ハイスクールD×D もう一人の紅髪   作:多騎雄大

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今回でゲームは終わりって言っていたのに、五千文字では終わらなかったので、何かイラッときてそのまま書き続けていたら九千文字近くなりましたー。過去最高の文字数!




負けたく……ない

「いってぇ……」

 

 右手で左腕を抑えながら俺は呻く。

 

 残念ながらユーベルーナの攻撃を完全に避けることが出来ず、半身が犠牲になってしまった。女王(クイーン)相手にこの怪我では、割に合うと言うべきか……。

 

 左腕は……もう動かんか。左足は引きずれば歩ける。魔力で強引に動かせば何とか走れるかな。最も、あんまりやりたくないけど。

 

「……本当に驚きましたわ。ユーベルーナの倒すとは」

 

 先ほどの余裕に満ちた声とは打って変わって、こちらをどこか警戒するような声音で言うレイヴェル。

 

「正直、貴方がユーベルーナに勝てる可能性なんて本当にゼロに近い確率だと思っていましたの。それが蓋を開けてみれば……」

 

「言っただろ? 勝負はやらないと分からないものだと」

 

 レイヴェルの方を見て笑う俺。

 

「確かに、そうかもしれませんわね。……ですが、そんな貴方はもうボロボロ。それでお兄様に勝つつもりですか?」

 

 俺の左半身を見てそう言うレイヴェルに、俺は残念ながら言い返せない。

 

 事実、俺の今の状態は絶好調の時に比べて二割か……若しくは最早戦えないような状態と言えるだろう。

 

 ホント、さっきよりも更に絶望的。十人中十人が見ても俺は戦えないと判断されるだろうな。

 

 だけどな、

 

「行かないといけないよな」

 

 左足を引きずりながら俺は歩き出す。

 

「ちょ、貴方どこに行きますの!? ここで私とお話ししていればゲームが終わるまで安全ですわよ!」

 

 何故か慌てたように言うレイヴェル。

 

 たく、何言ってんだか。

 

「悪いけど、お前に構っている暇は無いんだ。……リアスと一誠達が待っているんでな」

 

 俺の言葉を聞いて信じられないように首を振るレイヴェル。

 

「あなた、まさかお兄様と戦う気ですの……? そんな体で? 頭が可笑しいじゃありませんの?」

 

 失礼な。初対面の相手になんて言いぐさだ。

 

「俺たちはな、勝つためにここに居るんだ。俺はまだこの戦場に居る。なら、戦わないといけないじゃねえか」

 

 そう、勝つのは俺たちだ。絶対に勝つんだよ。

 

「それに、あっちにはアーシア嬢がいる。そん時に傷を治してもらえば良いんだよ」

 

 おれ自身、言って気づいたが、リアスや一誠と一緒にアーシア嬢がいるじゃねえか。あの子に傷治してもらえば万事解決ってやつだ。魔力もまだまだ残っているし、俺は戦える。

 

 ……但し、アーシア嬢が無事に俺のことを治療できる状態ならの話だ。

 

 先ほどからだが、屋上からは爆発音が響かなくなっていた。あっちで何か変化があったのは間違いない。それがどちらに傾いたか、だ。

 

 俺の頭の中では、ほぼ状況はこうだろうという考えが出ている。正直、あまり思いたくは無いが。

 

 まあ、それでも俺が行かない理由にはならないが。

 

「貴方いったいなんでそこまで勝利に拘りますの……? そんなにリアス様をお兄様に取られたくないのですの?」

 

 レイヴェルがそんなことを聞いてくる。

 

 それに対して、俺は一言だけ言う。

 

「――負けるのが俺は大嫌いなだけさ」

 

 

 

******

 

「階段を上るのがこんなにしんどくなるとは……。老人の気持ちが少しだけ分かった気がする」

 

 俺は普段よりもとても遅く、しかし現在の俺としては最大速度で階段を上っていた。

 

「いまさらだが、翼で飛んでいけば良かったじゃねえか。何で俺わざわざ階段を上ってきているんだよ」

 

 自分の阿呆な選択に思わず自分で突っ込みを入れてしまうが、正直、結構きつい状態だ。

 

 左半身に至ってはさっきよりも酷くなっている。左腕に関してはもう感覚が途切れ途切れだ。

 

 自分で自分の行いに突っ込みを入れないともう体に力が入らなくなってきている。

 

 現在、俺は新校舎に侵入。屋上に向かって階段を上っている途中だ。

 

 入ったと同時に女王(クイーン)に昇格。進んでいるわけだが、こんな状態で昇格してしまったから少し、力の出し具合に不備が出てしまった。

 

 ライザーと戦う少し前に昇格すれば良かったか? いや、どんなことが起きるか分からないし、昇格する前にやられたら元の子も無い。先にやっておいたほうが良かったな。

 

 と、そんなことを考えているうちに、漸く屋上に通じるドアに辿り着く。

 

 一旦、深呼吸して心を落ち着かせる。

 

 そして、ドアを開ける。

 

 そこには――

 

 

******

 

 私、リアス・グレモリーは目の前の光景に為すすべも無く見る事しか出来なかった。

 

 私の兵士(ポーン)の一人であるイッセーが血塗れで倒れ伏していた。

 

 決してライザーを舐めていたわけでは無い。むしろ最大限に警戒していたと言えるだろう。それだけ不死身と言うのは強力なのだ。

 

 だけど、イッセーの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が私たちにはあった。修行で体力をつけた結果、イッセーは上級悪魔なら余裕で消し飛ばすほどの倍加まで耐えることが出来るようになった。

 

 行ける。そう思った。

 

 だけど、蓋を開けてみればどうだ。

 

 既に小猫に祐斗。そして朱乃迄もがやられてしまった。

 

 私自身、ライザーと戦うも、ライザーの不死身に歯がまるで立たなかった。

 

 何がライザーの心を圧し折るだ。その前に自分の心が折れそうになっているではないか。

 

 私の魔力もほぼ尽きてしまった。応援に駆け付けてくれたイッセーも既に限界。切り札であるイッセーがこんな事になってしまうとは、もっとやりようがあったのでは無いかと考えてしまう。

 

 しかし、今となっては最早変えることは出来ない。

 

「まだ、だ……」

 

 ふと、イッセーの方を見れば、体を震わせながら立ち上がろうとしていた。

 

「イッセー……」

 

 もう体は限界の筈。いつゲームからリタイアしても可笑しくは無い状態なのだ。

 

 なのに、なのに彼は立とうとしている。

 

「任され、たんだ……必ず、ライザーの野郎を……ブッ飛ばすんだって。兄貴に、任され、たんだ……! だから!」

 

 そして、立ち上がった。

 

「だから、俺がてめえを倒す!」

 

 ……何という気迫。体は震えて、指で少し押せば倒れてしまいそうなのに、眼光は依然として鋭い。

 

 対峙するライザーも息を呑んでいた。

 

 ……兄貴に任された、か。

 

 兄貴、夏蓮の事だろう。

 

 夏蓮とイッセー。この二人、いつもは喧嘩ばかり――と言っても大抵が夏蓮がイッセーの事を小馬鹿にして、それにイッセーが突っかかっているものばかりだが――しているが、本当に仲が良いと思う。

 

 夏蓮はあまり認めたがらないが、イッセーの事を可愛がっているし、イッセーもそんな夏蓮を慕っている。

 

 血が繋がっていないのに、ここまで兄弟として仲が良いのは素直に凄いと思う。

 

 そして夏蓮に任されたなら、イッセーは何が何でもその任を果たそうとするだろう。そういう子なのだ、イッセーは。

 

「……お前の事、少し舐めていたな。良いだろう。これ以上長引かせるのも可哀想というものだ――ここいら仕留めてやる」

 

 そう言ってライザーはイッセーの首元を掴む。

 

「ぐっ!?」

 

「これだけ痛めつけてまだ起き上がるなら、もう意識を刈り取るか……殺すしか無いな」

 

「っ! ライザー!?」

 

 ぼそり、と呟いたライザーの一言に私は思わず声を上げてしまう。

 

「レーティングゲームでは基本的に相手を殺す攻撃は禁じられている。だが、事故で亡くなるヤツをよくあることだ」

 

 そして、ライザーはイッセーの首元を持っている手を一旦放すと、次の瞬間、イッセーの首を思いっきり絞めた。

 

「があ……!?」

 

 イッセーが苦しそうに呻く。

 

「じゃあな。まあ、お前は中々強かったよ」

 

 更に首を強く絞めるライザー。

 

「あ、があ……」

 

 イッセーがもがきながら、何とかライザーの手を放そうとするも、既に力が全く入らないイッセーには何も出来ない。 

 

「イッセー!」

 

 何とか立ち上がろうとするも、足に力が入らない。

 

 どうしよう。このままでは、イッセーが、イッセーが……!

 

 止めをさす為に一気に力を入れようとしたその瞬間、

 

「――あー悪いんだけど、その手放してくんない? 一応、そいつ俺の義弟なので」

 

 後ろから声が聞こえた。

 

 ……何故だろう。この声を聴くと、いつも安心してしまう。彼が来ればもう大丈夫、そう思えるのは。

 

 性格の部分もあるが、元々そういう素質があるのだろう。

 

 イッセーを始め他の私の下僕たちも新参者の彼をどこか頼りにしている部分があるとおぼろげながら分かる。

 

 かくいう私も、気づけば彼を良く頼っている。

 

 だから、彼ならこの場も何とかしてくれるのではないか? そう思ってしまう。

 

 私も一緒に戦うべきなのに。もう体に力が入らない。

 

 だから、だから、

 

「夏蓮……!」

 

 私はいろんな感情がごった返した状態で彼の名前を呼ぶ。

 

******

 

 

 

 目の前の光景に、俺は思わず息を呑む。

 

 まず、最初に目に入ったのが、その瞳に涙をためたリアスだった。

 

 既に体はぼろぼろ。一目で戦う事が出来ないのが分かる。

 

 横を見れば、アーシア嬢が何か魔方陣みたいな物の上に乗っている。そこから一歩も動かないのを見れば、おそらくライザーが何かしたのだろう。

 

 そして、前を見据えると、ライザーに首を絞められている一誠が目に映った。

 

 リアス以上にボロボロで、もう動けないのは明白だろう。

 

 こんなになるまであいつは……。

 

「レイヴェルめ……ユーベルーナを倒した程の相手とはいえ、こんな状態のやつを見逃したのか?」

 

 舌打ちをしながら言うライザー。

 

 どうかな、あっちはこちらにビビッていたし、しょうがないと思うが。まあ、別にどうでもいいけど。

 

「まあ、家族の揉め事はそちらでやってくれ。……で、一誠を放してくれないか? 流石にそれ以上やられたらそいつ死んじゃうんだけど」

 

 俺のお願いに、ライザーは一瞬考えるそぶりを見せるも、

 

「……ふん、まあ良いか」

 

 そう言うなり、こちらに一誠を投げつけてきた。

 

「うお!?」

 

 思わず驚くも、体を使って何とか受け止める。

 

「あ、兄貴……?」

 

 目を開けてこちらを見る一誠。と言っても、今目が見えているかどうかは分からないが。

 

「おう、一誠。どうした? ボロボロだな」

 

「……兄貴に言われたく、ねえよ」

 

 俺の言葉に苦笑しながら答える一誠。

 

 まあ、確かに俺の体は左半身がもうほぼ動かない状態だからなあ。頼みの綱のアーシア嬢もあんな感じだし。

 

「ちくしょう……本当は、兄貴が、来る前に、ライザーの野郎をブッ飛ばすつもりだったんだけど……」

 

 悔しそうに言う一誠。

 

「なんだ、お前そんな事考えていたのか? だとしたら、甘いぜ。シュークリームのように甘いぜ」

 

「……いや、何でそこでシュークリームなんだよ。訳わからん」

 

 よくわからん突っ込みを受けたが、そこは放っておく。

 

「ま、確かに俺はお前にライザーをブッ飛ばす様に言ったけど、良いさ――後はこの義兄(あに)に任せな。だから、お前は安心して休め」

 

 そう言って、俺は一誠の髪をくしゃくしゃ、と撫でまわす。

 

「……兄貴に頭撫でられるなんて、小学生以来だな。ぶっちゃけ気持ち悪い」

 

「ひどいな」

 

 そう言うも、一誠はどこかまんざらではない表情だ。

 

 そうか、こいつの頭撫でてやったのは小学生の時か。時間が過ぎるのは速いって本当だねぇ。

 

「……じゃ、後、任せるわ」

 

「おう、任された」

 

 そう言うと、どこか安心したように一誠は目を閉じた。

 

 そして、リタイアの光に包まれ、次の瞬間、一誠の体はこのフィールドから消えた。

 

『リアス様の兵士(ポーン)一名、リタイア』

 

 グレイフィアさんのアナウンスが響く。

 

 これで残るのは俺たちだけ。あんなにいたのに、気づけばこれだけか。何だか寂しい気もしてくるな。

 

 ま、今は別に良いか。さて、次はリアスかな?

 

 俺は立ち上がり、左足を引きずりながらリアスの元に行く。

 

「夏蓮……」

 

「どうしたリアス? そんな泣きそうな顔して。だらしないぞ」

 

 俺がそう言うと、とうとうリアスは泣き出してしまった。

 

 あれ? うそ、本当に泣いちゃった。やばい、どうしよう。女性が泣いたらどうすれば良い? どうすれば……!

 

 俺が対応にあたふたしていると、リアスがか細い声で言う。

 

「ごめん、なさい。私が不甲斐ないばかりにこんな事に……!」

 

「リアス……」

 

 こいつは、全く……。

 

「えい」

 

「痛っ!」

 

 何か腹が立ったのでデコピンしてやった。

 

 突然デコピンされたリアスは何が何だか分からないといった顔をしている。

 

「ばーか。何を言ってんだお前」

 

「ば……!? いきなり何を言ってるのよ!」

 

「馬鹿なことを言ってるからばかと言ったんだよ。何も可笑しな事は無いぜ?」

 

「な、貴方の方が馬鹿でしょ!? テストの成績私に勝った事無い癖に!」

 

 こ、こいつ……! 言ってはならんことを!

 

「だまらっしゃい! 日本史は勝ってるぞ! 大体なんだあの回答!『侍は現代にもちゃんと生きている』って! 日本史の先生、何とコメントしたらいいか迷ってたぞ!」

 

「何言ってるの! まだ会った事無いけど侍はまだ現代に生き残っていると聞いたわ!」

 

「誰にだよ!」

 

 絶対に教えたヤツ間違って教えている! しかも意図的に!

 

「貴方だって、英語が一番酷いじゃない!中学で習う単語をあんなにスペルミスして! 一体私がどれだけ教えてあげたと思ってるの!」

 

「うぐ……!」

 

 それを言われると痛いな……。って、今はそんな事は置いといて。

 

「ようやく調子が出てきたみたいだな。元気少しは出てきたか?」

 

「え……?」

 

 一瞬、呆けたような顔をするも、直ぐにハッとする。

 

「夏蓮、貴方……」

 

「お前に泣かれるのは流石に少しきつい。笑え、とまでは言えないが、それでも……泣くなリアス。お前が泣くと、俺もつらい」

 

 俺は右手でリアスの頬を触る。

 

「あ……」

 

「確かに今残ってるので戦えるのは俺だけ。他の皆は全員やられてしまった。――やっぱ、辛いよな。仲間が目の前でやられて消えていくのは」

 

 それに。俺は思う。

 

 リアスは悪魔の中でも一際下僕たちを大切にする方だ。それ故、皆がやられていくのは辛いだろう。

 

 まして、リアスはまだ少女と言える年頃だ。心だってそう強くない。だからこそ、言わなくちゃいけない。

 

「けどな、皆、お前のために戦った。小猫ちゃんも祐斗も、朱乃も、一誠だって。それにアーシア嬢もそうだ。皆お前の事が大切だから死ぬ気で頑張ったんだ。――だから、お前が先に折れるな。俺たちはまだ負けていない」

 

「でも……貴方、もう戦えないじゃない」

 

 俺の左半身を見ながら言うリアス。

 

「確かに、普通はもう戦えないな。でも、まだ動ける。なら、戦える。それだけだ」

 

 俺は力強くそう言う。

 

「だから、最後の最後。もう本当に打つ手が無い、チェックメイトになるまで諦めるな。そうじゃないと、俺がやってらんねえよ」

 

 俺は立ち上がり、リアスを背にするようにライザーを見据える。

 

 さて、改めて今の状態を確認しようか。

 

 体力、問題ない。魔力はまだまだ残っているから、ここで一気に出し尽くす。

 

 体は、左半分の機能がほぼ無い。痛みはもう何か超越したね。

 

 そして、ライザーまだまだ余裕の状態。羨ましい限りだな。

 

 ……うわー、割と最悪だなこれ。さっきも考えたけどムリゲーというやつだね。

 

 まあ、そんな理由で諦めたら俺じゃないな。

 

 レイヴェルには頭が可笑しいとか言われたけど、案外可笑しいかもな。

 

「? 何を笑っている?」

 

 訝しむように俺に言うライザー。

 

 そうか、俺は笑っているのか。

 

「いや、この状況でどうやって戦おうか考えていたら何だか可笑しくなってな」

 

「はあ?」

 

「だってさ……これで勝ったら、マジで面白いじゃん!」

 

 そう言って、俺は足を魔力で強化して駆ける!

 

「っ!」

 

 突然の俺の行動に虚を突かれたライザーは一瞬固まる。

 

 その隙を見逃す俺ではなく、姿勢を低くして、ライザーの懐に入る。

 

 そして、剣を逆手に持ち替えて下から上げる様にして斜めにライザーを斬りつける。

 

 そのまま再び剣を持ち直して、返す刀でXの文字を描く様に反対から斜めに斬る。

 

 どうだ! と思った俺は、やっぱり不死鳥の恐ろしさを本当の意味で知らなかったのだろうな。

 

「――いい攻撃だ。プロモーションをしていない状態でユーベルーナを倒したことはある」

 

 ライザーの何事も無いかのような声に、俺は後ろに跳ぶ。

 

「だが、結局意味は無いな」

 

「……マジか」

 

 俺が斬った場所は、炎が傷口を這う様にして、何事も無かったように再生していった。

 

 これが不死身か……ゲームと違っていつ、くたばるか分からないから面倒くさいなー。

 

「お前、あのガキの兄貴なんだって?」

 

「……だったら何だよ?」

 

「いや? お前はもう少し、物わかりが良い方だと思ってたのだが。結局、兄弟揃って馬鹿なんだなと思ってな」

 

「……ちょっと待てや」

 

 今、聞き捨てならない事が聞こえたぞ。

 

「おい、こら……もう一度言ってみろや」

 

「あ? 兄弟揃って馬鹿だと言ったんだよ」

 

 ……こいつ。

 

「何ふざけたこと言ってんだ。良いか――一誠は本当の馬鹿だから良いとして俺を馬鹿呼ばわりとは何事だ!」

 

『ってそっち!?』

 

 俺の言葉にライザー、そしてリアスまでもが何故か突っ込みを入れる。

 

「いえ、普通そこは『俺を馬鹿呼ばわりするのは良い。だが、一誠を馬鹿と呼ぶとは何事か!』でしょ!?」

 

「え? 何言ってんの? そんな事言うわけ無いじゃん。リアス、漫画の読み過ぎだぜ?」

 

「えー」

 

 リアスが何とも言えない顔をしているが、まあ、いいや。

 

「お前、微妙に酷いな」

 

 何やらライザーまでも言うが、これも無視だ。

 

「って、こいつらが馬鹿なのかどうかなんてどうでも良いんだった。いい加減、飽きてきたからお前、とっと降参(リザイン)してくれないか?」

 

 本当にめんどくさそうにため息を付くライザー。

 

「……随分失礼だな」

 

 流石にカチン、と来るぜこれは。

 

「あ? お前だってもう戦えない、だろ!」

 

 ライザーが手を前に突き出して炎を俺に向けて撃ってきた。

 

「っ!」

 

『Absorb!!』

 

 剣を前に出して、攻撃を吸収する。

 

「遅い」

 

「な!」

 

 気づけば、ライザーが既に俺の目の前まで来ていた。

 

「ふん!」

 

「が……!」

 

 直後、腹に大きな衝撃が来る。腹を殴られたのは直ぐに気づいた。

 

 こいつ……意外と力あんな。

 

 あまりの痛さに俺は思わず、腹を押さえてしまう。

 

 や、やばい。結構効くな……ちょっと、不味いかな?

 

 痛みに悶絶している俺に対して、さらにライザーは足で俺の右足を横から蹴り付ける。

 

「うぐ!」

 

 腹の痛みに堪えていた時にいきなりの攻撃に、俺は態勢を崩して倒れこんでしまう。

 

 そんな俺に対して、追い打ちをかけるように倒れた俺の腹をライザーは思いっきり踏みつける。

 

「がは……」

 

 口から空気が出る。次に感じたのは衝撃だ。

 

 こ、こいつ……殴ったところを!

 

 何とも意地汚いライザーの攻撃に俺はヤツを睨み付ける。

 

「は、こんな状況でもそんな顔が出来るとはな」

 

「ほざけ。この野郎、汚い足を乗っけんじゃねえよ!」

 

 俺は右手でライザーの足を掴み何とかどかそうとする。

 

 しかし、そんな俺の努力を嘲笑うかのように、ライザーはグリグリ、と足をめり込ませてくる。

 

「あ、ぐ……」

 

「いい加減分かれ、小僧。お前じゃ俺には勝てない。万全の状態だったらいい勝負できたかもしれないが、今のお前はじゃあ、俺を傷つけるのがやっとだ。と言うより、あれだけの攻撃しかできないんじゃ、最初から俺は倒せないぜ」

 

「…………」

 

 悔しいが、言い返せない。

 

 確かに、俺の攻撃には、何といえば言いのだろうか、一誠のドラゴンショットみたいな必殺技が無い。

 

 だけどなあ……!

 

「そこで諦める俺じゃねえ!」

 

 俺は一気に魔力を開放する。もう出し惜しみは無しだ! この汚い足をまずどかせる!

 

 だが、俺は失念していたことがあった。さっきまでは念入りに気を付けてた事だ。だが、ライザーの足をどかせるのに躍起になって一瞬だが、忘れてしまっていた。

 

 その結果、

 

「あ……」

 

 魔力が消えた。

 

 やばい! 魔力を上げ過ぎた! くそ! ここに来て……!

 

 俺の魔力はリアスにも負け劣らない量があると言われて、俺自身、その魔力を感じ取ることは出来ている。

 

 だが、そんな上級悪魔クラスの魔力を俺は十全に使いこなせていない。

 

 魔力を一定以上出すと、急激に魔力が使えなくなるのだ。

 

 原因はリアスや朱乃でも分からずじまい。だから、この戦いでも、注意していたのに……ここに来て!

 

「なんだ? 急に魔力が上がったと思ったら、いきなり下がって、訳の分からないやつだなお前は。ま、さっさと消えろ!」

 

「あ、ぐあああああああ!?」

 

 ライザーが再び足に力を入れると同時に、その足に炎を纏わせてきた。

 

 熱い! 熱い! 

 

 やばいぞこれは! 魔力は使えない。体はヤツの炎の熱さに参ってる。もう剣を握る事も出来ないか……。

 

 終わる? ここで?

 

 勝ってないじゃないか俺たちは。皆やられた。勝利を信じて。残ったやつらに託したんだ勝利を。

 

 ならば、勝たなければならない。俺は、俺は……!

 

 

『当然だ。お前はこんな所で負けてはならない』

 

 

 その時、声がした。

 

 

 

******

 

 

 夏蓮の何かが変わった。

 

 

 私、リアス・グレモリーがそれを認識したのは、後から思えば、殆ど偶然だったのかもしれない。

 

 ライザーによって嬲りつくされている夏蓮を助けようと何とか立ち上がろとするが、その力すら無く、見る事しかできなかった。

 

 その時だ。

 

 ――ゾクリ――

 

 何か得体のしれないものが夏蓮の内から溢れ出ようとしていた。

 

 それが何なのかは私にも分からない。でも、一つだけ分かることがある。

 

 ――あれを今の夏蓮に使わせてはいけない!

 

「待って!!」

 

 気づけば、自分でも驚くほど大きな声を上げていた。

 

 それに、ライザーがこちらを向く。

 

「待ってライザー、その足をどけて。……降参(リザイン)するわ。私の負けよ。だから夏蓮から足をどけて」

 

「……………」

 

 私の降参(リザイン)宣言を聞いて満足したのか、ライザーは無言で夏蓮から足を退けた。

 

「夏蓮!」

 

 彼の名を呼ながら、もたつきながらも彼の元に駆け寄る。

 

 駆け寄った彼の状態は酷いの一言に尽きる。

 

 左半身はおそらく敵の女王(クイーン)の爆撃にやられてボロボロだ。もう感覚だって残ってはいないのではないだろうか。

 

 一番酷いのは先ほどまでライザーに踏みつけられていた腹だ。

 

 炎を直に喰らい、思わず目を背けたくなるほどの火傷を覆っている。無事なのが驚きなくらいだ。

 

 既に、先ほど感じた何かは消えている。虚ろな双眸は何も写していなかった。

 

「……ごめんなさい夏蓮、貴方は諦めるなと言ったわ。その言葉は私を支えてくれたわ……でも」

 

 私は夏蓮を抱きしめる様にして抱える。

 

「貴方を失ってまで私は勝ちたくはない。――貴方を、失いたくない」

 

 それは、私の今もそしてこの先も変わることも無い祈り。決して、何人にも侵させない。不可侵の願い。

 

 

 そして、この日私は初めて行ったレーティングゲームで負けた。




いかがでしょうか? 感想、意見待っています。

次回から夏蓮の秘密、ちょっとだけ出るかも……?
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