女王(クイーン)。確か、ユーベルーナとか呼ばれていたか。

 

「ん……?」

 

 そこで、俺はふと違和感を覚える。

 

 ――あいつ、なんで無傷なんだ?

 

 そう、朱乃と戦っていたであろうあの女王、傷を一つも負っていないのだ。

 

 いくらなんでもそりゃあ、可笑しい。俺の贔屓目を抜きにしても、朱乃とヤツの実力じゃあ、間違いなく朱乃が上の筈だ。

 

 いや、別に朱乃が絶対に勝つなんてそれこそあり得ん。勝負に絶対は無い。だからこそ、朱乃が負けてもそこまで驚くことではない。

 

 だが、それでも、無傷で勝てる筈が無いんだ。一体どうやってるんだ。

 

 ……いや、考えても仕方ないか。

 

 今必要なのは、あいつをどうやって倒すかだ。

 

 朱乃を倒す程の相手だ。しかも駒の中では最強の女王。

 

 対してこちらは(キング)以外全ての駒に昇格できるとはいえ、それは相手の陣地に侵入したらだ。今は最弱の駒に過ぎない。

 

 ならば、俺が取るべき選択肢は……。

 

「一誠、お前先に行け」

 

「兄貴……?」

 

 驚いたようにこちらを見る一誠。

 

「お前はさっさとリアスとアーシア嬢の元に行って手助けしてこい。お前の力がきっと必要になるだろう」

 

「でも、相手はあの朱乃さんや小猫ちゃん、それに木場もやったヤツだぞ!? いくら兄貴でも無茶だ!」

 

 おいおい、一誠……。

 

「阿呆かお前。誰にもの言ってやがる? お前に心配されるほど、弱いつもりは無いぞ?」

 

「でも……!」

 

 なおも言い募ろうとする一誠。

 

 全く。こいつはだから馬鹿なんて言われるんだ。

 

「良いか一誠? 今この状況で別にあの女王(クイーン)は別に倒す必要は無い。ぶっちゃけた話、足止め出来れば良いんだ」

 

「足止め?」

 

「そう。俺たちの最終目的はさっきも言ったが、ライザーの野郎をぶちのめす事だ。なら、さっさとライザーの野郎をぶちのめせばいい。いくら女王が残っていても、(キング)が倒されてしまってはその時点で試合終了。ここまではオーケー?」

 

「ああ、まあ」

 

「というか、ここまで言えば分かるだろ? 俺が引き受けるから、お前はさっさとライザー倒しに行け」

 

 しっしっ、と追い払うように手を振る。

 

「兄貴……」

 

「安心しろ。弟より弱い兄はこの世に居ない」

 

 俺の言葉に一誠は苦笑する。

 

「……俺たち、血は繋がってねえぞ?」

 

「だとしてもだ。ここはこの義兄に任せて早く行け」

 

 生憎とこちらはまだリアスからの命令が残っている。先にそちらを済ませておかないといけないからな。

 

「分かった。兄貴、気をつけてな!」

 

「だから心配無用だ。ほら、さっさと行ってこい」

 

 一誠は新校舎に向けて走り出した。

 

 途中、敵が一誠を襲うのかと思い、警戒するも、何故かあいつを素通りさせてしまった。

 

 結局、一誠が新校舎の方に消えるまで、女王は何もしてこなかった。

 

「意外だな。てっきり後ろから狙ってくるものかと思ったぜ」

 

 剣を構えながら俺は言う。

 

「別にその必要は無いわ。いくらあの坊やが向かったとしても、もう貴方たちに勝ち目は無いもの」

 

 冷笑を浮かべながらそんな事を言うババアもとい、ユーベルーナ。

 

「……今何かとても失礼なことを考えなかったかしら?」

 

「ん? 気の所為だろ」

 

 意外と勘が鋭い。

 

「随分舐めたことをいってくれるじゃねえか。……まあ、それは置いて。俺が聞きたいのはもっと別の事だ」

 

「? 別のこと?」

 

「あんたのその姿だよ。朱乃と戦って無傷なんてまず有り得ない。どんな手品だ?」

 

 朱乃がこの女王に一方的にやられるとはどうしても考えられない。となると、何かしたに決まっている。

 

 グレイフィアさんが何も言ってこないから、ルール違反では無いだろうが、少なくとも俺が知らないことをやったんだろう。

 

「――『フェニックスの涙』。悪魔になりたてのあなたでも名前ぐらいは聞いたことがあるんではないですか?」

 

 新たな声。見上げれば、背中から炎の翼を展開し、宙に浮かんでいるレイヴェルがいた。

 

 どうやら、さっきの魔剣の攻撃から逃れたみたいだな。アナウンスもなかったし。

 

 で、『フェニックスの涙』だっけ?

 

「確か、不死鳥の涙はいかなる傷治すっていうあれか」

 

「ええ。いかなる傷もすぐに治す我が一族の秘薬ですわ」

 

 いかなる傷も瞬時に……。

 

 もしそうなら、とんでもないな。アーシア嬢の聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は確かに制限無く傷を治せるが、重傷なのはやっぱ時間が掛かるからなー。

 

「まあ、あまりに強すぎるので制限が掛かり、一回のゲームに二個までしか持ち込めなくなったんですけどね。今回は女王のユーベルーナと私が持っていたのですわ」

 

「成る程。どうやってそいつが朱乃に勝ったのか、やっと分かったよ」

 

 自分もダメージを負いながらやっと勝ったと思いきや、いきなり相手が全回復とか……嫌になってくるぜ。

 

 つーか、リアスのやつ教えてくれても良いじゃないか! あれか? フェニックスの方に目が行き過ぎていたのか!

 

「この秘薬のおかげで我が家もう大儲け。レーティングゲームが悪魔の世界で大流行した御蔭ですわ。フェニックス家の看板も上がり、それに……」

 

「自慢したい気持ちも分からないでもないけど、一先ず待ってくれ」

 

 話が長くなりそうだったので、ストップさせる。

 

 こういう手合いは相手がだるそうにしていても延々と話し続けるしなぁ。炎天下での校長先生の延々と続くよく分からない薀蓄(うんちく)とかな。

 

 話を遮られたレイヴェルは不満そうにする。

 

「何ですの? どうせあなたたちに勝ち目は無いんですからここで私とおしゃべりしていたほうがよろしいですわよ?」

 

 レイヴェルの言葉に思わずため息をつきたくなる。

 

 まったくこいつらは。何でおんなじ事を言うだか……。

 

「あのさあ。まだゲームは終わってないぜ? なのにもう勝敗が決まっているなんて言うのは早計すぎるんじゃないか?」

 

「あら、貴方まだ勝てる気でいますの? あなたは頭の回転は速い方だと思いましたけど。本当は分かっているんじゃありませんの? もう勝ち目は絶対に無い事を」

 

「…………」

 

 確かに、レイヴェルの言葉を肯定している部分があるのは本当だな。

 

 実際、このままで勝てる確率なんてほぼゼロに近いだろう。経験も実力もみんなあっちの方が上。こちらは個々の能力では上かもしれんが、相手は不死身。その不死身を打倒するだけの力はまだない。

 

 けどさ、

 

「絶対に負けるなんて無いんだよ。勝負は最後までやらないと分からないものなんだよ」

 

 そう、この世に絶対なんてあり得ない。一見、攻略法が無いように見えるゲームでも、案外意外なところに攻略法があるものなのだよ。

 

「……そうですか。あなたは頭が良い方かと思いましたけど、違ったようですわね」

 

「随分と失礼極まりないな。まあ、自分が頭良いと思った事は無いな」

 

「レイヴェル様、ここは私のお任せを。この者はライザー様から一応の注意はしておけとの事ですので」

 

 

 そう言ってユーベルーナが前に出る。

 

 ライザーのヤツ、何を俺にそんな警戒してんだ? 俺が実力出したのだって、一誠があいつに突っかかろうとした時だけだし、俺の実力があれだけで分かるとは思えんけどな。

 

「そう。じゃ、その方は貴方に任せますわユーベルーナ」

 

「はい」

 

 ま、ライザーがなんで俺を警戒してんのかは置いといて。今はこの女王を倒す方が先だ。

 

 どうやら、レイヴェルは参加しないみたいだな。こいつは好都合。二人相手で、しかも片方が不死身とか泣きたくなる。

 

 俺は神 器(セイクリッド・ギア)を構えながら相手を見る。

 

 この女王の二つ名確か爆弾女王(ボムクイーン)だっけ? 爆発の魔力を使っているからだろうな。

 

 疲労していたとはいえ、小猫ちゃんと祐斗を一撃で倒す程だ。俺も注意していないと、やられる危険性があるな。

 

 油断なく相手を見据えていると、ユーベルーナは無造作に杖を振る。

 

 ――来る!

 

 何の根拠もなく、俺はその場を飛ぶ。

 

 次の瞬間、俺が立っていた場所が爆発を起こした!

 

 間近で見るとかなりものだな。堕天使の光の槍とどっちが痛いかな? まあ、どちらにしても喰らいたくないな!

 

 連続して爆発する中、俺はとにかく走り続けていた。

 

 止まった瞬間に終わりだな。相手は女王だから魔力もまだまだ問題ないんだろうな。

 

「ほらほら、どうしたのかしら? さっきの威勢はどこに行ったのかしら?」

 

 ユーベルーナがこちらを見下すように笑いながらどんどん辺りを爆発させていく。

 

 ふざけんな! と言い返したところだが、生憎とこちらはそんな余裕は無い。

 

 やりづらい。この攻撃、発動場所が俺の立つ地面の真下だから、反応が少し遅れちまう。

 

 真下と分かって行動したら、今度は走っている目の前に魔方陣が展開されるんだからたまったもんじゃない。

 

 ええい、普通の炎や氷みたいに撃ってくるなら吸収は簡単なのに、これじゃ出来んぞ!

 

 ……いや、出来ないわけでは無いが、それでもリスクが少し大きすぎる。

 

 そもそも、倒すなら多分一撃でやらないと。レイヴェルが持っているっていう『フェニックスの涙』を使われたら面倒だ。流石に二回も同じやつを倒すことになるなんていやだぞ、俺は。

 

 だけど、他に方法があるわけでも無いしなあ。

 

 ……ええい、時間を掛けている場合じゃ無いんだ! さっさとこいつら倒してリアス達の元に行かないといかないんだよ!

 

 なら、あの方法をやるしか無いのか……。くそ、やりたくは無かったんだがな。

 

 仕方ない。男は度胸! よくそう言われるしな。うん、やるか。

 

 決意を固めて、俺は一旦立ち止まる。

 

「あら、もう追いかけっこは終わりかしら?」

 

 余裕の表情でこちらに近づいてくるユーベルーナ。

 

「なら、さっさと倒れてくれるかしら? 私は速くライザー様の元に行かないといけないのよ」

 

「悪いね。こっちもそう簡単に倒れるわけにはいかないんだ」

 

 剣を構える。

 

 この方法はあまりやりたくは無い。お師匠様に言われたら『馬鹿かお前は? 脳みそに栄養が全く入っていないんじゃないのか?』ぐらいは言われそうだな。まあ、反論できないのが辛い所だが。

 

 まあ、今の俺の実力だとこれが限界か。

 

「結局、ライザー様の取り越し苦労だったというわけね。――じゃあ、消えなさい!」

 

 ユーベルーナが杖を掲げると、足元に魔方陣が展開される。

 

 ここだ! 俺は剣を逆手に持ち替えて、地面に突き立てる。

 

 そして次の瞬間、巨大な爆発が連鎖して俺を襲う!

 

 タイミングはシビア。だが、俺なら出来る!

 

『Absorb!!』

 

 神 器(セイクリッド・ギア)から音声が流れると同時に、爆発の勢いが一気に刀身に流れ込む。

 

「なっ!」

 

 その光景を見て、ユーベルーナは驚く。

 

 はっはー。完全に油断していたな。こういう驚く顔を見るのホント良いね!

 

 俺はそのまま走り出して相手との距離を詰める!

 

「っ!」

 

 それに気づいたユーベルーナが慌てて杖を振る。

 

 再び爆発が俺を襲うが上手く回避する。

 

 そして、魔力で脚力を強化。一気に距離を詰める。

 

 取った。そう確信して、剣を振り上げたその瞬間だ。

 

 ガキン、と。神 器(セイクリッド・ギア)が何か固いモノにぶつかる音がする。

 

「な……」

 

 見れば、神 器(セイクリッド・ギア)の刀身が、魔方陣によって阻まれていた。

 

 思わぬ光景に、流石に瞠目する。

 

 ユーベルーナは冷笑を浮かべてこちらを見ている。

 

 やられた。そう思った次の瞬間、俺は爆発に巻き込まれた。

 

 

******

 

「危なかったわね……」

 

 そう言って、思わずため息を彼女――ユーベルーナは付いた。

 

 実際、本当にあれには冷や汗をかいたものだ。

 

 まさか、自分の爆発の魔力をも吸収してしまうとは。彼の義弟の神 器(セイクリッド・ギア)とはまた違った厄介さを持っている。

 

 悪魔は通常、魔力による攻撃を主としている。

 

 騎士(ナイト)戦車(ルーク)兵士(ポーン)などは物理攻撃などをするが、上級悪魔たる(キング)や、女王(クイーン)は魔力を中心として攻撃を行う。

 

 それ故、彼の神 器(セイクリッド・ギア)は悪魔の天敵となりうるのだ。

 

「……最も、ライザー様が警戒していたのは、そこだけじゃ無いみたいだったけど。まあ、結局はライザー様の取り越し苦労だったみたいね」

 

 ユーベルーナは近くで戦いを見ていたであろうレイヴェルにライザーの元に向かう旨を伝えようとしたその瞬間、

 

 ――ゾクリ

 

 言い知れぬ悪寒が体中を駆け巡った。

 

 慌てて後ろを振り向く。そこには、

 

「…………」

 

 剣を上段に構えた夏蓮が立っていた。

 

(馬鹿な! あの爆発を逃げたの!? どうやって)

 

 見れば、左半身はボロボロだ。おそらく完全に爆発を避けることは出来なかったのだろう。

 

 手負いだ。後一回爆発の魔力を打ち込めば、間違いなく終わる。頭では分かっている。分かっているのだ。

 

 あの冷徹な眼を見ると、体が竦んでしまう。

 

(なによ、あの眼……。あんな眼をしている子がさっきの子と同じだというの!?)

 

 先ほど見せた義弟への優しい瞳。こちらに向けた必ず勝つという意思が宿った瞳。

 

 だが、今自分に見せている瞳は何だ? 

 

 温かみというものをまるで一切感じさせない、氷の瞳。見る者全てが震えあがってしまうのでは無いのかと思う眼だ。

 

 先ほどとは別人なのではないかと思うほどだ。

 

「……勝つのは、俺だ」

 

 そう言うと同時に、夏蓮は剣を振り下ろす。

 

「っ!」

 

 ユーベルーナは慌てて防御用の魔方陣を展開しようとするも、遅かった。

 

「自分の攻撃を自分で喰らえ」

 

 剣の切っ先がユーベルーナに触れると同時に夏蓮は神 器(セイクリッド・ギア)を開放する。

 

『Liberate!!』

 

 音声が流れると同時に、刀身に爆発の魔力が纏う。

 

 そしてそのまま剣を抉るように振り下ろす。

 

「が、は……」

 

 自分の魔力の攻撃を受けながら、ユーベルーナの意識は闇に落ちていった。

 




いかがでしょうか? 感想待っています。

次でゲームも終了! 頑張ろう
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